Jalan Sriwijaya (PT Fortuna Shoes)  ジャラン・スリジャヤ(スリウァヤ)

Jalan Sriwijaya Navy Coin Loafer
Calf Leather, Model #98605、LAST:18045 (Size:7.5)
Made in Indonesia




極東・東南アジアにおいて、日本以外の本格靴メーカーの存在を知らない。
英国・米国靴に並ぶ実力を持つのが日本製。
しかし、まさにダークホース的な存在として、まさかまさかのインドネシア製の本格靴登場である。
”Jalan Sriwijaya” のネイビーローファー。
今回は購入と同時に『重量戦車』に改造をも試みた。
(2013/11/17 510000)



(2003年に誕生した、Jalan Sriwijaya なるブランドについて考察する  〜)


個人的にインドネシアのイメージとして真っ先に思い浮かぶのが、『世界最大のモスリム人口を持つ国』、ということ。次に、バリ島のスローなイメージである。とてもではないが、本格靴のイメージからは程遠いし、有り得ない、と思っていた。そんなインドネシアで、世界のトップラインに伍して引けを取らないブランドがあるのだから、誰もが驚くのは無理もなかろう。

Jalan Sriwijaya の母体である靴工場は1919年に創業された。会社名は”PT Fortuna Shoes”。その創業者の2代目が英国ノーザンプトンで本格靴の修業を積み、所謂九分仕立てのHand Welted Good-year製法で勝負に出たのが1990年代初頭らしい。製法の確かさと厳選された欧州製レザーの品質の良さに支えられ、この数年で一躍、日本市場にも受け入れられたようである・・・。と、ここまではどこのブログやHPでも紹介されているのだが、そもそもブランド名の”Jalan Sriwijaya”の正確な発音はどうなるのか。日本ではジャラン・スリウワヤ、スリワヤ、という呼称が一般的だが、本国Jalan Sriwijayaの製品企画担当者の発音では、『ジャラン・スリジャヤ』と明確に発音しているので、恐らくスリジャヤが正しいものと推測する。

もう一つ、”Jalan Sriwijaya” の意味について説明しているブログ・HPが全くないのが不思議である。Jalan Sriwijaya とは靴工場がある都市バンダンBandung前の通りの名称である。”Jalan”というのは、『道路』、という意味があり、『ジャラン・ジャラン』、でブラブラする、散歩、旅行、などの意味がある。同名の旅雑誌があることで日本でも知名度はあろう。しかしここでは、○×通り、という接頭語にも使用される単語に相当する。つまり、英語のStreetに相当する単語でもあるのだ。間違ってもこのブランドを短縮して『ジャラン』等と呼んではならない。『道路、道、通り』、と呼ぶに等しいからだ。敢えて短縮形で呼ぶのであれば『スリジャヤ』だろうが、あくまでフルネームで呼ぶのが正しいし、メーカー及びブランドへの礼儀でもある。

⇒右写真: Google Mapで調べると、このようにJalan Sriwijaya の通り名が確認できる。Bandung市内にある南北に伸びる通りである。



(Jalan Sriwijaya の魅力の秘密とは 〜)

Jalan Sriwijaya のトラッド靴が近年ここまで成長している背景には、ハンドメイドGoodyear製法に依る確かな品質管理と伝統的なデザインのハイレベルな融合にあると考える。確かに、このブランドの靴はどのモデルを見ても浮いたところが無い。見ていて安心できるデザインであり、余計な流行を追わない正攻法を貫いている点が極めて好ましいし、大いに賛同出来る点でもある。これはJalan Sriwijaya のブランドとしての基本理念が確固たるものであることを示している。
そして、もう一つの最大の武器がインドネシアにおける人件費の安さであろう。加えて日本における輸入関税が欧米品と比べて格段に低い(⇒個人輸入の場合で考えると、本体価格の約18%が輸入関税相当となるのだが、これがインドネシア製品では無税となる)。こうした事情も製品価格に発揮・還元されている訳で、絶大なるコストパフォーマンスを発揮できる要因となっている。



***


今年の自分のテーマカラーでもあるネイビーブルーであるが、ともすれば下品にもなりかねない難しい色目である。かつての自分の嗜好であれば、こんな難しい色にチャレンジする気分には到底なれないのだが、年月(齢)と共に嗜好とは斯くも変化するのがいい加減な点だろうか。
しかし、品のあるネイビーブルーで、クラシックな顔立ちの靴が意外と少ないのである。下手をすればヒールキッカー何ぞが付いたキワモノ靴にもなりかねない。探しに捜して、偶然に発見したのが、ふと立ち寄ったUnited Arrows別注のこのモデル。足入れした瞬間、全体を包み込む適度な圧迫感と、そのトラッド風味満載の確かな作りとデザインに軽い衝撃を受ける。その場で即決購入となる。
こうした偶然の出会いを通じて、満足出来る充足感を得られるブランド・モノに出会える確率は低い。故に、そんな稀有なる遭遇に巡り合えるからこそ、街中での市場調査=ウィンドウショッピング、は楽しいのである。

この靴、全体のデザインは間違いなくJ.M.Westonの180シグネチャーローファーを意識している。
トゥのシーム(縫い目)は好みでないが、それを許せてしまう全体のデザインと縫製・革質の完成度の高さがコストパフォーマンスと融合して、靴オヤジの琴線に触れたのである。








(ネイビー尽くしのインソールにも惹かれる 〜)

気分的に今年はネイビーが自分のテーマカラー。
インソールまでこのようにネイビーカラーで統一されている点にもコダワリを感じる。
そのインソール部分には右写真のように金ペイントで、ブランド銘とUA別注の印が。何よりも、靴のイラストと共に描かれている”Goodyear Welted”の文字に、Jalan Sriwijaya の意気込みと自信を感じるのだ。


***

このインソールの裏側にはラテックス製のクッション素材が組み込まれているので、手触りでもそのソフトな弾力を感じる。実際に歩いてみても緩衝材の威力を十分に感じることが出来る。アッパーには
フランス製の柔らかいカーフ革が用いられており、内側・外側ともに素材の良さは十分に感じることが出来る。こうした全体の完成度の高さこそが、Jalan Sriwijaya を支えている最大の魅力、であろう。靴の命は革質にある。その点を十二分にわきまえているブランドに迷いはない。この靴からは、そんな声が聞こえてきそうだ。









(レザーソールはベルギー産を用いているというが 〜)


カタログ説明的には、ベルギーの『マシュア社』製レザーソールを利用していると言う。マシュア社はブライドルレザーで有名なメーカーでもあるので、靴底用の革として用いられるのも至極納得できる。しかしそんな社名や名声?はさておき、実物のレザーソールを見て触れれば、その品質の高さは容易に推察されようと言うもの。

全体的に黒塗装されている点はALDENの靴底をも連想させる。半月型のヒールにはやや中途半端な位置に4本の釘が打ち込まれ、その角は下写真のように切り落とされている。どうせ打ち込むなら釘はあと3本追加すれば見栄えもするのだが、敢えてそこまでは望むまい。ソールに見える仕上げの機械式による縫い目も無骨で頑強なGoodyear製法の証。こうした全体の意匠は、まさしく王道を歩むTraditionalな製法そのもので信頼出来る。

しかし、このままで履きこなすには何か物足らない。
そう、ネイビー尽くしのテイストを靴底にまで表現したい、そんな遊び心が湧いてくる『靴オヤジ』である・・・。





























(恐らく、日本国内の専門店によるリペア技術は世界一ではなかろうか 〜)

オリジナルの完成度も高いのだが、靴道楽の最大の愉しみが『改造』、にある。勿論、そのまま履きこなしてエイジングを愉しむことが前提であるが、自分の好きな風貌にリペアするのも一興である。靴オヤジの場合、改造の目的は2つ。一つ目は、何といっても自分の足型に合うように微妙なフッティングに仕上げること。具体的には、例えば小指が靴の内部で当たるとする。そのまま数週間、数か月と痛みを堪えて慣らし履きを続けるのも良いが、その間に被る肉体的ダメージは計り知れない。自分はそこまでマゾヒスティックな趣味は持ち合わせていないし、窮屈な窮靴なんぞ、御免こうむりたい。窮靴、であれば即座にリペアを行う。適当なストレッチを専門店で施すのも立派な『改造』に当たると考える。そして、二つ目がソール改造である。こちらの改造の目的は『補強』にあるが、見栄えも重視する。今回のJalan Sriwijaya のローファーはGoodyear製法も手伝って、可也頑強なる作りであるが、靴底に更なる色気と頑強さを与えたい欲望に駆られるのである。





(⇒右写真: 思案に思案を重ねた結果がコチラ〜)

Top-ToeにはLuLu Steel Tipを装着する。所謂、ヴィンテージスティールという補強材である。トライアンフ150も良いのだが、ローファーに似合うスッキリ顔のトゥ補強にはLuLu Steel Tipがより似合う。
そして、一番摩耗が激しい靴底部分にはハーフラバーでロイヤルブルーを選択。僅か1mm厚」のラバーであるが、クッション性能と耐摩耗性能向上のメリットは絶大、である。
しかし、そんな効能・能書きも良いが、何よりも見た目の印象が大切である。LuLu Steel Tipは古典で恰好が良いではないか。好みではあるが、これを装着するメリットこそあれ、デメリットは皆無だろう。滑る?音が気になる?そんな事は使用上、全く気にならない。そして、ハーフラバーは靴底だからこそ、敢えて華やかなムードで飾りたい。下着やソックスの色柄に凝るのと同様、自分独りだけの愉しみ、こそが愉悦である。靴道楽の醍醐味はこれ見よがしに露出するのではなく、秘めたる愉しみ、ではあるまいか。













(こうして出来上がった、”My Jalan Sriwijaya Navy Loafer” 〜)


今回はネジ留め式のシュートゥリーも運良く発見した。まさかの大穴、コロンブス製のお買い得価格。最近の高級靴ブ^ムに乗り、こうしたシュートゥリーも各種さまざまなデザインの製品が発売されているが、このネジ式シュートゥリーは筆者が一番好みのキーパーでもある。ネジで位置を固定する動作が少々、面倒えはあるものの、そうした『儀式』が逆に愉快である。恐らく、これから購入する新たなるキーパーは全てこのコロンブス製になるだろう。

サドルストラップ部分は非常にタイトである為、締め付け感もそれなりのJalan Sriwijaya Navy Loaferであるが、、派手な改造も手伝って、この靴の総合的な満足度は極めて高いレベルに落ち着いている。Jalan Sriwijaya Navy Loafer、欧米の一流どころにも伍して引けを取らない、誠に高品位な靴である。(2013/11/17 510,000)









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