BANDA  バンダ
MANIFATTURE FIRENZE  マニファットゥーレ・フィレンツェ


『ラジオミール用革ストラップにおける”全体バランス論”』
BANDA Alligator Mat-Black strap(23/20mm, white stitch) with 20mm buckle
(F5-231) 22/22mm Hammered Brown Calf Leather strap (white stitch)=再掲





パネライの楽しみは日々の使用で熟成を重ねることにある。
まるで、良質なワインかウィスキーの様に熟成度合いでその”味”も微妙に変化する。
そんな味付けに強制スパイスとなるのが”ストラップ”である。
今回は、一般パネライ・ユーザーと恐らく見解を”異”にするであろう、
『時計オヤジ』独自のパネライ・ストラップ論を展開する。(2010/01/01)



(序章: パネライ用ストラップに関する”全体バランス論”〜)


無骨で、そのスパルタンな存在感が最大の特徴であるパネライ。
ケース形状においてルミノールとラジオミールで、ストラップの選択基準は大きく異なる。結論から言えば、両者のケース形状とケース径を良く考えた上で、ストラップ幅とのバランスをマッチさせることが重要。

パネライ用のストラップも現在では各社より略、出揃った感がある。
ユーザーとしては好きな形状、色、素材の選択肢が広がり、選ぶのに苦労するほど。こうした悩みはパネライの持つ楽しみの一部である。しかし、思い込みで楽しむのも結構だが、全体的なデザイン・バランスを壊さないこと。ベルト幅の選択に細心の注意を払うこと。鍵はベルト幅にある。

以下、『時計オヤジ』の独自論を述べることにする。




(⇒右写真: MFカーフとBANDAアリゲーターの2本について〜)

茶色が既出マニファットゥーレ・フィレンツェMANIFATTURE FIRENZE(以下、MF)の肉厚カーフレザー。黒色が老舗BANDAのアリゲーターである。サイズはMFが22mm幅のストレート。黒アリゲーターが23/20mmで40mmラジオ純正サイズと同様の造りとなっている。

ルミノール、ラジオミール共に純正革ベルトはラグ側から尾錠側にかけて2〜4mm程度の絞込みが見られる。この差が、ハードなケースに微妙なる”気品”を与えている、この”気品”を取り去り、スパルタン加減を全面的に押し出すのがMFに代表される”絞込みを持たないストレート幅で勝負するベルト”である。

その戦略とデザインが多くのパネリスティーの心を掴んだのは周知の事実。
しかし、パネライに何でもかんでもストレート幅が似合うとは限らない。
特に華奢で繊細なイメージをも兼ね備えるラジオミールには”真逆の効果”を生じさせるリスクもはらむ。








(ストレート幅の『危険』をどれ程認識しているのかという疑問が〜):

例えばラジオミール45mm径ケースの純正ベルトサイズは26/22mmであり、実に4mmも尾錠側に絞り込んである。その結果、右写真からも分かるようにケースから流れ出てくるようなストラップ・ラインが見事な曲線美を生み出している。

このラジオにストレート幅のベルトを装着すると途端に雰囲気が一変する。
それはそれで良いのだが、仮に26mmのストレート幅のベルトを装着すると、どうしてもケースが負けてしまう。その場合には26mmへのコダワリを捨て、24mm幅を選択すべきである。表現が悪いが45mm径ケースに26mmストレート幅ベルトを装着すると、まるで”褌”をしているかのごとく、だらりとした締りの無い表情になる。それがハードで宜しい、と感じる向きはそれまでだが、明らかにデザイン・バランスを毀損していることに気付くべきだろう。





(本論: パネライ用ストラップに関する『間違いだらけのサイズ選び』〜)

愛機PAM62(=ケース径40mm)には純正サイズ幅の23/20mmが一番、良く似合う。
特にこのBANDA本革ストラップは中太・白ステッチが黒マット色のアリゲーターにしっくりと似合う。欲を言えばチタンorシルバー色系の糸が好みだが、ステッチ糸の色についてはこの際、横に置く。

良くありがちの誤った選択は、オリジナルのラグ側の幅を基準にすること。
単純に考えれば、40mm径ラジオには23mmストレート幅を装着することになるが、それでは幅が広すぎる。

40mm径ラジオであれば実は1mm下げた22mm幅のストレート・ストラップが一番良く似合う。
45mm径ラジオであれば、2mm細くした24mmのストレート幅が似合う。26mmストレート幅では、余りに幅広すぎるのだ。

特にMFであれば肉厚で1930年代のオリジナル・モデルへのオマージュたっぷりの”AGED CALF LEATHER 1942”には要注意である。45mm径ラジオミールに26mm幅の1942を装着すると、ベルトが太すぎて、ラジオミール本体とのバランスを壊してしまうのだ。

こうした1〜2mmの違いが、筆者が拘る”全体バランス”の成否を大きく分けることになる。

ルミノール系であれば、また状況は異なる。
ラジオミールと異なり、ラグ側のベルト幅をダウンサイズさせる必要は無い。ケースの力感がラジオより強いからだ。ストレート幅のベルトにもルミノールのケースであれば負けないだけの存在感がある。
例えば、ルミノール44mm径であれば24mm幅ストレートを、40mm径であれば22mm幅ストレートの選択で間違いない。
注意すべきはラジオミールの場合に限るのだ。
ラジオの場合にはラグ側幅をダウンサイズすること。これが秘訣である。
理想はベルト幅を絞り込んでいるもの(=純正サイズ同様)が、ライン的には一番美しい。





(←左写真: 光沢と艶消しバックルについて〜)

さて、ここからはBANDAとMFのインプレッションについて。
BANDA用アリゲーターには、今回光沢仕上げ(Polished)のバックルを装着した。バネ棒脱着式で、これもBANDA製。やや立体形状にアーチを描くバックルデザインである。
片やMFバックルは取り外しが出来ないフラットタイプの艶消し(brushed)だ。
左写真でも一目瞭然であるが、無骨さではMFのフラット・バックル、やや優雅さを兼ね備えるのが光沢で局面デザインを持つBANDA製バックルである。
尾錠幅はMFが22mm、BANDAが20mm。
それぞれに特徴あるこうしたバックルを味わう楽しみも、パネライならでは特権だろう。他の時計でこうした楽しみがあるモデルは知る限り無い。








(MFストレート22mmとBANDA23/20mmについて〜)

時計の革ベルト素材としては、原則クロコorアリゲーターが一番。
何よりも風格と存在感ではこの素材に勝るものはない。
このBANDAの黒アリゲーターは、ラジオミール専用であり、一段とドレッシーに仕上げてくれる。23/20mmの絞込みがあるとは言え、極太のベルトであることには違いない。
この幅でアリゲーター素材となれば、いやがおうにも迫力は十二分。
バックルはケースに合わせてPolishedとしたが、華やかな印象にピタリとはまる。


一方のMFは荒削りの肉厚カーフ素材をストレート幅とする。
加えてプレス打ち抜きのような専用・極デカバックルをセットにすることで、パネライ本来のクラシックさ加減を最大の特徴に引き出すことに成功している。
今でこそ、このストレート幅のストラップは珍しくはなくなったが、MFは『元祖』と言っても良かろう。

この22/22mmストレート幅は40mm径ルミノール用ではあるが、40mm径ラジオミールにも無理なく似合う。この22mmストレート幅のストラップを使わない手はなかろう。






(←左写真: ストラップ裏面の処理でそのブランドの姿勢が見える〜)

このベルトはいずれもパネライ専用だ。
当然、パネライの時計とは何か、を理解した上でストラップも作る事になる。
そんな革ベルトメーカーの哲学がストラップ裏面からも読み取れる。

MFはご覧の通り裏面処理も表皮を用いる。これは汗や防水性能を念頭に置いたもの。汗でベッタリするのを最小限に抑え、すべり易くする為の工夫である。

BANDAの裏面は、通常仕上げ。
防水性能は考慮していない。表面のアリゲーター素材での勝負に全精力を使い果たしたようで、裏面にまで手を加える配慮もコストも残っていなかったのだろう。それでも、ややザラザラした仕上げは滑り止め効果をある程度兼ね備えると判断できる。

パネライのベルト選びも、こちらが真剣になればなるほど手応えがあるものだ。(2010/01/01)






パネライ関連WEB:
@ルミノールGMT(PAM00088)はこちら
Aラジオミール(PAM00062)はこちら
B『生誕地フィレンツェにPANERAI Boutique 1号店を訪ねる』はこちら
C『デカ厚ブームの嘘、パネライの真実』はこちら
D『マニファットゥーレ・フィレンツェManifatture Firenze・Aged Calf Leather Strap 1942』はこちら
E『マニファットゥーレ・フィレンツェ・新作2本』はこちら
F『ヌーシャテル訪問記〜パネライ工房門前払い』はこちら。(2006/10/01UP)
Gラジオミール・ブラックシール(PAM00183)はこちら
H『ラジオミール用革ストラップにおける”全体バランス論”』はこちら。(2010/01/01)
I『2010年8月、リヤドの直営BOUTIQUEを訪問する』はこちら。(2010/08/13UP)
J『ラジオミールPAM00103、小体で古典な三味胴ラジオの楽しみ方』はこちら。(HP開設7周年記念)

⇒腕時計に戻る
※掲載の写真・文章等の全てのコンテンツの無断転載・無断複写を禁じます。
※特に金銭絡みのオークション説明等へのリンク貼りは本意にあらず、厳に遠慮下さい。

⇒TOPに戻る