随筆シリーズ(103)  旅行シリーズM

『ドイツ海軍潜水艦 U995/U-BOAT 搭乗記@ドイツLaboe』

〜ドイツ・ラボー浜でのUボート実船見学記〜





今年5月、『フィレンツェのU-Boat直営店』を訪問した。
ここで感じたのが、この時計のモチーフとなったU-Boat実物を是非見学したいという欲求だ・・・。
今回、バルト海クルーズの寄港地としてドイツ・キールKielが実現した。
まさに願ったり、叶ったり、『時計オヤジ』はキール上陸と同時にタクシーですっ飛ばして、
憧れのLaboeを訪問することにした・・・。
(2010/10/17 394300)




(ドイツ潜水艦のU-Boatとは何か〜)


2011年9月上旬、今回バルト海客船クルーズで寄港したドイツのキール。
ここはシュレヴィヒ・ホルシュタイン州の州都であり、歴史ある臨海都市・海軍の街である。
そのキールから24kmの場所にある海岸村がLaboeであり、そこにドイツ海軍記念館と隣接してU-Boat実物『U955』が展示されている。MBのタクシーでキールから約30分のドライブ。高速と田舎道の風景を楽しみつつ、あっという間にLaboeに到着だ。

U-Boatとは第二次大戦中に製造されたドイツ海軍潜水艦の総称。
特に、今回展示されているZ型は、1935年締結された英独海軍協定の制限内である排水量500トンの小型潜水艦であり、ドイツ海軍の主力潜水艦となったタイプで約700隻が建造されたそうである。その中でもこの展示船でもあるZC41型は1943〜45年の間に74隻が竣工し、最大安全潜行深度を従来の100mから120mに改良した型である。

筆者は軍事ヲタク、海軍ヲタクでもないし、特に潜水艦に興味がある訳でもない。
しかし、この”U-Boat”という響きには昔から、一種の畏怖と憧れのような気持ちを抱いていた。今年5月にフィレンツェで偶然訪問したU-Boat時計ブティックで、いつかはこのLaboe浜を訪問しようと考えていた矢先のチャンス。千載一遇とはまさにこのことである・・・。





(←左写真)

U-Boatの入り口はこんなドアから。
初めて入る潜水艦。30数年前に米国LAのDisney Landのお遊び潜水艦に乗って以来の経験だから、実質初めての経験。非常に、ワクワク、ドキドキと緊張する瞬間だ。

このU955は、ZC41型で44〜52人乗りらしい。
ドイツ敗戦後ノルウェーに接収されてから、返還されたもの。
鉄板の厚みは21mm。水中における耐水圧過程でミシミシと船体がキシム音が聞こえてきそうだ・・・。
全長67m、全幅6.2m。私には十二分に大きな船体に思える。
潜行時速度は14.1km/hというから、潜水艦って意外と遅い印象だ。










(⇒最初の部屋がコチラ)

様々なメーター類が並ぶ機関室のような部屋であるが、これらは後部魚雷発射操作管も含んでいるそうだ。
当時はモニターも何もないこんな場所で立ちながら操作・操舵していたのであろうか。整然と並んでいる機械メーター類が大変興味深い。













(エンジン室と乗員休息用の木製ベッドが並ぶ〜)

MAN製のディーゼルエンジン6基が並ぶ様は圧巻。4サイクル6気筒エンジンは最大で合計3200馬力を捻出する。
浮上時の速度は約33kkm/h、航続距離は浮上時で15,170km、潜行時で150kmというから、この潜水艦は鯨のように絶えず海面上に顔を出す航路を取っていたのであろうか。
ベッドの手すりも生々しいと言うか、決して平衡を保つことなく潜水時にはポジションも様々に変わるのであろうと想像する。
それにしてもこんな狭い船内に44名以上もの乗組員がいるのである。6時間交代としても最低7〜8人がベッドに横たわる必要がある。ココ以外にも先端の魚雷室にも仮眠ベッドがあるのだが、実際にこうした艦内でどれだけ十分な睡眠が取れるものか、全く想像も付かない。

























(最先端部分にはこのような魚雷収納室が鎮座する〜)

魚雷が発射される度に、居住空間が広くなるのでみな大喜びだったらしいが、この魚雷の大きさと迫力には驚くと共に圧倒される。こんな魚雷の横で毎日眠る心境はどんなであろうか。
機雷やら海上からの攻撃を受ける時の様子は映画などで見た記憶はあるが、これが実戦となると狭い艦内と深海における恐怖感がどの程度倍増するもであろうか。通常の神経も持ち主には、とてもではないが勤まらない特殊任務かも知れない。

展示されている魚雷は明るいブルーに塗られて、大変美しくさえ感じるのだが、魚雷と共に深海で生活する任務は想像を絶する。船首用の魚雷発射管は4つ、艦尾魚雷発射管は1つである。魚雷は最大で14個を搭載するというから、まさに攻撃的潜水艦、破壊工作の為に生まれたのがU-Boatの素性そのものである。

こうして考えると、腕時計のU-Boatブランドの、あの超特大デカ厚加減も成程と納得できるのである・・・。






















(↓)下写真:

無線室はガラスドアで仕切られた個室となっている。
浸水時の為であろうか、ところどころにこうした丸い鉄板製のドアが仕切りの役目をしている。


























(隣接するドイツ海軍記念博物館は最高の展望台である〜)


U-Boatが展示されている海岸と道路を挟んで反対側にドイツ海軍記念博物館がある。展示物は左程ではないのだが、高さ85mの屋上が展望台となっており、ココから眺めるラボー海岸や内陸一帯の景色は抜群(↓下写真)。

幸い、訪問当日は快晴の天気であり、週末も重なったことから海上には多くのヨットがのんびりと漂っている。海岸では家族連れも多く見られる。これも全てが平和なご時世の賜物。
平時にあってこそ、こうした潜水艦やら記念碑を見学する余裕も生まれるのだ。世界各地では地域紛争屋小競り合いも絶えないのではあるが、こうして展望台から眺めていると、過去の厳しい歴史を一瞬でも忘れるような、いや、忘れたくなるような感慨が湧いてくるのだ。
(2011/10/17 394300)




(↓) ラボーLaboe海岸の景色。右下には、U-Boat/U995姿も見える。










































(↓)思わず、日本語の記念碑を発見。
   当時の日本、ドイツを巡る国際関係を再認識させてくれる記念碑でもある。







































(↓) Laboe海岸は云わば、辺鄙な田舎町でもある。
   
 しかし、時間さえ許せば、是非とも訪問する価値がある。
    特に腕時計のU-Boatの真髄を理解するヒントを得るために、
    そして、U-Boat/U995は『時計オヤジ』の生涯忘れ得ない経験となることだろう・・・。









































2011年8-9月、ドイツ・北欧・バルト海旅行関連ページ:
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