時計に関する随筆シリーズ C

『現代、最高の「実用時計」とは?』 


(現代における最高の実用時計とは何であろう〜)

雑誌の特集などで「一生モノの時計選び」とか「人生で最高の1本」等と良く聞くが、時計好きにとっては1本しか選べないというのは拷問に等しい。パニックである。何故なら、靴を選ぶのと同じで、まさかジョン・ロブJohn LobbやグレンソンGrensonを履いてテニスは出来ないし、ナイキを履いて冠婚葬祭にも出席出来ないだろう。それと同じで、人生のあらゆる場面を乗り切れる1本の時計、というのも存在しないのである。

「自分はROLEX1本で大丈夫」という人もいるかも知れない。しかし、海に入る時に革ベルトでは不向きであるのと同様に、正式な集会・PARTYにブレスレットの時計というのも「野暮」である。これだけでも最低2本は必要になる。あくまで1本で貫くという御仁は、単にドレスコードを無視しているに過ぎず、周囲からは冷たいルール違反の視線を浴びているのだ。『マチガイナイ・・・』(長井秀和風に)。


(普段の生活で必要な腕時計とは〜)

では、数々のT.P.Oがある生活において、最低何本の時計が必要であろうか。
筆者の回答は、5本、である。
@日常生活、仕事上で酷使する時計。
A仕事上、フォーマルな舞台で使う黒革ベルト付きのドレスアップ用の時計。
B上記と同じだが、茶色革ベルトの時計(靴の色に合わせる為)。
C水仕事用、遊び、スポーツ用の時計(例:ROLEXサブマリーナ)。
Dなくしても良い、チープでスペア的な意味もある時計(例:SWATCH)。

これらの各カテゴリーから最良の各1本を厳選すれば、時計蒐集もMAX5本で終えることが出来る。「時計蒐集家」は別として、多くとも5本で打ち止め。これが考える理想、だ。数多く所有する人も、所詮これらのカテゴリーの中で何本も選んでいるだけであり、実際に一番着用の頻度が高いのはせいぜい3〜5本位であるまいか。その3〜5本に相当するのが「実用時計」だと考える。

上述@〜Dのカテゴリーで更に共通項目、エッセンスをまとめると;
「日常の生活、仕事、遊びでも使用できるデザインを持ち、なおかつ防水機能も備えた頑丈、かつゴテゴテしない時計」こそが今回の「実用時計」の定義である。この定義に従ったベスト3を選択したい。


(昨今のデカ厚ブームに物申す。最適な時計の大きさとは〜)

持論であるが、元来時計は人に見せびらかすものではない。また、仕事上でも使うからにはなお更目立ってはならない。鉄則である。となると、流行のデカ厚ケース径で40oを超えるサイズは全て不可、である。手首からはみ出す程の大きさは無論、失格である。ケース径は34〜37mmをベストとしたい。このサイズが伝統的な大きさであるが、昨今の流行を考慮して38〜40mm径までを許すのが最大の譲歩である。
具体的な面積で考えよう。ケース径34mmの面積は907平方ミリ(以下単位省略)。37mmでは1,074平方ミリ。約1,000平方ミリ程度が許容範囲となる。例えば、パネライの44mm径であれば1,519平方ミリとなり約1.5倍の面積となる。ケース面積1,000平方ミリを一つの基準とすると分かり易いであろう。

次にブレス仕様であること。特に、夏場の装着を考えると革ベルトは不向きだ。革製ベルトではまさかプールにも入れまい。

仮に、人目を引いても華美であってはならない。
質実剛健であること。18金イエローゴールドでも良いが、ブレスまでとなると華美過ぎる。それ以上に価格が跳ね上がってしまう。中のムーヴメントを守る役割、そして長年の愛用に耐えるにはケース素材が無垢であることは必須。ケースの研磨を考えると無垢素材以外には有り得ない。SS、又はWGが候補となるが、実用時計に18金ホワイトゴールド(WG)は行き過ぎである。自ずとSS無垢、というのが結論だ。

ムーヴメントは機械式でも高級クォーツでも問わない。極力、メンテナンスフリーが望ましい。しかし、長年の愛着と愛用に耐える品格という点では機械式になるだろう。また、全体のデザイン・バランスも非常に重要な要素である。機械式であれば、その動きを眺めても楽しめる裏スケルトンであれば更によろしい。個人的な好みではカレンダー付きも必須である。仕事上あると重宝する。秒針も当然必要。2針では時計が動いているか堂か瞬時に確認できず不安である。「3針デイト付き」の選択が実用時計の王道であろう。



(「時計オヤジ」認定の「実用時計」3本〜)

こうした基準により、以下の3本を現代最高の実用時計として認定したい。


NO.1 OMEGA SEAMASTER AQUATERRA 35mm コ・アークシャル
    (150m防水、COSC認定、裏スケルトン)

(寸評)
希望する条件を全て充たしている。文字盤もケース、ブレス共に非常にクラシックなデザインながら、中身のムーヴメントはかのジョージ・ダニエルズ博士発明の画期的CO-AXIAL自動巻きCAL.2500が入っている。しかも、裏スケルトン。この機能で、このデザインで、この価格(定価約30万円)。コストパフォーマンスも素晴らしい。CO-AXIALの耐久性についてはまだ未知数だが、OMEGAの意気込み=全製品のCO-AXIAL化を目指す姿勢、を見ると品質は信用し得ると判断する。
ブレスの質感といい、OMEGA独自の延長式クラスプの造りも満足できる。
小ぶりなケース径35oがベスト。更にユーザーの嗜好に配慮してより大きな38mmや41mmも用意してあるのがOMEGAの懐の深さだ。実売価格20万円台を考慮して、文句無く「現代最高の実用時計」である。




NO.2 ROLEX DATEJUST SS/WG (100m防水、COSC認定)

(寸評)
定番中の定番。やはりこの時計ははずせない。長年変わらぬそのデザイン、頑丈な機械式時計は信頼度抜群である。メンテナンス体制も万全。終生の使用に耐え得ることは世界中で実証済み。親から子へ引き継げる数少ない安心・頑丈な実用時計である。ケース径36mm。またムーヴメントも現行のCal.3135は、現代最高の完成度高いキャリバーの一つと感じている。
高級時計ではないが、最良の実用&頑丈時計の一つ。OMEGA AQUATERRA最大のライバル。







NO.3 CITIZEN ECO-DRIVE ATTESA 電波時計 REF.ATD53-2611(100m防水、TITANケース)

(寸評)
日本が世界に誇る電波時計+太陽光発電+TITANケース+100M防水、の超ハイテク時計であり、究極の精度を誇る傑作品である。地味な黒文字盤もシックで◎。所有する時計の標準時合わせ用としても重宝する。フル充電で2年間稼動、というのも脱帽ものだ。
唯一の難点は、製品としての歴史が浅いこと。そして恐らくデザインも短期間で変わるであろう、継続性の薄さである。
(注:ATTESAのケース径は未確認であるが仮に37mm超でも例外として選定したい)





(次点)
SEIKO SEIKO-5 AUTOMATIC CAL.7S26 
 SEIKO SEIKO-5 AUTOMATIC CAL.7S26 
時計ビギン推奨でもある身の丈に合った「スーパー・リアルウォッチ」である。
防水性は3気圧だが、気兼ねなく使える利便性、簡易性が良い。デザインもご覧の通り贔屓目に表現すれば、ROLEXエクスプローラーTに似ているとも言える。そして何よりもその安さ。1万円で2本も買えるコンビニエンスでありながら、裏スケルトン+曜日・日付表示+ワンタッチ・クラスプ、と押さえるべきツボは押さえている。だから、ネオクラシックな時計は素晴らしいのだ。乱暴に言えば、昔のグッドデザインをリメイクすればハズレは無いのである。ケース径36mm。手巻き機能無し。

果たして、巷の価値基準に照らし合わせると如何であろうか。。。(2004/4/07)


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