随筆シリーズ(97)

『レオナルド・ダ・ヴィンチ科学技術博物館訪問記@ミラノ』





1953年、ダ・ヴィンチ生誕500周年記念に建てられた博物館である。
ミラノ出発前の時間潰しに軽い気持ちで約10年ぶりに訪問したのだが、驚く結果となる。
まさかイタリアで本格的な時計博物(館)コーナーがあるとは夢にも思わなかった。
『時計オヤジ』の浅はかな認識を根底から覆す結果となったのだが、
時計通であれば、Paneristiであれば尚更、ミラノではここを訪問することは必須、と言って良かろう・・・。

(2011/7/11 377300)



(欧州で気になる時計博物館とは〜)

この10年間で『時計オヤジ』も幾つかの時計博物館を見学してきた。
それぞれが個性ある魅力的な博物館であるが、BEST3を挙げると以下となる:

1位: PATEK博物館(@ジュネーヴ)
2位: ラ・ショード・フォン時計国際博物館(@ラ・ショード・フォン)
3位: 大英博物館(@ロンドン)


今回、ミラノからGenovaへの移動直前の日曜午前、ちょいと時間が空いたので軽い気持ちでDa Vinci博物館を訪問した。この博物館はまさしく、レオナルドという人物の灰色の脳細胞が如何に天才的であったのかを知る(触れる)ことが出来る素晴らしい場所である。10年前の記憶ではちょっと古びた陰気な展示手法が気になっていたのだが、久々に今回訪問してそのリフレッシュされた館内の明るい雰囲気に非常に好感が持てた。ある場所では子供達を対象にした参加型化学実験室もあったりして、中々良く考えられた構成になっている。

そんな展示コーナーをフムフム、と感心しつつ見学する。
⇒右写真: お目当てでもあったレオナルド考案の元祖ヘリコプターの模型。全日空ANAが自社の垂直尾翼マークに採用していることでも有名な模型でもある。






何と2階には『時計専門展示コーナー』があるではないか〜)

とにかく広大な博物館。ざっとみるだけでも2〜3時間はかかるかも知れない。
そして今回、特に嬉しい発見が2階に新設(多分)された時計展示コーナーだ。
ここでは、古代・中世の時計の生い立ちから始まって、時計と権力、中世の時計工房再現、懐中時計の展示コーナー等等、見所は多い。今回は不意を突かれた格好で、じっくり時間をかけて拝観することが出来なかったのが残念。館内にある土産コーナーでも展示してある懐中時計についての案内書も販売されていなかったので、興味ある向きはジックリ展示品を鑑賞する以外には理解する手段はなさそう。しかし、それをするだけの価値は十分にあるだろう。奥行きは異なるが、少々、大英博物館の展示手法にも似た感じである。

⇒右写真: ちょっとだだっ広い感じだが、スペースは十分にある。






↓下写真:こちらは中世の時計工房を再現した部屋。机や工具類は当時の実物を使用している。

展示方法はいたって『大味』。壁の木目の色合いなど、中々良い雰囲気は出ているのだが、全体ががら〜んとしている。






























(⇒右写真: ”Nocturnal Clock”と称された置時計〜)


デザインで惹かれたこの時計。
その名前からみて1670年ドイツ製の天文・星座?時計の一種類と推測。
地球儀を抱えている赤い衣装を羽織った男性はまるで時の神様クロノスのようでデザイン的には面白い。中央のアーチ(弧)状の中の絵が動くようだが、写真では数字のEが見える。これがどのように時を示すのか興味あるのだが、如何せん、説明文が少な過ぎるのが玉にキズである。










(⇒右写真: あのSEIKO KINETIC クロノグラフまで展示されているのには驚く〜)

コチラでは自動巻き機械の変遷をテーマにしているようであるが、何と2003年バーゼル発表モデルのCal.7L22搭載KINETICクロノが展示さている。どうしてこのSEIKOクロノなんだろう。多分、文字盤レイアウトのデザイン優先?、それともこの寄贈者の好み?兎に角、ここで我がSEIKOに遭遇するとは嬉しい誤算。
因みに、有名どころの腕時計では他にもUniversal Geneveや1925年製のLongines、1992年製のOMEGAフライトマスター等も展示されている。











(天文時計やら数々の懐中時計もそこそこ豊富に展示されているが〜)

下写真の様に、大型の天文時計も展示されている。
懐中時計に至ってはラ・ショード・フォン国際時計博物館で見た白黒文字盤のワールドタイムも展示されていたが、兎に角、説明文が余りに稚拙、不十分なのである。出所や年代も全く表記されておらず、ただスイス製とあるだけ。これには流石に閉口してしまう。Da Vinci博物館を名乗るからには、もう少々こうした注意書き・展示品メモの充実には力を注いで欲しいところだ。


























(⇒丁度、Vespaの特別回顧展が開催中〜)

『ミラノ再訪記』でも触れたVespaであるが、どうやらイタリアではVespaブームが最盛期の様子。ここでもポスター&パネルや歴代Vespaを展示して、その歴史を振り返っている。日本で例えればスーパーカブの回顧展、というところだろうか。

それにしてもこのVespa、良くみるとその造形美には近未来性を感じさせるだけでなく、グラマラスナ曲線美といい、色気満載のバイクである。
⇒右写真のVespaシートに注目。何と独立型タンデムシートではないか。ここまで凝った仕様が本当に当時からあったのであれば誠に恐れ入ってしまう『時計オヤジ』であるのだ。












(な、な、何と、あの『特殊潜水艦』と遭遇することに〜)



そうこうしている内にミラノ中央駅での電車出発時刻が近づいてきた。
Vespaなんぞにウツツを抜かしてる場合ではない。
出口を求めて実物機関車の横を走り抜けると、今度は実物の潜水艦まで中庭に展示されているではないか。一体、何と言う広さなのだ。前回見たのはあくまでサワリであったことにようやく納得するのだ。
そうして偶然、バッタリ鉢合わせしたのがこちら(↓)。









(←左写真: イタリア海軍の歴史的産物、”マイアーレ”〜)

1936年製の”MAIALE”(蔑称=豚)こと、人間魚雷である。魚雷と言ってもこれで直接、体当たり爆撃するのではなく、2名の特殊潜水隊員がMAIALEを操縦し、敵艦隊に爆弾を仕掛けて来るというものだ。云わば従来型の魚雷を特殊作戦用のTransporterに改造したもの。特にMAIALEが有名なのは、1941年にエジプトのアレクサンドア湾でこの3隻のMAIALEで5隻の英国軍艦を爆破した有名な逸話である。この特殊潜水工作員が当時、手にした時計がPANERAIであり、このMAIALEは『時計オヤジ』が今回訪問するLa Speziaにて製造・出航したものである。
全長6.85m、高さ1.1mの実物である。

この後に訪問するLa Speziaを前に、早くもここミラノでお目にかかれるとは不思議な縁を感じるのだ。予想外の発見で満載のDa Vinci博物館は時計ファンならずとも見学する価値は十分にある。
そして、今回の旅は何より幸先が良いのである・・・。
(2011/7/11) 377300






2011年5月、イタリア再訪関連ページ:
⇒『GRIMOLDIの長男、ロベルトと再会する』はこちら
⇒『2011年5月、ミラノ再訪記』はこちら
⇒『U-BOAT直営Boutique訪問記@フィレンツェ』はこちら
⇒『ダ・ヴィンチ科学技術博物館訪問記@ミラノ』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・パネライ・ミラノ直営Boutique訪問記』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・フィレンツェ1号店Boutique再訪記』はこちら
⇒『聖地巡礼3部作・イタリア海軍技術博物館訪問記』はこちら


『ちょい枯れオヤジ』の過去の関連ページ:

『ちょい枯れオヤジのミラノ徘徊』はこちら。
元祖、2005年1月の『ドゥオモ店のGRIMOLDI訪問記』はこちら。
『再訪、ミラノの名店GRIMOLDIでBUGATTI TYPE370を楽しむ』はこちら。
『生誕地フィレンツェにPANERAIブティック1号店を訪ねる』はこちら。
『イタリア時計巡礼〜フランクミュラーを探す旅』はこちら。
フィレンツェの『Ferragamo博物館探訪記』はこちら。
フィレンツェのアウトレットで買う『Tod's Calfskin Loafer』はこちら。
『イタリアで英国靴を探す旅〜Church購入記』はこちら。




⇒ (腕時計MENUに戻る)

※掲載の写真・文章等の全てのコンテンツの無断転載・無断複写は厳禁です
※特に金銭絡みの
オークション説明等へのリンク貼りは固くお断りします

TOPに戻る