Glashutte Original  グラスヒュッテ・オリジナル

Glashutte Original PanoReserve
Reference:65-01-02-02-04, Cal.65-01





PanoReserveを語るにはグラスヒュッテに関する歴史感抜きには語れない。
過去の重く、暗い歴史を避けては語れない。
そして、恐らく永遠のライバルであろうLange-1を抜きには語れない。
今までこのHPで筆が進まなかったのは、まさしくそうした個人的なわだかまりがあった為である。
今回、自分自身の中で一区切りを付けるためにも重かった扉を開けることにする。

***

グラスヒュッテ・オリジナル、パノリザーブ。
『時計オヤジ』が偏愛する正統派時計としての1本である。
(2012/7/22 442444)




(新生グラスヒュッテ・オリジナルとGUBの関係について 〜)


今や多くの説明は不要であろう、グラスヒュッテ・オリジナル(以下、GO)。
しかし、その背景にある複雑な歴史とメーカー側の思惑には深くて重いものがある。それに対する一個人として、ユーザーとして、自分なりの理解と認識を持たずして、特にパノリザーブのオーナーを名乗ることは出来ない。
今回はそうした『時計オヤジ』のGOに関する歴史観も交えてこのモデルの考察を進める。

***

パノリザーブの発表は2002年。ランゲ1が1994年であるから遅れること8年、である。
この8年間の意味するものは極めて複雑で大きい。一言で言えば旧東独の国営会社GUBから民営化路線への過渡期、そして最終的には2000年のSwatch Groupによる買収直後までの混沌がこの8年間とも重なる。Swatch Groupに加わることで俄然、ランゲへの対抗心にも火が付いた状況が2000年からの2年間であったと察する。そしてデザイン的にもランゲへの露骨とまで言えるGOによるライバル意識が具現化されたのが当時のパノ・シリーズである。特にパノリザーブのデザインはランゲ1と酷似しているのであるが、まずこの評価をどう見るかでパノリザーブへの興味が大きく分かれるだろう。

まずは大雑把に歴史的経緯を拾ってみよう
(赤字に注目)
1845.5.31 A.ランゲとザクセン王国内務省間で貸付金供与契約締結
1845.12.7 A.ランゲ設立〜以降、ランゲ黄金期の開始〜
1945.5.8  グラスヒュッテ爆撃(同日、ドイツ降伏)
1946.3.18 ランゲ工場接収される
1946.4.26 ランゲ工場が一旦返却される
1948.4.17 私有財産没収される
1948.4.20 ランゲ工場が再度接収される
       同年11月W.ランゲは独南部バイエルン州へ亡命、
       同年VEBランゲに改編される。
1951.7.1  国営GUB設立(旧ランゲ含む当時の9社が併合)
1989.11.10 ベルリンの壁崩壊
1990.10.16 国営信託公社TreuhandによるGUB民営化実施
1990.12.7 LMHグループによる新生ランゲ設立
1994.10.7 ランゲ1発表
1994.11.1 ミュンヘンの実業家Heinz W.PfeiferらがGUB買収
       ブランド銘をGOに決定。(社名はGUB)
2000.10.9 Swatch GroupがGO買収(社名はGUB)

2002    パノシリーズ発表(大洪水発生、被害甚大)
2003.9.8  GO新社屋完成(旧GUB社屋改装)
2008.5.22 グラスヒュッテ時計博物館完成
2012年末 GO拡張工場が完成予定
(⇒右写真: グラスヒュッテにある現在のGO本社ビル。
         2011年9月撮影。))


第2次世界大戦を挟んだグラスヒュッテには凄惨な歴史が潜んでいる。
1845年創業のA.ランゲはその後の黄金時代を経た100年後、1948年の工場再接収時点で完全消滅する。その結果としてA.ランゲの曾孫であるW.ランゲは西独への亡命を余儀なくされた。そして1951年に当時のランゲ含む国営会社(=VEB)9社が併合されてGUBの設立に至り、冷戦終結後、GUBは1990年に国営信託公社の手により民営化される・・・。

具体的な法律論や実際の権利行使と主張を棚上げにして、いち時計愛好家の立場から勝手に発言させてもらえるならば、国営GUBとは1951年に強制的に設立された寄り合い所帯であり、GUB設立の時点でランゲの灯は完全に消滅したと見るのが妥当だろう。GUB時代にランゲブランドの時計が生産されていないことからも明らかだ。そして1990年LMHによるランゲ商標権獲得⇒新生ランゲ誕生、によってランゲが初めて復活したと考えるのがごくごく自然であると筆者は考えている。
一方で1994年以降の新生GUBも、特に2000年にSwatch Group買収以降による新新GUBは、声高に創立1845年を唱えるようになった。しかし、GUBの起源はあくまで1951年の強制合併による誕生であって、A.ランゲを筆頭に従来の伝統的なグラスヒュッテのブランドは全てが1951〜1990年の間は『完全休眠(若しくは消滅)状態』にあったと解釈している。
現在のGUB(=GO)はグラスヒュッテにおけるA.ランゲの歴史を受け継ぐ本流と主張しているのであるが、上記経緯からみるとどうしても無理がある。更にはそうしたGOの主張を、半ば強引とも言える商品開発を通して裏打ちするように、新生ランゲに対抗馬をぶつけてきた。それがパノシリーズであると考えている。

以上を要約すると筆者の独断的な両者の素性は以下となる:
●グラスヒュッテ・オリジナル: 起源は1951年7月1日設立のGUB。ドイツ統一後の1990年にGUB民営化政策の流れを受け、現在のGOは1994年の完全民営化によって再スタートを切った。
●ランゲ&ゾーネ: 創業1845年12月7日。GUB設立によりVEB(国営)ランゲが併合され1990年まで休眠。1990年、LHMにより新生ランゲが発足、今日に至る。



(パノリザーブの背景にある複雑な思惑と意図をどのように解釈するべきか 〜)

新生ランゲによるランゲ1はゼンパーオーパーをモチーフとしたビッグデイト表示と偏心文字盤、そしてパワーリザーブ表示を備えた傑作品である。誕生から早20年近くが経過するが、未だにその新味性は失せることがない。時計デザインの歴史においても燦然と輝く金字塔的存在である。ビッグデイト搭載モデルはランゲ1が最初ではないが、余りに強烈なインパクトと、時計業界に与えた衝撃(⇒メゾンの復活そのものから、デザイン面に亘る全てにおいて)から、GOとしてもみすみす美味しい独壇場をランゲの独占にはさせたくなかった思惑を読み取る。更には営業的観点からも、そしてランゲ切り崩しへのSwatch-Gourpとしての戦略的観点からも、パノシリーズを開発・投入したのではあるまいか。当時のSwatch Groupとしての焦りと赤裸々な対抗心が読み取れる。同時に、当時のGOとしては目指すデザインの方向性が定まっていないやや不安定な時期にあったことも、パノシリーズに心血を注ぐ結果となったのではあるまいか。

即ち、現在のGOには4つの商品群がある:
●Quintessential=看板商品のセネタ、パノシリーズ中心。セネタ・マイセンも含まれる。
●Art&Technik =A.Helwig発明のフライング・トゥールビヨン搭載や複雑カレンダー等のコンプリケーションシリーズ
●20th Century Vintage=60年代のセネタSixtiesシリーズやNavigator Watchデザイン復刻。
●Ladies Collection=女性用全般。

しかし、2002年にパノリザーブが登場した頃は、こうした戦略商品群が確立される以前であった。そんな状況下、
ランゲ1への露骨なまでの対抗心を表現したのが当時のパノシリーズであり、パノリザーブであると言われても仕方ないだろう。

よって、パノリザーブを考える際に、ランゲ1の存在抜きには考えられない。
パノリザーブはランゲ1に対するGOの大きな対抗心と、GOとしての意地が交錯して生まれたモデルであると考えている。
新生ランゲに対する意地とは、繰り返しになるがランゲの商標権をGUBとしては売却してしまったものの、歴史的には前身のGUBからしてそのルーツは1845年のA.ランゲにまで遡るという主張である。よって、現在の新生ランゲは復活した新会社ではあるが、本流はGUBが戦後継承してきた唯一の会社であり、そのGUBの継承者たるGOが真のA.ランゲの後継者であるという考えであろう。しかし、ランゲ1のデザインは全くの独自性を持った完全なる新しいデザインとして1994年に誕生したものであり、1845年創業のA.ランゲによるデザインとは似て非なる全くの別物。そうした近代デザインの傑作品であるランゲ1へ対抗心は、上記の交錯したGOの歴史観がもたらす意地となってパノリザーブを生み出した、というのが筆者なりの解釈である。誤解と偏見を恐れずに敢えて言えば、『パノリザーブは2匹目のドジョウを狙ったという単純な次元にあるのではなく、新生ランゲとランゲ1に対する複雑で執拗な対抗心が生み出した巨大資本主導による戦略的な対抗商品』、という位置付けで捉えている。故に、そうした歴史的背景を含めた状況を自分自身の内部でどのように咀嚼するべきか、この重い命題の前に『時計オヤジ』は長年悩み続けてきたのであるが、一方で純粋に個別モデルとしてのパノリザーブへの魅力に抗することが出来ない、のである。



(←左写真)2004年当時のパノシリーズ。

この写真は2004年11月に香港で撮影したもの。
パノレトログラフ、パノリザーブ、パノマチックデイト、パノデイト・トゥールビヨン等等、ランゲへの対抗を地で行く偏心文字盤シリーズが開花したGOパノシリーズ。

偏心文字盤とビッグデイトはランゲ1が源流であるが、その後のGOによる参入により、今ではグラスヒュッテの代表的な意匠として認知された感が強い。結果的には、云わば、ランゲ&ゾーネにインスピレーションを受けて、そのフォロワーとしてのGOによる参入・開発によって、グラスヒュッテにおける代表的な意匠として確立されたのが偏心文字盤とビッグデイト表示方式であると言えるだろう。それにしてもGOの当時のパノシリーズは徹底している。まさに新生ランゲとランゲ1に対する闘争心をむき出しにした時計達であるが、左写真のように個々のモデルの完成度は極めて高いのがGOたる底力の表現でもある。










(パノリザーブの独自性とその魅力とは何か〜)


本題であるパノリザーブについて。
筆者のランゲ1に対する評価は相当に高いものがあるが、個人的には何故か触手が伸びない。
これは決して負け惜しみでも何でもなく貴金属ケースによる高額な価格帯という事実もさることながら、最大の理由はのっぺりとした文字盤の仕上げと全体デザインにある。逆に言えばこの点でパノリザーブの魅力が勝る。少なくとも『時計オヤジ』にとってはパノリザーブの方が魅力的なのである。加えて裏面のDuplex Swan-neckも大きな魅力としてパノリザーブを後押しする。つまり、文字盤の立体感ある仕上げ具合とシースルバックから見える眺めの良さがパノリザーブの最大の特徴であり魅力であると言える。
一方でランゲ1の文字盤バリエーションの豊富さは、実はROLEX Date-Just並みではないかと思えるほどに多岐に亘る。限定モデル含めるとその文字盤の種類は優に10〜20種類以上はあるのでなかろうか。そうした多くのランゲ1を見てきたが、何故か是が非でも欲しいと思わせる衝動が湧いてこないのである。逆に、ランゲ1を補完する魅力を備えたモデルが筆者にとってのパノリザーブである。

***



(⇒右写真: 
右から、
ランゲ1、
パノリザーブ、
F.P.ジュルヌのオクタ。

共に偏心文字盤、
ビッグデイト表示、
パワーリザーブ
を持つ共通点が・・・)





ランゲ1との比較:
ランゲ1では偏心文字盤に秒針ダイアルやパワ−リザーブ針が干渉することはない。一方、パノリザーブでは写真の通り両者は共に重なる。ランゲ1は黄金比による意匠の秀逸さが賞賛される一方で、個人的にはそうした配置にやや散漫な印象を受ける。片やパノリザーブは偏心文字盤でありながら、全体的に文字盤中央部分に比重が吸引されるような緊張感ある凝縮感が感じられる。この凝縮感が実は視認性に大きな役割を果たしているのだ。秒針ダイアルと重なるデメリットは実用上、不思議と感じない。逆にしみじみ実感しているのだが、パノリザーブは実に見易い・・・。

加えてケース形状の違い、ラグ形状の違い、そしてGO独特の竜頭形状など、デザイン的には両者における異なる意匠にユーザーとしての好みが大きく分かれるところである。

ビッグデイト表示はパノリザーブ(オクタも)が段差ナシ方式のキドニーシェイプラインを描くのに対して、ランゲ1では十字型DISK使用による段差アリ方式である。ビッグデイト詳細はこちらを参照乞う。




(パノリザーブの顔の魅力は銀色文字盤の質感にある〜)


以前、フランクミュラーのカサブランカ”サハラ”に経年変化に伴い色焼けする独自のペイント加工がされた時計が話題になった。このパノリザーブでは公式には何等説明はないが、8年目を迎える文字盤は気のせいか銀色の色合いが強くなってきたようだ。更に言えば、微妙ながら緑がかった銀色とでも言うべきか、全体の質感・存在感が極めて濃密になってきた。この文字盤全体の色彩と丁寧なる仕上げの良さにパノリザーブの大きな魅力が存在するのである。

偏心文字盤小ダイアルの周辺部分、植字式INDEX、秒針小ダイアルも扇形パワーリザーブの仕上げも統一感があり美しい。マット調とポリッシュ調仕上げを巧みに入り混ぜた仕上げがパノリザーブの真骨頂である。ポリッシュ部分はややレリーフ気味に浮き上がっており、マットな部分ではまるでサンドブラストをかけたような微細なるザラつき感を視覚的に楽しめる。地色がシルバーというのも落ち着いた印象を与える要因であり、周辺部へ傾斜した薄いベゼルとも相まってパノリザーブの存在感は唯一無二の造形美を誇る。そのルーツ論争は別として、ランゲ1とは全く似て非なるデザインと感じている。

そして更に特徴的なのが一際大きな竜頭である。
この竜頭は手巻き式としては絶大なる効果を図る一方で、如何にも手巻き時計を主張する潔さが素晴らしい。
実際に手巻きをすると筆者の場合、約85回でフルリザーブとなる。42時間しか持たないのであるが、手巻きとは本来毎朝巻くべきもの。実用上の不都合さは皆無である。むしろ、昨今流行のロングパワーリザーブでは、パワーリザーブ針の動きがダイナミックに観れないので、鑑賞上からも実用面からも2日巻き程度で十分というのが実感。手巻きとは使わなければ止まる時計であることを肝に銘じ、毎日規則正しい時間を決めて自分なりの『手巻き儀式』を励行することが、十分なトルク維持観点からも正しい付き合い方であると考える。その意味からも42時間の手巻き式キャリバーに不満はない。



(GOの専売特許であるダブル・スワンネック式緩急針とチラネジについて 〜)

ダブルスワンネックとはGOが生み出した独自の緩急システムであるが、その機能・効能は素人には正直、分かり難い。
寧ろ我々ユーザーには視覚的な醍醐味こそが最大のメリットであると考える。他社では絶対に見られないダブルスワンネックこそCal.65の白眉である。技術的には、左側のスワンネックでヒゲ持ちの微調整(つまり振り角の微調整)を行い、右側のスワンネックでヒゲ受けを動かす事により緩急調整を行うという説明であるが、ご本家HPの英文説明では以下となる:

"DUPLEX SWAN-NECK FINE ADJUSTMENT:
A fine adjustment for the watch movement whose construction has never been seen before. Two swan-neck springs regulate the watch's rate and centralize the oscillation system (beat) independently of each other."


一部世評では意味のないダブルスワンネックという声も聞かれるが、そう感じる向きにはそれで仕方ない。
時計のデザインとはアイデアとインスピレーションが原動力にある。GOはこの後、Cal.66というダブルスワンネックを更に表の顔にひっくり返して持ってくるという多少ギミック的要素を含む離れ業まで披露するのであるが、筆者はダブルスワンネックというアイデア自体に脱帽し、単純にその美しさに惹かれる。Cal.65とCal.90は特に好みである。

そしてこのダブルスワンネックの受け板に施された彫金も見事。GOでは彫金部分に金色染色まで施す念の入れようだ。この金色と地板の銀色のコントラストが非常に美しい。
この彫金作業をGO工房で直接見学しただけに、余計にこのモデルに対する思い入れは個人的に深いものとある。
鈍いシルバーの3/4プレートと青焼きネジ、そして彫金されたダブルスワンネック式緩急針の対比は最早、芸術の域にあり、手工芸品としての頂点にある素晴らしい出来栄えである。







ランゲのように偏執的なまでのシャトンビス多用は見られるぬものの、それでも5箇所(Lange1は9箇所)に及ぶゴールドシャトンのビス留めや、ジュネーヴコートのドイツ版であるグラスヒュッテ・ストライプで装飾された3/4プレートはグラスヒュッテ様式を忠実に受け継いだものだ。因みに3/4プレートは1864年にA.ランゲにより導入されている。工芸品としての価値も十二分である。Cal.65のムーヴ直径は32.2mmと巨大であるが、その全容をシースルーバックから眺めることが出来るというのは、スケルトンバック病の筆者にとってはこの上ない贅沢と快感なのである。

唯一気になるのがチラネジ搭載テンプが8振動とハイビートであることだ。フリースプラング全盛の現代において、チラネジ搭載機種でさえ稀有な存在であるのに、チラネジ式テンプで高速8振動のハイビートというのはGO以外でも1〜2社に限られる。やはり古典的なチラネジには6振動位のロービートが似合う。精度追求を妥協しない代償に、何ともチグハグな組み合わせとなってしまったのが唯一、惜しい点である。










(純正のプッシュ式ダブルバックルの出来栄えは完璧 〜)


最早、多くのメゾンにおいて採用されるプッシュ式ダブルバックルは非常に使い易い。クロコ革ベルトの寿命も遥かに延びるというものだ。今まで散々と述べてきたが、筆者は通常のクラスプであれば、こうしたプッシュ式に変更する場合が多い。ブレゲでも然り、ラジオミールでも然り、ショパール1860でも然り、である。
プッシュ式は兎に角、使い易い。そしてベルトへの負担も少なく、見栄えも良いし、時計装着時に脱落させるリスク減にも貢献する。云わば、欠点が殆どない優れものであるだけに、純正バックルにこうしたプッシュ式を搭載する姿勢には心底、賛同する。
ベルト幅は19/16mmという、少々変則なもの。19mm幅というのは非常に少ないタイプなので、市販品も少ないのが不便。純正ベルトは竹班であるが、モレラートの丸班を以前イタリアで購入したので愛用を続けている。黒色クロコが王道であるが、濃茶クロコでも面白い別な味が出せると感じている。








(外注ケースの出来栄えも文句無し〜)

GOにおける内製部品率の高さは有名である。筆者の知る限りでは、外部調達している部品は僅かに次の10種類:
本体ケース、ガラス、アンクル、ガンギ車、ヒゲゼンマイ、主ゼンマイ、ルビー、文字盤、革ベルト、ブレスレット、のみである。

←左写真のようにケース厚は11.3mmとちょっとしたクロノグラフ級である。実際に装着してみてもその厚みは十分に感じる。ケース径39.4mmというのだからデカ厚部類に属する大型時計と言えるかもしれない。しかし、パノリザーブはパネライ等のデカ厚とは全く異なる。そこはドレス時計を謳うだけあって品格十二分である。39mm径はドレス時計としては確かに大きすぎる嫌いはあるが、昨今の大型化の波の中においてはギリギリセーフと言えるだろう。
特筆すべきは竜頭の大きさである。手巻き時計という役割と実用性を考慮してのデザインだと理解するが、この大きくて長めの竜頭は非常に使い易い。と同時に、筆者にとっては特別な女性を連想させてくれる存在でもある。その理由とは・・・、公の場では表現が憚れるので省略する・・・。







(2011年9月、我がパノリザーブは生まれ故郷であるドレスデンとグラスヒュッテを凱旋することに〜)

昨年9月、我が生涯3度目となるドレスデンとグラスヒュッテ訪問を果たした。
当然ながら、腕にした時計はパノリザーブである。2004年にGO工場見学後に購入したパノリザーブをお供に連れて、今回は生まれ故郷に錦を飾る?旅となった次第。その折々の光景を我がパンリザーブと共にスナップ撮影したので記録に留めたい。
***

(↓下写真)
まずは、ドレスデンの至宝『ツヴィンガー宮殿』にて。
丁度、陶磁器特別展が開催中であり、1700年代の伊万里焼も展示中。入場切符にはその伊万里による女性像が描かれていたので記念撮影を。ドレスデンで、伊万里を見る日本人、そしてその手首にはパノリザーブが巻かれているという、何とも不思議なる組み合わせの実現である。

ツヴィンガー宮殿のテラスでこうしてしみじみとパノリザーブを眺めていると、丸で我が手にザクセン文化が蘇ったような錯覚と感動を覚える・・・。いや、それは決して錯覚などではなく、まさにザクセン王国時代から脈略と流れる伝統芸術が『時計オヤジ』の腕元で輝きを放っているのである。まさにパノリザーブのオーナーとしては至福の時間を堪能することが出来るのだ。






























(ビッグ・デイトの元祖が存在するゼンパーオーパーにて〜)

フラウエン教会、ツヴィンガー宮殿と並んで古都ドレスデンの顔であるゼンパーオーパー前の広場にて。
2011年9月始め、初秋の青空がすがすがしい。
やはりヨーロッパを旅するのであれば暗い冬場よりも、こうした青空が期待できる春夏シーズンが最高である。






























(←)左写真: 

ゼンパーオーマー入り口にて。
英語のガイド付きツアー入場券と共に、
Pano-Reserveを記念撮影。
2011年9月6日、午後2時55分。
ツアー開始まであと5分・・・。暑い・・・。





















(ゼンパーオーパー歌劇場にて〜)

ゼンペル・オペラハウス。言わずと知れたビッグデイトの『本丸』である。
今回のオペラハウス見学ツアー客を見回しても正面舞台上部にある5分式デジタル時計に関心ある人は見かけなかった。そうであろう、それで結構。『時計オヤジ』は今回も、デジタル時計が計3回動くのを確認して悦に入る・・・。
2011年9月6日午後3時35分。パノリザーブとの2ショットに感無量である。



























































(←左写真)

エルベ河の橋からフラウエン聖母教会を遠くに見ながらの一枚。
ドレスデンにはエルベ河が欠かせない存在。
この悠久のエルベ河畔で時間が許す限りのんびりとドレスデンの街並みを満喫したい。
2011年9月6日午後12時24分撮影。







***


(↓下写真2枚)

『君主の行列』を背景に一枚。
この光景は朝昼晩、何時見ても飽きることがない。『時計オヤジ』がドレスデンで一番好きな場所でもある。
特に夕暮れ時に輝くマイセン2万7千枚を観るのは圧巻。パノリザーブにもシッカリとこの光景を焼き付けてやることに。
何とも幸せな我がパノリザーブである・・・。





























(2011年9月8日午前11時49分、グラスヒュッテ本社工場にて〜)



⇒右写真: 2011年9月8日午前11時49分撮影。

この記念すべき最後の写真は我が生涯の記憶に残る一枚。
このGO本社工場で生み出されたパノリザーブ。
いや、正確に言うと現在の本社工場が完成したのが2003年9月8日であるから、果たして筆者の個体が生産されたのはこの新社屋内であるのか、旧社屋かは不明である。
しかし、この日は偶然にして新社屋の落成記念日であった。
完成後、8年目の当日、『時計オヤジ』がGO本社内に居た事は何とも奇遇、運命である・・・、と勝手に決め付けて悦に入るのだ。

2004年にGO工場内を見学し、7年後に再度、GO本社を訪問、そしてその日がGO本社工場の落成記念日と重なる。
パノリザーブのオーナーとして、ここまでGOとの接点を持つことが出来、想い出を重ねることが出来れば、この時計について語る資格は多少なりとも得られたと感じている。

パノリザーブ、この時計とこの先も終生付き合うことになるだろう。
最早、本望である・・・。



***

最後に。
今年で誕生満10歳を迎えたパノリザーブにもモデルチェンジが施された。2012年BASELで発表された新型パノリザーブはCal.65搭載は変わらぬものの、表の顔は若干スタイリッシュに変更された。『時計オヤジ』は勿論、旧型モデルのファンではあるが、新型にはグレイ文字盤が加わったことが興味深い。
パノリザーブが誕生した2002年には他社ではどんな時計がリリースされたのだろうか。
気になるモデルを以下、順不同で選んでみた・・・

ランゲ&ゾーネ : ランゲ1・ムーンフェイズ
NOMOS     : タンジェント等、初のシースルーバックモデル
ベル&ロス    : フュージョン(デジアナ)
クロノスイス   : クロノスコープ
ゼニス      : クラスエリート・オートマティック・パワーリザーブ
フランクミュラー : トゥールビヨン・レボリューション
JLC        : レベルソ・セプタンティエム
ロジェ・デュブイ : ゴールデン・スクエア
IWC        : ビッグ・パイロット・ウォッチ
パネライ     : ルミノール47mm、ラジオミール42mm(SS)
カルティエ    : ディ・ヴァン、タンク・ア・ビス
ブレゲ       : クラシック(中3針のホワイトエナメル文字盤)
SEIKO       : クレドール(手巻きスプリングドライブCal.7R88搭載)


上記モデルは今見ても、どれもが輝く不朽の名作達である・・・。(了) 
(2012/7/22 442444)  



参考文献:
ロノス日本版2010第29号150頁〜『脚色された時計史A』
Glashutte Original (from Wikipedia, the free encyclopedia)

TIME SCENE Vol.9(2007年刊)
エスクアイア日本版
(Aug2002 Vol.16 No.8)

(加筆修正) 2013/11/01


2011年8-9月、ドイツ・北欧・バルト海旅行関連ページ:

⇒『コペンハーゲンで欧州最古の天文台に登る』はこちら
⇒『U995/U-Boat搭乗記@ドイツLaboe』はこちら
⇒『エストニアの首都タリン散策記』はこちら
⇒『マイセン磁器工場訪問記』はこちら
⇒『2011年9月、ドレスデン再訪記』はこちら
⇒『2011年9月、ドレスデン市内で観た気になる時計達』はこちら
⇒『2011年9月、7年ぶりに訪問した新旧グラスヒュッテ市街の比較』はこちら
⇒『Wempe天文台に見るドイツ・クロノメーター規格の将来』はこちら
⇒『A.ランゲ&ゾーネ本社工房訪問記』はこちら
⇒『ドイツ時計博物館グラスヒュッテ訪問記』はこちら




以前の『ドイツ時計世界の関連ページ』はこちら:

『ドイツ時計聖地、ドレスデンにて。数学・物理学サロン探訪記』はこちら。(2004年9月訪問記)
『ドイツ時計聖地、ドレスデンにて。ゼンパーオーパーとBIG-DATE機構の因縁』はこちら
『ドイツ時計聖地、ドレスデンにて。ラング&ハイネ工房訪問記』はこちら
『現代のドイツ時計聖地、グラスヒュッテ散策記〜NOMOS突撃訪問記』はこちら。(2004年9月訪問記)
『グラスヒュッテ・オリジナル本社工場訪問記』(Part-1)はこちら。(2004年9月訪問記)
『グラスヒュッテ・オリジナル本社工場訪問記』(Part-2)はこちら。(2004年9月訪問記)

『ドーンブリュート&ゾーン REF.CAL.99.1 DR(2)ST.F 』はこちら
『おかえり、ドーンブリュート!』はこちら
『2004年7月、エリー・スタグマイヤー・シュトラッセ12番地〜クロノスイス訪問記』はこちら
『2004年7月、ミュンヘンのサトラーにクラフツマンシップの真髄を見た』はこちら
『2002年9月、ドイツ時計蚤の市訪問記』はこちら
『2004年7月、最新ミュンヘン時計事情』はこちら
『2006年3月某日、デュッセルドルフ散策』はこちら
『SINN 356 FLIEGER』はこちら
『世界初のIWC直営BOUTIQUEをドバイに訪ねる』はこちら
『IWCの故郷、シャフハウゼン散策記』はこちら




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