SEIKO セイコー 

ARCTURA KINETIC DIVER
CAL.5M42-0E60 (Model REF.SBVW013)



10年経った今でも飽きの来ない傑作デザインだと思っている。
『時計オヤジ』の日常における出番トップはコイツである。
デザインバランス、精度、満足度の3拍子及第点のSEIKOアークチュラダイバーは
『実用遊び時計』としては完成の域にあるといえるだろう。
KINETIC初期のアークチュラシリーズの中でも文字盤デザインは傑出した出来栄えであるのだ。

(2004/3/26 HP序幕記念)



記念すべきこのWEBのトップバッターはSEIKOアークチュラ・キネティック・ダイバーである。

日本人として大多数の人が最初に買う(買ってもらう)時計は「国産」であろう。となると選択肢はSEIKOかCITIZENの2大国産ブランドの一騎打ち、というケースが多いのではないか。筆者も今日に至る時計遍歴の最初の時計はやはりSEIKO-5自動巻きクロノグラフであった。ちょうど中学2年になった夏休み、那須へ2泊3日で行く林間学校を前に両親から買ってもらった記憶がある。昨日のように懐かしき日々としてよみがえる。それから早や数十年も経過し、あの頃の皆は今頃どうしているのだろう。。。などと感慨に耽っている場合ではない。



(⇒右写真: タイ北部、チェンマイ市内のホテルThe Imperial Mae Ping Hotelのプールサイドにて撮影。2004年2月某日のこと・・・。)









(閑話休題。ARCTURAデザインについて〜)

このARCTURAは日本国内では1997〜2000年に製造販売されている。国内定価は10万円也。
筆者は2001年8月にドバイ市内の最大のショッピングセンター、CITI-CENTREで購入。文字盤にある通り、ARCTURAの最大のデザインの売りは文字盤右半分、すなわち 12時から6時位置までに描かれたレインボーカラーのARC(弧)である。因みに、ARCTURAとはARC(弧)とACTURUS(牛飼い座の1等星)との造語らしい。97年当時、最初に感じた印象は、「何とも子供じみたデザイン」であった。実際、このARCのレインボーカラーを良く見ると印刷のDOT模様が判別できるので雑な仕上がりの印象は否めない。また、スイス人の時計デザイナー、ヨルグ・イゼック氏Jorg Hysekによるものであるが時計全体の雰囲気も良く言えば近未来的、悪く言えば「大味」な作りであり筆者の嗜好からはずれるものであった。そんな訳で長らく、ARCTURAシリーズには無縁であったが、中東のドバイで偶然手にしたこのダイバーモデルのデザインには魅かれるものがあった。因みに、中東の湾岸諸国においてはこのARCTURAシリーズは現在でも多くのSEIKOディーラーにて販売されている(在庫がある限りであろう)。


当時(2001年)、既にKINETICの進化形たる傑作品、AUTO-RELAYも発売されていたが、ベルトからラグ、ケースに至る「サイ」(犀)の鎧をイメージしたといわれるデザインがどうにも好きになれず悶々としてた折、このARCTURA・ダイバーモデルに巡り合った。
時計とは本当に不思議なもの。今まで何の興味を持たなかったモデルでも、ある時、あることをきっかけに急に興味と好奇心が沸き始め、そしてそれがいつの間にか一番恐ろしい「物欲」へと深化するのである。まるで恋愛感情に瓜二つ、とでも言えようか。


個人的には、発売当初、AGS(AUTOMATIC GENERATING SYSTEM=腕力発電所)と言われたKINETIC機能には前々より興味を持っていた。しかし、KINETIC搭載モデルのデザインが好きになれずにいたのだが、ようやくgood designのARCTURA ダイバーモデルにめぐり会えたのだ。CAL.5M42は最大14日パワーリザーブであり、日常使いの上では十二分の長さである。週末使わないで月曜朝の出勤時に止まっている機械式よりは少なくも「長寿命」であるが、まさかこのDIVERをはめて仕事には行けぬので、いずれにせよCAL.5M42のロングリザーブ機能については問題ない(キャパシタ交換記は後述)。

何よりも魅かれたのは、全体の作りの良さである。通常モデルとこのダイバーモデルでは質感はまるで異なる。同じARCTURAシリーズとは思えぬほど、その仕上げに差がある。ウレタンベルトとコンビネーションを組む表面のSS部材は、その独特のデザイン・質感とともに装着感も文句なし。最近ではSUUNTOにも使われているラバー/SS組み合わせデザインは、見た目以上に快適である。両開き式クラスプの精密な出来ばえといい、デカ厚ケース全盛の今となってはやや小ぶりな仕上げがSEIKOにしてはひときわ秀逸と評価できる。これもヨルグ・イゼック氏による影響であろうか。ベゼルはPOLISH仕上げ、ケースはヘアライン仕上げ、ケース下側半分は艶消し
黒のSSとなる。

左写真(←)は日経新聞1993年3月某日の全面広告である。
今見ても新鮮な驚きと、技術の進歩と可能性に心トキメク広告だ。
スクラップに保管していた。当時はまだAGSと名乗り、パワーリザーブも最大3日間が中心であった。それから10年超が経過し、フル充電で4年間動き続けるAUTO-RELAY、そして手巻き式ハイブリッド時計であるSPRING-DRIVEが登場するなど、今後のKINETICの進化には大いに期待している。




(裏スケルトンの是非について〜)


裏側は一部スケルトンでローターの回転を垣間見ることが出来る。人によっては「裏窓」とも呼ぶ小さな裏スケルトンだが、これも最近ではアイクポッド等でも見られるデザインでもある。裏スケ好みの筆者としては、「窓」でも何でも許すのである。山田五郎氏が主張する「裏スケの氾濫しすぎ。汚いヘアヌードは見たくない!」(BRIO2003年7月号41頁)も真実であるが、怖いもの見たさから、ちょっとくらい汚くてもヘアヌード(裏スケ)に魅かれてしまうのもこれまた真実、なのである。

右写真(⇒): 黒色にコーティングされた裏蓋は部分スケルトン仕様となる。
ローターの回転運動を増幅させる歯車、コイルの配置等を垣間見ることが出来る。

肝心の文字盤は、白DOTのINDEXに、お得意のルミブライトが塗布された独特の形状の時針がちょっとお茶目ながら独創性を感じる。トレードマークの”ARC”も黒文字盤に引き立てられてその虹色がシックでさえある。他のARCTURAシリーズはどうしても子供っぽいデサイン、チープさを感じてしまうのだが、このダイバーモデルは各パーツの仕上げ、総合的なデザインから見てもARCTURAの中では抜きん出た出来栄えと存在感を示している。

他にも大枚をはたいて購入したスイス製腕時計を差し置いて、このKINETICは日常ユースNO.1として非常に出番が多い。KINETICとは本当に便利である。使わなければ止まる、というのも機械式に似ていじらしい。このARCTURA(cal.5M42)、AUTO-RELAY(cal.5J22)、そして2003年バーゼルデビューしたARCTURAクロノグラフ(cal.7L22)をKINETIC三兄弟としてSEIKOの傑作品に数えたいが、そのレポートは後日披露したい。






(キャパシタ交換記〜)


さて、現在サウジアラビアで生活している筆者であるが、2004年3月に当地のSEIKO正規輸入元を訪問した際、左にあるようなポスターを目にした。SR25(サウジリアル25=約750円)で、古いキャパシタ(コンデンサ)をリチウムイオン式2次電池に交換する、というものだ。ポスターにはKINETICの第一世代キャリバー搭載モデルに対して、という表現であり、ネットで調べてもCAL.5M22、5M23や4M21のパワーリザーブが3日間程度の古いキャパシタしか交換できないとあったが、店頭で確認したところ筆者所有のCAL.5M42も交換可能とのことにて思い切って交換してみた。要は、キャパシタが使用されているタイプであれば、原則リチウムイオン電池に交換可能、ということらしい。翌日には交換作業は完了した。








(今回交換した部品〜)

今回の交換部品は、写真右にある通り。ガスケット(=防水用のゴムリング)、古いキャパシタ(=SII SL920)、絶縁体、押さえ金具、の4点。
正規輸入元による純正リペアとは言え、ここはサウジアラビアである。日本のような細かい気遣い、技術力、商品への配慮は期待出来るか甚だ不安である。果たして交換作業に出すか否かで迷った挙句、修理費用の安さに負けて交換したのだ。不安であったキャパシタ交換後も電池残量を示すINDICATORはきっちり作動してくれた。パワーリザーブも当然乍ら120日程度までには延長されたはず(⇒現在、実測中である)。

それにしても斯様な部品交換を僅か750円で引き受けてくれるとは海外におけるSEIKOの良心を感じる反面、日本国内では到底有り得ぬ料金であり複雑な気持ちになってしまう。ともあれ、日常ユースとして、旅行用として、水遊び用として、このARCTURAは遠慮なくガンガン使える気軽で頼りになる腕時計である。(2004/3/26)


追記1) 
最近、どうも充電機能が低下したようだ。フル充電しても一週間程度で残量を示すインジケーターは10秒程度に下がってしまう。2004年にキャパシタ交換してまだ4年程度しか経過していないのだが、この際、オーバーホールすることにした。東京・二重橋前にあるセイコーサービスセンターで修理を依頼して待つこと2週間、KINETIC充電部分も再度、新品交換。ムーブメント部品は脱磁・洗浄をお願いし、ウレタンベルトもこの際、新品に交換する(=1,680円)。御代は締めて20,160円。充電機能もすっかりと蘇ったARCTURAは120日以上のパワーリザーブと共に『時計オヤジ』の腕元に帰って来た。KINETICと言えどもオーバーホールの重要さを体感した『時計オヤジ』である。(2008/10/05)


追記2)
⇒右写真:
このArctura Diver'sには白銀系の文字盤も存在する。
記録の為にその写真を掲載することにする。
このKINETICは充電の為には常用することが必要であるが、
それがままならぬ場合の『秘密兵器』をこの度入手した。
Kinetic Energy Supplierについては追って紹介することとしたい。(2012/12/31 464800)







追記3)
2008年のOVH以来、早5年が経過しようとしている。前回交換したウレタンベルトであるが、今回クラックが発生した(↓下写真)。過去5年間において海、プール、そして通年において酷使した結果であろう。2回目の交換となる今回もセイコーサービスセンターで修理完了。ベルト代金は2,100円に値上がりしてしまったが、やはりウレタン系ベルトは仮にクラックが無くとも5年毎に交換するのが安心である。いきなりの割れや切れ、そして最悪の時計落下事故を防ぐ為にも、『転ばぬ先の杖』、が大切である。
因みにベルトコードは: 4MG7AB
(2013/4/30)

























(加筆・修正)2007/5/7写真変更、2008/4/13、2012/12/31、2013/4/30 加筆修正

(SEIKO関連WEBはこちら↓)

⇒ SEIKO アークチュラARCTURA 初代モデル(Cal.5M42 ダイバー)はこちら
⇒ SEIKO スプリングドライブSPRING DRIVE 初代モデル(Cal.7R68)はこちら
⇒ SEIKO セイコーファイブ(海外モデル)(Cal.7S26)はこちら
⇒ 『SEIKO KINETIC 3兄弟』はこちら
⇒ 『SEIKO Direct Drive Cal.5D44』はこちら
⇒ 『現代の名工・塩原氏が
スプリングドライブを語る』はこちら
⇒ 『Grand Seiko 130周年記念限定モデルSBGW033とGS初号機との比較の考察』はこちら
⇒ 『KINETIC ENERGY SUPPLIER』の考察はこちら。(2013/6/08 488100)


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