MUSEO SALVATORE FERRAGAMO   サルヴァトーレ・フェラガモ博物館

『フィレンツェにフェラガモ博物館を訪ねる』
〜”Ideas, models, inventions”〜



(↑上写真) 1289年に建設された中世の建物がフェラガモの本店兼博物館である。
由緒正しい代々の持ち主を経て、1846年にはフィレンツェ市に購入された。
1938年、サルヴァトーレ・フェラガモが40歳の時に購入し、現在に至る。
城壁のような屋上のデザインといい、建物内部の数々のフレスコ画や絵画がその歴史を誇る。
1289年といえば日本ではまだ鎌倉時代。さしずめ国宝級の建造物とでも言えようか。
そんな建物が現在まだ現役、ということに驚愕する『靴オヤジ』である。




(2005年1月、フィレンツェを訪問する〜)

随筆(29)『パネライ・ブティック訪問』
にても紹介したが、2005年1月下旬にフィレンツェを訪問した。
目的はパネライ博物館とこのフェラガモ博物館の訪問だ。
フェラガモFerragamoと言えば、女性用のエレガントな靴が有名である。しかし、男性用の靴も1965年よりコレクションに加わり、今やそのステータスと品質は折り紙付き。そのフェラガモ博物館が奇しくもパネライ博物館と同じフィレンツェに在るとは、これまた芸術の都の成せる業ではあるまいか。靴と時計、この2大ブランド博物館が君臨するフィレンツェは、筆者の琴線を大きく刺激する街である。



写真右⇒: サルヴァトーレ・フェレガモ(1898-1960)。
2階の博物館入口に掲げられたフェラガモの大型ポスターである。まるで、スペインの画家、ダリSalvador Dali(1904-1989)の風貌を連想させる靴のマジシャン、偉大なる靴の芸術家である。
11歳から靴工房で働き始める。16歳にしてアメリカに渡り、ハリウッドにオーダー専門店、今で言うところのビスポークを開店し、ここから一挙に知名度とステイタスを獲得して行くのである。同時に、南カリフォルニア大学で解剖学を修めたことを知る人は少ない。
いわば、ファッションとエルゴノミクスを融合させ、靴製造技術に人間工学を加味した先駆者でもあるのだ。










(←左写真: 今見ても新鮮&斬新なデザインの数々)
1927年にイタリアに戻るまでにはサルヴァトーレの名声はハリウッドスターにも響き渡り、『セレブ御用達の靴職人』として確固たる地位を築き上げた。
Ferragamoの靴の最大の特徴は、美しいデザイン、素晴らしい履き心地、靴製法の技術、という3大要素に裏打ちされたことである。
左写真にある背景のポスターは、サルヴァトーレと同時代の未来派画家ルチョ・ペンナによるもの。同氏はFerragamoの靴ラベル等のデザインも行った。いわば、サルヴァトーレと同時代の芸術家が融合した芸術創造が、Ferragamoの靴を媒体として花開いたのである。






(博物館内は展示物の宝庫。フェラガモ傑作品、ここにあり〜)


エレベーターで2階へ行く。
入場無料。サルヴァトーレの大型ポスターが出迎えてくれる(上写真↑)。
ポスターにはキャッチフレーズとも取れる”Idears、Models、Inventions”の言葉が。まさに、サルヴァトーレの哲学そのものである。

⇒右写真は、靴箱と思われる設計図である。イラスト入りのカラー立体図面が何ともユニーク。この他にも、サンダルやシューズの設計図面や実物の展示もあり、サルヴァトーレの歴史的遺産を目の前で拝むことが出来る。靴学校の学生のみならず、業界人、一般人にも迫力ある展示品の数々には感動しきりである。








(←左写真: 展示品は靴ばかりではない。
当時の工具、道具や鞄や革素材そのものまで、幅広い逸品で溢れている)


1万足の中から厳選された展示品は時系列で、透明なガラスケースに入れられて並んでいる。イラスト式の設計図面も数多く陳列され、そして世界のセレブとの写真も合わせて展示されている。まさに、超一流の社交界においてもまれて育ったFeragamoの靴には、いやが上にも『華』がある。靴工房だけで育っていないFerragamoの靴。色気の秘密はまさに、アメリカのハリウッドにあると言えよう。





                    *     *     *     *     *


サルヴァトーレが亡くなったのは1960年。
紳士用の靴製造が開始されたのは1965年。当然ながら、博物館には男性用の靴の展示品は無い。
それでも、サルヴァトーレのDNAは見事に紳士靴にも生かされていると感じる。筆者愛用のシングル・バックル式”フィロソッフォFILOSOFO”も、WING-TIPである”MENT2”にも、そうしたフェラガモの『色気と堅気』を感じるところ、大である。


ルネサンスの都フィレンツェには、かくも近代の天才を通じてその芸術文化が脈絡と継承されている。


(参考文献)
Men's Ex 特別編集 『最高級靴読本Vol.2』(世界文化社)



『ちょい枯れオヤジの』関連ページ:

『ちょい枯れオヤジのミラノ徘徊』はこちら。
元祖、『ドオゥモ店のGRIMOLDI訪問記』はこちら。
『再訪、ミラノの名店GRIMOLDIでBUGATTI TYPE370を楽しむ』はこちら。
『生誕地フィレンツェにPANERAIブティック1号店を訪ねる』はこちら。
『イタリア時計巡礼〜フランクミュラーを探す旅』はこちら。
スピーガ通りで発見した『フランクミュラー・WATCHLAND REF.6850SC』はこちら。
フィレンツェの『Ferragamo博物館探訪記』はこちら。
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