TUDOR  チュードル

TUDOR PRINCE DATE REF.74000 ”UNIQUE-DIAL”



(時計オヤジ、長年憧れの『ユニーク・ダイアル』〜)


一体、どのブランドが最初に作り出したのだろうか(注)
通称ユニークダイアルとは、文字盤上の数字が上半分と下半分で種類が異なる。通常、10〜2時をローマ数字、4〜8時をアラビア数字とするのが一般的。中には 香港の矯大羽(KIU・TAI・YU、きゅうたいゆ)さん自作時計のように、文字盤数字を4分割してローマ数字、アラビア数字、漢数字、大字(数字)という種類もある。それこそ『ユニーク』ダイアルと呼ぶに相応しい。 

大御所ROLEXにしても1930〜50年代にはこうしたユニークダイアルが良く見られる。
あのPANERAI第一号モデルもやはりユニークダイアルのラジオミール、1936年製である。そしてROLEX製というのも因縁を感じる。どうもこのユニークダイアルにはROLEXの陰がチラホラと見え隠れする。ROLEXが色濃く関与しているのは間違い無さそうだ。
最近ではヴァシュロン・コンスタンタンやロジェ・デュブイという超ド級ブランドでもお目にかかるが、どれも雲上価格である。一方で、恐らくリダン、若しくは創作文字盤であろう通称『カリフォルニア・ダイアル』も稀に遭遇するが、いかんせん市場における玉数が少な過ぎる。

そんな中、ROLEXの弟ブランドのチュードルTUDORから2003年バーゼルで発表されたユニークダイアルは写真で見た瞬間から気に入っていた。願わくばROLEXブランドであれば文句の付けようが無いところだが、よくぞ現代においてユニークダイアルをROLEXグループとして復活してくれた、と拍手喝采である。

(注)クロノス日本版 2007.5月号no.10(p.082)によれば、『ロレックス社自身が「ローマン・アラビック」として特許を取得(1942年8月)』とある。成る程、やはりユニークダイアルの仕掛人はROLEXであったことは確実のようである。(2007/5/8加筆) 



(← TUDORでは2種類のユニークダイアルを揃える〜)


ユニークダイアルのデザイン性に魅かれる筆者であるが、何でもかんでも宜しいという訳には行かない。お気に入りの5条件を挙げると:
@ 精悍な黒文字盤であること。
A スポーツ調のメルセデスハンズであること。
B デイト付きであること、かつ早送り出来れば更に宜しい。
C 出来ればレイルウェイ式の分表記INDEXがあること。
D 文字盤、ケース、ブレス全体の雰囲気が『時計オヤジ』のメガネに叶うこと
   (⇒これが一番重要条件!)、である。






(⇒右写真: デイトデイDate-DayとデイトDateの2種類に迷いまくる〜)

写真向かって左側が曜日と日付を備えた『デイトデイ』。
右側がデイト表示のみである。ROLEXとの差別化を意識してか、『デイデイトDay-Date』と呼ばせないところに無理がある。素直にDay-Dateでいいじゃあないか。そう言えば、TUDORの『サブマリーナ』もROLEXの本家本元を意識してか数年前からDISCONになってしまった。今やTUDORの竜頭にも王冠マークの代わりにTUDORの盾マークが。何もそこまでやる必要はないだろう、とも思うのだが、TUDORとROLEXの差別化は益々進むようである。これが『ブランド別戦略』、ということで納得せざるを得ないのか?
だが、やはりちょっと残念。
ROLEXも芸の細かすぎることをするものである。



さて、この2種類のケース径は36mmと34mmで2ミリの差がある。2ミリというのは中々大きな差で、迷いに迷う時計オヤジである。
理想は36mm径でデイト表示のみであるのだが、世の中上手くは行かないのだ。

デイトデイの曜日表示も良いのだが、11字位置のローマ数字が一部、曜日表示板で欠けてしまうのが気に食わない。加えて、曜日表示板の面積が大きいだけに、地色が白というのも文字盤の黒に対して目立ち過ぎだ。一方、デイト表示のみの方はすっきりとして数字の並びが誠に良い塩梅である。
実際に手にしてみると34mmケース径というのは流石にやや小さめ。時代に逆行するサイズである。
そして、ムーヴメントは現代における『みんなの汎用機』であるETA2824-2(25石)ベース。『及第点の高性能』ながら『薄手』の作り。
ROLEXのDJのような厚みも無く、本当にちっこい時計となるのが34mm径なのだ。
ROLEXで例えればボーイズサイスというところか。




(最近、黒文字盤に凝り凝りの『時計オヤジ』はまだ懲り懲りない〜)

結局、文字盤のトータルデザインバランスを重視した結果、34mm径を選択する。
ユニークダイアルの文字盤の魅力を極力潰したくない、損ないたくないと言う理由で、デイト表示にしたのは正解であった。当然ながら夜光塗料も文字盤数字とメルセデス針の色が同一であり、しっくりとしている。ブレスも3連ではなく、変形5連ブレス。中2駒はPOLISHED、両脇と真中3駒は艶消しである。ベゼルのPOLISHEDとも連動して、まあまあマッチしているブレスとほくそ笑むのである。


インダイアルの秒表示、分表示のINDEXはレイルウェイ式ではないものの、くっきりと浮き出るかのような短めINDEXもギリギリ及第点である。欲を言えばキリがないものの、文字盤の光沢ある黒色といい、夜光塗料の淡い緑色がコントラストを際立たせる。DJ同様に18KWG製で華美で豪華なフルーテッドベゼルのモデルも存在するが、ユニークダイアルにはプレーンなPOLISHEDベゼルが一番良く似合う。





(←左写真: 実際に装着するとこんな感じである〜)

このTUDORはユニークデザインという特異な文字盤を持つが、性格的には極めてスポーツ性の高いモデルである。どちらかと言えば、エクスプローラーTに近い雰囲気を醸し出す。それも黒文字盤、メルセデスハンズが多分に影響しているからだ。しかし防水性能は50mであるとROLEX純正店からは説明を受けた。100m説もあるが、まぁ日常生活防水程度と考えた方が無難だろう。

以前スウォッチでも3針式のノーマル時計でユニークダイアルが出た。確か、1996〜7年頃ではなかったか。発表直後にあちこち探したが、結局見つからず悔しい思いをした記憶がある。が、やはりSwatchのプラスティック製のケースとTudorの金属製ケースでは風格も安心感も全て異なる。




デカ厚に対抗する(という訳ではないが・・・)ケース径34mm。
面積にすると907平方ミリ。44mm径のパネライが1520平方ミリ。面積比ではパネライの約60%しかない。

(⇒右写真:36mm径のDJ、44mm径のパネライGMTと並べるとこうなる・・・)

見た目の違いは数字以上だ。黒文字盤が余計に引き締まった『小さめ感』を生み出す為、小さすぎて逆に少々違和感がある程。こういう普通以下の大きさの、知る人ぞ知るユニークダイアル。50年代からの伝統デザインの復活を喜ぶユーザーは、多分、今日では極めてマイナーな存在かも知れない・・・。

ユニークダイアルとは半世紀以上に及ぶ歴史にも支えられた独創性と、それにもかかわらず古めかしくならない『適度な現代性』もが同居した、まさに不思議な魅力が漂う『文字盤命の時計』、であるのだ。

最後にもう一度繰り返す。
ユニーク・ダイアル(黒色文字盤)にはメルセデス・ハンズ(針)、これで決まりだ。


(このWebとは関係ないが、祝・表参道ヒルズ本日オープン! 祝・トリノ冬季五輪開催! 2006/2/11)



(参考)『時計オヤジ』のROLEX3部作はこちら:

ROLEX OYSTER-DATE PRECISION REF.6694はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3035はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3135(Thunderbird)はこちら。

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