Crockett & Jones クロケット&ジョーンズ
〜 カントリーシューズを探す旅・英国訪問編 A 〜

Crockett & Jones "BANGOR" Mahogany Burnished calf
Ref.5664-14T (Last 365、Fitting:E) Leather Double-Sole

Made in England



こちらはJermyn Streetに構えるCrockett & Jones(以下、C&J)の店舗。
2012年4月某日、狙いを付けたモデル攻略を目的にいよいよ現地行動開始。
靴はやはり実際に試し履きしないと分からない。
結果、当初の予定とは異なる予想外の買い物をすることに・・・。
(2013/01/01 464900)



(カントリーシューズの本命とは 〜)


今回、真っ先に訪問したのはTricker'sである。
この老舗を抜きにしてカントリーシューズは語れない。しかし、既に紹介したように、ここのBurtonは兎にも角にも重量戦車である。この極厚で牽牛なダブルソールを実際手にした段階で自分には持て余すと結論付けた。BurtonはJ.M.Westonの#590トリプルソール同様に、靴オヤジにはオイソレと手も足も出せない牙城中の牙城である。しかし、逆にその憧れの気持ちは更に高まるのであるが・・・。

そして、事前調査で絞り上げた候補がC&Jの”Pembroke”(↓下写真)。
Tricker's同様のダブルソールながらも、こちらの方が洗練されてやや薄い靴底仕上げとなっている。
ダイナイトなどのラバー製では更に重量も増すことを考えて、狙いはダブルソールである。
エンボス加工されたスコッチグレインのようなカーフ革と5つのアイレット、外羽根式のフルブローグというのが要件を全て満たす。特にスコッチグレインは好みの素材であるだけに、こいつは極めて魅力的である。

(↓下写真)
”Pembroke Tan Scotch Grain”(Last 325) :  
実際に足を入れてみると、その快適具合は文句の付けようがない。
しかし、ここで直感的なる違和感を感じた。すなわち、
@つま先周りのメダリオンのデザインが好みと異なる。
Aつま先のシェイプが妙にラウンドエッグであり、尖った感じ。
Bブラッチャーの外羽根が靴紐を締めると左右くっついてしまう。これではデザイン上も見苦しい。
Cハトメも無いのでドレッシーさが加わってしまう。

写真のサイズは7.5G。EとGが用意されているのが嬉しい。Gだと甲周りのゆとりがタップリ。靴紐を締めると、切り替えしの両外羽根がKissingするまでに近づいてしまう。感触は極めて良好であるが、上記2点が妙に引っ掛かる。C&Jの古参店員は、『Pembrokeを選択するなんぞ流石』、とかなんとか言って褒め上げるが、どっこい、その手には乗らない。ここは冷静にトコトン自らの希望と信念を貫くのである。

Wing-Tipで重要なのがメダリオン模様。各社でそれぞれ異なるが、コレが何でも良いという御仁だが、靴オヤジには無視できない重要な要素である。このPembrokeはパンチがない。しまりが無いメダリオンであるので、例えどんなに快適な靴であろうとも、この靴を生涯履きこなす気持ちにはなれないのだ。メダリオンで好みの最右翼はTricker'sのBurtonやJMW。メリハリと全多岐な凝縮感あるまとまりは見事。特にBurtonのハート型にも見えるラインは素晴らしい。大小サイズが異なるメダリオンの配置だけでも、靴全体に与える印象はガラリと変わってしまうのだ。残念、Pembrokeは失格、となる。

























(急遽浮上したのが、大穴”BANGOR” 〜)

狙いのPembrokeが敗退してしまい、さて困った靴オヤジを救ったのがこのBANGOR。
サイズ7.5Eを試し履きしたところ、Last365のお陰で特に違和感もない。小指も当たらず、つま先もこのラウンドトゥのお陰で余裕が感じられる。しかし、気に掛かるのがスムースレザーであること。そして、このメダリオンも大小メダリオンの配置がバランス悪い。このBANGORをスコッチグレインで注文できないか色々と店側と相談したが、時間も費用もかかりそうであり諦める。フレンチカーフを用いた厚めの革質はBurtonよりも上質な感触である。メダリオンはこの際、目をつぶろう。ダブルソールであることも文句は無い。片足の重量は650グラムを超える・・・。

サイズは慎重に選んだ末に8.0Eに決定。頑丈なダブルソールであるが、JMWの#598を念頭にVintage Steelを装着することを店側に提案。すんなりと受諾してもらう。ロンドンでは、パーツ会社名のLulu Steel-Tip(Vintage Steel)と呼称するようだ。勿論、ロンドン滞在中には完成しないので、後日、郵送してもらうことに。荷物にもならず、VAT還付手続きも不要なので、郵送は有効な手段。但し、送付先は日本ではない。































(BANGORの全体ラインは可也の洗練度と力感で溢れている 〜)


C&J店内で履く限りは8.0Eは快適。
ポッテリとしたつま先はLast365の賜物。まさしくC&Jを代表するカントリーシューズらしく、無骨ながらもどこか洗練度合いを感じる。更に上品なPembrokeと比べて好みは分かれるだろうが、BANGORの適度な粗野さ加減は中々のもの。

右写真の真横から見たこの全体ラインは気に入っている。
特につま先周りのラウンドトゥデザインとフルブローグデザインはバランスが取れた美しさを感じる。Pembrokeとはラストが異なることは一目瞭然だろう。この365はTricker'sなどにも近いデザインであるのだ。

尚、8.0Eでは若干、大きめに感じるかも知れないので、C&JにはLast356にピタリと合わせた革製インナーソールも同時に発注することにする。もう一つ、つま先にLulu Steel-Tip、つまりVintage Steelも最初から装着してもらう加工をお願いする。この結果、引き取りは1ヵ月後の航空便で居住先まで送付してもらうことに。実は、C&JにてはこのBANGOR以外にも、もう一足購入したのだが、そちらは別途披露する。






(一ヵ月後、届いたBANGORがこちら 〜)

このBANGORは自分が理想とする純英国カントリーシューズのお手本的存在である。恐らく、この先、終生の友となるであろう。分厚いダブルソールを自分に馴染ませるまで何年掛かることか分からない。そして、この他にもJMWダブルソールやら、この後紹介するカントリーシューズ各種も待ち構えている。

そうした愛靴の数々を履きこなす愉しみは大袈裟に言えば、恐らく自分にとってのライフワーク的な趣味になることであろう。

(⇒右写真)
靴全体では大中小の3つの大きさのパンチングを使っているのだが、このつま先のメダリオンでは中小2種類のパンチングを使用している。大きいメダリオン穴を使っていないのは大人しい印象を狙ったものだろうが、中穴が3つしかないのがバランス悪い原因。あと4つ増やして全体のポイントを強調することで、その雰囲気は大きく改善されるはず。
惜しいのはこの点だけである。



































この後、カントリーシューズ各論編は更に続く。
(2013/01/01 464900)


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(本格派カントリーシューズ関連のページ)
@ 『英国で本格派カントリーシューズを探す旅(序章)』はこちら
A 英国訪問編・Crockett & Jones "BANGOR"はこちら
B ドバイ訪問編・Mr.B's "MENTZEL"はこちら
C イタリア訪問編・Church's "FAIRFIELD-81"はこちら

D サウジアラビア編・Massimo Dutti "Blucher Crepe"はこちら
E ドバイ編・ J.M.Weston "#641 GOLF DERBY"はこちら
F ドバイ編・ CLARKS ”Freely Burst"はこちら



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