CHOPARD  ショパール

『極上時計礼讃・序説』

CHOPARD 16/1860/1 Cal.L.U.C1.96 Half-Hunter Case




(ショパールという選択〜)

ショパールChopard。
一昔前の『時計オヤジ』には全く興味の対象外であったブランドだ。しかし、今やその認識を全面的に変更せざるを得ない。本格時計ブランドとして、はたまたマニュファクチュールとして凄いブランドに成長しつつある。『しつつある』というのは、まだまだ発展途上であり、これからもう一皮剥けて欲しいという期待感も込めているからだ。

一方では、1976年に一大ブームを巻き起こしたハッピーダイヤモンドの印象も色濃い宝飾ブランドとして、カルティエの上を行く高級貴金属ブランドというイメージも強烈に存在する。そうした2面性を巧みに操りつつも、マニュファクチュールとしての道をひた走るショパール。その原動力が、L.U.Cシリーズである。

1997年の傑作ムーヴメントL.U.C1.96の登場以来、L.U.C4.96プロワン、L.U.C3.97トノー専用ムーヴ、L.U.C1.98クアトロ、L.U.C1.3789クアトロレギュレーター、L.U.C1.02クアトロトゥールビヨン等、今日まで着実にモデルの充実と発展を遂げている。極めつけは、2004年9月に発表された新規格『カリテ・フルリエ』。ジュネーヴ・シールに対抗した新基準によるL.U.C9.96搭載モデルはまさにデザイン秀逸。しかし、やはりショパールという名前は依然として宝飾店、宝飾ブランドのイメージが非常に強い。ショパールがマニュファクチュールの仲間入りをしたことや、L.U.C自作ムーヴメントの存在を知る人はまだまだ少ないのが現実だろう。

しかしである。ショイフレ副社長の意気込み、ショパールの本気の取組(と、筆者は捉える)はその歴史の短さを考慮しても『是が非でも』時計オヤジの物欲、琴線を限りなく刺激するのだ。。。


(『極上時計』を追い求めて〜)

自分にとっての『極上時計』とは何か。
2002年末のスイス巡礼旅行以来、未だ『極上時計』を追い求めている。何をもって『極上』と評するか、その基準軸は微妙にぶれる。前出オメガの項でも『良い時計の5条件』を述べた。
即ち、
1)信頼がおける「時計メーカー」のブランドであること (歴史重視)
2)デザインに独創性があり、かつクラシカル路線にあること (ネオクラシック重視)
3)そのムーヴメントの仕上げも丁寧で、継続生産されてから3年以上経過していること (機械の信頼性重視)
4)全体のデザインバランスが自分の嗜好と合致し、『是が非でも』との購買意欲をそそること (意匠と感性の融合重視)
5)これから最低10年以上に亘り所有する喜びが得られると確信できる時計であること (納得時計)、、、

等などである。

そうした『総論』としての基準では今も変化は無い。自分の価値基準が変わらなければその答えは比較的容易に求められよう。しかし、『各論』において、時代や年齢と共に自分の嗜好や考えは変わる。新モデルの登場や、新しい興味も、自分の基準軸に微妙な変更・修正を迫る。要は信念と意志が弱いだけだ。そうした雑念に惑わされず、新たな関心・興味を示さないことが一番だが、迷える求道者『時計オヤジ』には所詮無理な話。あーでもない、こーでもない、と考えるコトは楽しいが、この先エンドレスかも知れぬ。一生の命題=迷題、となるような気もする。




←左写真: 2003年冬号の「時計Begin」(Vol.30)。
通巻30号記念企画のこの号のimpactは大きい。

極上ウォッチへの認識と誘いを公に整理、提言した『問題作』である。時計Beginはこの号を境にして更に大きく深化を遂げたのだ。
いわゆる『雲上ウォッチ』と呼ばれるブランドがいくつかある。どれも甲乙付け難いが、筆者に合う『フィーリング』というものもある。世評に惑わされず、自分で選び抜く楽しみ、審美眼を磨く楽しみがそこにある。






(金無垢ケースの魅力〜)

このL.U.C1.96こそ今の自分なりの基準で『極上時計』と呼ぶに相応しい1本に数えている。
そのデザインは極めてコンサバ。大人しい伝統的な顔立ちである。ドーフィンdauphineハンズに、ティアドロップ型のINDEXが伝統的ゆえに自然で無理なく美しい。

素材の18KRGローズゴールド、所謂『桃金』が柔らかい輝きを増幅する。
『極上』のケース素材としては金無垢以外には考えられない。人はどうして金色、金無垢にあこがれるのであろうか。その昔、あれだけギラギラして嫌気が差していた金無垢であるが、まるで年齢を経ると共に御新香や納豆が好きになるがごとく受け入れている。成分的に安定している、とか、光輝の美麗な最高の金属とかの理由もあろう。金無垢の優しさと、その独特の重量感は他の金属では絶対に味わえない。金無垢とは人肌にも、そして人の心にも、実は大変に馴染み深い素材であるのだ。ある意味、人生の齢を重ねることで、明と暗、強と弱、酸いも甘いも味わえる許容感覚が金無垢へと誘われるのかも知れない。。。





(←左写真)
一方で、今や古典的名作『オメガ・コンステレーション』も十分に極上時計、傑作時計と感じている。現代では可也小振りな部類に属する顔立ちといい、独自のケース&文字盤のデザインといい、耐久性あるムーヴメントも特筆に価する。何よりも柔らかな18金無垢(YG)のケースに納まっているのが心地良い。極上時計、というのは必ずしも金額やブランド・ヒエラルキー(注)で決まるものでは無い。

俗に世に言われる『雲上モデル』に惑わされるな!


(注)ブランド・ヒエラルキー: PATEKやP.デュフォーを頂点と位置付けて、その歴史とマニュファクチュール至上主義を崇高する世の風潮、及びそのブランド序列(略)を言う。






(⇒写真右)
筆者最愛時計の筆頭格、『ラジオミールPAM00062』も使い込む程に味わいが増している。時計通や業界において、誰もこの時計をして『極上時計』とは呼ばぬであろう。しかし、筆者の基準軸ではオメガ同様、この時計も十分評価に値する。

ケース径は、これ以上大きくてはいけないギリギリの40mmながら、独特のクッションケース形状と18KWGの重厚な質感が不思議と手首との密着間を高めてくれる。極厚で柔らかなアリゲーターベルトと相まって、使用する度に満足感で満たされ、五感で感じる全てが『極上』であることを主張する。ショパールに負けず劣らず、筆者にとっては『極上時計』の大本命である。

最近のパネライ新商品を見る限り、目指す方向性は『原点回帰』。
オリジナルサイズに近いケース径47mmやら45mmに頑固にこだわっている。パネライの歴史を考えれば当然の帰結である。一方でPAM62のような筆者好みのケース径40mmのラジオミールは今後、暫くは再登場しないだろう。40mmというPAM62のサイズにこそ極上時計としての重要な意義があるのだ。デカ厚時計(=ケース径40mm超)は身に着けると元気が出るかも知れぬ。一時の快感に身を委ねるのも良かろう。しかし、今後10年、20年後、はたまた30年超の自分の余生、ライフスタイルの変化を考えてみると如何なものか。スタンダード、極上時計というのはブーム、流行から距離を置いた世界でないと成立し得ない。それが筆者の基本理念、ネオクラシック志向である。

加えて言えば、時計に負けぬくらい、ユーザーとしても継続して同じ時計を所有し続けること。
流行から自分自身に距離を置く勇気、を持つこと。
その為の真剣なる選択と所有後の愛用が更に極上時計に風格をと熟成度を与えると信じる。





(限りなく普通に見える凄い時計〜)

この『ちょい悪ブラックフェース』のショパールL.U.C1.96は見ても、着けても貫禄がある。いや、他人の目から見れば、何でもないごくごく普通の時計にしか見えまい。下手をすれば、その辺のサンキュッパクラスの時計にも見えかねない。普通に見えて、実は『極上時計』。この『控え目、特上感』が知的で良いのだ。しかし、実際に実物のショパールを眼前にすると、その素晴らしい出来映えに絶句するのは時計好きのみではあるまい・・・。


加えて、嬉しい裏スケルトン。
通常のL.U.C1.96搭載モデル16/1860/2には交換用に18金製同素材の密閉用裏蓋が付属してくる。しかし、スケルトンから見える流麗なるL.U.Cムーヴを隠すのは酷である。ミニスカートの上からロングコートを羽織る様なものだ。野暮である。となれば、折角の交換用の裏蓋は宝の持ち腐れとなりかねない。筆者所有のモデルは100本限定の裏蓋ハーフハンターケース(日本国内未発売)ゆえに、普段は完全なシールド状態にある。

見たい時にだけムーヴを垣間見る楽しみ。
こうしたところもL.U.Cの真骨頂、『凄いのに凄く見えない凄さ』を更に地で行く。

仮に『極上時計』を手に入れても自分の生活や人生が変わる訳ではない。
しかし、自分の内面では確実に何かが変わる、ような気がする。
自身の意欲、姿勢を高める意識が更に磨かれるとでも言うべきか、まるで腕時計を相手に切磋琢磨するようである。『極上時計』とはそんなやる気をも与えてくれる、と言うと大袈裟だろうか。

気取らず、驕らず、出しゃばらぬ時計を選び抜く楽しみがそこにある。
『極上時計』とは間違いなく、『 精神的プラスα 』をもたらしてくれる効果を秘めているのだ。
『時計オヤジ』はこの際、小声で叫んでしまう。『極上時計礼讃!!!』、と。


さて、CHOPARDとRADIOMIRの為にこのWEBを開設したと言っても過言ではない。
『CHOPARD 16/1860/1 L.U.C1.96ハーフハンターケース』の考察は改めて、じっくりと別の機会に行いたい。
(2005/09/03)


(参考文献)
『時計Begin』 (Vol.38)2004年冬号 (世界文化社)
『TIME SCENE』 (Vol.3) (徳間書店)


『時計オヤジ』による『私的・極上時計礼讃シリーズ』:

『極上時計礼讃・序説』はこちら
『極上時計礼讃〜ラジオミールPAM00062』はこちら
『極上時計礼讃〜フランク・ミュラーLimited 2000』はこち

『極上時計礼讃〜パテックフィリップ・AQUANAUTラージサイズ』はこち
『極上時計礼讃〜ショパールLUC1860』はこちら


ショパール関連web:
2005年11月、『ショパール本社工場訪問記』はこちら。
『極上時計礼讃〜ショパールLUC1860』はこちら

⇒ (腕時計MENUに戻る)
※掲載の写真・文章等の全てのコンテンツの無断転載・無断複写は厳禁です
※特に金銭絡みの
オークション説明等へのリンク貼りは固くお断りします

TOPに戻る