OMEGA  オメガ

OMEGA "HOUR VISION" De Ville Cal.8501
(Part-2)





今年2月にジュネーヴCita de tempsの展示発表会で拝観してから僅か4ヵ月後、
6月にはアワービジョンが世界同時発売となった。
予想通りオメガ新モデルの上市(発売)は早い
『時計オヤジ』も早速実物を手にしたが、流石に出来映えは”地味”ながらも素晴らしい。(2007/7/22)




(ロンドン、そして青山のオメガ・ブティックにて実物市販品を手にする〜)

2007年6月、ロンドンと東京ではアワービジョンが遂に市販開始となる(今回からHOUR VISIONのカタカナ表記をアワー・ヴィジョンから便宜上、『アワービジョン』に統一する)。
ヒースロー空港DUTY-FREE内にあるオメガ・ブティックには早々に、新型アワービジョンが鎮座している。勿論、販売用である。
因みに、ロンドン市内におけるブランド時計の量販店は老舗デパートのハロッズHarrodsとセルフリッジSelfridgesが2大巨頭。これに続くのがマッピンウェブMAPPIN&WEBBと時計専門店のウォッチィズ・オヴ・スゥイッツァランドWatches of Switzerlandだ。ヒースローT4にあるM&W免税店は中々の品揃えである。ロンドンでは高級時計が日本のように日用雑貨・家電量販店等で売られることはまずない。ROLEXが日曜雑貨品と並ぶことなど有り得ない。よってブランド高級時計が値引きされることはまず無い、と考えるべきだ。

しかし、流石の老舗デパートでもアワービジョンはまだ登場しておらず、逆に6〜7月はセールSALEの季節で、ブランド時計も3〜6割引で販売されている(一部の旧モデル限定)。まだまだ生産数が少なく、また販売ルートもオメガブティックなどを優先しているのだろう。東京の某オメガブティックの話では、入荷は今のところ限定的であり、原則予約制での販売だという。需給バランスが整うのは時間の問題であろうが、オメガ久々のインハウス・キャリバーということもあり、もう暫くは不安定な供給体制が続く予感がする。

それにしても実物は素晴らしい。
Cal.8501では両持ち式のテンプ受けとローターが18金製。変速7振動@秒はオメガ独自のもの。2バレルのフリースプラング式コ・アークシャル脱進機は、ローターの18金製を除けば、かなり実用的なキャリバーという印象だ。ROLEXのCal.3135を連想するのは筆者だけであろうか。3135の仕上げを丁寧にするとこうなる、という印象だ。最近、流行の複数バレル搭載ではあるが、理屈ではトルクやら振り角の安定云々と色々言われるが、正直のところ果たしてロングパワーリザーブを目的としないキャリバーでツインバレルが必要か、という疑問は未だに抱いている。

18金製のケースのせいもあってか、可也重厚で品格漂うアワービジョンである。


(例の『横スケ』には何も感じないのが残念〜)

横スケルトンに技術的先進性は感じない。
地板や歯車の複層構造を見せたところで、機械式時計の醍醐味を感じるかどうかは別次元の話に思える。先にも述べたが、やはりスタンダードなドレス時計を標榜するのであれば、ケースサイドのふくよかな曲面ラインはケース素材そのもので表現して欲しいところだ。どうせならサイド部分にコインエッジ処理を施したり、別素材の18金を複合成型させるとかでも良かった。カルティエのトリニティリングのように、ケース素材を同じ18金でもホワイト、ローズ、イエロー等で区分けして作る方が横スケより面白いし、ドレッシーになると思うのだが。時計ケースには正々堂々とケース素材へのデザイン処理をして欲しいと望むところだ。

サイドの厚みは右写真のようにかなりのボリューム感が十分ある。
ケース径は38mm程度であり、現代のスタンダードサイズとして存在感をアピールする。これが40mmまで行くとチト大きいだろう。この辺のバランス感はオメガは良く研究している。ターゲットたる消費者層と、この時計の『立ち位置』を良くミックスさせた結果だろう。横スケは蛇足だが。



(← ラグの間もスケルトンとなっている〜)

ブレスレットモデルは弓カンが無い。この部分がデッドスペースとなる。
どうしてこのようなデザインにしたのか不思議であったが、まさかラグの間のサイド部分までスケルトンにされたとは思わなかった。よって、見せるために敢えて弓カンを廃止したのだ。そうであれば納得であるが、時計を着用する本人も、他人にも横スケルトンが与えるインパクトはどれ程あるかは疑問だ。

文字盤のデザインは筆者好みである。
かつての『12角文字盤』を彷彿とさせる近代バージョンとでも言うべきであろうか。
見る人が見ればオメガ伝統の意匠をリファインしたものと察しがつくだろう。夜光塗料は使われていないが、機能を追及することだけがデザインではない。敢えて夜光も省くINDEXも現代では逆に斬新。それ以上に文字盤の仕上げが凝っている。
時針も、特に分針は文字盤外側まで一杯に張り出している。INDEXにまで届く秒針、分針が昨今のモデルでは殆ど無いが、ネオ・クラシック時計である為には『必須』の条件、である。秒針・分針が短い『寸足らずモデル』が何と多いことか。こうした中3針処理も流石、オメガにはお手の物であろう。

18金製ケースは別としてもSSブレスレットモデルでも邦貨70万円以上というのはどうだろう。
昨今のインフレ気味のスイス高級時計業界において、やや大人し目の価格設定とは言え、やはり高すぎる。
インハウスキャリバー搭載となると必ずこうなるのだろうが、オメガに限ったことではないがちょっと納得間に欠ける価格ではあるまいか。




(シングル式のDバックルも丁寧な造りで不満は無い〜)

シングル式のDバックルはややショートタイプで装着感を狙っている。
18金製ゆえにオメガ独自の延長式クラスプではないが、これはこれで使い易そうなDバックルである。

このアワービジョン、対抗馬はやはりROLEXデイトジャストだろう。
両雄の看板モデルとしてこれからも長く君臨することは間違いない。
それにしても最新のオメガのカタログを見ると、そのモデルの多さに驚く。
キャリバーのコ・アークシャル搭載化は着々と進行しており、今やスピードマスターにまでコ・アークシャルが使われている。ETAベースのcal.2500系キャリバーも、これから随時、8500系に変更されるのであろうが、その結果、価格ばかりが高騰することに目が行ってしまうのはユーザーの立場としては当然。こうした新キャリバー開発競争とその結果のインフレ価格には、少々食傷気味である。パネライの3バレル自家製ムーヴしかり、セイコーのスプリングドライブもまたしかり、である


大御所オメガが作る新キャリバーには信頼性の問題は少なかろう。
仮に問題が発生したとしても大手メゾンのアフター体制は万全である。こうした点は新興メゾンやファッション・メゾンには到底、マネ出来ない。あとは横スケ含めたデザインだ。価格帯との全体バランスをどのように評価するかで決まってくるが、筆者の総合評価はまだ暫くお預けだ。全体の質感は可也のレベル、ということは間違いない。(2007/08/04)


追記1) 
日本版クロノス(Vol.12、8月3日発売号)にアワービジョンのテストレポートがある(P.110〜114)。100点満点で94点の評価はROLEX新型GMTと並んで過去最高得点であろう。どうやらプロの目から見てもCal.8501搭載のこのモデルは『死角がない』との素晴らしい賛辞を受けている。極上時計の部類に入ることは間違いあるまい。あとは文字盤の「ラーメン渦巻き」含めて各自の好み、である。(2007/8/10)



『ちょい枯れオヤジ』のオメガ関連WEB:

「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8501のレポート』はこちら。
「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8500/8501をジュネーヴ展示会で見る』はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 12角ダイアル」はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 ジェラルド・ジェンタモデル」はこちら。
「OMEGA SEAMASTER GENEVE CAL.565」はこちら。
「バンコク、再訪!」OMEGAコンステCライン購入記はこちら。
「トルコのグランドバザールで12角・黒文字盤と遭遇する」はこちら。
『オメガ、新旧12角ダイアル・デザインの妙』はこちら。
『2006年1月の時計聖地巡礼記・その9、オメガ博物館訪問記』はこちら。 (2006/10/14)



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