時計に関する随筆シリーズ J

「スイス時計巡礼の旅〜La Chaux-de-Fond聖地探訪記」 (T) 



(ベルンの時計台を外部から見学〜)

感動と充実した時間を過ごしたジュネーヴを後に、ベルンに到着した。
WATCHLANDがあるジャントゥを左手にレマン湖沿いを電車で北上すること約2時間弱でベルンに着く。

実はベルンはスイスの首都である。しかし、近代的な街並みを期待すると拍子抜けするほど、ベルンは小さく、田舎の町であった。ここを基点にラ・ショード・フォンを訪問する計画である。ベルンでの言語はジュネーヴのフランス語とは異なりドイツ語の方が主流であるようだ。あちらこちらからドイツ語アクセントが聞こえてくる。
夕方になったが市内を散策する。旧市街は世界遺産にも登録されているのどかな街並みであるが、とにかく寒い。ここでも気温は2〜3℃。寒風が身にしみる。
ベルンでの目的である世界最古の時計台を訪問するが、生憎時間がなく、内部見学は出来なかったものの、外から眺めるだけでも一見の価値がある大時計台である。(写真左上)

もともとこの時計台は外敵から街を守るための監視塔として中世古来より存在していた。それが、16世紀初頭(1530年)に長年の修復作業の結果、時計台として生まれ変わったのである。以来、いわばスイス時計産業における文字通りの監視役兼時計台としてのシンボルとして今日に至っている。機械の詳細はわからないが、この時計台は時刻表示のみならず、星座表示、ムーンフェイズ表示機構、更には人形が動き出すオートマタ機構もついている。動力は大きな錘(分銅)によるそうである。このような「複雑時計」が既に500年!近く前にも完成されていた当時の技術力、学問、芸術の力には驚かされるばかりだ。まさに『時は鐘なり』、とはこのことだ!?





(いざ、ラ・ショード・フォンへ鉄道で向かう〜)

ベルンの駅で調べた時刻表を見てラ・ショード・フォンへと向かう。まさか途中で乗り換えがあるとは電車に乗ってから知ることとなった。かつて天文台、時計コンテストでその名も高いヌーシャテル(Neuchatel)駅で乗り換え、電車は雪の中を標高994mのラ・ショード・フォンへと向かう。途中、ブルガリの工房らしき大きな建物を左手に見ながら、目的地へと近づくにつれ周囲は一面銀世界の景色へと変化する。その勾配は電車の中でも体感できるほど結構キツイ。
右写真⇒:ラ・ショード・フォン駅にて。辺りは一面雪化粧である。




(駅から、のんびり徒歩10分で時計博物館に到着〜)

駅を出てから右側道路に沿って5〜10分も歩くと迷うことなく"musee international d'horlogerie"の看板が目に入る。いよいよ到着である。冬季の開業時間が確認できないまま来たが、どうやら午後も開いているようで安心した。

入り口には”L'HOMME ET LE TEMPS"(人間と時間)という標語が見える。ここをくぐって階段を上ると正面玄関である。この「国際時計博物館」の館内でも写真撮影はOK。但し、三脚とストロボ使用は禁止である。




お土産コーナーで何かないかと目星を付けるが、期待したほどの逸品は無い。日・英・中国語で書かれた時計に関する解説書とキーホルダーを買い込む。

さて、一歩館内へ入るとそこは時計の歴史の宝庫である。時計のみに限らず、掛け時計から始まり、オートマタの観賞用時計やら人形やらが独立した透明ケースに入って鎮座している(写真下)。そして、懐中時計から近来に至るまでの腕時計のみならず、時計の製造工具やらが所狭しと並んでいる。






博物館の一角では展示用の時計修復工房があり、現実に目の前で修理している様子を観覧できるのだ。恐らく一般の人がこのような時計工房を観覧できるのはスイスでもここと、PATEK博物館(但し、運が良ければであるが)だけではあるまいか。このコーナーのみは撮影禁止である。(写真下、中央)















(至福の時間を満喫できる、歴史的逸品・傑作品の数々〜)

館内は2階建ての作りとなっている。
まずは、ざっと全フロアを足早に観察する。その後、各ショーケース毎にじっくりと鑑賞する。流石に見応えがある。時計産業史、時計製品史、技術発展史、などがテーマとなり一つ一つに食い入るように没頭してしまう。鑑賞には少なくも2時間は必要であろう。最後のコーナーには2002年バーゼルモデルの5〜6ブランド品まで展示してあったのが、何とも本場スイスらしくて気分であった。

時計好きにとっては、まさしく至福の時間が味わえる空間である。PATEK MUSEUMの超高級なスーパー傑作品の数々とはまた異なり、もっとピラミッドの底辺までを含んだより広いスイスの時計産業と「時の世界」に短時間ながら接することが出来るのだ。非常に興味が尽きない、時計好きにはまさに非日常的な夢の場所であった。

博物館でのつかの間の滞在を終え、記帳BOOKにもサインをして国際時計博物館を後にする。
さて、これから今回の巡礼旅行の最後の仕上げとして、この後この街に存在する時計メーカーを眺めに行くのだ。ラ・ショード・フォンの街並みは、晴れた冬空のもとで、とても眩しく輝いていた。




(時計オヤジの『2002年スイス時計巡礼』関連のWEBはこちら)

⇒ 『極上時計を求めて〜ジュネーヴ編』はこちら・・・
⇒ 『ヴァシュロン博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『パテック・フィリップ博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『フランクミュラー、ウォッチランドWatchLand探訪記』はこちら・・・
⇒ 『ラ・ショード・フォンLa Chaux-de-Fond聖地探訪記(T)』はこちら・・・
⇒ 『ラ・ショード・フォンLa Chaux-de-Fond聖地探訪記(U)はこちら・・・

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