時計に関する随筆シリーズ (41)

『ショパールChopard本社工場探訪記』

〜 Chopard main factory in Meyrin, Geneve 〜




運命の2005年11月4日。
ジュネーヴのメイランにあるショパール本社工場を訪問した。
LUC1.96を我が『極上時計』として愛でる『時計オヤジ』にとってはまさに念願の訪問。
『夢』とは叶う為、叶える為にあるのだ・・・。


(上写真↑)アッセンブリー工房のすぐ横には歴代のLUCキャリバーが鎮座する。
後列左端がプロト第一号のcal.ASP94(1994年製、6振動/秒)。
この後、Proto96(1996)、Preserie1.96(1997)、そしてLUC1.96&3.96誕生へと続く。
垂涎のLUC歴代傑作キャリバーに食い入る目つきの『時計オヤジ』だ。




(ジュネーヴ国際空港は時計広告で溢れている〜)

チューリヒ国際空港では時計の広告も限られているが、ここジュネーヴ空港では8〜9割の広告が時計関連ではあるまいか、と思わせるほど多い。特に、入国審査までの通路や壁、エスカレーター横にまで、至る場所が楽しい広告で一杯である。時計好きにはのっけから興奮度100%の、『危険な空港』なのだ。

(←左写真: 言わずと知れたF.P.Journeの美しいボードに暫し見とれる・・・)


今回は2泊3日の強行スケジュールである。
時計広告をじっくりと満喫(?)する間もなく、ショパールのニコラス君が待つ出口へと急ぐ。
フライトは12:30pm着。ホテルへ行く間も無く、ショパール本社工場へと直行する強行軍だ。

Geneve airport is one of my favourites. Any of the watch lovers would be also delighted with such a plenty of ad signs of the major maisons. I guess no other airport has such a full of ad coverage. Above photo is a beautifull sign board of F.P.Journe with "Chronomètre Souverain". In a busy moment before accessing to the immigration, I have already started my appreciation of the watches in Geneve.




(写真右⇒ : 時計オヤジの今回の腕時計は当然、これしかない〜)

今回の短期滞在で持参した時計は2本(⇒右写真)。
随筆(37)でも紹介済みのROLEX EXPLORERTとLUC1.96ハーフハンターである。
正真正銘の里帰りを果たすのであるからLUC持参は当然だろう。

Rose-Goldケースに黒文字盤、いわゆる桃金黒文字盤には黒クロコの光沢ある純正ベルトを装着する。シンプル文字盤ではあるが、桃金ケースとやや太目のドルフィンハンズ、水滴型のINDEXが黒ギョーシェと黒革クロコに見事に映える・・・、とまぁ、自画自賛のLUC1.96であるのだ。

These are my partner watches in this trip. 'Rolex Explorer I' and 'Chopard LUC1.96 with half-hunter case' in 18K rose gold with a beatutiful guilloche black-dial. When I visiting Chopard factory, other selection did not come to my mind. This trip means also to visit my LUC's old home-birth place.





(ショパール本社よりのお出迎えに『時計オヤジ』はご満悦〜)

空港ロビーに出ると約束通り、ショパール本社よりイケメン顔のニコラス君が空港に出迎えてくれた(←左写真)。Eシリーズのメルセデスの助手席に座る『時計オヤジ』は早くも興奮気味。
お互いの自己紹介でまずはリラックスに努める。
グレーのスーツに、LUCスポーツ2000を腕にするニコラス君は母君がアイルランド人の英国人。幼少時にはプラハのインタースクールで教育を受け、その後約20年間をフランスで過ごした経歴を持つ。当然、仏語も堪能。そう、スイス時計業界では最低でも英語・仏語(特に後者)が出来ないと話にならないのだ。特にこのGeneveからジュラ渓谷Vallèe de JouxのWatch Valleyでは仏語のマスターは尚更必須である。

When I came out to the exit hall at the Geneve airport, instantlly I could recognize Mr.Nicholas Hofmann of Chopard & Cie S.A., so did he. Thanks to his well organized arrangement, I could visit Chopard factory directly from the airport. He had an education at international school in Praha, then moved to France where he spent about 20 years for higher education, naturally he is a fluent speaker of French and English with a sophisticated Chopard manner.




(途中、あの大手メゾンも視野入る〜)

生憎の雨模様の中、車はショパール本社が位置するメイランへと向かう。
空港から10分足らずの近い場所にあるこの一帯は、工業団地のような場所である。
←左写真はロジェ・デュブイRoger Dubuisの新工場だ。
ショパール工場とは眼と鼻の先に位置する。

う〜ん、ここがあのカルロス・ディアス率いる超絶少数マスターピース軍団の根城であるのかと思うと、何故か感無量。3年前にラ・ショード・フォンで見たコルムCorumの工場を大型化したような風情である(余談だが、コルムのアメリカ$20金貨時計とゴールデンブリッジは中々素晴らしい時計だ。特に2針の金貨時計はデザイン、バランス、全てが好ましい)。

During the short drive to Meyrin, some of the major maison factories came into my sight. e.g. this is a Roger Dubuis's new factory where they produce a quite limited numbers for every model, say only 28 p'cs by each model. Previously they used to produce only 25 p'cs each but one day, one Chinese customer pointed out that the number "28" has more lucky meaning in the Chinese world, then after, Roger Dubuis has increased its limited quantity from 25 to 28pcs. H'm, what a interesting anecdote, isn't it, do you believe it ?





(ジュネーヴの本社工場兼社屋に到着〜)

あっと言う間に車は本社工場に到着した。
1975年に設立されたこの本拠地社屋は既に30年が経過する。流石に外観からも歴史と古さを感じさせるが、どっこい、ショパールの社屋は現在ジュネーヴでも5棟目がすぐ隣に建設中である。ご存知の通り、スイスにはジュネーヴとフルーリエFleurierに、ドイツにはショイフレ家生誕の地、フォルツハイムPforzheimにも工場の拠点を持つ、総勢1200人を超える巨大なグループに成長しているそうだ。1200人というのは時計業界のみならずとも極めて大規模なる企業規模だ。

この10年におけるLUCキャリバーシリーズの目覚しい開発も考慮すると、ショイフレ家によるショパールへの意気込み、そして競合相手たる巨大メゾングループから一線を画し、独立路線を歩み、さらに強化し、真剣なる勝負を挑み続ける企業理念、経営方針を垣間見る。そう言っても決して言い過ぎではあるまい。ショパールの機械式時計への取組姿勢は誠に真摯なものであるのだ。


(⇒右写真: 受付の壁掛け時計を見ると午後1時5分〜)

お決まりのメゾン特製の壁掛け時計もLUC1860シリーズのミニチュアである。
腕時計同様に誠に気品あるデザインにショパールらしさを感じる。
またもやムラムラ物欲が湧き上がる。市内のショパール・ブティックでは置き時計(目覚ましタイプ)を市販している。2バレル製独立式ゼンマイによる重厚な目覚ましはGoldFilled製でCHF1860。
値段と品番が連動しているのは洒落だろうか?


In about 15 minutes drive from the airport, we have arrived Chopard Meyrin main factory.
In 1904, Karl Scheuflele had founded his company, Eszeha, at Pforzheim in Germany, where he was soon specializing in the production of bracelets and jewelled watches. In 1963, Karl Scheufele (the third), bought the Chopard business as an established and prestigious Swiss name. In 1975, this Geneve production point was opened which is one the major stations for Chopard manufacturering.
Looking back at the past 10 years of the LUC's history, I am very impressed with their rapid progress for developing various kinds of excellent LUC caliber series which make me realized that Chopard is really devoted as a true mechanical watch manufacturer with its independent policy.






(各工房見学の前に、ショパールの『社食』で腹ごなしする『時計オヤジ』〜)


←左写真: 初公開!?ショパールの社員食堂で遅めの昼食をご馳走になる。

ビュッフェ形式のレストランである。
工房見学前にまさか『社食』で食事出来るとはこれまた予想外のサプライズ。
何でアジア人がこんな所にいるんだ?と思われているかどうかは知らぬが、ポツンと日本人がフランス語飛び交う食堂に混じっているのはチョット場違い?かな。
いやいや、そんなことは関係あるまい。
素直にショパールのHOSPITALITYに感謝する時計オヤジである。


Before starting the factory tour, I could have an another great opportunity to have lunch at Chopard canteen. It is quite well organized canteen and joining into such an internal facility made me feel more reluxed. I felt as if I were from some press company or I were like a special visitor.



(←今回、多大なるお世話を頂いた御両人を紹介〜)

改めて紹介しよう。
向かって左がニコラス君、右がドイツ人のタッソー君(Assistant de Direction)。
こうして写真を見ると英国人とドイツ人の違いがよ〜く分かる感じだが、如何?

このあと、タッソー君にはショパール工房の各sectionを隈なくご案内頂く。
ご両人とも若いながら、洗練されたグレーのスーツと白いYシャツが新鮮で見事に着こなしている。時計オヤジのベースはアメリカン・トラッドだがこうしたニートな服装にも共感する。彼等スタッフの身嗜みからもショパールの社風を感じ取るのだ。


それではタッソー君の案内で各工房を紹介して頂こう。

Those two gents assisted me a lot this time.
Left: Mr.Nicholas Right: Mr.Tasso, also he was my great conductor during the factory tour. Thanks guys !





(金の延棒も配合、精製そのものから自社製なのだ〜)

←左写真: タッソー君が持つのがショパール独自の調合で造られた重さ4キロの金の延棒。即ち、18金・桃金の延棒だ。この一部が削り取られてジュネーヴ当局の審査を受ける。合格した金塊だけがホールマークの刻印を許される。ショパールの桃金は特に定評ある柔らかい色合いを出している。

ジュネーヴ工場ではこうした金やSS素材の金属炉をも有する。そして、ケースからブレスレット製造、ハッピーダイヤモンドやLUCのアッセンブリーが行われている。従業員総数も500名超の同社最大拠点である。写真には無いが、金の調合&精製過程も見せて頂く。当然、衣服に付いた微細な金粉も全部回収され、リサイクルされるのはここショパールも同じである。




(⇒ハッピースポーツの巨大なる角型ケースを磨き込む技術者〜)

50トンもの圧力によるプレス機械から出てきたばかりのSS製ケースを調整する、ちょいニック・ファルド似の技術者である。ケース製造機器や切削マシン(CNC)がずらりと並ぶ光景は壮観。今や、ケースを自社生産する光景は珍しくないが、その設備投資にはそれなりの金額が張るのは間違いない。フランクミュラーも同様であったが、ケーシングの生産設備を持つ会社にはそこはかとないやる気と本気を感じる。
中々いいね、ショパール。





(←出来立てホヤホヤのハッピースポーツの巨大ケースだ〜)

女性用ケースであるが、とにかくデカイ!まるで、フランクミュラーの角型コンキスタドール・コルテツを連想させる。

今や、デカ厚の流れはショパールの女性用までにも及ぶとは・・・。
それにしてもデカイぞ、このケースは。男性がしても十分過ぎる迫力である。
こうした複雑なその造形は最新CNCマシンによる恩恵の賜物だ。
これも近代技術の成せる業、現代の匠のお陰である。







(←左写真: これぞ宝飾店でもあるショパールならではの逸品〜)

時計のみならず、貴金属・宝飾品アクセサリーもここで生産している。
その最たる例が、カンヌ映画祭パルムドール賞のトロフィーでもある。
月桂樹を模したこのトロフィーは左写真サンプルにあるような陶器製の型から作られる。
こうした各種芸術文化への貢献、サポートもショパールの事業の一環を形成する重要なものだ。

ショパールとカンヌ映画祭。
まさに両者ともに華があるベストカップリングの関係ではあるまいか。






(2003年冬号、『時計Begin』Vol.30が忘れられない〜)

今まで何度か紹介した『時計Begin』のVol.30である。表紙はショパールLUC3.97搭載のトノーTonneauモデル。
この中で『極上時計ブランド』の一つにショパールの工房が取材されている(↓下写真。p50〜57)。
この時から3年越しで、夢にまで見たショパール訪問が今回実現した訳だ。
業界人でもない素人『時計オヤジ』をかくも温かく受け入れてくださったショパールには改めて感謝多謝である。


←右側写真前列中央がショパールLUCキャリバー開発の統括責任者ダニエル・ボロネージ氏である。

1991年に一度はショパールを退社し、時計専門学校の講師となるが、その後、LUC開発プロジェクトに請われて1995年に再入社、現在に至る。
いわばショパールの技術部門の重鎮・総帥であるのだよ。










(⇒右写真: ここが現在のアッセンブリー工房である〜)

上の時計ビギンの写真とまるで同じアングルがこちらである。
そうかあ、ここで取材写真を撮影したのであったか、と何故か感慨深くなる。
4年前と全く変化が無いアッセンブリー部門の光景である。
おぉ、ビギン写真で見たあの若手時計師もあそこにいるではないか。
そして、総帥、ダニエル・ボロネージ氏も別室で作業中だ。
ご多忙中、一瞬だが感動の挨拶をさせて頂く。





(←左写真: そのボロネージDaniel Bolognesi氏と幸運の対面だ〜)

持参したLUC1860を手にして記念撮影に応じて頂く。
『時計オヤジ冥利』に尽きる瞬間である。
ボロネージ氏は言葉少ない御仁のようだが、僭越ながらとても温厚で実直そうなお方という印象だ。仏語のみでの会話となったので、時間も無く込み入った質問は出来なかったが、以下簡単にお話し願う:

Q1) 今までにLUC1.96の改良点はあったのでしょうか?
A1) カレンダー機構とローターのバランスです。(筆者のモデルを確認して)
   貴方の1860(2003年製)はその改良以降のものなので問題はありません。

Q2) ボロネージさんが個人的に好きなブランドを教えて下さい。
A2) PATEKと頑丈な意味からROLEXだね。

Q3) ショパールのライバルとして念頭にあるブランドは。
A3) PATEK、VACHERON、R.DUBUISかな。ジュネーヴ・シールを取得しているメゾンはやはりそれなりに素晴らしい。


上記のQ1)は個人的に非常に興味があった点である。突然の質問であり、また時間も無く改良の時期やその詳細までお聞きすることは出来なかったが、カレンダーの切り替え機構の調整や、ペラトン式自動巻上効率の改善をしたのだろうか、などと想像は尽きない。
A2)のROLEX、という回答は決して不思議ではない。ROLEXを支持するProfessionalは多いのである。コンプリこそ作らないが、ロングライフ・キャリバー(特にCal.3135等)、基本性能と普遍なるデザインには折り紙付きではなかろうか。筆者も同感である。

A3)も当然か。COSC、ジュネーヴシール、そしてフルーリエ規格取得の三冠王たるショパールならではの余裕のコメントであろう。ジュネーヴシールとは特に時計の『仕上げ』に関する徹底した規定であるが、ではどうしてジュネーヴシール制度が創設されたかについてはこの後、2006年1月に訪問したプラレワットPlan-les-OuatesのヴァシュロンVacheron Constantin新工場で興味ある話を聞けた。詳細は後日、そちらで披露予定。




(⇒右写真: 完成直後の”L.U.C.4T”、クアトロ・トゥールビヨンを手にする〜)

"L.U.C4T"- Quattro Tourbillon with the movement "L.U.C1.02"

ボロネージ氏の特別の計らいで、出来立てホヤホヤのマスターピースを拝見する。
まずは右の写真から。LUCキャリバーの現在における頂点がこれ。
2003年に発表されたL.U.C1.02(#16/1869)である。

ジュネーヴシール、COSC取得、手巻4バレルの216時間(9日巻き)パワーリザーブ、8振動/秒のハイビートは33石、僅か224パーツから成るところは賞賛である。
文字盤上には8JOURS(=8日巻き)との表示があるが、実力値では9日間動くということだ。テンプはジャイロマックスのような4つのマスロットを有する4本アーム式のVarinerテンプ、ブレゲ式巻き上げヒゲ採用はLUC1.96同様だ。

18金製の文字盤はシルバー加工、またはブラック加工されている。
最近のショパール文字盤は可也、デコラティヴ。大胆にデフォルメされた数字デザインなど、中身のキャリバーと共に冒険的な試みがなされているがギョーシェの艶やかさ、ドルフィン針の伝統的な美しい仕上げ等、圧倒的にハイエンドの仕上げで品を保っている。”CHOPARD"のロゴも最近では活字体になってきた。CARTIERも同様だが、個人的には筆記体よりもこちらの活字体を好む。ケースは桃金とプラチナ製で各100個限定生産である。

1963年にカール・ショイフレKarl Scheufeleがショパールを買収。
1976年には傑作アイデアのハッピーダイヤモンドを発表。元祖はダイヤ30個が踊る豪華男性用だ。
そして開発に4年半かけたLUC1.96登場から今年で8年目に入るが、ついにここまでLUCキャリバーは昇華したのだ。

そして今やムーヴメントの一部は最高級キャリバーとしてあの”DE WITT”にも提供されている。
ショパール独自の発展は勿論、頼もしいが、加えてこうした他社へのキャリバー提供を通じた時計業界における貢献を始めたショパールにも個人的に大いに賛同と共感を覚える。イェーガー・ルコルトンJLCが現在でも大手メゾンにキャリバーを提供しているように、今後のショパールの事業展開も唯我独尊の枠を超越した時計業界における『王道』を歩んで欲しいと『時計オヤジ』は切に望むところだ。

尚、LUCシリーズは現在95%の内製化を果たしているそうだ。ダイアルは別注であるが、そうしたメゾンは多々ある。文字盤だけは簡単には製作できないのか、外部調達してもサプライリスクが少ないのかは分からぬが、95%という数字は可也の率には違いない。ショパールの本気はこうした数字にも表れている。そして、2006年はLUC1.96が誕生して10周年だ。何やら今年は更なるショパール飛翔への年となりそうな予感がするのだが・・・。



(←こちらはパーペチュアル・カレンダー搭載のL.U.C LUNAR ONE 〜)


『時計オヤジ』はパーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、トゥールビヨン、がコンプリ3高峰と認識している。ブランパンのように6大傑作カテゴリー(注1)と分類する方法もあろうが、ドレスモデルでは上記の3種類が最高峰、傑作品と呼ぶに相応しい。

この"LUNAR ONE"は、閏年・月・日・曜日に加えて24時間表示、軌道式のムーンフェイズを表示する。ムーンフェイズ小ダイアルがやや大き目というのも絶妙のデザインバランスだ。やるな、ショパール、『時計オヤジ』唸る・・・、ムムムム〜。

注1)Ultra-Slim, Moon Phases, Perpechual Calendar, Split-Seconds Chronograph, Tourbillon, Minutes Repeaterの6大カテゴリーを指す。





裏スケルトンも流石に美麗である。
L.U.C1.96をベースに同軸式の2重香箱Co-axial Twin Barrels、パワーリザーブ約70時間、ケース径は40.50mmとやや大き目。『時計オヤジ』の規格では、この大きさが品格を保つ限度である。L.U.C1.96キャリバー直径は33.00mm故に、あくまで意図的に、時代的なケーシングの選択だろうがФ38mm程度でも良かった。逆にその迫力は、圧倒的な存在感だ。

パーツ総数は354と相当多い方だ。250本限定のこの時計は18桃金製とプラチナ製のみ。
軌道上、円周上に回転移動するムーンフェイズも新鮮で独創的だ。
月齢当たりで57.2秒しか誤差は無い。これは122年間で僅か1日の誤差にしか相当しない。要はその人が生きている間は狂わない、ということ。それにOVHが加われば継続使用する限りは誤差無し、である。OVH代金、高そうだあなぁ〜。



こうした最新のコンプリモデルの素晴らしさ、美しさにも強く魅かれるが、手持ちの3針LUC1.96の基本性能の高さと基本デザインの良さに再度惚れ直した時計オヤジである。LUC1.96。技術面でもディープなトークは可能だろうが、何よりも手にした感触と質感全てから快感と喜びを感じる時計である。色気があるシンプル時計としては、中々どうして、これに並ぶ時計はスイス本国でも数少なかろう・・・。とまぁ、色々御託を並べるが左様に思い込める時計、というのが自分にとっての極上時計ということなのだ。




(本社地下には、ショールーム兼博物館が〜)

地下フロアには、最新のショパール・ブティックのモデルルームがあり、それを囲むようにして歴代ショパールモデルが展示してある。歴代、と呼ぶに相応しいLUCこと創業者ルイ・ユリス・ショパールLouis-Ulysse Chopard時代の懐中時計等の貴重な逸品も展示されている。

(←写真左: ハッピーダイヤモンドは男性用として始まったのだ〜)
今でこそ、ハッピーダイヤモンドは女性用腕時計の代名詞であるが、開発当初は男性用のドレスモデルとして発表されたそう。左のポスターはジャイアンツ王選手の600号ホームランを記念したモデル。12時位置に600とデザインされたダイヤが配置されている。王選手のサインボールが懐かしい記憶を蘇らせてくれるが、今や25歳以下の人は王選手の現役時代を知らない時代になってしまったなぁ・・・。子供の頃に『後楽園球場』や南千住の『東京球場』に通った『時計オヤジ』にとって、王・長嶋時代は良き思い出であるのだ。



(核戦争?に備えた『核シェルター』装備には時計オヤジも唖然〜)

←左写真には驚いた。
スイスでは主要な会社・ビル・個人宅にまで地下室に『核シェルター』を設置することが義務付けられているそうだ。このショパールにも同様なシェルターが数部屋設けられている。
写真中央の白い扉は実は重厚で頑丈なシェルターの扉だ。
2重ドアになっており、中の部屋には2か月分の食料も備蓄されている。
永世中立国スイスには兵役の義務もある。丸腰の平和希求など有り得ないのが現実の世界であることが良く分かろうと言うもの。スイスの平和とは、防備と軍備に裏打ちされたものであることを『宝飾・極上時計メーカーのショパ−ル』で実感したのも、皮肉と言うべきか、現実と言うべきか・・・。







(カール・ショイフレ副社長の直筆サインを頂く〜)


濃厚な本社工場、及び博物館を見学している間に『時計オヤジ』の訪問がカール・フレドリッヒ・ショイフレKarl-Friedrich Scheufele副社長にも伝えられた。ショパールの社内ホウレンソウ(報告・連絡・相談)はしっかりしているようだ。見学を終えてロビーに戻るとショイフレ氏の直筆サイン入り『ショパールの歴史』本が待っていた。ということは、同じ本社ビル内にいらっしゃった訳だ。これはこれは、光栄至極のご高配に『時計オヤジ』はただただ感謝感激。加えて、この後ジュネーヴ市内に2箇所あるショパール・ブティックの最新の方をニコラス君にご案内頂く。

本社ビル地下にあったモデルルームと同じインテリア・デザインで飾ったブティックで、今度はミッレミリアシリーズを篤と拝見する(⇒右写真)。ルーペと単眼鏡は常に『時計オヤジ』必須の携帯品だ。じっくりと拝観する楽しみに耽る『時計オヤジ』はかくしてジュネーヴ到着初日の午後をフルに満喫したのである。

ここまでの歓待を受けて『ショパール贔屓』にならぬはずがない。
自分自身の 『極上時計』 として、ショパールL.U.C”1860”が不動の地位を確立したジュネーヴの午後であった。


SPECIAL THANKS TO : CHOPARD & Cie S.A. - Genève


(参考文献)
『世界の腕時計』 No.51(KKワールドフォトプレス刊)
『時計Begin』 Vol.30 (世界文化社刊)



(時計オヤジの『2005年ジュネーヴ再訪〜』関連のWEB等)

⇒ 『2005年11月、ショパールChopard本社工場探訪記』はこちら・・・
⇒ 『パテック・フィリップ・ミュージアムPATEK PHILIPPE MUSEUM再訪』はこちら・・・
⇒ 『ジュネーヴ再訪、PART-1』はこちら・・・
⇒ 『ジュネーヴ再訪、PART-2』はこちら・・・
⇒ 『2002年12月、旧・ヴァシュロン本社博物館探訪記』はこちら・・・
⇒ 『再訪、新メゾン・ヴァシュロン・コンスタンタン』はこちら・・・

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(このWEB上の写真・文章等の無断転載はご遠慮下さい。)

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