ROLEX  ロレックス   (ROLEX 3部作完結編)

ROLEX DATEJUST "THUNDERBIRD" REF.16263 CAL.3135



昨年はドイツ時計業界に大きな関心を払った『時計オヤジ』。
今年はどうやら『原点回帰』に向かっている。
ROLEX黒文字盤に入れ込んでいる今日この頃。3部作の完結編は、サンダーバードだ。
中3針、デイト付きが『時計オヤジ』の求める基本のキ。
ブームに踊らせられることなく、じっくりとROLEXと対峙しようではないか。






(DJの派生モデル、『サンダーバード』とは〜)

”サンダーバード”とはROLEXの正式名称では無い。
あくまでも、ニックネームに過ぎない。正式名称はDJこと、『デイトジャストDATEJUST』だ。
1955年、ROLEXのニューヨーク支店が現地法人ROLEX WATCH CO.に格上げされた。その翌年の1956年に同社の企画で登場したのが回転ベゼル付きのサンダーバードである。米空軍のアクロバットチーム『サンダーバーズ』の隊長ドン・フェリス大佐の引退記念モデルとして特別発注されたのがその由来、と書物にはある。以降、DJに回転ベゼルを装着したモデルが通称”サンダーバード”と呼ばれた、というのが大まかな履歴である。あくまでも『通称』であり、ROLEXとして商標登録はしていない。よって、現在ではシチズン電波時計から”Thunderbird”なるモデルも発売されている。

ROLEXが回転ベゼルの特許取得したのは1953年。当時はロータリングベゼル”Rotaling Bezel”と呼んだ。(⇒右写真: 両方向回転式のベゼルはクリック式ではないスムースな動き。固定出来ないところにオキラクさ加減が出ている。)

翌年の1954年のバーゼルフェアにおいて、DJが正式発表されると同時に、サブマリーナ、ターノグラフ(turn-o-graph)、エクスプローラーも同時発表され、この年からROLEXケースの製造方法も現在同様の金属の塊から削り出す方式が採用された。サイクロプスレンズ(=日付拡大レンズ)も同様に発表されている。

その意味から1954年は、DJの生誕年(=2代目)でもあり、2年後の’56年がサンダーバード生誕年となる。


(サンダーバードは予想外のヒット商品?〜)

サンダーバードとは回転ベゼル付きのDJである。
その起源は冒頭で述べたように、空軍アクロバティックチームへの特注品だ。ここでもスポーツ系の匂いが漂う。しかしベースとなるDJは、現在では完全なる実用時計。そこに強引に回転べゼルを加えることで、やや砕けた味、スポーツ風味を加えた仕様で、バリエーションを広げた、と捉えることが出来る。ちょっと安易な手法かも知れぬが、決して珍しくは無かろう。マスプロ品を想定しなかった特注品が、プレミアムを呼び起こし、いつの間にやら量産品へと採用される。別注から定番へ。『瓢箪から駒』というのがサンダーバードの素性とみた。


(サンダーバードの系譜〜)

”サンダーバード”というと、圧倒的多数の人は’60年代に大ヒットしたアメリカの『SF人形劇』を思い浮かべるであろう。そうなる人は正常である。”サンダーバード”から真っ先にROLEXを連想する場合、貴兄はかなり時計に病んでいると言えよう。

そのサンダーバードのモデル変遷を辿ってみる:

第1世代 1956年登場の特別モデルがルーツ。REF.6609でCal.1000番台搭載。
       現行同様の削り出しケース、サイクロプスレンズ搭載。Cal.1035等。REF.6609が有名。
第2世代 1960年代、REF.1625。チラネジ式テンプのCal.1565/1575搭載。
第3世代 1977年、Cal.3035搭載。秒8振動、27石、COSC、デイト早送り機構付加、4つのマイクロ・ステラ・スクリュー(チラネジ)をテンプ内側に配した新型テンプ採用。
第4世代 1988年登場。REF.16263(18KYGコンビ)/16264(SS/WG). Cal.3135搭載、31石、ハイビート、COSC。
       マイクロ・ステラ・ナットの形状を変更、格段に精度が向上する。
第5世代 2004年発表、新コンビモデル。REF.116263 Cal.3135継続搭載。18KYGコンビは新ケース”ロレゾールRolesor”となる。ハンズも太くなり、シャープさに欠ける。好みが別れるところだ。


筆者の好みとしては新型ロレゾール・ケースは性に合わない。
ずんぐりむっくりた丸みを帯びた新型ケースには旧型のようなシャープさがない。ラグのすんなりとした伸びのある造形美も旧型に軍配を上げざるを得ない。一時期、新型のTURN-O-GRAPHと旧型モデルの狭間で悩んだこともある。しかし、ベゼルのデザイン、通常のデイトジャストで見慣れた全体の雰囲気には抗し切れない魅力がある。
新型TURN-O-GRAPHよ、さようなら。時計オヤジはタメライ無く旧型のクロキンを選ぶのだ。




(そんな時計オヤジが選んだクロキン変更前の『ベース』のデザイン〜)

写真右がシャンパンゴールド色のオリジナル文字盤。
この時点では、まだクロキンならぬ、『金キン』モデルだ。

Y番品であり2002年製モデルと推測できる。
この旧型は2003年で生産中止になったらしい。
新型のロレゾールでは今年2005年に桃金ピンクゴールドが初お目見えしたが、旧モデルには桃金ピンルゴールドやローズゴールド製は無い。コンビと言えば素材は『18金YGイエローゴールド』となる。SS/YGのコンビモデルは、デイトカレンダーのベースカラーは白ではない。淡黄色であることも特色だ。この淡黄色がまた妙にアンティークっぽくて宜しい。こういう日付地板の色まで楽しめるとなると、『最早時計とは阿片と同様、素晴らしい世界へ導いてくれる』と、かのシャーロックホームズものたまっている。。。

筆者所有の18金YGコンビは、えも言われぬ柔らかい金色である。まるで桃金のようで、YGの黄色味が程良い塩梅に押さえられている。18KYGでもこうした配合、発色が出来るとは・・・ まさに気に入った!!!こういう色彩、カラートーンにも時計オヤジはイチコロ、となってしまう。

しかし、シャンパンゴールドも良いが、TARGETはクロキン、黒文字盤にある。
前出DJ同様に、このコンビも文字盤を変更することにした。




(今回変更する”黒文字盤”がこれ!〜)


下の写真3枚が『整形手術前』の文字盤である。
当然ながら、ROLEX純正パーツの新品だ。部品番号”13/16008-40 LUMI Y-04”。恐らくベースはブラス(真鍮)製と想像する。黒文字盤はマットと光沢の中間のような落ち着いた黒色。BAR-INDEXと王冠マーク、そしてロゴが金色である。絶妙のカラーバランスではあるまいか。時針やケースの金色とも当然ながらマッチングはピタリ。文字盤の裏面も丁寧な作りだ。裏面の2時と3時、7時と8時の間に2箇所、固定用の縦爪が見える。BAR-INDEXの処理も念入りに2箇所づつ止め跡が見える。新品ゆえに取扱には傷や埃、指紋等を付けぬ様に細心の注意が必要である。

















(まるで映画『フェイス/オフ』のように、
     整形手術後の黒顔モデルはこうなるのだ〜)


黒色と金色。予想通り、狙い通りの仕上がりとなる。
⇒右写真の色合いは略、実物に近い。まるで『桃金+黒顔』のようで、イエローゴールド製とは思えない程。極めて『ちょい悪シック』の顔つきとなる。冒頭の写真とあわせ見て欲しい。ベゼルのデザインもシンプルなようで色々と考えられているのがわかろう。 『時計オヤジ』本領発揮のクロキンは意外と嫌味が無い(と、思っているのは本人だけでも良いのだヨ)。

回転ベゼルはケース本体からはみ出す程デカイ。まるでホテル・ニューオータニの回転レストランを連想させる程の大きな径を持つ。ドバイのハイアット・リージェンシーにも同じような回転式レストランがある。そんな竜頭positionにまで張り出すベゼルも筆者の好みだ。因みにベゼルと竜頭の距離は約1ミリ程度とニアミスしている。ケース径36mmだが、それ以上の存在感を醸し出す所以だ。ともするとデザイン的には無骨のようだが、決して全体を損ねてはいない。約50年前から基本デザインは変わっていないが、古臭さは微塵も無い。こうしたデザイン力こそがROLEXの真価であり、『時計オヤジ』が理屈無く好きになった点でもある。今やベタ惚れ。どうしてこんな素敵なケースを、新型turn-o-graphで意匠変更してしまったのだろう?しかし、それが『時計オヤジ』の旧型に対する物欲を一層そそり立てる一因となったのはマチガイナイのである。




(ROLEXの良さとは何か〜)

そんな大それたことを論評する気はサラサラ無い。
時計は所詮、嗜好品だ。十人十色。好きな人は好き、嫌いな人は嫌いで良いのだ。但し、人前で身に着けるべき時計は極力、質実剛健で品の良い時計が宜しい。ROLEXのDJやCARTIERのタンクやサントスガルベあたりがその人の良い趣味を物語ってくれよう。余りにコテコテのコンプリモデルやこれ見よがしのフランクのカラードリームズ何ぞはお控えあれ。

現在の筆者にとって、ROLEXの位置付けは『実用時計としての王様』である。DJこと『黒顔デイトジャスト』と共に、この『黒金サンダーバード』は、このまま自分の『生涯アガリ時計』になっても良いかな、と、ふと思わせてくれる程。価格やブランドではアガらない。あくまで自分のこだわりにどこまで合致してくれる時計であるかが勝負だ。上を見ればキリがない。欲を出してもキリがない。PATEKの宣伝コピーのように、ドレス時計を親から子へ世代を超えて受け継ぐというのも良かろう。否定はしない。しかし、PATEKのドレス時計、金時計では少々『重い』ものもある。一方、このT-BIRDのように実用時計であればもっと気軽に、親から子へと世代の橋渡しに成り得るのではあるまいか。

DJのケースの意匠・作りは、至って飾り気の少ない質実剛健なもの。ムーヴにしても工芸品的な要素を求める対象にはならないだろう。見方によってはつまらない。しかし、あくまで日常の使用条件を考慮した場合の実用時計としては、価格、デザイン、時計の中身、の総合的なバランスは見事に保っている。その上で、夜、自宅で独り酒を飲みながら、にやにやと鑑賞する対象にも充分成り得るのだ。それを否定するのであればもっと昇華した世界へ行くが宜しい。好みである。

一時期、あれ程避けていたROLEXであるが、原点回帰、温故知新の魅力に今やどっぷりと浸かる『時計オヤジ』である。もし更にこれが裏スケであれば、この黒金サンダーバードで本当にアガっても不満は無い(・・・多分・・・)。PATEKもLANGEも皆、さようなら、と言いたいところだ。願わくば’森下のCARESさん’で裏スケ加工を受けてもらえれば、まさに時計オヤジ冥利に尽きるのだが・・・。


ざっと、お気に入りの点を羅列してみる:

●総合力の高さ: ケース、ブレス、文字盤、ムーヴメント、全体の雰囲気と品格、の5条件が全て調和している。多分に主観に左右されるのでそれを具体的にどう調和しているのかを記述するのは可也難しい。そこが時計の楽しさでもあり、危なさでもある。こうした調和を感じる嗅覚そのものが時計好きの時計好きたる所以。まさに時計好きの醍醐味がここにある。

●ケース: ベース素材はSSであり、腐食に強く、少々傷付いた場合にも研磨も可能だ(実証済)。何よりも日常使いで遠慮不要である。貧乏性の時計オヤジには仮に雲上時計の金無垢ケースであれば毎日、無造作に使用する訳にも行かない。しかしROLEXはコンビケースであれ、金無垢であれ何故かガンガン使う気にさせる時計だ。そして、クロキン・コンビの派手派手しさは、『時計オヤジ』の年齢と渋さ?で上手くバランスしている。表面はヘアライン仕上げ、側面は綺麗なPOLISHED仕上げ。これもシックである。尚、1995〜6年モデル頃より、ラグにあったバネ棒の貫通穴は無くなり、クローズドとなった模様。筆者のモデルにも当然バネ棒穴は無い。

尚、防水性に優れたオイスターケースが売りであるが、DJの防水性能は100mである。最近の日常強化用防水10BARと同等である。DJであればダイバー用途ではないので、せいぜい水しぶきに対応すると考えた方が無難だ。水泳用などにはそれなりの時計に着替えた方が宜しい。因みに水泳用には200m防水性能クラスのダイバー、若しくは安価で壊れても良い時計で対応するのが『時計オヤジ』のシキタリである。

●回転ベゼルの幅: 文字盤の大きさに比してベゼルの幅がやや狭い。細いのだ。さすがに時代性を感じさせる。しかし、ここが逆に『現代のクラシック』たる所以。この微妙なる懐古趣味、シーラカンスのような粘り強いデザインが逆に魅力となるのだ。

●ブレス: ジュビリーであれば、長年の使用で緩みも生じる。中3列が板プレス製であるのでどうしてもこの部分に延びが出るのは仕方あるまい。ROLEXがそこまで計算して設計したとまで言う気は無いが、ケース同様に研磨が可能であり、5連駒による輝きもROLEXとしての記号性を有する。緻密に完成された飽きの来ないデザイン、である。2004年にモデルチェンジをした最新型のブレスは全て無垢製。当然、重さも、耐久性も精度も増した。しかし時計オヤジはROLEXの伝統的な従来のブレスを好む。ブレスの緩み、いいじゃぁないか。それもこれも好きであれば皆、『持ち味』に変わるのである。

●文字盤: これはROLEX得意のバラエティの多さと作りの良さが魅力。文字盤の裏側まで誰も気にしないだろうが、上写真でも分かるようにまさに裏表無い仕上げは、丁寧で信頼できる。

●針: ハンズ、いわゆる時針のデザインも極めてオーソドックス。やや絞りのあるバータイプだが、中央にくびれがあり、夜光も塗られている。新型のロレゾールではこの時針デザインも太めとなり、今まで見慣れた感覚ではちょっと違うと感じる。旧型のスリムなハンズ。やはり、長年見慣れたせいかROLEXにはこちらのでデザインがピタリとはまる。そして最大の美点は針の長さにある。特に分針が文字盤周上にあるINDEXにまで届く長さ、これが古典的でクラシカルな味を産み出す要因である。最近の時計ではこの長さのバランスが崩れたモデルが多い。寸足らずな針ほど醜いものは無い。

●ムーヴメントの出来映え: 31石、COSC認定、高速8振動/秒の信頼性と長寿を誇る点は世界中で実証済み。精度は保証付き。ペルラージュ仕上げも見事。文字盤側の仕上げも同様。一説によれば、ハイビートゆえに一部パーツの磨耗も激しいとも聞くが、日本国内であれば万全のアフターサービス体制がある。部品の調達・交換にも不安はない。OVH費用は決して安くは無いが、それでも雲上モデルの8〜10万円以上を考えれば、まだROLEXはリーズナブルではなかろうか。


(⇒右写真)高級ムーヴの証、
ブレゲヒゲBreguet Overcoil採用、両持ち式によるフリースプラングfreesprung式テンプ(=マイクロステラナット式)、効率良い両方向式自動巻きデイトジャスト機構、等など。もう15年も前からこうした革新的な機構を一部高級機種にではなく、『一般モデルの量産ムーヴ』に組み込んだROLEXは本当に凄いと感じる。こんな素敵な見所満載ムーヴは是非とも裏スケ仕様にして欲しい。ムーヴ径28.5mm、6.0mm厚。5-position/temp調整。


筆者はどんなに精度ある平テンプより、スワンネック式緩急針付きチラネジや、緩急針が無いとは言えジャイロマックス式やヴァリナー式テンプ等のフリースプラング式(自由振動ヒゲ)に魅かれる。精度を超えた問題。あくまでデザイン優先。テンプ周りに手をかけていますよ、という古典的、and/or近代的手法に憧れるのだ。CAL.3135の両持ち式ブリッジの利点は、ブリッジ両端下にあるネジを調節することでテンプを平行に保つことが出来ること。引いては天芯アガキ調整が楽に行える、ということだが同時に視覚的な安定感、デザイン的な美的バランスも生み出している。4つのマイクロステラナット方式と共に15年以上も前に設計されたとは思えぬほど良く出来た意匠ではあるまいか。

チラネジ方式にも似ているマイクロステラナット(=スクリューネジ)による調整は緩急針式よりも面倒ではないかと常々疑問に感じていたが、銀座・天賞堂の名工・唐牛氏によるコメントが興味深い。
『古典的なディテールなのですが、これのほうが調整が簡易に思える緩急針よりも、容易に微調整が利くんですよ。』
(2005年7月20日発行 世界文化社刊『別冊Begin 時計Begin やっぱり欲しい100年ロレックス』75頁より引用) 



香箱がダブルバレルでなくとも良い。ローターにジュネーヴ・コート(ストライプ)が無くてもこの際、良い良い。ROLEXの現行CAL.3135は雲上ムーヴではないものの、手が込んだ出来映えであり、ジュネーヴシールクラスにも負けない(⇒いや、絶対負けるけど、満足度では互角だね)高級&良心ムーヴであると考えている。比較的手の届きやすい価格帯ということもROLEXらしい。こうした全ての要因が不思議な安堵感、安心感をもたらすのだ。コストパフォーマンスという点からみてもOMEGA同様、ROLEXは納得尽の『良心時計』である。


そんなことまで考えてROLEXを使用する人は『時計オタク』(注)くらいであろう。
関心の無い人にはROLEXというブランド・バリューが全てかも知れない。それでもいいじゃないか。誰が利用しようとも、『精度と満足感』を叩き出してくれる安心時計。それがROLEXのROLEXたる所以だ。

(注)広辞苑によると、『オタク=御宅。特定の分野・物事にしか関心が無く、その事には異常なほどくわしいが、社会的な常識に欠ける人』とある。この定義に照らし合わせると、『時計オヤジ』は異常なほど時計に詳しくも無いし、常識に欠ける?訳でも無い。すなわち中途半端な時計好き、ということになる。成る程、あっているね。



(『時計オヤジ』の考えるDJの好敵手とは〜)

クロキン、サンダーバードのライバルは誰か?
完成された時計には完成されたライバルしか戦えない。順不同に打倒ROLEXを挑むのは以下の3本:

1)OMEGAシーマスター・アクアテラ(⇒右写真):
  コスト・パフォーマンス観点からも、デザインからもベストの1本。
  裏スケ、防水150m、ムーヴメントの革新・コーアクシャル搭載。
  そしてROLEX同様、フリースプラング方式のテンプ付き。
  文字盤もシックな作りで、ブレスも最新の延長式クラスプ。最大にして最強のライバル。
  価格帯も極めて妥当。良心時計の第一候補、アクアテラにはオメガの底力を実感する。
  余談だが、今年発売となったダイバーズウォッチPLANET-OCEANはデザイン・質感共に優れものだ。



2)AUDEMARS PIGUET ロイヤルオーク オートマティック 18KPGモデル(⇒右写真):
  ケース径39mmと拡大され、美しいcal.3120搭載。表も裏(スケ)も顔立ちハンサム。
  文字盤はパテックのノーチラスや18金製パネライRadiomir 8-daysカーボンダイアルにも通じる立体格子デザイン。
  22金のローターにはオーデマ家とピゲ家の紋章が彫金され、繊細なジャイロマックステンプもROLEX同様、
  両持ち式である。ピンクゴールドのケースと茶色クロコの色彩バランスの妙。
  オーバー200万円ながら、こいつでないとROLEXクロキンには対抗出来ないのだ。
  このロイヤルオークはオンリーワンの格付けであり、ピラミッドの頂点に君臨するクロキン時計。
  片やROLEXはピラミッド上部に位置するがロイヤルオークほどではない。
  やや裾野が広い分だけ、逆にゆとりや、各種バラエティもあり、ユーザーの嗜好に様々な形で答えてくれることは
  ご承知の通り。ROLEXと価格帯が違っても、それぞれ持ち味があることが時計の楽しみでもあり、難しい点でもある。




3)PATEK PHILIPPE・JUMBO アクアノート REF.5065/1A 38mmケース径(⇒右写真):
  
こちらもAP同様にジュネーヴシール取得の超美麗ムーヴCAL.315SC搭載。
  ロイヤルオーク同様にジェラルド・ジェンタのデザインWORKによる。成る程、何故か雰囲気は酷似! 
  パテックらしくない彫りの深い大胆な格子状の黒文字盤に、無骨なアラビア数字INDEXが並ぶ。
  中3針のデイト付き。ロイヤルオーク同様にジャイロマックステンプが裏スケから見えるのが美しい。
  防水機能はきっちりと12気圧ある。この時計をして海に入る必要性は無いが、まずは安心の防水レベルだ。
  このブレスタイプが特に宜しい。気がかりはやや大味なベゼル周りのデザイン処理。
  それでも時計オヤジが今、一番欲しい!!!モデルでもある(
あらら、もう別の物欲が・・・)。
  LUC1.96の手前、ドレスモデルではかぶってしまう。
  2)のロイヤルオーク同様、ジェラルド・ジェンタがデザインを手掛けたのも頷ける。さすが、ジェンタ!!!



4) SEIKO5 SUPERIOR Automatic 40周年記念 :
  思い切りハズしてしまった (←左写真)。
  写真では分かり難いがAP同様にダミエ模様の格子パターン黒文字盤に金ピカケース。
  PATEKのアクアノートと同様な格子模様の文字盤だ。 
  自動巻き、裏スケで100m防水。
  値段も適正、重厚感も抜群。コストパフォーマンスの元祖、SEIKO-5。
  こいつもいつか詳細を紹介することにしよう。







(ROLEX、『黒文字盤の妙』〜)

一見すると平凡な文字盤も、ROLEXの王冠マークが付いたとたんに燦然と輝くように見えるから不思議だ。
王冠マークとROLEXのロゴにより、その文字盤は別次元のモノへ昇華し、見る者を魅了する。ロレックス・マジックである。

王冠マークが登場したのは1940年代に入ってからだ。当時は12時INDEXの下に配置された模様。50年代に入ると、完全に12時位置そのものに王冠は『格上げ』されて配置される。王冠伝説の始まりである。当時のカタログや文献を見る限り、その文字盤デザインの豊富さにはため息が出る程。ただただ感嘆する。

そして王冠マークは時代と共にその形状、大きさにも多少の変化が見て取れる。王冠マニアにはそうした微細な意匠の多様性がたまらない味となっていることだろう。

加えてROLEX文字盤は、その多彩なデザインとバランスのとれた仕上げの良さで、ROLEXの王冠伝説に拍車をかけている。サブマリーナやエクスプローラー等のスポーツ系の黒文字盤は、特にバランスある強靭な顔立ちが完成されている。現行のEX1等はアラビア数字INDEXのデザイン、作り込み等、その精緻な仕上げに感動さえする。そうした黒顔、黒文字盤をドレス系のDJに導入することで、スタンダードで平凡な印象をガラっと精悍な印象に変えてくれる。

DJの黒文字盤の意匠にも様々なバリエーションがあるのもROLEXの凄さである。
筆者お気に入りの黒顔デザインとしてはダイアル周上にレールウェイINDEXがあることがMUST。
その上でベスト3の黒顔は以下となる :

1)ピラミッド・パターンが背景のビッグローマン黒文字盤
  (⇒ 『黒ピラミッド』は女性用では現行品でも存在するが、紳士用では極めてレア。
    二世代前の1980年代品にしか見られない。迫力満点である。
    右写真はそのアイボリー文字盤だ。)
2)縦溝模様があるタペストリー黒文字盤、BAR-INDEX 
  (⇒ref.16013では存在したが、現在では極めてレア。)
3)コンピューターロゴ入り黒文字盤、スモールローマンINDEX
  (⇒これも実在するとの情報はあるが未確認・・・)



そうした模様入り背景の黒文字盤も良いが、今回はエナメル仕上げのような、艶消しのような何ともビミョーな仕上げの黒文字盤である。金色のBAR-INDEXとの相性も文句なし。この先、何年経とうとも飽きが来ない普遍的デザインであると確信している。ココまで来ると、ROLEX文字盤は単なるパーツとしての文字盤を超えた存在感、風格さえも醸し出す。



  R     O     L     E     X     D     A     T     E     J     U     S     T


ROLEXとは摩訶不思議な魅力を持つ時計である。

ROLEXをしていれば、自分の欲求もそれなりに満たされ、人前で後ろ指を差される可能性も低かろう。
一般社会生活においてもその『記号性』はかなりの程度存在する。時計に詳しい人でも、そうでない人でもROLEXさえ着けていれば一安心、といったある種の保険的な意義付けもあろう。まるで、『盆踊り、皆で踊れば怖くない』とでも言うべき安心感と抜群の知名度を有する。ROLEXというブランドは今や、特に日本国内においては、そのブランド価値観の中にユーザー自身が埋没してしまう程のパワーを秘める「ブラックホール的な時計」かもしれない。

仮にランゲやパテック、イェーガーあたりを身にするユーザーであれば間違いなく可也の時計好きであることは容易に察知できる。が、ことROLEXのユーザーに対しては即座に判断できぬ匿名性があるのだ。逆にそれ程のパワーがある時計ブランドゆえに、磁石じゃあないが反発するユーザーもいよう。『時計オヤジ』は敢えてその埋没に身を委ねる楽しさを、まるで海草の中で揺らぐ小魚のように、故意であるか否かに係わらずに満喫している、というところであろうか。

そして、自分で言うのも甚だおこがましいが、ROLEXのDJシリーズに関する限り、『時計オヤジ』はごく自然に自分の道具の一部として、見栄も衒いも照れも無く、ようやく使いこなせるステージにたどり着いた気がする。

『ROLEX、恐るるに及ばず。我、泰山に到達す。。。』(2005/08/15)





(加筆修正: 2005/8/15初稿掲載。 2005/9/24、2006/2/25、2006/10/21、2008/07/06加筆修正、2008/4/13写真変更、2009/03/20)。)


(参考文献)
「ロレマグ」ROLEX ONLY MAGAZINE VOL.2 (成美堂出版刊)
「世界の傑作品02 名品ロレックス サブマリーナ」(ワールドフォトプレス刊)
「時計Begin別冊 やっぱり欲しい100年ロレックス」(世界文化社刊)

「世界の腕時計 Vol.14」(ワールドフォトプレス刊)




追記1)
2009年1月。念願の黒ピラミッド文字盤をサンダーバードに装着する『プロジェクト』(大袈裟!)を立ち上げた。
その出来映えは期待以上(⇒右写真)。
詳細は『随筆シリーズ(71) 黒ピラミッド文字盤の妙』を参照乞う。(2009/03/21)



追記2)
2009年度のBASEL WORLDがいよいよ開幕した。ちょっと驚いたのはDATEJUSTで41mm径が発表されたこと。
通常モデルより一気に5mmも拡大された。不滅の36mmモデルは生産継続されるだろうが、遂にと言うべきか王者ROLEXでさえ拡大化の波には抗し切れなかったということか。40mm径を超えた『巨大DATEJUST U』には即座に共感は出来ない。と、同時に『変化させない継続の哲学』の権化であったROLEXにも、ここ数年で一つの大きな転換期が到来していると感じる。ROLEXは確実に変化・進化を加速させているのだ。(2009/03/28)



(参考)『時計オヤジ』のROLEX3部作はこちら:
ROLEX OYSTER-DATE PRECISION REF.6694はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3035はこちら。
ROLEX DATE-JUST CAL.3135(Thunderbird)はこちら。

ROLEX 角型手巻PRINCE CELLINIはこちら。
TUDOR PRINCE DATE ユニークダイアルはこちら。
ROLEX SUBMARINER REF.16610LV(グリーンサブ)はこちら。

『ROLEX DATEJUSTにみる黒ピラミッド文字盤の妙』はこちら


『極上時計礼讃〜パテックフィリップ・AQUANAUT旧型ラージサイズ』はこち



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