(これぞ『元祖!』と呼べようか、パネライ本体の『生殺与奪の権』を持つベルトの登場だ〜) パネライは軽薄時計の代表格のように見えて、実は奥が深い時計である。 古典的時計を愛する人には時に忌まわしく、邪道にさえ映る時計かも知れない。 しかし、中々どうして、イタリアン・ネイビー・ウォッチの素性さえ理解すれば、そしてそんな歴史的背景をも超越してそのデザイン性に惚れ込むことが出来れば、これ程面白い時計も現在では多くはない。 そんな時計本体を弄ぶかのようなパワーを持つ革ベルトが現れた。 フィレンツェにある”Manifatture Firenze”(イタリア語に忠実に発音すると、”マニファットゥーレ・フィレンツェ”)がそれだ。数あるパネライ用のベルトの中でも頭一つも二つも抜きん出た完成度と威圧感・風格を誇る。簡単な表現を使ってしまえば、『流石、イタリア製』とでも言うべきか。と言ってもモレラートMorellato等とは異次元の世界にある。そして、パネライのベルト専門に商売が成り立つというのも凄い。多分、遠からぬ先に『時計Begin』あたりでも取材することが目に浮かぶ。。。それ程、パネライ時計本体に高次元でマッチした逸品である。 本家のWEBを見る限り(=2006年3月10日現在)、ベルト幅は26/26mm、 24/24mm、 24/22mmの3種類しか生産されていない。22mm幅、いわゆる40mmケース径のパネライ用が無い、という潔さ(⇒特注、若しくはオーダーではあるようだが)。そこには極めて明確なポリシーが感じられる。本当は26/26mm(47mmケース径)に特化したかったのであろうか。24/24mmはオマケではあるまいか、とさえ思わせる。44mmケース径未満はパネライと認めぬ姿勢が読めるのだ(⇒筆者の勝手な解釈であるので悪しからず)。 美錠が無い革ベルトだけのモデルもあるが、今回は初めてのオーダーということもあり味見(?)も兼ねて、所謂、古典的な意匠の”AGED CALF”のライト・ブラウン・スティッチを選ぶ。バックルは時計本体に合わせてPOLISHEDタイプだ。この特大バックルがまた素晴らしい。フィッシュ・テール・デザインはオリジナルに極めて忠実。バネ棒も無いワンピース・プレス構造。つまりバックルの取り外しはベルトをバラさなねば出来ない。革ベルトが駄目になるまで、時計が駄目になるまで、はたまたご主人がくたばるまで時間無制限デスマッチで勝負せい!とでも言いたげな造り手の頑固さまでもが感じられる。定革、遊革の幅ともに各10mm、ベルトの厚みは約4mmで勿論、絞りは無いストレートタイプ。加えて、その革のニオイたるや、まるで子供時代の野球グローブを思い出させる懐かしい匂い。ソルベント・フリーの接着剤、溶剤を使わない自然&身体にも優しい配慮。繊細な配慮に支えられながらも大味である。 WEBでオーダーした”翌日昼前”にはもうTNTクーリエが届くという迅速さにも感服!!!(注:配達先は日本ではない) |
(← WEBカタログで見たと同様のベルトである。当然か〜) 長さは一般的な75/120mmを選択。パネライ純正ベルトとほぼ同じ長さであり丁度良い。実寸では74/120mm。まずカタログ通りと考えて良かろう。 紙製のタグにはシリアルNo.が記載されている。 筆者のモデルはNo.1462。 これがそのまま生産本数No.であるかは不明だが、刻印のインクが如何にもスタンプで押しましたよ、という雰囲気で宜しい。まるでバーボンのブラントンBlantonを連想させる(⇒ブラントンは『手書き』シリアルNo.であるが)。おまけに日本語での解説も短文ながらキッチリと印刷されている。メイド・イン・イタリア100%の2年間保証、というのも凄い!時計の革ベルトに2年間も保証が付くなんて、一体なんだ、この自信は、、、 ベルト芯材は2枚。それを一枚革がサンドウィッチし、接着&ミシン掛けする構造だ。 その厚みと材質も伴ってか、AGED CALFの新品ベルトはカチカチの硬さである。 しかし、カーフ素材であることを考えれば、使い込むほどに1930年代のパネライのような風格が出てくると期待出来る。 そうした革独特の経年変化を楽しむことも喜びの一つである。 スパルタンな味付けに弱い御仁は素材選びから注意すべきだろう。繰り返す、このカーフ素材は極めてハードな造りであるのだ。 (追記1) 実際に使用して感じるのは、逆説的ではあるが非常に柔らかいカーフである、ということ。いや、柔らかなカーフになる、という方が正確だろう。革の厚みもある、新品状態では大変硬い革ではあるが、もし夏場に使えば一発で別物のように柔らかく、肌に密着する『極厚カーフ』となるのだ。今回、気温40度超、湿度80%のドバイで敢えて使用したところ、見事に期待通りに柔軟なカーフに変貌した。成る程、これがMFの真骨頂、極厚カーフの豹変振りであろう。決して一元的には評価出来ないMFの『良さ』がここにある。(2006/5/24) |
(ステンレス316L製のバックルはこれぞパネライ〜) 肉厚1.8mmのSSバックルの裏側写真である(⇒)。 メーカーのロゴ、Made in Italy、316Lが印刷?されている。 使いこなすうちに消えそうな感じだが、まあ、よかろう。 個人的にはホールマークのような刻印、にして欲しいところだ。 そして唯一注文をつけるとなればスティッチの糸の番手がやや細いこと位だろうか。 とにかくデカイ、無骨。グローブレザーのような極厚カーフと巨大なフィッシュテール。 魅力はこれに尽きる。 余談だがフィッシュテールとキャブトンは筆者の大のお気に入りだ。共にバイクのマフラーであるが、フィッシュテールと言えばOHC単気筒、若しくはOHV直列2気筒が似合う。筆者のお気に入り、70年代のダブワン(W1)やダブサン(W3)が懐かしい。巨大単気筒やビッグツインにはパネライのイメージがダブる。まさに片岡義男、三好礼子の世界だな・・・。 閑話休題。 このベルト、一体、何年もつのだろうか。 5年、10年、20年と使って初めて味が出てくる気もする。 自分が50歳、60歳を過ぎてそうした味を引き出すことを『時計オヤジ』は今から考えているのだよ。目線は中計(=中期経営計画)ではない。もっともっと『定性重視』のロングタームで自分のライフスタイルに組み込むべきベルトである。違うかな? |
(←左写真: 実際に装着するとこんな感じである〜) 一目瞭然。 あの44mmケースでさえ萎縮して見える。 恐るべし、マニファットゥーレ・フィレンツェ。 24mmベルト幅がストレートであること、そして巨大バックルと定革・遊革の10mm幅と厚みが全てのバランスを産み出している。定革・遊革は必ず2個必要だ。同じようなベルトでもこれらワッパ(=定革&遊革)の幅が狭いが故に全てのバランスを壊しているベルトメーカーも多々ある。そしてこの厚みも同様に重要。純正ベルトにおける定革・遊革の厚みはペラペラ。直ぐにも切れそうな不安さがあるが、こちらは文句無い『分厚さ』である。頑丈に仕上げられたワッパにまでもこのメーカーやる気とコダワリを感じる。パネライ専用の24mmメタルチューブもエンドピースにスムースに入る。Predisposedされた仕上げは流石に楽チン。 6時側のベルト上の子穴も楕円形がマスト!パネライのベルトである以上、円形ではいけない。これはもう決め事。筆者は生理的にも楕円形以外は受け入れられない。この点でもマニファットゥーレ・フィレンツェはよ〜くわかっているのだ。 やや淡すぎる薄茶カーフもフロッグマン時計のルーツを感じさせる。 時計はCONTEMPORARY系のGMTだが、このベルトを着けた途端に荒々しいHISTORIC系に変身してしまう。違うかな??? 今回の味見、毒見は大成功。 この後は、素材の柔らかな黒色に白スティッチのバッファロー(=BLACK BUFFALO LEATHER STRAP WITH BUCKLE)やらも欲しくなる。恐らく、日本の時計雑誌やらの取材が、従来の時計&部品メーカーのみならず、こうしたベルトメーカーにまで及ぶことは必定。そうした記事(=追記4)の登場も時間の問題であろう。革ベルトでこれ程遊べるのもパネライの魅力だが、そうした逸品ベルトを『量産』で作り出すマニファットゥーレ・フィレンツェには、正直、脱帽である。 (Special thanks to Milanese Ms.Ohtake for Italian language comprehension) 加筆・修正: 2006/3/15、2006/4/9、2006/5/24、2006/5/28, 2007/08/09 追記・写真変更 (追記2) Manifatture Firenze”マニファットゥーレ・フィレンツェ”の公式Webが2006/5/26に最新UPされた。40mmケース用に22/22mmベルトが新登場である。その甘美なる魅力を知ってしまった『超党派パネリスティ』の『時計オヤジ』は早速発注することにした。合わせて44mmケース用に黒極厚カーフにカッパースティッチBig Copper Stitchの新商品も発注だ。黒色カーフ革に黄銅色の糸使いが何とも新鮮で綺麗。週明けのデリバリーが今から楽しみである。その結果は別途レポート予定。(2006/5/28) (追記3) 夏場のレザーベルト使用について。 汗と臭いが気になる季節。答えは簡単、夏場のレザーベルトは御法度、使わぬこと。この思い切りが肝要也。 それでも、という御仁は潔くワンシーズン限りと思い使い切ること。若しくは躊躇無く、水、又は洗剤洗いすること。 その結果については一切の責任を負わぬので自己責任で試され度。甘えは禁物、自分で判断するべし。(2006/9/02) (追記4) 2007年7月27日発売の”TIME SCENE VOL.9”(P.236-237)にてようやく”マニファットゥーレ・フィレンツェ”の紹介記事が登場した。内容的には特筆すべき点はないが、名畑政治氏の取材というのがせめてもの救いか。(2007/8/9) 関連WEB: @ルミノールGMT(PAM00088)はこちら。 Aラジオミール(PAM00062)はこちら。 B『生誕地フィレンツェにPANERAI Boutique 1号店を訪ねる』はこちら。 C『デカ厚ブームの嘘、パネライの真実』はこちら。 D『マニファットゥーレ・フィレンツェManifatture Firenze・Aged Calf Leather Strap 1942』はこちら。 E『マニファットゥーレ・フィレンツェ・新作2本』はこちら。 F『ヌーシャテル訪問記〜パネライ工房門前払い』はこちら。(2006/10/01UP) Gラジオミール・ブラックシール(PAM00183)はこちら。 H『ラジオミール用革ストラップにおける”全体バランス論”』はこちら。(2010/01/01) I『2010年8月、リヤドの直営BOUTIQUEを訪問する』はこちら。(2010/08/13UP) 腕時計に戻る |
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