時計に関する随筆シリーズ (84)

『サウジアラビアのメッカで世界最大の時計塔を実写するの巻』
〜@Makkah Royal Clock Tower 、2010.8.27 11:25am〜





サウジアラビアはメッカとメディナのイスラム教における2大聖地を守護する国。
その聖地メッカ(=マッカ/Makkah)に於いて世界最大の時計塔が完成間近い。
2大聖地にはイスラム教徒以外の立ち入りは厳禁。
よって非モスリムの『時計オヤジ』は直接訪問することは出来ないが、
この程、知人経由で生写真の撮影を依頼して入手した。
マスコミ報道だけでは実際の建築がどこまで進んでいるか定かでないが、
ようやく実写を手に入れることでその迫力も倍増する。


(↑上写真: 正面から撮影した威風堂々たる世界最大の時計塔だ。
2010年8月27日11:25am撮影〜)



(超巨大なる時計塔にイスラム・パワーを垣間見る〜)

2010年9月2日現在、世界最大(最長)の建築物はドバイのBurj Khalifaであり、839m。世界第二位としてそれに次ぐ高さの建造物が、隣国サウジアラビアの聖地メッカに建築中である。日本の新聞等でも報道されているのでご存知の方も多かろう。しかし、UAE/ドバイとの最大の相違点は、サウジアラビアでは旅行者の受け入れを一切行っていないことである。イスラム教による政教一致の体制を厳格に敷くサウジにおいて、特に2大聖地では異教徒の訪問を厳格に禁止・規制しているのだ。

しかし、あのロンドンのBig Ben時計台の6倍の大きさと言われる時計台を4面に持つ怪物君がサウジに登場するとあっては『時計オヤジ』は黙っていられない。我が身に代わり、モスリムの知人経由で撮影した写真を入手したので今回、早速披露する。

(⇒右写真:Makkah Royal Clock Towerの完成予想図。
  
地元メディアから拝借したもの。手前の黒い箱が見える場所が聖なるカーバ神殿のある『聖モスク』ことGrand Mosqueである。イスラム教徒(モスリム)であれば、一生に一度はメッカ、メディナへの巡礼を夢見る聖なる地である。そのド真ん中に、天から見下ろすような巨大なる複合ビル群がそびえ立つ。こんなの造っちゃって、本当に良いのだろうか?
異教徒の『時計オヤジ』ではあるが、この感覚には正直、度肝を抜かれる。)








(←左写真: こちらも完成予想図。夜はこうなるらしい〜)

こちらは8月初旬のサウジの地元英字新聞”Arab News”から。
夜間の文字盤はどうやら緑色に輝くらしい。緑は中東においては聖なる色である。サウジの国旗も地色は緑。アラブ国家の多くが緑を国旗に使っている。

この時計台は7棟から成る複合施設から構成され、3,000室のホテルや高級マンションも入ると言うから、世界中から集まる超セレブ向けの設備と言ってもよかろう。このメッカ、メディナには毎年巡礼者だけで3〜4百万人が集まる。それも大半はラマダン(断食)月開けの一週間と、その2ヵ月後にあるHajjと呼ばれる巡礼期間に集中しているから、2大聖地の混雑具合は想像以上のものがある。
メッカにもホテルはピンキリで存在するが、恒常的に宿泊場所が不足しており、特に高級ホテルの価格高騰と物件不足は深刻であると言う。
今回の巨大ホテル&マンション群はそうした現地のneedsを狙った巨大プロジェクトであり、同時に時計台を備えると言う発想がユニークである。

この時計台部分はBig Benの6倍、幅45m、高さ43mというから想像を絶する。ドイツ製らしいが、どのメーカーか非常に気になるところ。まさか、ランゲやグラスヒュッテが関与しているとは思えないが、この強大なる時針を動かすだけでも地上800mで地球の重力に対抗する動力、回転エネルギーは素人目にも膨大なものと推測できる。メッカの時計台が止まったり、狂ったりしては、それこそメンツ丸潰れである。時計台の外観スペックもさることながら、中身の『機械』がどうなっているのが、非常に興味がある。いつか『メッカ時計台ツアー』でもあれば、真っ先に参加したい『時計オヤジ』である。

写真にもあるように、完成後は時計台の先端に金属製の尖塔が付けられ、その頂上には三日月型のオブジェ?が配されるらしい。夜間にはこの三日月部分から天に向けたスポットライトが放たれ、15キロ以上離れた場所からも光が確認出来ると言う。まさにメッカの不夜城となるのだが、聖モスクの眼前でこんなことして、本当に良いのだろうか?





(←左写真: ラマダン中の8月27日現在はこうなる〜)

冒頭写真に続く実写の2枚目。
筆者の知人がメッカにウムラ(小巡礼)で訪問した際に撮影したもの。
社内からの撮影でもあり、鮮明とは言い難いが、それでも建設中の迫力は十分に伝わってくる。

まだまだホテル群の外装も建設途上にある。内装も考慮すれば、全体の完成までは数ヶ月はかかるだろう。尖塔頂上の三日月が見えて初めて、ようやく完成近し、と言う感じだろう。
それにしても複合ビル部分も巨大であるせいか、時計台までが地上662mもあるとは感じられない。この部分だけでも東京タワーの2倍もあるのだから、周囲の6〜7棟のビル達でさえもが皆、横浜のランドマーク(296m)並みの大きさということになる。
凄い規模、と言うしかない。
まさにオイルマネーの成せる業でもあろう。








(『世界標準時』への挑戦の行方は〜)

メディア報道によれば、サウジ側は完成後の時計塔の時刻、即ちメッカ時間を世界標準時の中心に置こうと計画しているとの報道もある。
GMTこと、グリニッジ標準時からメッカ標準時に移行しようとする目論見だろうが、果たしてイスラム世界の中だけでもそうした時間が新たに生まれるのか興味深い。

言うまでもなく、GMTとはグリニッジ天文台が経度0度にあることを基準にしている訳だが、緯度経度から離れてメッカ時刻をどのように扱うのか、ユニークな試みの詳細を待ちたいものだ。

それにしても多くの興味が尽きないのだが、この時計台の巨大文字盤の秘密やら、そして『ムーヴメント』の正体など、『時計オヤジ』に今後の『課題』を幾つも与えてくれるオブジェである。







(首都リヤド市内にも高層ビルが鎮座する〜)


メッカから一千キロ離れた首都リヤドにも有名な高層ビルが2つある。
右写真でも見えるが、丸で取っ手の付いたようなビルが302mのキングダム・タワー。そしてその遠くにトンガリコーンのようなビルが見えるのが267mのアル・ファイサリア・タワーである。

共に何とも奇抜なデザイン。
特に向こう側にファイサリア・タワーは王族の王女が自分の好きな萬年筆のペン先を模ったデザインとも言われている。これらビルに限らず、中東には奇抜というか、奇天烈なデザインの建造物が多い。丸でデザインの実験場のごとく、自由気ままで幾何学的なデザインのビルが各地で見られるのも特徴である。建築デザイナーにとっては、国全体がアトリエにも感じられる土地柄ではないだろうか。


メッカ時計台については、今後、建築状況の進捗に合わせて、適宜『実写』でその推移を追跡してみたい。(2010/09/03) 318484




『時計オヤジ』のサウジアラビア関連WEB:
2004年の『ジェッダにおけるサウジアラビア腕時計事情』はこちら
2004年の『中東名物、How To Play 土漠ゴルフ』はこちら
2005年の『さよなら、サウジアラビア』はこちら
2010年8月、『リヤドのパネライ直営BOUTIQUEを訪問する』はこちら
2010年8月末、『世界最大のメッカ・ロイヤル・クロック・タワーを実写する』はこちら


(『時計オヤジ』のドバイ&ブレゲ関連WEB:
2001年の『タイガー・ウッズ観戦記@ドバイ』はこちら
2002年の『アーニー・エルス観戦記@ドバイ』はこちら
2005年4月の『世界初のIWC直営ブティックをドバイに訪ねる』はこちら
2006年1月のジュネーヴ市内における『ブレゲ再考』はこちら
2006年10月のチューリヒ市内・BEYER時計博物館における『ブレゲ時計検証』はこちら
2009年夏、最新ドバイ時計事情はこちら
2010年夏、再訪・ドバイ最新時計事情はこちら





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