OMEGA オメガ

OMEGA CONSTELLATION CHRONOMETER AUTOMATIC CAL.564 



大御所、オメガである。

説明不要の歴史的な大手メゾンだ。ROLEXほどのステイタス性がない実直なところが潔い。アポロと共に月へ行ったSpeedmasterは有名すぎるが、一方でこのConstellationもビジネス用として長年、ロングセラーを続けている一大シリーズである。余談であるが、アポロ11号の月面着陸の実況中継で、確か西山千氏、鳥飼久美子氏らの同時通訳を聞きながら四本足の白黒TVにかじりついていた当時が懐かしい。米国レベル社の月面着陸船ルナ・モジュール(プラモデル)を夏休み明けに自慢げに学校に持っていった小学生であった。。。






(パワーアップする現代オメガのラインアップ〜)

一昔前は三種の神器として崇められたが、現在でも結納返しの腕時計ブランドNO.1として特にSpeedmasterが絶大な人気を堅持しているオメガである。堅実性と信頼性に基づく伝統、そこそこのブランドネームヴァリュー、スイス製老舗、というところがキーワードか。Speedmaster、Seamaster、Constellation、De-Villeがオメガの4大ラインであり、それに加えて近年ではSpecial EditionのMuseum Collectionもオタク心を煽っている。また、全製品CO-AXIAL搭載を目指して、昨今ではその商品展開も更に攻撃的である。特に今年春にはDe-Villeの35mmダウンサイジング・モデル、Aquaterraクロノ、そしてRailmasterクロノやらを立て続けに発表し、その商品ライン強化には目を見張るものがある。品質に見合う適切な価格設定にも個人的には好感を抱いている。SWATCH-GROUPにいる強みを最大限に発揮しているのが今のオメガではなかろうか。



現代における「最高の実用時計」 として筆者はSeamaster Aquaterraを推しているが、コストパフォーマンスからも、時計としての総合的な実力からも奮闘を続けているオメガである。2004年バーゼル発表の18金無垢製限定CO-AXIALモデル(BIG-DATEや秒針小ダイアル文字盤)や、オリンピック復刻シリーズ(クロノグラフ)も中々どうして魅かれるモデルである。基本にはクラシックデザイン思想が流れているようで、こうしたところも筆者がオメガを身近に感じる所以だ。




(「良い時計」とは一体何であろうという大きな命題が〜)

前出 スイス時計巡礼の旅を終えて以来、自分なりに「良い時計」を探し求めてきた。そして今までにいくつかの時計が手元に残っている。その内の一つとして非常に満足出来る「良い時計」がこのOMEGA CONSTELLATIONである。

現状において自分なりに辿り着いた「良い時計」の5か条とは、
1)信頼がおける「時計メーカー」のブランドであること
2)デザインに独創性があり、かつクラシカル路線にあること
3)そのムーヴメントの仕上げも丁寧で、継続生産されてから3年以上経過していること
4)全体のデザインバランスが自分の嗜好と合致すること
5)これから最低10年以上に亘り所有する喜びが得られると納得できる時計であること、、
、等などである。


一過性の流行にとらわれず、落ち着きがありながら、革新性も秘めた時計。ムーヴメントも信頼出来、リペアも長年に亘り可能である、そんな腕時計が理想だ。ドレスウォッチの条件として更に具体的に突き詰めれば、目立たないこと、ケースサイズは34〜37mm径と小振りで「クラシックな顔」を持つこと。そして、研磨を考えるとSS製であれ貴金属製であれ、出来ればケース素材は無垢が良い。ケース形状は特に問わないが、自ずとラウンド中心となろう。



(この時計の特徴と気に入った点〜)

スイスのオメガ本社よりの回答では、このムーヴメントの生産年度は、1972年6月23日。黄銅色のCAL.564は24石で1965年に生産開始したそうだ。今なお30年以上前のムーヴの生産年月日まで分かるとは、オメガの製造責任を全うする真摯な姿勢を実感する。ドイツのライカにも通じる心意気だ。こういうところが一流の証である。これこそ上述「良い時計」の条件(1)の面目躍如だ。19,800vph(5.5振動/秒)、スワンネック緩急針付きの当時のオメガとしては熟成されたムーヴメントはCAL.500系を改良したCAL.550(17石)⇒CAL.551/552(24石へ多石化)⇒CAL.561/562(日付機構付加)⇒CAL.564/565(日付早送り機構付加)、と進歩してきた(注:左記キャリバー以外にも種類はまだまだ有るが省略)。尚、CAL.500系まではチラネジ付きテンプ、CAL.550以降は平テンプに変更されたようだ。18K金無垢のケースサイズは幅34.4mm、長さ42mm、ベルト幅サイズは18/15mm。まさに理想のサイズ。18金無垢の適度な重みが心地よい。

時刻合わせはリューズを1段引き出して、日付早送りはリューズを2段引き出す毎に先送りできる。最近の機械の感覚で行うと、すぐに2段引き出してしまい日付がずれてしまう。多少の慣れが必要である。裏蓋の天文台デザインの刻印もまだ摩滅していない。風防はプラスティック製ゆえ、現在においても何時でも新品に交換可能であるのが嬉しい。






(オメガのデザイナーに敬意を表したい〜)

こうしたムーヴメントも素晴らしいが、同時に文字盤のデザインが非凡かつ秀逸である。通称「12角文字盤、12角ダイアル」と呼ばれる中央部が立体的に処理された文字盤は、富士山を平らに潰したような形状にも見える。現代でここまでデコラティブな文字盤は少ないが、今年に入ってからのDe-Ville限定モデルには同様の傾向が見られる。筆者はこういうデザインが大好きである。

植字式のBAR INDEX、短めながら視認性に優れる古典的なドーフィン型dauphineハンズ等、見所は満載。派手な面は皆無でありながら、唯一無二の独創性を誇る。実際に装着するとその満足感は更に高まる。イエローゴールドでありながら、シャンパンゴールドのように微妙で柔らかい色合いと重厚な感触が楽しめる。今の自分にとっては、こうした小振りな金無垢ケースは決して嫌らしくは感じない。逆にこれから更に歳をとればとるほど味わい深くなる時計として愛着が持てるのだ。ケース本体に溶接したような独特のラグ形状も個性的だが嫌味はない。”18K”のホールマークもラグ裏側に見える。この時期のCONSTELLATIONの特徴の一つにもなっている造形美を誇るラグである。





(クラシカル・ウォッチとの付き合い方〜)

ベルトは黒色・竹符模様のオメガ純正クロコダイルを装着した。「人肌には金」、「金無垢にはクロコダイル製本革ベルト」が王道である。

このオメガにはDバックルは使用せず、敢えてクラシカルな美錠を利用している(右写真⇒)。今や年季の入ったアンティーク品にも属するゆえ、湿度や使用環境には細心の注意を払いつつも日常使用として、まだまだ現役として十分に活躍できる。時計とは本当に世代を超えて愛用できる素晴らしい機械であると実感する。こうしたことは車や家電製品では、今やまず味わえぬことであろう。

歴史を振り返るとこのオメガのように素晴らしい時計がまだまだ周囲に沢山あることに気づかされる。そして、それがもしアンティーク品であれば物によっては決して高嶺の花ではなく、何とか手の届く範囲にあることも多い。あとは運と出会い、そして個個人の価値観次第かも知れない。一昔前は人の使った「中古品」には一切の興味がなかった筆者であるが、時計の世界を知れば知るほど、そうした片意地な拒絶には意味が無いことを悟り、以前の狭い考えは自然と融解していったのである。一方で、この世界は奥が深すぎるゆえ、これ以上の深入りも止めておこうと自制しているのだが誘惑は尽きない。せめて知識と興味だけはこれからも増幅させたいと思っているのだが。。。

この12角ダイアル・金無垢コンステレーションは歴史的に見ても、肩肘の張らないデザインでありながら普遍の独創性を誇る。
まさに正真正銘の逸品。オメガの傑作品として至極気に入っている。(2004/06/05)


『ちょい枯れオヤジ』のオメガ関連WEB:

「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8501のレポート』はこちら。
「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8500/8501をジュネーヴ展示会で見る』はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 12角ダイアル」はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 ジェラルド・ジェンタモデル」はこちら。
「OMEGA SEAMASTER GENEVE CAL.565」はこちら。
「バンコク、再訪!」OMEGAコンステCライン購入記はこちら。
「トルコのグランドバザールで12角・黒文字盤と遭遇する」はこちら。
『オメガ、新旧12角ダイアル・デザインの妙』はこちら。
『2006年1月の時計聖地巡礼記・その9、オメガ博物館訪問記』はこちら。 (2006/10/14)



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