ROLEX  ロレックス  (ROLEX 3部作 NO.2)

『お願い、DJ』
ROLEX DATEJUST REF.16014 CAL.3035



♪いっさいがっさい あなたに見とれて
♪骨の髄までメロメロよ
♪だけど分かってまっせDJ
♪祈ってまっせDJ
♪狂ってまっせ あんたのすべてが Music Music Music All Night!
(サザンオールスターズ 『お願い、DJ』)




(ROLEXに始まり、ROLEXに終わる時計道???)

『定番』。
何気ない簡単な響きだが、実はその重みには凄まじいものがある。長年に渡りモデルを維持する力、基本コンセプトは変えずに、なおかつ時代のトレンドセッターであり続ける底力。『定番商品』にこそ、真の実力が無いと継続することは出来ない。定番、イコール、横綱ブランドであると『時計オヤジ』は考える。


車で言えば、ドイツ車のGOLF、TOYOTAのカローラ、をイメージするところ。
では時計の世界では?

定番中の定番ブランドとして、ROLEX、OMEGA、CARTIER、そして我らがSEIKOを四天王とするのが筆者の選択である。具体的モデル名では、デイトジャストDateJust、シーマスターSeamaster、サントスガルベSantos Galbe、そしてグランドセイコーGrand Seikoとなる。

これらの定番は時計好きであれば、人生の局面で一度は接することがあるはずだ。あらゆるコンプリケーションを手にしようとも、『極上時計』と巡り合おうとも、そしてドイツ時計のような新興勢力が台頭してこようとも、はたまた独立時計師ブランドが脚光を浴びようとも、上記の四天王は決して色褪せることは無い。色褪せて見える時は、こちら側の価値観が揺らいでいる時、浮気心が生じてあちこち寄り道をしている時、ではなかろうか。



そんな偉そうな事を言う『時計オヤジ』であるが、実はあっちをウロウロ、こっちをウロウロしっ放しだ。
ROLEXにしても、その価値を再発見したのは、ROLEXブームが落ち着いたついこの数年である。
『定番』の実力を読み取る審美眼を、逆にROLEXに試されているような気がする。
『腕時計の指南役』、『審美眼を鍛える試金石』が『時計オヤジ』にとってのROLEXである。




(DATEJUSTの歴史を少々振り返ってみると〜)

2004年11月30日発売の『「ロレマグ02 ROLEX ONLY MAGAZINE』 (成美堂出版刊)にDJ特集が詳しくあり分かりやすい。キャリバーの変遷をベースに、DJのモデル歴史を分類すると大まかには以下のようになる:

第1世代 1945年登場の「ジュビリーデイトジャスト」。Cal.740/1035/1065等搭載。ケースはプレス式生産による。金無垢素材のみ。
第2世代 1954年発表。現行同様の削り出しケース、サイクロプスレンズ初搭載。Cal.1035等。REF.6609が有名。
第3世代 1960年代、チラネジ式テンプのCal.1565/1575搭載。REF.1601、1603等。DJの基本形がここに完成された。
第4世代 1977年代、Cal.3035搭載。REF.16030、16014等。27石、COSC規格、デイト早送り機構付加、マイクロステラスクリュー式テンプ(=フリースプラングシステム)採用、8振動のハイビート化。NON-DATEの3000番台キャリバーはその後長寿を誇る。
第5世代 1988年頃に登場。現行モデル。Cal.3135は全くの新規キャリバーと言える。マイクロステラナット式テンプ、テンプ受けをダブルブリッジに変更、ブレゲヒゲ搭載。31石、カレンダー送り機構を改良。因みに、SS/YGコンビモデル(Rolesor)は2004年に新ケース形状の第6世代となるが、Cal.3135搭載は継続された。SSケースはまだ第5世代にある。

この他にも、文字盤の様式、HANDSやINDEX形状の変更等、様々な変遷が見て取れるが、第3世代のCal.1575搭載DJは名機に数えられる。しかし、『時計オヤジ』のお気に入りは最新(現行)のCAL.3135搭載モデルである。文字盤側のペルラージュ仕上げ等、見えない所も抜かり無く、テンプ周りの改良とムーヴ全体のデザインにひたすら魅惑されるからだ。


(R番品の1987年製、我がDJにも化粧直しを〜)

DJこと、デイトジャストはROLEXの顔である。
スポーツ系も宜しいが、ON-DUTYではDJに限る。OYSTER-DATEも宜しいが、ケース径で36mmと34mmの差がある。ROLEXによる格付けはDJがDATEよりも上である。中のキャリバーはその時代時代で同一であるから信頼度には格差は無い。特に現在のCal.3135は、実用自動巻きの理想のムーヴメントの一つであると考える。あとはDJか、DATEかの選択はユーザーの好みによる。

1988年にシンガポールでDJを購入後、直後にアテネで紛失。同年に今度はロンドンの時計店"Watches of the Switzerland"で、同一モデルのホワイト・スモールローマン文字盤を再度購入した。いわば曰く付きの『2代目DJ』が上写真(=白文字盤)である。
Cal.3035搭載のRef.16014はDJとしては第4世代目に当たる。1977年に登場したCal.3035からデイト早送り機構が付き、より実用的になった。しかし、その早送り機構に問題が多いと言われるCal.3035は10年の使命を終え、その後、1988年にダブルブリッジ式テンプ持ちの現行Cal.3135へと更に進化を遂げたのはご存知の通り。ROLEXメンズでは初の8振動/秒のハイビートは、生産後18年を経た現在でも全く衰えを知らず、小気味良い響きを与えてくれる。この間、日本ロレックスで一度OVHをしたのみ。

1987年生産品よりROLEXはシリアルNO.冒頭にアルファベットの一文字を付している。
’87年品はROLEXの”R”から開始。以降、スペル通りにR、L、E、X、・・・と続く。"O”が無いのは数字のゼロと混同するからだろう。

18年の間で、筆者が身に付けた回数は恐らく100回にも満たない。
普段の出番は殆ど無かったに等しい。理由は単純。使用感は素晴らしいが、『オヤジ時計』としてのイメージが色濃く、余りにもオーソドックスで、コピー商品も世界中に氾濫していたことに当時辟易としていたからだ。1990年頃、ある取引先との会議席上で、6人中5人がROLEXのDJをしていた時には我ながら唖然とした。毎日の電車通勤で吊革から何本か目にするROLEXも日常茶飯事。
ROLEX信仰と憧れは古今東西、老若男女問わず、断トツの存在であるのだ。『アッラー・アクバル』(神は偉大なり)、ならぬ、『ロレックス・アクバル』、であることよ。

しかし、今や正真正銘の『時計オヤジ』である筆者にとって、『オヤジ時計?』のDJは相手に不足はなかろう。惚れ直している。。。知れば知るほど、毎回身に付けるほどに良い時計、『実用時計の王様』であると実感している今日この頃だ。王冠マークの意味を再認識する、そんなDJの白文字盤に思い切って今回、化粧直しを行った。




(黒文字盤にで一挙に野性的な雰囲気へと一新!!!)

DJの文字盤を知れば知るほど、また色々なことが分かってきた。
指南役になってくれたのは、サウジアラビア・ジェッダのROLEXで25年間勤務しているアブドラ・ラーマン氏だ(⇒写真右)。
毎回、話をしに行く度に、様々なモデルを嫌な顔せずに見せてくれた同氏の接客態度には頭が下がる。最新のTURN-O-GRAPHからTUDORのDISCONサブマリーナまで、手にとってじっくりと観察させてもらう。そんな、アブドララーマンとも相談して最終的に決めたのが、冒頭の写真にある黒文字盤BAR-INDEX、スモールローマンレイルウェイSmall Roman Railwayである。





ジェッダは人口約350万人のサウジアラビア第二の都市だ(⇒前出、『サウジアラビア時計事情』参照)。市内にROLEX純正店は3店ある。ダウンタウンのバラッドBallad店、海沿いにあるコーニッシュCorniche店、そして2004年秋に出来たタハリヤSHOPPING MALL店だ。

筆者のお勧めは(と言っても実質鎖国状態にあるサウジアラビアには観光旅行では訪問できないが)、海岸通りのコーニッシュ店である(←写真左。アラビア語表記のROLEXが気分である)。ここが一番英語が通じて、アブドララーマンの知識も頼もしい。あとの2店はアラビア語中心で、店員も商品を熟知せず、コミュニケーションも難しく、殿様商売で構えている。この国では『お客様は神様』では有り得ない。神様は『アッラーのみ』であるのだから。。。





(←左写真がBEFORE/AFTER〜)


現在のCAL.3135搭載モデルには、このスモールローマン文字盤は無いようだ。
ちょっと大人しい雰囲気ではあるが、この白スモールローマン文字盤も陶板製を彷彿とさせるようで、なおかつ、すっきりしたデザインはお気に入りだ。今回、黒文字盤に変更するついでに、軽くケース&風防の研磨とワッシャー(O-RING)交換もお願いした。

長年、白文字盤に見慣れてきただけに多少違和感は覚える。白文字盤+スモールローマンも気品が漂い、流石に完成されたデザインだ。不満はない。しかし黒文字盤でまさかここまで雰囲気が変わるとは思わなかった。文字盤変更の効果は絶大であるのだ。








← 黒文字盤の方が明らかに引き締まって見える。ホワイトゴールドWG製フルーテッド・ベゼルfluted bezel(=縦溝模様入りベゼル)との相性も悪くはない。ダイアルの見易さは白文字盤に軍配が上がる。しかし黒文字盤も中々どうして、「オヤジ時計」を「イケメン」に蘇らせてくれたと満足している。多分にジュビリーJubileeブレスレットが、一層風格を添えているのだろう。これが、オイスターブレスの3連であると一挙に雰囲気はスポーツ系になってしまう。

WG製フルーテッドベゼルにはジュビリーブレス。これが公式である。
間違っても、10〜20代のWAKAZO(若造)には遠慮頂きたい。DJのWGベゼル+ジュビリーモデルこそがオヤジ時計としての面目躍如ではあるまいか。尚、OYSTER-DATEにジュビリーブレスは付かない。3連のみである。
この辺もROLEXは流石にわかってらっしゃる。






因みに日本ロレックスによれば、このDJ文字盤を交換するには、文字盤代金¥28,000と交換料\7,000がかかるそうだ。基本的には持ち込みの文字盤交換は受け付けないのが純正ROLEX店の方針である。尚、ジェッダのROLEXでは、文字盤代金+工賃+研磨料込で900サウジ・リヤル、約\26,000というところ。



(OVHのマナーに物申す〜)

よくOVH(オーバーホール)をお願いすると、時計の裏蓋や、クラスプの裏側にOVH技術担当者の作業日やら場合によってはイニシャルまでが記入されて返却される場合がある。ペイントやマジックで書かれればまだ良いが、中には鋭利な工具で彫り込まれる場合もある。筆者のDJも以前、日本ロレックスから返却された際に、クラスプ裏側に数字が刻まれていた。

時計の所有者はメーカーや技術者ではない。部品の一つ一つまで、ユーザーに所有権がある。ユーザーの愛する時計に無断で数字等を『刻印』するとは如何なものか。OVHに出した結果、『傷』つけられて返却されるのは本末転倒である。裏蓋であれば、ユーザーには見えないので良かろうと考えているのであろうか。余りに身勝手な行為と言わざるを得ない。筆者のクラスプ裏側に刻まれた数字も、一度見て、知ってしまうと気になるものだ。

こうした『蛮行』は是非とも謹んで頂きたい。場合によっては損害賠償ものである。どうしても記録を時計に残したいと言う傲慢な時計師は、少なくもユーザーに事前承諾を得るか、マジックペン等で後で消去可能な状態で行うべきと考える。

ところでOVHはいつ行うべきか。3〜4年毎が理想とは言え、そのインターバルはあっと言う間にやって来る。
筆者の経験では、@時計がいつもより進み・遅れが顕著になった時、A何か異常(チチチ音、異音、巻きの重さ等)を感じた時、B10年以上経過した時、で十分と考えている。テンプの振幅回数は高速@8振動/秒であれば1時間に28,800回、1年で2億5千万回にもなる。しかし、それは毎日使用した場合の話。時計好き、複数機種の使用者であれば使用頻度は可也異なる⇒減少するはず。懐具合とも相談になるが、まあ、上記のような基準で良いと考えている。




(DJもケース形状が変更するのかという疑問が〜)

文字盤・ケース・ブレスレットのデザインの普遍性、自動巻きムーヴメントの信頼性(特にブレゲヒゲ搭載の両持ちブリッジテンプを持つ現行のCAL.3135)、確立したメインテナンス体制。デカ厚ブーム全盛の昨今でも36mm径を維持する企業理念。こうしてみると、改めてROLEXの底力に感嘆する。

そんなDJも 2004年のバーゼルで、長年に渡り不変であったケース形状に手を加えた。SS/GOLDのコンビ素材(=ロレゾールRolesor)である。残るSSケースも同様にこれから順次変更されて行くのであろう。DJサンダーバードも2004年に一新されてしまったのは何とも悲しい限り。せめて伝統の現行SSケースは新型が出ても、並行生産を続けて欲しい。現行ケースを良く見ると、その適度にエッジが効いたライン取りと言い、すんなり長めのラグといい、時計ケースのデザインとしては一つの理想を具現していると言えまいか。飽きが来ない、まさに普遍とも言えるDJのデザインに魅了される自分は、今まで感じ得なかった、共鳴し切れなかったひとつの境地に達したのではないかとさえ思ってしまう。

ROLEXのDJは本当に良く出来た実用時計だ。
親から子に伝えゆく時計、としての資格をあらゆる面で充分に兼ね備えている。
しかし、一方で昨今、時代は激変しているノダ。
DJの存在意義と哀愁をオヤジ(父親)にダブらせて、すんなりと受け入れる若者(子供)は少ないだろうな。。。

いやいやこの際、子供には分からなくとも良いではないか。
価値観の押し付け、お仕着せは野暮というもの(野暮もまた愛情?)。

『お願い、DJ』 

長年築いてきた容姿はこれからも不変であって欲しい。。。
そのシャープな現行のSSケースと、これぞ完成されたデザインに18年目にしてぞっこんの『時計オヤジ』である。(2005/07/01)


(加筆修正: 2008/07/06)

参考文献)
「ロレマグ」ROLEX ONLY MAGAZINE VOL.2 (成美堂出版刊)
「世界の傑作品02 名品ロレックス サブマリーナ」(ワールドフォトプレス刊)
「世界の腕時計 Vol.14」(ワールドフォトプレス刊)


追記1)
2009年度のBASEL WORLDがいよいよ開幕した。ちょっと驚いたのはDATEJUSTで41mm径が発表されたこと。
通常モデルより一気に5mmも拡大された。不滅の36mmモデルは生産継続されるだろうが、遂にと言うべきか王者ROLEXでさえ拡大化の波には抗し切れなかったということか。40mm径を超えた『巨大DATEJUST』には即座に共感は出来ない。と、同時に『変化させない継続の哲学』の権化であったROLEXにも、ここ数年で一つの大きな転換期が到来していると感じる。ROLEXは確実に変化・進化を加速させているのだ。(2009/03/28)




(参考) 『時計オヤジ』のROLEX関連ページはこちら:
ROLEX OYSTER-DATE PRECISION REF.6694はこちら。
ROLEX DATEJUST CAL.3035はこちら。
ROLEX DATEJUST CAL.3135(Thunderbird)はこちら。

ROLEX 角型手巻PRINCE CELLINIはこちら。
TUDOR PRINCE DATE ユニークダイアルはこちら。
ROLEX SUBMARINER REF.16610LV(グリーンサブ)はこちら。

『ROLEX DATEJUSTにみる黒ピラミッド文字盤の妙』はこち

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