時計に関する随筆シリーズ K

「スイス時計巡礼の旅〜La Chaux-de-Fond聖地探訪記」 
(最終章)



(時計聖地にてメーカー巡り?を開始〜)

「国際時計博物館」を後に、しばしラ・ショード・フォンの街並みを歩く。
太陽も射し込み、とてものどかな雰囲気である。確か、博物館近くに何軒かのアンティークウォッチ店があるはずだが、それら場所確認までの下準備は出来ておらず、ここでも残念ながら機会を失ったことが悔やまれる。

一旦、駅まで戻り、駅構内のレストランで軽い昼食をとる。スープに入ったドイツ風ソーセージとマッシュドポテト、そしてスイスビールが何とも美味であった。

さて、スイス旅行の最後の締めくくりとしてラ・ショード・フォンにあるメーカー数社を訪問することにした。訪問といってもアポは取れなかったので、せめて社屋の外観だけでも垣間見たいと思ったのである。ぶっつけ本番でその場での見学交渉も出来たが、今までの貴重な体験の数々だけでも既に知識がオーバーフローしている自分である。更に無理や迷惑をかけることは思い切って慎んだ次第である。

という訳で、ただただ今回の時計巡礼旅行の最後に各メゾンをこの目で見たい、という何ともミーハー的な締め括りとなった。



(まずはブライトリングのクロノメトリーを目指す〜)

駅前でタクシーをチャーターし、所々雪で埋もれた道をまずはBREITLINGの新工房"CHRONOMETRIE"へと向かう。途中、タグ・ホイヤー工場を横目に通り過ぎる。しかし、思えば本当に酔狂な行動である。別に時計会社は名所旧跡でもないのだが、今や自分にとって時計製造の現場はおおげさな表現をすればあこがれの「聖地」でもある。まぁ、アイドルの「追っかけ」と大差ないと言われれば返す言葉もないのであるが。。。





(←写真左)
ブライトリングの新工房「クロノメトリー」である。
アポ無しゆえに、玄関のガラスドアから中を覗くのみの、怪しい『時計オヤジ』であった。










(何故ゆえ時計工房に惹かれるのか?〜)

自動車が好きな人でも、自動車工場に通い詰める人は少なかろう。カメラ好きはカメラ工場を頻繁に訪れるのであろうか?思うにどうも時計についてのみ、雑誌やらメディアも工房やら工場現場へと盛んに足を運んでいる気がしてならない。何ゆえ時計、なのであろうか?今回のスイス時計巡礼旅行で感じたのは、時計という機械は「魔物」である、ということだ。人知と労力の結晶であり、そこには悠久のロマンが絶えず流れている。しかし、そんなありふれた表現だけでは片付けられない、もっと奥深い魅力、魔力が潜んでいると感じる。その魔力にかかると、恐らく死ぬまで興味は尽きないのではなかろうか。

他の工業製品と違って機械式時計はその組み立て工程を人の手に委ねざるを得ない。どんなに工作機械が進歩しても腕時計の自動組み立てロボットの導入は不可能である。こうした手作業、マイスター的な技術が要求される時計工房であるがゆえに、人は尊厳の念、畏敬の念までをも抱くのではなかろうか。。。

(⇒右写真:ラ・ショード・フォンの近代的なカルティ工場前にて)





(『時計道』への誘い〜)

時計への興味の追求手段は各自で異なる。好みの時計をコレクションとして手に入れることを目的とする人、知識吸収を追及する人、メカニカルな技術を極めようとする人、歴史を探る人、時計を通じて人間関係を広げることを楽しむ人等、様々であろう。時計という存在を自己の中でどうやって位置付けるのか、それを自分なりに如何にして具現化し、楽しんでゆくか、というのが時計の趣味、「時計道」であると考える。













写真上、左から:GP=ジラール・ペルゴ社の象徴的な青色の社屋。本当は工房を見学したかったのだ。
中、エベル本社の建物。受付も非常にこじんまりとしたたたずまいであった。
右、近代的なガラス張りのコルム新社屋。


              *    *    *    *    *

(魅力満載の本場、スイス時計巡礼は感動の連続〜)

さて、パリ到着から始まったスイス時計巡礼の旅は予想以上の感動と体験を与えてくれた。また一つ新たなる時計の世界に開眼できた気がする。同時に、時計を通じて多くの人々の優しさに接することが出来たのも大きな収穫であった。ある意味で、この時計の世界はゴルフ競技とも似ている。悟ってはまた悩み、悩んではまた悟ってぬか喜びをし、またへこむ。。。その繰り返しであるが確実にSTAGE-UPしてゆく自分を感じている。業界人でもない素人には、そう簡単に海外へ足を運ぶわけにも行かない。もしかしたら、これが最初で最後のスイス時計巡礼旅行であったかも知れないが、またの機会をそれこそ再度夢見て、ラ・ショード・フォンからベルンへの電車に乗るのであった。

さまざま感動と体験を与えてくれる、時計と言うこの小さな創造物に心より感謝したい気持ちで一杯である。


(参考文献)
エスクァイア日本版AUG.2002(「ル・コルビュジェがデザインした、幻の時計を探して。」)




(時計オヤジの『2002年12月、初のスイス時計巡礼』関連のWEBはこちら)

⇒ 『極上時計を求めて〜ジュネーヴ編』はこちら・・・
⇒ 『ヴァシュロン博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『パテック・フィリップ博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『フランクミュラー、ウォッチランドWatchLand探訪記』はこちら・・・
⇒ 『ラ・ショード・フォンLa Chaux-de-Fond聖地探訪記(T)』はこちら・・・
⇒ 『ラ・ショード・フォンLa Chaux-de-Fond聖地探訪記(U)はこちら・・・



(時計オヤジの『2005年11月のジュネーヴ再訪〜』関連のWEBはこちら)

⇒ 『我が心の故郷、ジュネーヴ再訪、PART-1』はこちら・・・
⇒ 『ジュネーヴ再訪、PART-2』はこちら・・・
⇒ 『パテック・フィリップ・ミュージアムPATEK PHILIPPE MUSEUM再訪』はこちら・・・
⇒ 『再訪、新メゾン・ヴァシュロン・コンスタンタン』はこちら・・・
   ⇒ 『2002年12月、旧・ヴァシュロン本社博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『2005年11月、ショパールChopard本社工場探訪記』はこちら・・・


(時計オヤジの
『2006年1月、Watch Valleyこと、厳寒のVallèe De Joux時計聖地巡礼の旅』関連のWEB等)

⇒ 『その1、ジュネーヴ到着編』はこちら
 ⇒ 『その2、ジュネーヴ買物編』はこちら
   ⇒ 『その3、ジュネーヴ気になるブレゲ編』はこちら
    ⇒ 『その4、新生ヴァシュロン・コンスタンタン工場訪問記』はこちら
     ⇒ 『その5、ウォッチランド再訪記』はこちら

       ⇒ 『その6、時計師ホテル滞在記』はこちら
        ⇒ 『その7、 AUDEMARS PIGUET & Co.博物館訪問記』 はこちら
         ⇒ 『その8、ヌーシャテル訪問記』はこちら
          ⇒ 『その9、オメガ博物館訪問記』はこちら

    最終章   ⇒ 『その10、旅の終着点、ラ・ショード・フォン再訪』はこちら



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