時計に関する随筆シリーズ (27)

『おかえり、ドーンブリュート!』


 
いまだに毎年クリスマスカードを頂く。
実直な小工房、ドーンブリュートは、昨今地道にモデルを広げている。
しかし、基本は3針とパワリザーブ付きの2モデル。
このメゾンと付き合うにはこちらも覚悟が必要だ。
小工房の良さと、難しさが同居するメゾンである。(2007/2/11)



(故障から2ヵ月半。新品のド−ンブリュートが届いた〜)

前出、『愛しのドーンブリュート、早くもダウン!?』から2ヶ月半。不具合を起こした時計は新品と交換という形で決着をみた(⇒右写真、新品で届いたばかりの新型cal.99.1 DR(2)ST.F)。
不具合の内容とは、
@時計本体の精度の不具合
Aムーヴメント上のSerial No.の彫金間違い、である。

@はヒゲゼンマイの振幅不良による時間の進みである。ドーンブリュートDornblüthさんによれば、ヒゲゼンマイの製造上の欠陥によるもので、彼も初めて体験する不具合であるとの回答を得た。
Aについては多少、融通を利かせてもらい、こちらの希望のNo.を頂くことにした。新モデルゆえ、新たにNo.1から始まるSerialである。では、お言葉に甘えてNo.1を希望したところ、1番だけは各ムーヴメント毎にドーンブリュート工房で保存するそうであり不可。それでは、と別の「一桁」番号を頂くことにした。手にした時計には、今度は間違いなく希望通りの番号が彫金されており、これでようやく済んだか、というのが正直な気持ちだ。


本来、機械式時計であれば、故障⇒修理・修復、というのが正しいアプローチだ。
大量生産のクォーツ時計や家電製品のような匿名性を持つ商品とは、根本的に存在意義が異なるのが機械式時計である。よって、今回のような時計ごと全部交換というのは例外中の例外措置であろうが、彫金間違いまであると交換せざるを得まい。
これで不具合は最後にしてくれよ、との願いも込めて「許してあげよう、ドーンブリュート」、の心境だ。

(←左写真: グラスヒュッテ様式が本当に綺麗なユニタスベースのムーヴメント。文字盤のマットブラックは光源によって、ブルーにも輝く。これがとても神秘的であるのだ。)






(時計同様、人柄も実直?なドーンブリュート〜)

それにしてもドーンブリュートさんは、その時計工房全体という意味からしても、全ての対応が丁寧である。e-mailや手紙の文面からも、律儀で実直な誠意、が伝わってくる。今回は冒頭写真のクリスマスカードと、純正・黒アリゲーターベルト+美錠付き(⇒写真右)をお詫び?も兼ねて頂いた。

正直のところ、新品の時計のNivalox1でどうしてトラブルのであろうかと、内心もやもやしていた「時計オヤジ」であるが、こうした対応を頂くと心がくすぐられる(⇒単なる「現金オヤジ」との声も聞こえてくるが・・・)。
しかし、修理(=交換の為の時計作成)を待っている間でも、先方から「つなぎのメール」で、その時間がかかる理由やらも写真付きで教えて頂いた。そして、今までの全てのやりとりを鳥瞰しても、非常に懇切丁寧で親身な対応が記憶に残る。
「ドーンブリュートは信頼できる時計工房である」というのが偽らざる印象だ。






(←左写真: メモ用紙サイズの紙切れに手打ちタイプされた手製ギャランティー・ペーパーGuarantee sheetと、黒アリゲーター革ベルトはsmallサイズの10.5x7cmだ。ベルト幅は22/18mm。茶色の革ベルトも良いが、黒革に白ステッチもワイルドな気分が一層増す。)









(ケース径42mmについて〜)

デカ厚ブーム全盛の現在では、ドレスタイプと言えどもケース径40mm以上は最早、珍しくもない。しかし、あくまで不変のスタンダードを目指すのであれば、ドーンブリュートのケース径42mmはやはり大き過ぎる。ドーンブリュートにはパネライ程の厚みも重さも無い。それでも42mmの大きさは、手首の上で踊ってしまうのだ。このサイズが丁度良い日本人は平均的ではない。丁度良いと思っているのはユーザーの『誤解と興奮』によるのだ。はっきり言おう。この時計はあくまでカジュアル仕様であり、ドレスタイプ用としての風格・品格は有していない。


ユニタスベースゆえに、ダウンサイジングが不可能であるのはわかる。しかし、「時計オヤジ」としては『手巻き、最大でもケース径40mm以下、チラネジ&スワンネック付き、受板のデザインが良く、シャトンも綺麗な時計』の出現を心待ちにしている。いくら時計が素晴らしくとも、手首と全体とのバランスが崩れては元も子もない。「実用時計」の欄でも述べたが、ケース面積は1,000平方mm前後の使い勝手が一番良い。

多少の手抜きがあろうとも、既存のエボーシュベースでも構わない。
そうしたネオ・クラシックな時計、強いて言えばピタゴラスCAL.48のような、見栄も衒(てら)いも無いが、華(味)がある時計をどこかのメゾンに是非とも作って頂きたいものだ。勿論、裏スケルトンでね。

        *     *     *     *     *

とやかく言っても、とどのつまりは『たかが時計ひとつ』である。
されど、その時計一つの背後にまつわる経験や逸話が、大袈裟に言えば、経験を共に重ねた腕時計は自分の人生の証人でもある訳だ。

『製品value+誠意ある時計工房』のドーンブリュートには、今後とも頑張ってドイツ魂を見せて頂きたいと切に願う。そして、いつの日にかもうワンサイズ小さいグラスヒュッテ様式の登場を夢見て。。。

”Merry Christmas & Happy New Year 2005!!!”




(追記〜SCOOP!?)
クリスマス休暇を直前にして、更にドーンブリュートさんより連絡が入る。
上述のダウンサイジングのケースについてこちらから意見していたところ、何と現在、小型サイズを開発中であり、来年にはケース径36mmの新型モデルの発表を目指しているそうである。36mm径とはまさに「時計オヤジ」が従来より主張・希望するサイズに他ならない。どのような機能を持ったモデルになるのか詳細は定かではないが、先の秒針ダイアルの拡大化といい、今回の小径モデル開発ニュースといい、ドーンブリュートのベクトルはまさに筆者の嗜好と重なる。

それにしても、
1)ムーヴメントのベースエボーシュは何だろう?手巻きであればNOMOS同様にプゾー(ETA/Peseax)7001が最右翼か?グラスヒュッテ様式だけは頑固に継承して欲しいのだが、来年?の『新型』でドーンブリュートの真価が問われることになろう。ユニタスベースとは違う『新世界』に期待しようではないか。
2)機能は?このCAL.99.1DR同様の3針式か?それとも。。。
など等、期待と想像は広がる。しかし、ドーンブリュートのこと、すんなり実現するとは思えない。まだまだ時間はかかるのではなかろうか?

初夢を見る前にして来年のドーンブリュートの活躍には、より現実味を帯びた期待と可能性が高まる。大手メゾンを相手?に、小工房ド−ンブリュートの奮闘はこれからも見逃せない。(2004/12/25)



(追記2〜)

毎年ご丁寧にクリスマスカードを頂くが、今回のカードは面白い。
以下、一部を紹介させて頂くことにする。
HPを見るとモデルのバリエーションが増えたことに驚く。律儀、堅実さが時計とカードからも溢れてくる。
この先も頑張って欲しいドイツのファミリー小工房だ。(2008/01/24)






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