随筆シリーズ(96)

『2011年5月、U-BOAT直営Boutique訪問記@フィレンツェ』





2011年5月、まさかフィンレツェでU−BOATに出会うとは予想外。
しかし、考えてみればU-BOATは歴としたイタリアン・ブランド。
PANERAIに次ぐ超スパルタンなデカ厚時計の先駆者とも言えるだろう。
そんなU-BOAT直営店を歴史あるフィレンツェの街並みで見つけたとは偶然ながら幸運に感謝である。
Boutiqueの窓下側の木製部分にはフィレンツェの市章を模った金属金具が光る・・・





(2011年5月、初夏のフィレンツェは朝晩肌寒い〜)



トスカーナ州の花の都、フィレンツェの5月。朝晩は結構肌寒いくらいで、夜は上着が必要なほど。この時期、毎日、気温は異なる不安定な気候だが、それでも初夏のフィレンツェは快適だ。5月も日を追うごとに温暖で夏らしい開放感に溢れる時間が楽しめる。

市内中央にシニョーリア広場があるが、その直ぐそばに右写真のような露天市場がある。イノシシの銅像がある小さな広場には、毎日朝9時から6時まで、約30件ほどの露天が開く。ここでは鞄、ベルト等の小物革製品や衣料品が所狭しと並ぶ。フィレンツェらしい革細工のローカルな味を楽しむには持ってこいの観光名所でもある。

そして道路を挟んでこの露天市場の反対側コーナーに偶然、U-BOATの直営Boutiqueを発見。早速、中を覗いて見ることにした。







デカ厚時計の『権化』、U-BOATの歴史とは〜)

2000年に過去の軍用時計デザインをモチーフに創業されたこのブランドである。とにかく全てが巨大時計のブランドだ。
公式カタログによれば、このU-BOATの歴史は1942年の第二次大戦中にまで遡る。当時、精密機械技師であったIlvo Fontanaがイタリア海軍よりPilot(船員)用の特別時計開発の命を受けた。その後、製品完成に至るが、結局このProjectは日の目を見ずに終了。そして月日は流れ2000年、Ilvo Fontanaの孫にあたるItalo Fontanaがこの祖父の作った設計図を発見、そのアイデアを基に現代風の味付けを加えて新生U-BOATブランドが誕生した。その味付けの要素とは、『@強烈な個性、A巨大サイズ、そしてBあらゆる光源・天候下においても完璧な視認性を誇る』、ことである・・・。

と、まぁ、何だか良く出来すぎたストーリー展開であり、事実と脚色の境界線は不明。設計図云々についてはゼニスのエルプリメロの逸話をも連想させる。兎も角、この歴史説明を受け入れる前提で、なるほど、この素性はまさにPANERAIと重なるものがあるではないか。もしかしたら、歴史の裏では第二次大戦中にPaneraiとIlvo Fontanaの間ではイタリア海軍を通じたり、または独自にでも何らかの交流、繋がりがあったのではなかろうか、とも勘ぐってみたくなる。若しくは完全なる競合相手で、全くそのような余地はなかったのだろうか・・・。

2000年の新生U-BOAT誕生時点では、これまた新生PANERAIも既に市場で大反響を巻き起こしていたことから、PANERAIの存在がU-BOAT開発上で大きな刺激、インスピレーションになったことは疑いない、と『時計オヤジ』は考えている。



(U-BOATの巨大さに驚く〜)

『デカ厚時計』の走りとして以前、随筆『デカ厚ブームの嘘、パネライの真実』でも言及したことがあるが、最小サイズが45mm径、中心は50mmから53mm、55mm径まで揃える。竜頭を入れればケース径60mmにも達しようというオバケ時計、オモチャ時計であるのだが、今回じっくりと手に触れて、その感触含めて従来の認識を新たにせざるを得ない結果となる。

そして今回の直営Boutiqueだが、数年までフィレンツェのU-BOAT取扱店はヴェッキオ橋にある某宝飾時計店であったのだ。その商権を引き継いだ結果、ようやく開店に辿り着いたのがこの直営Boutiqueである。

(⇒右写真) 
まずは時計ケースから。
第二次大戦中に実在したドイツ潜水艦U-BOATをモチーフにしたようなこの時計ケースもヒュージュhuge!
アルミ削り出しのような迫力あるケース中央には、船窓を模った凸レンズ窓が配置される。何とも個性溢れるデザインは見た瞬間に、こちらの心が鷲掴みされるようだ。








(←左写真: Ref.6172、限定99本モデル〜)

この時計は53mm径、18.4mm厚、300m防水でムーヴはETAベース。
針は何とジャーマン・シルバー製と言うから凝っている。その独特な竜頭形状、時計収納ケースも潜水艦のようでこれまた馬鹿デカイ!

回転ベゼルには、一見不釣合いのように、SS製の小さなDOT式ミニッツマーカーが5分間隔で配置されている。パネライのサブマーシブルにも似た回転ベゼルデザインだ。
しかし、ケース、ケースバック、ベゼルとも全てがチタン製(=Grade5)なので総重量は見た目以上に軽い。軽いのだが、ここまで厚みと表面積が大きいと、決して装着感が快適という訳には行くまい。
質感はチタン製の特徴を良く表現してあり、マット調の鈍い輝きを放つチタンが印象的。





(純正革製ストラップには数々のバリーションがあり選ぶ楽しみも味わえる〜)

その美錠も特大製。銀色部分はチタン製、金色部分がSS製である。(↓下写真)
美錠の厚みも写真の通り、可也のボリュームだ。そして革製ストラップも厚みはたっぷり。
U-BOATでは純正革ベルトの種類も豊富に揃えている。サイズは26/20mm、23/22mmの2種類が基本。極厚アリゲーター製に丸穴でパンチングをあしらったドライビング用ベルトのようなデザインもあり、豊富で魅力的なデザインを揃えるのはパネライ同様にベルトで遊べる時計、としても面白そうである。


























(⇒右写真モデル: 200m防水クロノ〜)

Ref.6201、300本限定モデル。
こちらも53mm径で、Grade2チタンとセラミック製ベゼルの複合素材で勝負するクロノ。それでも180gもあるのでデカ厚の本領発揮、というところだ。ケース自体は真空IPコーティング処理がなされる。
U-BOATはデカ厚の重さを、こうしたチタンやセラミックを用いて極小化する努力をしているところが並みの”お遊び&TOYブランド”とは一線を画す。

200m防水で、クロノ小ダイアルがカーボン調の長方形というのがユニーク。

実は今まで、このブランド時計を遠目でしか見ていなかった。
あまりのデカさに馬鹿ばかしさしか感じなかったのだが、今回、実物を手にして見て、その質感の高さには正直びっくりした。U-BOATはこの3〜4年で確実に全ての仕上げのレベルを飛躍的に向上させている。
単なるTOY-WATCHから脱却して、『本格的なミリタリーウォッチとしての素性を最新技術でパッケージした高品位なデザインで勝負している時計』、というのが現在の『時計オヤジ』の評価である。


因みにU-BOAT直営Boutiqueがあるのは:
バンコク、ベイルート、フィレンツェ、香港、ジャカルタ、キエフ、マニラ、モスクワ、シンガポール・・・

この地名だけを見ても、クセモノとしての存在感で溢れるではないか。
フィレンツェで見つけたイタリアン・デザインの時計は、まだまだその活力と将来性を十分に感じさせる期待を実感した。
機会があれば絶対に、実物に手を触れてみるべきU-BOATである。



(U-BOATの姉妹ブランド”WELDER”〜)


ROLEXとTUDORのような関係で、U-BOATとWELDERがある。
Italo Fontanaが手掛けるこのブランド、名前の由来は『溶接工=WELDER』であるようにこちらも可也のスパルタン加減。しかし、価格はU-BOATの1/5〜1/10程度なので、『デカ厚入門版』には持って来いかも知れない。が、とにかく四角のデカ厚は凄くゴツイぞ!

↓下写真モデルは昨年暮れにドバイで撮影したものだ。
46mm径のK25 Ref.4201。Miyota製自動巻きOS10搭載で5ATM。特大竜頭ガードが左側に装着されるという、まあ、自動巻きキャリバーを180度回転装着させたものだが、雰囲気は中々宜しい。遊び時計、スパルタン・デカ厚時計としては、十分にその雰囲気を味わえるモデルである。巷には既に、WELDERのパチ物も多い。
WELDER人気の度合いがここからも見て読める。
(2011/7/02) 375700




















2011年9月、ドイツ海軍潜水艦であるU-BOOTのレポート:
⇒『U995/U-Boat搭乗記@ドイツLaboe』はこちら


2011年5月、イタリア再訪関連ページ:
⇒『GRIMOLDIの長男、ロベルトと再会する』はこちら
⇒『2011年5月、ミラノ再訪記』はこちら
⇒『U-BOAT直営Boutique訪問記@フィレンツェ』はこちら
⇒『ダ・ヴィンチ科学技術博物館訪問記@ミラノ』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・パネライ・ミラノ直営Boutique訪問記』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・フィレンツェ1号店Boutique再訪記』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・イタリア海軍技術博物館訪問記』はこちら


『ちょい枯れオヤジ』の過去の関連ページ:

『ちょい枯れオヤジのミラノ徘徊』はこちら。
元祖、2005年1月の『ドゥオモ店のGRIMOLDI訪問記』はこちら。
『再訪、ミラノの名店GRIMOLDIでBUGATTI TYPE370を楽しむ』はこちら。
『生誕地フィレンツェにPANERAIブティック1号店を訪ねる』はこちら。
『イタリア時計巡礼〜フランクミュラーを探す旅』はこちら。
フィレンツェの『Ferragamo博物館探訪記』はこちら。
フィレンツェのアウトレットで買う『Tod's Calfskin Loafer』はこちら。
『イタリアで英国靴を探す旅〜Church購入記』はこちら。




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