OFFICINA DEL TEMPO  オフィチーナ・デル・テンポ

"MARRAKECH" Big-Date Ref.OT1006/03SSCS Cal.F.E.72310





1999年創業の『イタリアン・ファッション・ブランド』。
既にブランドとしてのピークはとっくに過ぎている、と言うよりは現在ではブランドの存続自体も不明。
そんな時計をこの程、新品で購入することになる。
決め手は『再会』と独特な『黄色いフェイス』にあるのだ。(2011/8/24)




(Officina del Tempo、その流行のピークは2003〜2004年頃〜)


当時、一部の世間で可也注目を集めたブランド。
特にコイツはその中でも興味を惹かれた1本。その8年後、偶然にも前回見た場所と同じ異国の地で遭遇することになるとは思いもよらなかった・・・。
今見ても新鮮、今見ても独創的なデザインである。
加えて好みの『山吹色系の濃い黄色』だ。この色はまさに旧型LAMYの黄色萬年筆と同系列の色彩。そのずんぐりむっくりした『肥満体型』も、黄色のシリコン製ラバーベルトも、全てのデザインが調和されている。

ここまで個人的には高い評価をしているのだから、購入しない訳には行かない。
嬉しいことに、”60%OFF”との表示が。店側としては早くこのブランドを叩き売ってオサラバしたい意図がミエミエ・・・。
最早、購入することに何の躊躇いも生じさせない・・・。例えは悪いが、昔の恋人に久々に出会った感じ。再び恋に落ちて、目出度くゴールイン、というハッピーエンドの結末が今回のSTORY。

と言う訳で、今では誰も興味も示さないであろう、このイタリアン・ブランドについての論評を今回述べることにする。
























(『イタリアン・ブランド』は特に浮沈が激しいのか〜)


筆者は時計をファッションとして捉えてはいない。
しかし、数々のイタリアン・ブランドの時計を見る限り、どうしてもファッション・ギア、云わば『流行の小物』の地位に留まっているように見えるのが残念。勿論、時々のブームはメジャーなスイス系の老舗ブランドにも散見されるのだが、イタリアンデザインの時計ブランド達には一番重要な永続性が見られない。それが確認出来るのはせいぜい、PANERAIU-BOAT、そしてGRIMOLDI(↓下写真)くらいだろうか。

90年代後半から始まった『時計バブル期』。この時期にメジャーに上り詰めた代表格がフランクミュラーであり、パネライである。この時代を切り開いた強烈な個性にあやかって、イタリア国旗を掲げたのがGRIMOLDI。そして、それに続けと二匹目のドジョウを狙ったのがLOCKMAN、であり、レアンドリ、そしてこのOfficina del Tempo(以下、ODT)だろう。近年ではHEB Milanoもこの部類に入る。特にHEB Milanoなんかは、老舗ヘブトマスとイタリアファッション系企業とのJV作品らしいが、どうして名家ヘブトマスが斯かる※クォーツ製トイウォッチ時計を出さねばならないのか理解に苦しむ。第二のSwatchでも狙ったのだろうか。そうであればHEB Milanoのデザインは余りにも二番煎じで安易過ぎる。(※HEB Milanoには機械式搭載機種もある。



←左はGRIMOLDI
の定番・オーバルケースの自動巻き3針モデル。




⇒右写真は
Heb Milano、LONGINESとの3ショット・・・










←左はLEANDRI。

⇒右写真はLOCKMAN。
一時期、銀座のど真ん中にLOCKMAN専門店もあったが、今でもあるのであろうか?













(この時計に『哲学』はあるのか〜)


哲学を持たない時計、永続性の無い時計は必ず廃れる。
流行狙いの一発屋、で割り切るのであれば別だが、そう考えると殆どのイタリアンブランドは『一発屋』に分類されてしまうのが残念ながら事実だろう。

では、このODTの哲学とは何か。
結果的にはこのODTも『一発屋』のブランドで終わってしまうのだが、そのデザインは極めて独創性に富む。
『時計オヤジ』的に例えれば、ODTはフランク+旧ダービーシャルデンブランを足して2で割り、そこにGRIMOLDIを流し込んだ感じ。このMarrakechのネーミングからしてフランクのカサブランカに対抗しているようで真っ向勝負の気概を感じるではないか。所有するフランクのLimited2000とも対抗意識が感じられる。大御所に対して一矢報いようとする意気込み、とまで言えば少々大袈裟だが、『窮鼠猫を噛む』的に開き直った自由奔放さがある。ケース形状は旧ダービーの”AERODYN GRANDE DATE”を更にボリュームアップしてデフォルメした感じ。
しかし、文字盤のデザインには例を見ない独創性が溢れているのだ・・・。


(↓)下写真: MARRAKECHの白文字盤との比較。
   左側の白文字盤と比較しても明らかなように、黄色文字盤の方が圧倒的に個性を主張する。
   特にブルーの数字は書体と合わせて稀に見る配色の妙をみせる。ここまでの個性を放つ文字盤も珍しい。

























(⇒右写真: 個性と独創性溢れるフェイスの存在感は抜群〜)


@その1:この配色には脱帽。
ショッキング・イエローの文字盤に、微妙な明るいブルー、そしてリーフ針には白い夜光を盛るという、この色彩センス。雲上ブランドでは絶対に真似出来ない(して欲しくもないが・・・)この大胆な色彩感覚は『イタリアン・デザイン』の真骨頂と言っても過言で無い。
文字盤も良く見れば細かいギョシェ彫りが見える。光の細かい反射加減も決してギラつくことなく、色彩全体と上手くバランスして映える。

Aその2:書体のセンスが良い。
3と9の数字が無いがそれ以外を上下に集めてデフォルメ感を表現。
ショッキング・ブルーの色を極細の黒で縁取りするデザインが上手い。
横に長い楕円のレイル・ウェイINDEXと、それに相似形の小さな秒針用小ダイアルはバランス上の安定感を醸し出す。そして、その秒針ダイアルも良く見ると可也個性的な書体を用いている。デザインに手抜きが全く感じられず、詰めが上手い。唯一の欠点はBig-Date書体が細すぎる点。ゴシックは百歩譲って認めるが、もう少々太字の方が非凡な文字盤には似合うだろう。せめてもう0.1mmは太くして欲しかった。しかし、それを差し引いてもこの文字盤デザインは良く出来ている。

Bその3:当時流行のBig-Dateを採用。
Big-Dateは放置すれば39日まで進む。月末には文字通りの『手直し』が必要になるがそれ位は全く問題ない。
Big-Dateの2枚の回転ディスクは同サイズの2枚が重ならずに接する方式を採用。手持ちの時計ではこれが初めてである。Big-Dateの詳しい説明はコチラを参照。





(⇒右写真:
 肝心のムーヴメントはTechnotime社製だが凡庸なクォーツ製〜)

だからと言って文句は何も無い。
このクォーツ、ETAでもMIYOTA製ではなく、TECHNOTIME製。1石で電池はRENATA#371を使用。てっきりETA製かと思っていたので、テクノタイム社製と確認して少々驚く。テクノタイムは最近ではセリアと並ぶ自動巻き(Cal.TT738)やら、果ては渦巻き機械(Cal.TT791)まで製造する技術力を持つ。2001年に創業、2004年に香港財閥グループに資本を握られた。リーマンショック後には人員削減や拠点整理を断行し、現在はヌーシャテルとラ・ショード・フォンの2箇所に生産拠点を集約。更にはヒゲゼンマイを自社製造するまでに至っているらしい。

だから、このクォーツの性能がどうだかは全く関係ないし、さして興味も無いのだが、機械を見る限りCaliber#も刻印されておらず、どんな素性の機械なのかは知る術がない。しかし、色々情報収集してみるとどうやらCal.FE72310を使用しているらしい。
写真の通り、小さな機械だが、プラスティック製のスペーサーに確りと固定されている。この種の時計としては可もなく不可も無い、極普通の仕上げである。









(⇒右写真: バックルはダブルでプッシュ式。ベルトは切断式〜)



上の黒いベルトはKINETIC ARCTURAのもの。これと同じ方式で、自分のジャスト・サイズに切断して長さを決める方式だ。
バックルはプッシュ式のダブルバックル
使い勝手の良さは今更言及する必要もなかろう。長さの微調整は左右合わせて3cm程は可能である。好み次第で長さは自由に変更可能、という理解で良い。このラバーはシリコン系なので、しなやかという点でも何等問題は無い。










(⇒右写真:早速、替えベルトを調達する〜)


このオリジナルの黄色シリコン製ベルトも良いが、『時計オヤジ』の癖としてベルトで遊びたくなる。
ベルト幅は実測で25mm。24mmでも26mmでもない。かつて見たことの無い中途半端なサイズだ。当然、市販品では無いので、24/26mmから選ぶことになる。

文字盤の青色INDEXに呼応して、ベルトは青系でも似合うはず。
またシリコン製ではなく、よりシックに黄色革製ベルトも欲しい。それもクロコ型押しのヤツがベスト・・・。

ということで、早速あの『バトハ』へ出かけて仕入れたのが右写真の3本。ほぼ狙い通りの3本となる。
以下、写真左から・・・
1本目: 24mm黄色シリコン製ベルト。云わば、純正のスペア。
2本目: 24mm黄色・革製クロコ型押し。スティッチも黄色同色でドンピシャリ。
3本目: 26mmやや淡いブルーのクロコ型押し。これは実は合皮製なので、防水・汗汗対応としても使えそう。


ODTのブランド自体が実質的には消滅している現在、オリジナルベルトをスペアで入手することはまず不可能。そうであれば、ここは割り切ってこうした社外品のベルト在庫を調達するに限るし、そのベルト選定作業自体も実に楽しいのだ。
黄色とブルー中心で色遊びを楽しむ。何とも愉快な楽しみが『バトハ』には在る。

このMARRAKECHとフランクミュラーのカサブランカ・ケースを持参して、何時の日にかモロッコのマラケシュやカサブランカを旅することを夢想する。この夢は案外、まんざらでもない可能性を秘めているかも知れないし、実は来年当たりに一度実行したいとも考えているのだ・・・。
(2011/8/24) 384900




2011年5月、イタリア再訪関連ページ:
⇒『GRIMOLDIの長男、ロベルトと再会する』はこちら
⇒『2011年5月、ミラノ再訪記』はこちら
⇒『U-BOAT直営Boutique訪問記@フィレンツェ』はこちら
⇒『ダ・ヴィンチ科学技術博物館訪問記@ミラノ』はこちら
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⇒『聖地巡礼3部作・フィレンツェ1号店Boutique
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⇒『聖地巡礼3部作・イタリア海軍技術博物館訪問記』はこちら



『ちょい枯れオヤジ』の過去の関連ページ:
『ちょい枯れオヤジのミラノ徘徊』はこちら。
元祖、2005年1月の『ドゥオモ店のGRIMOLDI訪問記』はこちら。
『再訪、ミラノの名店GRIMOLDIでBUGATTI TYPE370を楽しむ』はこちら。
『生誕地フィレンツェにPANERAIブティック1号店を訪ねる』はこちら。
『イタリア時計巡礼〜フランクミュラーを探す旅』はこちら。
フィレンツェの『Ferragamo博物館探訪記』はこちら。
フィレンツェのアウトレットで買う『Tod's Calfskin Loafer』はこちら。
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