考察シリーズ J

『革手袋についての考察』




冬場の定番アクセサリーである革手袋。
しかし極寒地を除けば、世界中が暖冬気象の昨今において実用性は低くなりつつある。
とは言え、気温10度を切るとあれば嬉しいのが革手袋。
入手後、20年も経過した愛用手袋と共に考察を加えてみよう。(2008/1/03)
(↑上写真: 靴の老舗”チャーチ”からもこうしたヘビーデューティーの手袋が発売されている。)



(革製品は断然、イタリア製に限るという経験則からの結論〜)

手袋は元来、消耗品である。
しかし上質な本革素材であれば、それも数枚をローテンションさせて使うと耐用年数は飛躍的に延びる。基本的には靴の色に合わせて黒、茶系統の2枚は必携。これにデザイン、防寒度合いのバリエーションが加わると腕時計並みに所有枚数は増える。それでも2〜5枚あれば十二分だろう。

革製品をひと括りで論じても無意味であるが、一般的には革の柔らかさではイタリア製品が頭一つ抜き出た存在である。特に手袋、靴、鞄などの革衣料品の類は断トツにイタリア製品が宜しい。例えば英国であればデンツDENTSが革手袋で有名ではあるが、その革のなめし具合、柔らかさ、全体の質感、デザインという点ではイタリア製とは別次元にある、というのが筆者の位置付けである。



(⇒右写真:
ロンドンはバーリントン・アーケード内にあるPICKETTにて〜)


何度と無く紹介してきたバーリントン・アーケードBurlington Arcade
すぐ傍にあるジャーミン・ストリートと共にブリティッシュ・トラッドのロンドン2大総本山エリア、である。
そのバーリントンに店を構えるPICKETTが中々宜しい。
革製品のみならず、小物全般を販売するが、特に革手袋の品揃えと品質が充実している。茶系主体の品揃えであるが、如何にも英国製らしく革も厚みもイタリア製に比べてやや厚め。ロンドンにおける革手袋の価格はDENTS含めた高級品クラスで約£60〜150程度、上限3万円程度だ。
最近ではフリース製の安価手袋が流行しているが、やはり革手袋は風格があって雰囲気を味わえるのが良い。何よりも着用する楽しみがある。
とは言え、雨天や雪の日に革手袋を敢えて着用する必要も無い。
機能や天候、TPOを加味した上で、その日の手袋を選択するのが正解だろう。





(⇒右写真: 
 このPICKETTでは男性用の手袋も種類豊富に揃っている〜)

女性用の手袋は本当に種類が多い。
デザインも、色もバラエティに富むのが何とも羨ましい限り。どうして同じデザインで男性用が無いのかと毎回悔しい思いをしている。このPICKETTではロンドンの標準から考えると可也の品揃えである。

写真のようにドライビング手袋を始めとして、ライン無しの薄手からカシミア・インラインの防寒手袋まで種類が豊富である。それでもイタリアの大手メゾンとは比較にならない種類・量ではあるが、英国製に拘る御仁にはお薦めだ。DENTSだけが英国製ではない。





(←左写真: 筆者愛用の2枚がこちら〜)

右茶色は20年以上前にローマで購入したペッカリーPeccary革製。
インライニングはカシミア製で非常に暖かい。日本の大都市であればまず実用観点からはオーバースペックだ。カシミアのインラインということは当然、全体の厚み・重さも増し、気軽に使う気にはなれない。それでも、『一生モノ』を選ぼうとのコンセプトの下、当時選択したのは高級革素材と言われるペッカリーであるが、前評判通り非常にしなやかで、出来映えも流石である。メーカーは老舗、スペイン広場前のセルモネータSERMONETA。今や日本人の店員(ローマ、ミラノ)もいるほど観光客にも人気の店だ。

左は新参者、イントレチャートIntrecciatoの濃茶ラムレザー製。
こちらもカシミア製のインライニング付きである。
女性用にはイントレチャート(メッシュ製)手袋は数々あるが、本場イタリアにおいても男性用はついぞ発見出来なかった悔しい想い出がある。それが東京のGINZAで発見するとは、足元をすくわれた感じだ。こちらは国内ブランド・クリケットCRICKET(Sax Label)であるが、ラムレザーのしなやかさと合わせて装着感は極上。ステッチはペッカリーがアウトステッチのややアウトドア的性格が濃いのに対して、こちらはインライン・ステッチでありONでの着用をイメージさせる。色は3色(薄茶、濃茶、黒)と揃っていたが、今回は万能選手の濃茶を選択。黒色を狙っていたのだが、濃茶はまさに全方位色彩向けで、活用の頻度は高い。
イントレチャートは”ボッテガベネタ”でも有名であるが、非常にお洒落度が高く、ドレッシーな雰囲気が漂う。
やや長めの手首部分も女性用を髣髴とさせる。よくぞ作ったり、さすが小物で名を馳せるクリケットである。




(⇒右写真: ペッカリーの写真を拡大すると〜)

3つづつ並んだ毛穴がペッカリー最大の特徴だ。
ペッカリーとは南米に生息するイノシシの一種だが、この革の柔らかさ、伸縮性の高さ、通気性の良さはまさに手袋に打って付けである。靴・その他の衣料用としては少々柔らかすぎるかも知れない。やはり手袋用途が定番、本命であろう(余談だが、普通のイノシシの毛穴はいくつだろうかと未だに答えが見つかっていない。多分、一つづつであろうが・・・)。

20年以上も使用しているが型崩れもせず、今やすっかり手に馴染んだ。尤も毎シーズンで装着する機会は限られるので耐用年数が延びるのは至極当然な話ではある。『一生モノ』というのは、十分な手入れとそれなりの配慮に裏打ちされてこそ初めて寿命を確保できると言うもの。大事に、大切に愛用する、その思入れが込められてこそ『一生モノ』としての風格も備わるというものだ。





(愛用のイタリア・メイド革手袋について〜)

ローマ、ミラノを訪問するにつれ、いつの間にか手袋も増えて行く。
数あるショップの中でも矢張り手袋専門店の製品は良い。餅は餅屋である。
良い手袋の条件は3つ。
革のなめしの成否、ジャストサイズ、そして革の発色を含めて垢抜けしたデザインであること。これを確認するには現物に接する以外に手段はない。
とことん吟味できる品数を求めると自ずと専門店に辿り着く。
筆者のお気に入りは20年以上も前から老舗セルモネータSERMONETAである。

革の素材御三家と言えば、ペッカリー(南米産猪)、ディアスキン(鹿革)、ナッパ(羊革、山羊革またはクロムなめし加工をした牛革)だろう。
革の厚さもその順番通りが一般的。ペッカリーはドレッシィーとは言い難いが、明るい色であれば雰囲気は随分と変わる。いずれにしてもカジュアル系、防寒重視が本来の用途。カーフの1枚皮、または薄手のシルクライニングであればナッパ製が最高のお洒落度を発揮する。

(↑上写真: 茶系モデル2枚〜)
左側バーガンディ・モデルは鹿革にカシミア製インライニング付き。
防寒度合いは完璧。手首のベルト部分はアウトドア用、OFF用とするのが正解。鹿革には独特のスコッチグレインのようなシボがあり、意外にもカーフのように柔らかいのはなめし技術の高さによる。

右側、キャメル色はラムレザー製。ツートーンカラーであり、掌は濃茶であるのがポイント。こちらも薄手カシミアのインライニング付であるが、ボリューム度合いはやや軽め。こちらも日常で使える非常にお気に入りモデルである。




(⇒右写真: 黒色のスタンダード2枚〜)


黒のシンプルな手袋も欠かせない。こちらも共にセルモネータ製。
左側はインライニング無しのラムレザー1枚もの。
非常に薄いのが特徴。元来、都会で使用する手袋であればこの程度が機能的にも十分。即ち、脱着を繰り返す状況においては簡単にスルリと脱げ、また手袋を装着した状態でも指先の感覚が微妙に分かるモデルが必要だ。ステッチは当然、インライン式。

右側は鹿革、カシミア製ライニング付きである。
銀色ジッパーとゴム製ジャバラの存在が可也、カジュアルに振られている。
こうした伝統的なデザインの手袋も捨てがたい味がある。







(手袋の楽しさ、それは冬場の寒さを味わう余裕を持つこと〜)


革手袋中心に綴ったが、ウール製手袋も実用度は高い。
右写真の様なプレーン(?)なモデルも毎年、新調しつつ愛用している。
因みにこのモデルはトラッドの雄、J.プレスの#JPG-03801である。
耐久性には限度があるが、ON/OFF問わず気軽に使えるところが利点。
加えてその軽さと携帯性の良さはウール製の最大の特徴。しかし、間違っても毛糸の網込み式やフリース製、スキー手袋を都会で使うことは避けたい。OFFのカジュアルであれ、TPOだけは配慮すべきだろう。

ドライビング手袋にも薄手(当然!)で良いものがあるが、これをON用に使うことも注意を要する。手袋はあくまでアクセサリーであるが、一番目線が集まる指先をカバーするアイテムであるだけに、選択には慎重さが必要。
目立たず、快適で、デザイン性があるもの。
この要素を満たす手袋を求めると男性用では意外と少なく、益々手袋の妙味へと深みにはまってしまうのが困りものである。(2008/1/03)


加筆修正) J.Pressモデルの写真をUP(2008/11/01)。


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(手袋についての関連WEB)

⇒ 『革手袋についての考察@』はこちら
⇒ 『DENTSの黒革製手袋についての考察A』はこちら
⇒ 『DENTSのペッカリー製手袋についての考察B』はこちら
⇒ 『DENTSのPITTARDS製革手袋についての考察C』はこちら
⇒ 『グローブホルダーについての考察D』はこちら
⇒ 『PARTENOPE製オレンジ手袋についての考察』はこちら
⇒ 『PUSATERI製、ショート丈・時計用手袋』はこちら
(2011/6/11)



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