![]() オメガの新モデル、Cal.8500/8501搭載 アワー・ヴィジョン”HOUR VISION ”デ・ヴィルを拝観した。 場所は『時計王国』、ジュネーヴ市内の”Cite du Temps”。 Cal.2500から一体、何が進化したのだろう。それ以上に文字盤、ケース、ブレスデザインが気にかかる。 やはりデ・ヴィルはオメガの『実験ブランド』なのだろうか?(2007/2/21) |
(2007年2月某日、『時計王国』ジュネーヴを緊急訪問する〜) ![]() 2007年1月23日、オメガは自社製新キャリバーを搭載した新デ・ヴィルを発表した。 それから遅れること約1カ月、『時計オヤジ』は『時計王国』たるジュネーヴ本拠地に乗り込んだ。目的はその新作アワー・ヴィジョン(以下、HV)を拝観すること、そして自前フランクミュラーの『改良』にある。 場所はローヌ河にかかるマシーン橋上の”Cite Du Temps”(シテ・デュ・タン)。隣は観光案内所、直ぐ裏手にはヴァシュロン本店ブティックやフランクミュラー・直営ブティック第一号店が立ち並ぶイル島という絶好のロケーションにSWATCHグループ直営による”Cite Du Temps”(シテ・デュ・タン)がある(⇒右写真)。 1階は受付兼ホール。ここでHV発表のVTRを放映中。 2階にHVが展示。この階は随時、テーマによって変わる。 そして3階には常設コーナーの歴代SWATCH全モデル(略)が展示されている。見学無料。 ![]() (どうであろう、ニューモデルのこの顔立ちは冷静沈着〜) 時計の第一の重要なる魅力はその顔にある。 文字盤の出来映え、ハンズ(針)とINDEXの出来映えと全体のバランスが命だ。 HVはオメガの中ではクラシックラインのデ・ヴィルの新モデル。 限定モデルか、量産になるのか不明だが(限定という情報もある)、その顔立ちは現代的な直線基調で躍動感を産み出しつつも、突飛になり過ぎないように色合いも抑えている。放射状にシェイプを絞り込んだINDEXのデザインは、針の形状と調和を持たせているのが分かるが、こうした手法は50〜60年代のデザインを踏襲している。まさに伝統に立脚した新デ・ヴィルがHVのコンセプトかも知れない。奇抜さ、面白み、新味性は文字盤の表面上からは感じられない。 ところが、である・・・。 ![]() (見せる、というスケルトンの最終ウェポンが『横スケ』である〜) 左右のケース真横の4面がスケルトン構造になっている。 老舗メゾンとしては世界初。『裏スケ+横スケ』であるが、ここまでやる時代がついに到来した訳だ。デカ厚時計の欠点を逆に利用した横スケ。真横からもスケスケ度を楽しんで下さいとのメッセージであろうか。 筆者のようなネオ・クラシック派には申し訳ないが賛同し難い横スケである。それを敢えて、この伝統モデルにぶつけてきたオメガはチャレンジャーだ。デ・ヴィルの旧来のイメージに更に更に先進性、革新性を導入しようという試みであろうか。大御所オメガも大きく動き出そうとしている。しかし、ゼニスのように走りすぎないのは流石。ゼニスをかばう義理は無いが、一方でcal.680/685搭載のクラシックモデルをきっちり残しているのが『ゼニスの良心』とでも言うべきか。 さて、このHVの横スケであるが、当然、賛否両論あるだろう。そしてこれから多くのブランドが二匹目、三匹目のドジョウを狙って横スケに走る事は容易に想像できる。筆者がアンチ横スケの理由は、時計のケースサイドに『色香』を求めるからだ。ラグからサイドにかけて伸びるふくよかな曲線、そしてSS製であれ貴金属製であれ、その輝きこそ時計ケースの命である。 そのケースサイドに横スケというメスを入れることへの抵抗感。『秘すれば花』。まさに賛否両論の分かれ目である。 (耐衝撃性と防水性が気になる点だ〜) 昨今の裏スケでは、輪列さえ見えないスケルトンが多い中、横スケに何を求めるのであろう。 地板のサンドウィッチ構造?輪列や受板の美しい仕上げはどうなるのか? 恐らく機械が見える見えないよりも、今までに無い目新しさを狙うことが主眼であるのかも知れない。 しかし、左手にこの時計をするのであれば竜頭側の横スケに衝撃が加わる可能性は高い。右手に着ければその逆である。 レベルソのように裏スケを反転でもさせない限り、裏スケ、というのは防汗・防水性は必要であれ、手首側における裏スケへの直接の衝撃は少ない。 しかし横スケはそうは行くまい。ある程度の衝撃に耐えるにはガラス厚を相応にする必要がある。そして、強度に加えて防水性も必要となると、ケースはまるで車のシャシーのごとく強靭な骨格となり、ガラスとの接合技術が必要になる。高度な技術の具現化であることは分かる。しかし、最終的にはやはり好みの問題となる。 ブレスはまるでSEIKOやCITIZENの海外向けモデルにあるような、『いつかどこかで見た』近代的デザインだ。 実際に手にしてないので、しなやかさは想像の域を出ないが、SOLID感、塊(かたまり)感と密着性の良さを感じさせる。ケース同様に近未来的モチーフは、ネオ・クラシック路線とはかけ離れている。 |
![]() (← 目玉である新キャリバーは18金を多用したゴージャスな新コ・アークシャル〜) 旧来のコ・アークシャルのベースキャリバーはETA製。 今回は完全新設計の自動巻きとなる。Cal.8500/8501の2種類あるが、基本設計は共通している。ローターやテンプ受けが18金という違いはあるが、ほぼ同じキャリバーと言って良かろう。 大きな特徴は、202パーツ、COSC認定、100m防水、パワーリザーブ60時間、ダブルバレル、13リーニュ(30ミリキャリバーと同等)の大径キャリバー=耐久性増、そして緩急針がない両持ち式の4箇所フリースプラング式テンプ、である。テンプにある4本のアームは湾曲した弧のデザイン。そしてテンワは黒PVD加工のような仕上げとなる。中3針の自動巻きで202パーツは如何にも多すぎる。ダブルバレルの影響もあるだろうが、シンプルな中3針であればやはり部品総数は200以下、少ない方が良い。 丸でジェット機エンジンタービンのように、ローター上のコート・ド・ジュネーヴも弧のデザイン。受板は大きく3分割。輪列は殆ど見えない。この新キャリバーの実力は評論家のレポートに任せることにしよう。 ![]() (←左写真: 2階の特設展示場ではアワー・ヴィジョンの全モデルが展示されている〜) ブランパンの新キャリバー、Cal.13R0 をこの場所で見学したのは昨年10月。”Cite Du Temps”(シテ・デュ・タン)はSWATCHグループの広告塔である。こうした貴重な展示が、次から次へと略常設に近いのが素晴らしい、羨ましい。 写真のようにCal.8501が分解展示されている。 VTRによる新作発表プロモーションフィルムも鑑賞できる。 パテック博物館に次ぐ、ジュネーヴにおける新名所になるかも知れないシテ・デュ・タンである。 |
![]() (アワー・ヴィジョンの発売はバーゼル後の4月になるという情報が〜) ジュネーヴ市内にある新しいOMEGAブティックで発売時期について質問したところ、『恐らく』という前置き付きながらバーゼル後になるだろうとの情報を得た。毎度ながら、オメガの新モデル・リリースは早い。他ブランドのように、4月の発表・受注会を経て、秋口に納入・実際の上市となるペースよりは可也早まりそうだ。 筆者の勝手な想像だが、 @ターゲット顧客層は30〜40歳代 A価格帯は50〜100万円(18金)、対抗馬はズバリ、名機cal.3135搭載の新Date-Justだ。(⇒追記1参照) Bこの新キャリバーをベースに、今後、パワリザ付き、プチコンプリ永久カレンダー、ビッグデイト、GMTモデル系が期待できる。 実際に手にした印象は追記PART-2として継続FOLLOWしてみたい。 細かいことを色々と放言したが、コ・アークシャルを武器にしたオメガの積極性、チャレンジ精神には毎度ながら新鮮な感動を覚えることだけは告白しよう。(2007/2/24) 追記1)報道によれば価格はSSケース+アリゲーター付きで\672,000、ブレスモデルで\735,000、18KRGブレスでは¥2,656,500らしい。甘かった。現代のメジャーメゾンの値付けは『時計オヤジ』の肌感覚よりも2段階は高いレベルにある。特にダブルバレルの新キャリバー搭載、横スケということで、価格は更にインフレ気味。”アワー(我々の)・ヴィジョン”は”アワー・イルージョン(幻想)”に成りかねない、かも。(2007/3/24) 追記2)アワービジョン(Part-2)のレポートをUP(2007/08/04)。やはり最新の実物モデルは手にした迫力が違う。裏スケだけはイタダケナイが、それ以外の作り込みは見事に尽きる。 『ちょい枯れオヤジ』のオメガ関連WEB: 「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8501のレポート(Part-2)』はこちら。 「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8500/8501をジュネーヴ展示会で見る』はこちら。 「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 12角ダイアル」はこちら。 「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 ジェラルド・ジェンタモデル」はこちら。 「OMEGA SEAMASTER GENEVE CAL.565」はこちら。 「バンコク、再訪!」OMEGAコンステCライン購入記はこちら。 「トルコのグランドバザールで12角・黒文字盤と遭遇する」はこちら。 『オメガ、新旧12角ダイアル・デザインの妙』はこちら。 『2006年1月の時計聖地巡礼記・その9、オメガ博物館訪問記』はこちら。 (2006/10/14) ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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