ROLEX  ロレックス  (ROLEX 3部作 NO.1)

ROLEX OYSTER-DATE PRECISION REF.6694 CAL.1225




34mm径のケースに多少くたびれたリベット式3連ブレス。
『時計オヤジ』が所有するROLEX5本の中で、装着感では一番良い。
ややグレイがかった黒文字盤に金色の針とINDEXが映える。
手巻きでゼンマイを巻き上げる毎日の儀式は時計本来の楽しみを与えてくれる。
良い時計の代表格。
年数もこなれたOYSTER-DATE PRECISIONは何とも扱い易い時計である。



(知名度抜群の『怪物』ブランド、ROLEX〜)

ROLEXとOMEGA。
どんなに新興メゾンが台頭しようとも、古今東西を通じて、世代をも超越して揺るぎ無いネームバリューを誇る。パネライやフランクミュラー、ブライトリングやIWCもその牙城を崩すことが出来ない、 実用時計の2大頂上ブランドである。

ROLEXは特に頑固なブランドだ。全てにおいて頑固。
ケースデザインとモデルの種類を頑なに変えない。
裏スケルトン(⇒注1)はおろか、パワーリザーブモデルもなければ、レトログラードもない。ミニッツリピーターやトゥールビヨンに至っては全く無縁だ。複雑時計には目もくれず、保守本流をひた走る姿は、恐らく時計業界で唯一無二の存在だ。毎年の新モデルも殆ど無い、若しくは極少数である。宣伝広告もどちらかと言えば地味。リシュモンやSWATCHグループにも属さず、独自の秘密主義かつ自主経営路線を守り抜く。

そんな頑固なROLEXというメゾンは、そんな独立自尊の企業経営哲学からして、今日では稀有な存在である。

デイトナやら、サブマリーナ、そしてエクスプローラー等のスポーツ系ROLEXが人気の牽引役となっている。一方、その対極にある実用時計路線でもオイスターデイト、デイトジャストサンダーバード等のФ34&36mmケース系モデルも長寿を誇る。一見するとモデルチェンジや新モデル投入の間隔が長い為に、ROLEXの技術者、デザイナー達はさぞ面白く無かろう、とも感じる。しかし、文字盤のカタログを見ると、余りに数多くのバリエーションがあり驚かされる。それも基本のケースサイズに変更が無い為に成せる業ではなかろうか。一つのモデルで、純正文字盤やブレス、ベルトを自在に変更できるブランドというのもROLEX以外には見当たらない。PANERAIにしても、革ベルト交換がせいぜい。例えばDate-Justのホワイトローマンダイアル、ジュビリーJUBILEEブレスレットに飽きたら、黒文字盤の3連オイスターブレスに変更することも可能だ。そうすることで表情もガラッと一変し、別のROLEXを楽しむことが出来る。一粒で2度も3度も楽しい時計、と考えるとまた見方が変わってくる。但し、スポーツ系ROLEXではこうした芸当は難しいが。

ROLEXとはどこから切り取っても、奥が深いブランドである。


(手頃な『オイスター・デイト』こそスポーツモデルの原点〜)

右写真⇒が筆者所有の推定1974年前後に生産されたオイスターデイトだ。
ケース径は34mm、ブレス幅(ラグ幅)19mmであり、現在のオイスターデイトと同様のサイズである。超、超ロングセラーモデルだが、ROLEXの時計は他のモデルも皆同様、『サイズ堅持』というのが凄い。

『黒文字盤、3連ブレス、フラットベゼルのSS製』、という3要素が『時計オヤジ』には重要条件である。エクスプローラーTと基本意匠は同じであるが、このオイスターデイトは手巻きCAL.1225搭載。名前の通りデイト付きである。BAR-INDEX、HANDS共に金色というのも黒文字盤に映える。『クロキン』オイスターを地で行くモデルだ(注:クロキンの本来の意味は、『黒文字盤+金無垢ケース』・・・by LEON)。ハック機能無し、リューズによるデイト早送りも不可。これだけが唯一、不便な点である。

既に生産後、30年も経過するが、現在の精度は平置きで日差30秒以内と全く問題無い。手巻きゆえに毎日の巻上儀式が楽しい反面、時に煩わしい時もあるが、それが手巻きの宿命である。SPRING-DRIVEであれ、ミネルヴァCAL.48であれ、ドーンブリュートであれ、全て同様であるのが手巻の特徴だ。

こうした完成された基本デザイン、ROLEXのネームバリュー付きのモデルが、アンティーク市場であれば現在では10万円前後で手にすることが出来るというのも嬉しいではないか。サブマリーナやデイトナも良いが、日常生活においてはこうした基本SPECを兼ね備えた質実剛健なモデルが、特に若者には好ましいと感じている。身の丈に合ったROLEXがオイスターデイトである、と『時計オヤジ』は考える。





(⇒右写真2枚)

全体的にややポッテリした膨らみを持つ34mm径のオイスターケースは手首上での納まりも快適。3連ブレスレットはスポーツモデルの雰囲気を醸し出し、精悍な艶消し黒文字盤と絶妙にマッチする。加えて金色INDEXとHANDSが妙にシックで良いのだ。

こういうシンプルな時計に魅力を感じ始めると貴方も時計マニア、時計道(=病)への危ない道を歩むことになるぞ。









(←左写真2枚)
3連のブレスは12駒あり、標準的なサイズ。革ベルトも良いが、クロキンには矢張り3連ブレスが一番ぴったりする。

ムーヴは名機に挙げられるCal.1225。
’60〜80年代に活躍した安心ムーヴは17石、チラネジ無しのタイプ。5.5振動(19,800vph)の鼓動は、ゆったりとして気持ちが良い。やはり手巻は良い。メインテナンス上から見ても、パーツは少ないほど良いのだ。ローターも存在しない生後30年を経過した大ベテランの機械ではあるが、まだまだこの先、現役として日常の使用には充分耐えうるものと確信している。精度は日差30秒程度か。古くてクロノメーターでもない割にはある意味、驚異的な精度と言えよう。日常使用上の不便は微塵も無い。





(ROLEXは男性用、女性用の区分けが明確である〜)

女性でPANERAIを身に着ける人もごく少数ながら存在する。しかし、男性用ROLEXを身にする女性は今まで見たことが無い。サブマリーナをする女性、デイトナやデイトジャスト(Men's)をする女性がいないのは何故であろう?PANERAIであれば、単に女性用のサイズが無いから、大きい40mm径ケースでも我慢して身に付けるのだろうか?

現代において、ROLEXほど記号性を有するブランドも少ない(特に日本国内では)。
そして、ROLEX=男性用のブランド、という図式が確立している。勿論、女性にも大人気のROLEXではあるが、女性は必ず女性用の小振りなROLEXを選ぶ。逸脱してもせいぜい、ボーイズサイズ止まりであろう。ROLEXの中では小振りなケースになるエクスプローラーTやオイスターデイトでさえ、女性は避ける。この辺が明確に男女の棲み分けが確立されているROLEXであり、面白い所だ。


(ROLEXはスポーツ系やドレス系のみにあらず〜)


ROLEXのみならず、腕時計のデザインが一番華やかな時代は’50〜60年代であった。この時期の文字盤デザインは各ブランド共に百花繚乱。現代のデザインの全てのルーツがこの時代にはあるといっても過言で無い。

そしてこの時期、ROLEXはバブルバックBUBBLE-BACKも終了し、新たなスタートを切ったのだ。スポーツ系ではサブマリーナも’50年代に登場。デイトナの原型たるコスモグラフも登場する。高級モデル路線のデイトジャストも登場するが、その狭間でPRECISIONモデルたるこのオイスター(デイト)は、比較的廉価版のROLEXとして、文字盤にも遊び心を持ったデザインが数多くリリースされている。



このオイスターデイトは現在でも最新型が存在する。
現行のオイスターデイトとデイトジャストは、共に中身のムーヴメントはCOSC規格で同一ムーヴ(Cal.3135 31石)を搭載する。違いはケースサイズのみである(=Ф34mmと36mmの違い)。ベゼルの素材やデザイン、全体の雰囲気から好きな方をチョイスすることが出来る。現行品でも頑張れば手の届く価格帯にあることも嬉しい。USEDであればなおさらだ。因みに、CAL.3135は1988年登場以来のロングセラーを誇る。現在市販される自動巻きムーヴとしても、なお超一級の出来映えと思っている。超一流の証であるブレゲヒゲを採用したナット型のマイクロステラスクリュー搭載の両持ちテンプは、その頑丈なオイスターケースに守られて、安定感、耐久性両面に優れ、『ROLEX魂』を込めた精度を叩き出しているのだ。


あらゆる意味で『怪物』ブランド、ROLEX。
『時計オヤジ』としては、まずは手始めにROLEX3部作のスタートとして”ROLEX OYSTER-DATE”から静かに触れてみた。(2005/06/10)


(参考文献)
「ロレマグ」ROLEX ONLY MAGAZINE VOL.1 (成美堂出版刊)
「世界の傑作品02 名品ロレックス サブマリーナ」(ワールドフォトプレス刊)


加筆修正: 2009/11/01冒頭に写真・文章を追加


(参考)『時計オヤジ』のROLEX3部作はこちら:
ROLEX OYSTER-DATE PRECISION REF.6694はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3035はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3135(Thunderbird)はこちら。

(その他、ROLEX関連はこちら↓)
ROLEX 角型手巻PRINCE CELLINIはこちら。
TUDOR PRINCE DATE ユニークダイアルはこちら。
ROLEX SUBMARINER REF.16610LV(グリーンサブ)はこちら。

(名作PATEKのダイバーズはこちら↓)
『極上時計礼讃〜パテックフィリップ・AQUANAUT旧型ラージサイズ』はこち



(注1)2005年バーゼルにて、ROLEX史上初の裏スケによる角型・手巻プリンスが発表された。かつての名作モデルの復活であるが、復刻ではない。中身は最新技術によるムーヴと洗練されたデザインに基づく。昨年より始まったROLEXの動きは従来に無くダイナミックで、刺激的な変化がある。いよいよ泰山ロレックスが本格的攻勢を仕掛け始めた予感がする。(2005/6/1)


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