![]() ドレス・ウォッチには黒クロコの革ベルトが一番良く似合う。 しかし、無垢素材のブレスレットであればそれなりの味がある。 クロコかブレスか、との論争は無意味だ。 最終的にはオーナーの美意識と価値観によるのだが、今回は『ブレスレットの妙』について言及する。 (↑上写真:愛機2本。16mm幅と18mm幅のサイズ設計で微妙に異なるブレスレットの造形美を見せる〜) |
(『黒子はクロコに限る』〜) ![]() ファッションも同様だが、色を抑える事が全体バランスを保つ秘訣だ。 リミテッド2000の場合、文字盤のシルバー系乳白色にSSケースの輝きを最大限に引き立たせるのは黒革クロコベルト(または黒アリゲーター)以外には有り得ない。 時計の最大の華はその華麗なる文字盤にある。 文字盤&ケースを『舞台』と例えるなら、舞台回りが目立ってはいけない。逆に、桧舞台を盛り上げる為には周囲は黒子役に徹すること。洒落ではないが、『黒子はクロコに限る』。そうすることで文字盤、ケース周りがスポットライトを浴びたがごとく、その造形美が際立つ。フランクの流麗トノーであれば尚更だ。よって、リミテッド2000には黒色クロコがベストだが、今回、敢えてブレスレットに挑戦する。 (⇒右写真: ジュネーヴ市内のイル島にあるおなじみのフランク直営第一号ブティックにてブレスレットに交換してもらうことにした。因みに、このブティックではブレス交換作業は行わない。全て市外のジャントゥにある夢の都、『ウォッチランド』送りとなるのだ。ついでに、日頃気になる点もチューンアップしてもらうことにした(それも無理をお願いして一晩で!)。こうした調整が即座に出来るのが本国、地元ジュネーヴにおける強み。写真のごとくタグと我が儘な指示書と共に、我が愛機リミテッド2000は生まれ故郷に里帰りすることに〜) ![]() (⇒右写真: 幅2種類のブレスレット〜) 上が16mm幅、今回交換するリミテッド2000(#2851)用のベルト。 下が18mm幅、#5850にも使用される。この2mmの差は数字以上に大きい。 写真で見ても、2mmの違いが良く分かる。 実際、16mm幅は可也細い。しかし、絞込みの無いストレート幅であること、その厚みも十分あることから華奢な感じはしない。逆に、18mmになると重厚感が更に増す。 16mm幅のブレスレットは現行の紳士用モデルには存在しない。 リミテッド2000専用、とも言うべきもので#2852用は17mm幅となる。 ポリッシュ仕上げとその重量感がブレスの存在を自己主張する。 クラスプはプッシュ式でなく、単なる押し込み式であるが、その分、余計なパーツも無いので非常にスッキリした仕上げとなっている。いかにもドレスウォッチ用らしいデザイン。このままでもアクセサリーになりそうだ。これぞ、ブレスレット(腕輪、手首輪?)とでも言うべきか。 因みに、フランクミュラーにおける各ケースのラグ幅(=ベルト幅)は次の通り: #2500(11mm), #2250(12mm), #1750(14mm), #7501(16mm) ⇒ここまでは女性用中心 #2850(推定16mm), #2851(16mm), #2852(17mm), #5850(18mm), #6850(19mm), #7850(20mm) ![]() (⇒右写真: 毎回お世話になっているOKAMOTOさんを中央に、第一号直営店のスタッフの皆様を記念撮影。英語、仏語、日本語が通じるのは有り難い限り。OKAMOTOさんからは毎回、時計のみならず貴重なジュネーヴに関する一般情報を頂いている。今回も限られた短い滞在中にも係わらず、最大限のご配慮を頂き感謝の限り。 次の機会には是非一度、食事をご一緒頂く事を約束?をして、今回も愛機リミテッド2000と共にリフレッシュさせて頂いた『時計オヤジ』である。 それにしてもこの直営ブテッィクは重厚だ。 場所柄、バシュロンも道路を挟んで向かい側に位置する市内でも一等地にある。歴史的なイル島に居を構えることで、一流メゾンの仲間入りを声高らかに謳っているような、そんなフランクの気持ちが伝わってくるようだ。 ![]() (翌日、リミテッド2000は真新しいブレスレット仕様に生まれ変わる〜) ブレス装着後の栄えある一枚目の写真がこちら。 ブレス装着モデルに共通しているのは革ベルト以上にケースとの一体感が極めて高まること。ケースと同素材であること、そして曲面ライン、曲線ラインが純正ブレスである限り、よどみなく、段差なく連結デザインされることが一体感形成の理由となる。特に直線部分が無いと言われるフランクミュラーのトノーケースにはオリジナル・ブレス以外の組合せは考えれらない。ブレスのデザインにも独自性が十分感じられ、破綻は全く生じることはない。 (←左写真: 比較その1〜) #2852ケースのカサブランカと比較したもの。 #2851の細身加減、わずか1ミリしか違わないがブレス幅の大きな違いを生み出すことが良く分かろう。一方、両者に共通するのが適度な『厚み』である。無垢素材から一つ一つ切削された重量感と鏡面仕上げがフランクのブ厚めトノーケースに良く似合う。 ![]() (⇒右写真: 比較その2〜) #2851と#2852の比較である。 こうして見るとノーマルなカサブランカも中々どうして、いい顔しているではないか。 夜光が盛られ、縁取りされた12個のアラビア数字。同じく秒針にまで夜光付きの時針3本針のデザインといい、秀逸な仕上がりに成功している。極めつけはエージングによって地盤板全体が『焼ける』という特殊処理だ。 広角マクロ撮影の為、四隅方向に画像が若干歪んでいるものの、全体の雰囲気の違いが把握できよう。 この2種類では5連ブレスのコマの大きさ、間隔、全てにおいてデザインが微妙に異なる。特にラグから延びる一コマ目のデザインが大きく異なる。 ![]() (⇒右写真: 比較その3〜) 赤丸部分がその拡大写真。 #2852ケース用のブレスの一コマ目の横3連部分、即ち左右両方と真ん中の3コマは#2851よりも長めにデザインされている。#2851はその逆で、当該3コマ部分は短く、2コマ目、4コマ目が逆に長めにデザインされている。つまり、スタートのコマラインで大きさが交互逆にデザインされているのが面白い。 理由を考えたが、確たる必然性の説明が付かない。また、#5850では#2851と同様のデザインであり、右写真のデザインは#2852用の17mmブレスのみの特徴となっている。その見栄えにおいてはラグとの連続性、ラグの延長線上にコマが張り出すようなデザインは個人的には、ややケースからの曲線ラインを害する感じがする。 ![]() (←左写真: 比較その4〜) こちらは#2851の写真。 何を言っているのか、もう少々具体的に。 左右のコマの一つ目がラグと同じ短めの長さ、ということが分かる。 つまり2列目のコマがラグと連結するようなデザインとなり、こちらの方がケースからのラインと自然にマッチする。 どうして#2852のブレスのみ異なるのか不思議だ。 尚、スイス製のブレスレットはネジ込み式ビスでコマの長さを調整するのが一般的。安価ブレスでは2本に割れた留めピンを押し込む方式もあるが、やはり高級時計になればネジ込式が好ましい。フランクの場合も当然、ネジ込み式を採用している。 |
![]() (中性的?な魅力とも言うべきグレイ文字盤のマスターバンカー#5850〜) 中々希少なグレイ文字盤のマスターバンカー。 フランクの文字盤は本当に美しい。 このグレイ顔も質感抜群。愛機のMB黒顔も良いがグレイも良い。 最近、各メゾンともにグレイカラーを導入しているが、黒顔や白顔ほど人気はない。どちらかと言えば訴求力の低い中途半端な色であるので、確信犯的なユーザーしか選択しないのがグレイだろう。 しかし、このMBのグレイ顔は美しいギョーシェと、かちっとしたレイルウェイINDEX、そして迫力十分の3本のセンター針と相まってシックだが重厚感を醸し出している。まさに通好みの顔立ちである。 思わず触手が伸びる『時計オヤジ』は危ない、危ない。 OKAMOTOさんによれば、文字盤だけの交換も可能だそう。 それは全くの予想外。その気になれば手持ちMBの黒顔をグレイに変更できるということ。まるでROLEXのような選択肢があるということ。 因みに御代は10万円以上はかかるそうだ。う〜ん、と暫し考え込む。 (注: 日本国内における文字盤交換システムは原則、存在しない。また上記の文字盤交換はあくまでイル島の直営ブティックでお聞きした情報にて、他店での可能性は無いものと考えた方が無難。興味ある御仁はイル島ブティックにて直接詳細を確認され度し。) |
(フランクミュラーにおける『ブレスレットの妙』〜) ![]() 実は黒顔マスターバンカーも最初は黒革クロコ式であった。 リミテッド2000と共に両者、ブレスレットを装着した姿はまさに圧巻。 ケース同様ブレスも鏡面仕上げ、即ちポリッシュ仕上げというのが更に色艶を増す。 一昔前であればこれ程、光輝き、またずしっとした質感をブレスに持たせることは難しかったであろう。近来のCNC旋盤を始めとする最新切削テクノロジーと高圧プレス技術がこうした複雑でソリッド(無垢)なブレスの駒を生み出している。それをまた複雑なシステムでリンク・連結させる技術、更には素材そのものの開発技術が加わり、かくも美しいブレス生産が可能となった訳だ。こうしたブレスが世に登場するのは過去10年における特徴だろう。 因みにフランク以外で鏡面仕上げの美しいブレスとしては、ブライトリング、ジャガールクルトのグランド系が挙げられる。 フランクにおけるブレスは皆、絞りがないストレート幅を持つ。 このブレスレット単体でも手首に巻けば、まさしくブレスレットとして通じよう。 ケース本体の曲面ラインに対して、ブレスのデザインは直線で構成されているが、ブレスの一コマ一コマの仕上げは角を落として丸みを持たせている。この曲面VS直線の対比がまさしくフランクミュラーの『ブレスレットの妙』だ。そうした宝飾的な仕上げの良さと、バックルを含めた凹凸の無いしなやかなラインが特筆モノだ。文字盤がこれ程強烈で美しい時計である、ブレスも華を持ちながら個性は適度とすることが高度な次元で求められる。 現在の数あるメゾンにおいてフランクのブレスはそのアイコン的デザインと共に仕上げの良さでも一流どころに位置する。 ![]() (⇒右写真: 青焼き針が鏡面仕上げのブレスとケースに対峙して粋に映える〜) こうして考えると、革ベルトとブレスレットには甲乙付け難い味があることに気がつく。カルティエのロードスターのように、独自の簡易装着システムでブレスと革ベルトをワンタッチで着替えることが出来れば素晴らしい。 フランクミュラーの革ベルトはアビエシステムにより工具無しで着替えることが出来るが、ブレスのバネ棒は通常タイプだ。お気軽に着替えるという訳には行かないが、時々の気分やTPOに合わせてベルトに変化を与える気配りが欲しい。お洒落とはそうした細かい点へのコダワリ以外の何物でもない。 因みに筆者の考えるそれぞれの利点・目的はこうなる: 革ベルト装着=クラシックなドレス時計としての存在感を主張させる ブレス装着 =ケースと一体化した艶やかなブレスレット的アクセサリーとして、 ジャラジャラ感を楽しむ 高温多湿の土地柄・季節柄で使用する時はブレスが便利だ。 先日、総勢300名が集まったクリスマスパーティー会場で筆者は敢えてブレス装着を選択した。 フォーマルな出で立ちの中に、一点崩しを入れる『お遊び』。(但し、決してSWATCHなどで崩す、という無知は避けたい。) そうした使い方も、これまた実践的な『ブレスレットの妙』ではあるまいか。 ![]() (思い入れが重なるリミテッド2000、何はともあれ『我が愛機』也〜) 3回に亘り言及したリミテッド2000。 デザインの良さ、美麗トノー形状、ブレスであれクロコであれ艶っぽさでは群を抜く全体バランスが『極上時計』としての資格十分だ。 無意味な『デカ厚』ブームに一石を投じる小振り細長の#2851ケース。 ネオクラシック路線を文字盤全体が主張する。 とかく派手なイメージが先行しがちのフランクミュラーであるが、実はしっかりと地に足が付いたモデルが主流である。 『地味な』リミテッド2000ではあるが、『My極上時計』に分類される確かなる実用時計でもあるのだ。(2007/12/16) (⇒右写真: 24時間ダイアル付きの特大置き時計。 これも思わず財布と相談したくなる正真正銘、フランクミュラーだ。) ![]() Part-1 『リミテッド2000・本体編』はこちら。 Part-2 『アガリの考察・個人的各論』はこちら。 Part-3 『フランクミュラーに見るブレスレットの妙』 へと続く〜 参考文献) 『時計Begin』Spring/2002(Vol.27) フランク・ミュラー関連WEB: 『極上時計礼讃・序説』はこちら。 『極上時計礼讃〜ラジオミールPAM00062』はこちら。 『2001年3月、イタリア時計巡礼〜フランク・ミュラーを探す旅』はこちら。 『2002年12月、スイス時計巡礼の旅〜FRANCK MULLER WATCHLAND探訪記(ジュネーヴ編・W)』はこちら。 『2005年1月、FRANCK MULLER 限定モデル"WATCHLAND"6850SCのレポート』はこちら。 『2006年1月、厳寒のWatch Valley時計聖地巡礼記 (その2)」(ジュネーヴ買物編)』はこちら。 『2006年1月、厳寒のWatch Valley時計聖地巡礼記(その5)」(ウォッチランド再訪記)』はこちら。 ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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