”暖かいストーブに数分、手をかざしてごらん。きっと1時間にも感じるだろう。 素敵な女性と1時間、席を共にしてごらん。きっと1分にしか感じないだろう。 それが相対性理論というものだよ。” 〜アルベルト・アインシュタイン〜 (1879-1955) (↑上写真はブランパンの新キャリバー、Cal.13R0の発表会を謳う市内のポスター。) |
(2006年10月下旬、再度訪問のジュネーヴにて〜) 2006年1月の『時計聖地巡礼』に続き、2006年度2回目のジュネーヴ訪問となる。 前出チューリヒ時計事情、IWCの故郷シャフハウゼン散策を満喫した『時計オヤジ』は一路、スイス国鉄で3時間をかけてジュネーヴに移動した。 10月末というのに、このスイスでさえ暖かい。日本の暖冬もさることながら、結果的には2006〜2007年初頭にかけての欧州も暖冬&少雪の異常気象である。これもエルニーニョ活動によるものだろうか。 (⇒右写真: お気に入りのレマン湖を一望する。 St.ピエール教会からの眺めはいつ見ても格別。 この日は秋空で快晴。噴水の写真も何枚撮影したか分からぬほど。 こうした光景はスイスでもここしかない。初冬のジュネーヴは静閑な街並みへと変わる。) (PATEK博物館は開設5周年を迎えた〜) 今まで何度となく紹介してきたPATEK PHILLIPE MUSEUMが5周年を迎えた。 市内のあちらこちらに左写真(←)のようなポスターが掲げられている。 2006年11月11日には夜の9時まで入館無料とある。流石、パテック。こうした宣伝を大々的に行っているのが老舗メゾンのCSR活動の一つとも言えよう。『続・極上時計礼讃』(準備中)でも触れるが、筆者が考える『極上メゾン、極上時計の3要素』の一つがCSR(=企業の社会的責任)である。腕時計とCSR?と思われるかも知れぬが、この要素無しには真の極上時計は名乗れまい。PATEK博物館は本当に素晴らしい。毎回必ず足を運ぶが、自分なりのテーマを定めて見学することをお奨めする。 因みに『時計オヤジ』の今回のテーマは次の4点: @ 黒文字盤の変遷をPATEKモデルに探る A PATEKモデルにおけるブレスレットの誕生を探る B JLCレベルソのOEMモデル、『PATEKのレベルソ』実物を再度、拝観すること。 C ブレゲによる同調時計(振り子式)の鑑賞、である。 (ジュネーヴ滞在の最大の楽しみがウィンドウ・ショッピングである〜) PATEK博物館も素晴らしいが、実は最大の博物館は『ジュネーヴ市内そのもの』である。 時計好きにとって、ジュネーヴ国際空港に降り立った瞬間から狂喜乱舞が始まる。広告の8割方が時計関連である。オーバーに言えば空港そのものが時計広告塔のようなもの。入国審査で並んでいようと、荷物を待っている間であろうと、眼に入るポスターは時計だらけ。おまけに市内に出れば最新モデルの数々、専門ブティックで傑作品、逸品揃いにお目にかかれる。これこそ眼福。至福の時間である。今回のように電車でジュネーヴ入りすれば、到着後いきなり『モンブラン通り』を臨むことになる。むしろ、ウォーミングアップ無しにいきなり、怒涛の超メゾンモデル連発、で迫られると心臓に悪いかも知れない、と言うほどのインパクトが時計好きにはあるのではなかろうか。 興味ない人には全くこの感激は伝わらない。だからこそ、一人旅が一番似合うのがジュネーヴかも知れない・・・ (⇒右写真: 初めて実物を拝観するリシャール・ミル〜) 色々な話題と革新性を持ったこのブランド。伝統的な大所メゾンとは全く別路線、別次元の世界を築き上げているのが頼もしい。ある意味、モーザーと同様にベストパートナーと組んで時計を創る姿勢は大変興味深い。 こちらはCal.RM005搭載のトノー型モデル。3針デイト付き。 スペックを見ると、 ダブルバレル、パワーリザーブ55時間、31石、拘束角53度、8振動/秒、セラミック製ボールベアリング、ケース骨格は18金グレー製(グレーゴールドとは初耳だ)、地板・テンプ受け・輪列歯車はチタン製、等等。 この時計のポテンシャリティは恐ろしい。 文字盤は透明であり、軽量チタン製の地板が見える。地板の色は黒と薄いグレーに分かれている。この地板のデザイン、表面処理が素晴らしい、と言うか憎らしいまでの仕上げである。ちょっと見、グリソゴノにも見間違う派手さであるが、どっこい、RMは超真面目な硬派時計であることが分かる。次回こそ実際に手にしてみたい時計の最右翼だ。 (ダブル・バレルの効能とは〜) このRMもダブルバレル。 それでもパワーリザーブは55時間であり、略ショパールのLUC1.96やオメガの新型アワービジョンと同等。一般のシングルバレルのパワーリザーブは40時間前後であるが、ダブルになっても単純に80時間にはならない。片や、JLCグランドデイトの手巻ダブルバレルは8日巻きである。同じダブルバレルでもその特徴には大きな違いがある。RMやLUCにおける目的とはトルクの維持、振り角の維持による等時性=正確性の持続にあると見るが、両者のバレル(主ゼンマイ)の素材や長さ自体にも大きな違いがあるはずだ。複数バレル(=香箱)化はロングパワリザーブの観点から非常に使い勝手も良い。主ゼンマイ合金素材の進歩にも後押しされ、これからのハイエンド・インハウス・キャリバーの条件としてダブル・バレル以上の搭載が時流となることは間違いない。一方でSEIKO/GSの3日巻きシングルバレルのように、香箱の複数化を避け、シンプルな部品点数、メインテナンスのし易さを狙うメゾンもあるが、恐らくシングルバレルでは3日巻きが限度ではなかろうか。5〜6日ものパワリザーブをシングルバレルで実現できぬ限り、やはりダブル・バレル以上の搭載・開発が今後の中心になると考える。 個人的には手巻であれ自動巻きであれ、ダブルバレルであれば実質パワーリザーブは5〜6日は欲しいところだ。 (冒頭のアインシュタインの台詞はこのCite-du-Tempsにある〜) オメガの新作アワーヴィジョンでも紹介したCite-du-Tempsである。 ここで2006年10月13日から11月20日まで、ブランパンの新キャリバーCal.13R0を搭載した新作モデルの発表展示会を行っていたので早速、見学することにした。 Cite-du-Tempsに入ると、ドアの上部に冒頭で述べたアインシュタインの言葉(英文)が掲げてある。何ともユーモア一杯のアインシュタインらしい台詞ではあるまいか。『女性』を『時計』に置き換えて読めば、『腕時計相対性理論』の出来上がりだ!? 会場である2階にはブランパンの歴史的傑作モデルが時系列的に展示されている。 単なる新キャリバー発表会に終わらないところがブランパンの懐の深さ、歴史の重みと言えよう。1926年製のHarwoodから始まり、1930年製の角型Rolls、初の回転ベゼルを採用した初代Fifty-Fathomsを皮切りに、1983年の完全復活以降の傑作品が並んでいる。1980年代は機械式時計の復興年代でもあり、どのメゾンもキャッチフレーズとして『世界初のOXOX』というフレーズが多いのには苦笑する。 Cal.13R0について: 30石、手巻3バレルの8日巻きの新キャリバーである。 香箱を3つも詰め込むのだからキャリバー自体のデカ厚化は不可避である。 裏面スケルトンバックからは分割式の受板越しにかろうじて歯車と脱進機を垣間見ることが出来るのは救いではあるが、機構の殆どはカバーされている。加えて受板形状、ルビーの配置位置についても好みが分かれるところ。 文字盤は左写真の通り、ブランパンの伝統を受け継ぐシンプルなもの。 中3針に加えて、6時位置に日付け表示、12時位置にパワーリザーブであるが、まだまだこなれていない。プロトタイプとなるのか、実際に市販されるのか興味深い。 (←左写真: 地板の作成プロセスと、Cal.13R0の完成品〜) どうであろう、この容姿は。 個々のパーツの仕上げは素晴らしい。 超一級品のキャリバーであることには間違いなかろう。 大きなルビーがアクセントになっている。 しかし、完成した全体のデザイン・バランスにおいては、まずはう〜ん、と唸ってしまうのが本音である。複雑な形状の受板からはCADデザインされた機械的、無機的な印象しか受けないのは筆者だけであろうか。 |
(3階にはSWATCHファン垂涎のコレクションが一堂に展示されている〜) SWATCHファンにはたまらないだろう。 歴代の市販モデルのみならず、プロトモデルも展示されている。 時計好きであれば1本は所有しているであろうSWATCH。 筆者も同様に、90年代初頭のクロノグラフブームでSWATCHに入れ込んだものだ。 各自の思い出が込められたモデルを各年別の展示モデルと共に眺めるのも乙なもの。 よ〜く見ると、よくぞこんなモデルまで開発したと今更ながら感心する逸品も多い。 中でもミステリークロックならぬ、透明板を回転させるデザインの文字盤は素晴らしい。 またしてもSWATCHを買いたくなる気にさせられる楽しさが、この展示場にはある。 |
(ジュネーヴ空港のDuty-Freeで見つけたコルムの金貨時計〜) ジュネーヴ空港のDuty-Free店舗も大幅に改装された。 空港ビル自体はかなり古いので、店舗面積もチューリヒ国際空港よりははるかに狭い。しかし、ここに入っている時計店のコレクションは中々のもの。隣接する直営ブティックのROLEX、Cartier、Chopard、BVLGARI等にも負けず、圧倒的なブランド数とコレクションを誇る。日本語対応も可能であるのが凄い。 ここで『時計オヤジ』のお気に入りの1本がこちら。 Corumの20ドル金貨時計である。黒いハンズ(時針)も、これしかないという形状だ。 普通の自動巻き、2針式であるが、この気品ある顔立ちが秀逸。 こういう時計が好きになってしまうのは年齢のせいもあるかも知れぬが、自身の美的センスと価値観が縦軸、横軸でマトリックス交差する。こうした縦軸、横軸を自分の頭の中でズラしながら、あーでもない、こーでもない、と一瞬のマトリックス分析を行いながら眺める時間も楽しいものだ。 このあと、ジュネーヴにおける『フレデリック・コンスタント新工場訪問記』、そして『2007年2月のジュネーヴ再訪、最新事情』へと続く。(2007/3/17) 2006年10月末、『時計オヤジ』のシャフハウゼン(チューリッヒ)&ジュネーヴ2都市訪問記は以下: ⇒ @ 『モーザー本社訪問記』はこちら。 ⇒ A 『最新・チューリッヒ時計事情』はこちら。 ⇒ B 『Baume&Mercier クラッシマ・レトロ・ジャンピングアワー』はこちら。 ⇒ C 『BEYER時計博物館訪問記』はこちら。 ⇒ D 『IWCの故郷、古都シャフハウゼン散策記』はこちら。 ⇒ ドバイの『世界初、IWC直営店訪問記』はこちら。 ⇒ E 『2006年10月、ジュネーヴ時計王国・最新情報』はこちら。 ⇒ 番外編 『2006年10月、ジュネーヴで買った理想のWモンク・シューズ』はこちら。 ⇒ F 『フレデリック・コンスタント新工場訪問記』はこちら。 ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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