OMEGA オメガ

OMEGA CONSTELLATION CHRONOMETER AUTOMATIC CAL.564 
(Case designed by Gérald Genta)



旅行記C「バンコク再訪」でも触れたオメガ・コンステレーションCAL.564は、2004年6月タイのバンコクで偶然の出会いにより入手した。

(バンコクにおける劇的な巡り会い・・・)
まさか、海外でこのような逸品に出会えるとは夢にも思わなかった。そして、またもや後先考えずに「清水の舞台」から飛び降りてしまった。今までこうして何度、身を投じたことであろうか・・・不死身の時計熱?である。腕時計の蒐集はしばらくお休みする決心であったのだが、こうした傑作品に、それも興味を抱き続けてきたモデルとの出会いはまさに一期一会にほかならない。このような美人、ならぬ美品に遭遇し、ここで行動に出ないでいつ出来ると言うのか。

躊躇無く決断が出来た。そこまで魅惑な時計、それが今回のCONSTELLATION CAL.564である。「静かなる貫禄」とでも言うべきその存在感は、光沢・黒クロコ革ベルトと相まってGOLD CASEはさん然と輝いていた。いわゆる「クロキン」の貫禄十分である。肝心の値段は極めてリーズナブル、良心的であったとだけ述べておく。但し、相応の交渉の結果であるが。


前出、「12角ダイアルの金無垢CONSTELLATION CAL.564」とほぼ同時期に市販されたモデルである。こちらもコンステ専用のCAL.564搭載であり、ムーヴ番号からの推定生産年度は1969年頃。所有する12角ダイアルよりも若干古い。しかし、その外観といい、ムーヴメントといい、非常に綺麗な容姿を保っている。特にそのケースはキズ一つ無い、といっても過言で無いほど良好である。銀色文字盤もご覧の通り、経年劣化は多少見られるものの、これぞまさにアンティークの極み。見苦しさは全く無く、OMEGAマークの下にあるクロノメーターのロゴもオリジナルの書体を完璧に保っている。店主と色々話をしたが、どうやら前所有者はタイ人のONE OWNERであり、長年大切に所有したものを最近手放したらしい。もしそれが本当だとすればタイの一般的な所得水準から考えて、この種の時計を持つことはそうそう簡単なことではない。それも30年以上も昔の時代であるとすれば、恐らくそれなりの身分・地位の人であったことだろう、などと空想は膨らむ。。。



(ジェラルド・ジェンタ氏によるケースデザイン・・・)
ジェラルド・ジェンタ氏デザインによるこの独特の卵型ケースは、当時の複数有名ブランドにも採用され流行にもなった。特に有名なのは、このオメガとユニヴァーサルの”WHITE-SHADOW”。他にもVACHERON、IWC、SEIKO、CITIZEN等でも類似デザインが溢れている。最近ではフランク・ミュラーの”トランスアメリカ”もまさにトノーシェイプのオーバル型ケースの中に丸い文字盤をデザインしてあり、ルーツはこのオメガの時代にまで遡るとも言えまいか。まさに温故知新の伝統が腕時計の世界には脈絡と流れていることを実感する。オーバルやトノー・シェイプの曲線は見る側にも、装着する側にも柔らかい気持ち、安心感を与えてくれる。これが完全なる円形のラウンド・シェイプになると更に完全なる収束感、安定感を生み出すのであるが、逆に安定し過ぎて平凡な印象にもなりかねない。この違いがオーバル・マジックとでも言うべきか。非凡なデザイナー、見事なるデザインに脱帽する。


(琴線に触れる3大要素とは・・・)
では今回、筆者の琴線に触れた特徴を下記してみよう;

1)ケース:
上述の通り、ジェラルド・ジェンタ氏デザインによる絶妙なケースデザイン。オメガでは”C-LINE”と呼ぶこのオーバル形状の内側に最大限に設置された円形文字盤の大きさとのバランスが素晴らしい。一見簡単に見えるケースデザインであるが、細部まで計算し尽された奥深い味わいがある。造形美とは正にこのことだ。ケース素材は18KYGF、GOLD-FILLED。いわゆる、金張りである。金メッキ(GP)よりも厚みがあり剥がれにくい、というがケースの研磨は無理であろう。。文字盤の周囲のケース上面にはヘアライン装飾が見られる。年代物にしては摩滅も極めて少なくエッジも鋭く効いている。裏面の「天文台レリーフ」も、裏蓋そのものにも目視で目立つキズは殆どない。


2)文字盤:
銀色で放射状にペイントされた上品な文字盤が金色ケースに映える。長めのBAR-INDEXも上品。そして何よりもその時針のデザインが良い。このモデルでは一般的にバトン型、ペンシル型が多い中、ドーフィンdauphineハンズで、尚且つその中心部に夜光が盛られている。分針は文字盤の外周まで最大限にとられた長さであり、筆者の好みに合致する。理想とするのは、ケース内で最大限まで文字盤が広められ、その文字盤上で目一杯まで長く伸びた時分針が動く、という光景だ。文字盤デザインが多少の凹凸を持つクラシックタイプであれば尚更加点される。時分秒の3針ともに若干の曇り(*)がかかっているが、次回のOVHでは綺麗にしてもらおうと考えている。文字盤上には数点の黒い斑点のようなシミ?はあるものの、殆ど気にならないレベル。30数年後でこの美しさを誇るとは、前オーナー迄の愛着・大切にした環境がにじみ出ている。"AUTOMATIC CHORONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED"のロゴも見事なオリジナル・フォントを保っている。

(*)先般、銀座の某時計店にOVHをお願いし、徹底的に清掃頂いた。針の曇りも取れ、精度も日常生活使用上では問題ない。因みにOVH過程におけるタイミング調整では文字盤、上平置きで±0秒、12時下+3秒、3時下+3秒、との報告を頂いた。


3)ムーヴメント:
コンステ専用ムーヴのCAL.564も快調だ。実際のパーツ詳細の診断までは素人には調べる術もないが、目視ではキズも少なく非常に綺麗な状態である。とは言え地板には少々錆びも確認できる。恐らく長年、タイにおける高湿度の環境下で発生したものだろう。


CAL.564の主要ORIGINAL SPEC(当時=1969年頃)は以下の通り:
自動巻き24石、5.5振動/秒(=19,800vph)、5姿勢+温度差補正、COSC認定、ベルト幅19mm、パワーリザーブ約45時間、スワンネック付き、手巻き機能付き、ハック機能無し、日常生活防水(GASKET使用)、18金金張り仕様。

さて、こうして眺めると腕時計選択に係わる決定的な3大要素があることが分かる。
@ケースデザイン
Aハンズを含む文字盤デザイン
Bそして中身のムーヴメントの良し悪し、
である。

この好みや興味を様々に変えて、3大要素を「順列組合せ」することで無限なる時計の好みが生じるのだ。同時にその無限なる可能性によって、更なる「天使と悪魔がささやく迷宮」へと導かれることになる。淀川長治流に言えば、「時計の世界はホントーに怖イデスネェー、楽シイデスネェーーー」。




(金無垢+クロコダイル革ベルトの妙・・・)

付属していた玉符の新品クロコダイルベルトは光沢もあり中々気に入っている。本来、玉符よりも竹符模様が好みであるが、今回の大小様々な玉符模様は牛革型押しでは出せない本格的な凹凸模様が美しい。このベルトサイズは19/14mm。美錠は「14金製」15mm巾を装着している。右写真の通り美錠側には1mm巾の遊びが生じるが、今はそれも良しとしよう。

購入した店主によると、このΩ美錠は非純正のタイ製であるらしい。ご丁寧にもわざわざ”18K”の刻印までも入っているが、実際は14Kとのこと。その真偽は不明であるが、他社製の素っ気無い匿名デザインの美錠よりも立体的なΩマークがある方が雰囲気があるので、暫くはそのまま使用することとしている。




(Cライン vs 12角ダイアルのデザイン比較・・・)
金無垢ケース(金張り、金メッキであれ)には黒の本革クロコダイルが良く似合う。非常にクラシカルで、ドレスウォッチとしての品格がこれで完成される。安物ベルトや傷んだベルトは避けた方が賢明だ。それは踵の磨り減った「チャーチ」を履いているのと同じくらい野暮な振舞いである。銀座ふたご屋のママ「ますいさくら」もチェックポイントにしている点でもあるという。

左写真は同じコンステレーションであるが、12角ダイアル金無垢製との比較。こうして見ると全体のボリューム感、デコラティヴな仕上げは右側の12角ダイアルが勝る。一方、左側のCライン、G.Géntaモデルは非常に大人しい端正な顔つきで、全体にはフラットな印象がする。より個性的な時計を求めるのであれば12角ダイアルが、オールラウンドで質素かつ上品さを優先すると左側のG.Géntaモデルが筆者推奨である。



裏蓋の「コンステレーション=星座」をモチーフとしている天文台レリーフも両者で若干デザインが異なる。右の12角ダイアルの方がレリーフデザインも粗い。左は天文台デザインの詳細まで表現されている。星座の数は共に8個であるが、まぁ、あまりこだわる必要も無かろう。スクリューバック式裏蓋は共に同じ。ガスケットをまめに交換すれば機密性はまあまあではなかろうか。但し、リューズ部分の機密性が一番問題である。いずれにせよアンティーク時計であるがゆえ、「完全非防水」であることを肝に銘じ、取り扱い、使用上において時計をいたわる配慮が大切である。

こうして思いもよらずタイで入手したコンステレーションCAL.564である。これからも今までのオーナー同様にいたわりつつ、愛用して行きたいと思っている。自分で色々研究し、ネライをつけて買いに行く時計も良いが、ふとした偶然で、それも「異国の地」で、予想外に巡り会えた時計も感動ものだ。
バンコクでのCAL.564との遭遇。その幸運に大感謝、である。




(←写真左)

この夏、再訪したエジプト・カイロのゲジラ島にて。遥か彼方のカイロタワーを背景に一枚。気温・湿度ともに高い土地ゆえ実用には適さず、撮影用に持参。








(⇒写真右)
2004年7月、ノルウェー・オスロの国立美術館にて。
念願のムンクの問題作「叫び」を背景に記念撮影。「叫びチャン」の拡大画像も追ってご紹介したいが、この後、2004年8月に「叫び」が白昼堂々と盗難されることになるとは。
こうした事件は本当にやるせなく悲しい。。。






『ちょい枯れオヤジ』のオメガ関連WEB:

「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8501のレポート』はこちら。
「OMEGA "HOURVISION" De Ville cal.8500/8501をジュネーヴ展示会で見る』はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 12角ダイアル」はこちら。
「OMEGA CONSTELLATION CAL.564 ジェラルド・ジェンタモデル」はこちら。
「OMEGA SEAMASTER GENEVE CAL.565」はこちら。
「バンコク、再訪!」OMEGAコンステCライン購入記はこちら。
「トルコのグランドバザールで12角・黒文字盤と遭遇する」はこちら。
『オメガ、新旧12角ダイアル・デザインの妙』はこちら。
『2006年1月の時計聖地巡礼記・その9、オメガ博物館訪問記』はこちら。 (2006/10/14)


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