随筆シリーズ (114)

『2012年10月、パリ散策記』




10月末のパリは肌寒い。
それでも気温は快適ゾーンの11〜13℃。
喧騒と浮かれた夏の季節も過ぎ去り、
ある種、冬への覚悟のような心地良い緊張感と倦怠を感じる。
今回は5年ぶりにパリ・ショートステイを楽しもうとしたのだが・・・。
(2012/12/04 461111)




(パリには愛機TANKで臨む 〜)

今回、マラケシュ(モロッコ)訪問後に移動してきたパリだが、真冬直前のこの肌寒さが心地良い。そして、パリでする時計であればTANKかブレゲしかあるまい。Cartierの中でもTANKに限る。そして今回のお供は、Tank Louis Cartier(LM)である。LMのくせに驚くほど小さい。現代においては戸惑いを覚えるほど小さいが、腕に付けると不思議と馴染む。昨今のデカ厚に毒された自分には、逆に新鮮な付け心地。これが伝統に裏打ちされる小体な時計の醍醐味だろうか・・・。
しかし、正直なところ、あと2割大きい方が更に良い。女性には丁度良いサイズであるが、男性用としては矢張り、少々物足りない・・・。

さて、ORLY空港に到着後、タクシー待ちの長い行列に15分ほどつかまる。タクシーでパリ市内に向かうのだが、料金はTIP込みで35Euroだから、極めて良心的価格だろう。
途中、右写真の通りコンコルド広場を抜けて、本日の宿であるオペラ座近く、プランタン・デパートまで徒歩1分のアパートホテルを目指すのだ。因みに今回訪問時の為替はざっくりと、$=80円、Euro=100円換算である。日本からの輸出には悲鳴で一杯であるが、海外におけるショッピングでは至極恩恵を被ることが出来る強烈なる円高であるのだ。





(例によって今回もアパート形式のホテルに宿泊する 〜)

今や、『時計オヤジ』にとっての定番となりつつあるアパート形式のホテル。今回はオペラ座よりも徒歩圏内のプランタン(デパート)へ徒歩1分と言う場所。Adagio Operaというこのホテル、利便性・快適性・安全性からは文句が無い。下写真のように2ベッドに加えてソファ型ベッドもあり、大人3人が楽勝でくつろげる。キッチン、バストイレも独立しており、無料Wifi完備で満点。堅苦しい形式ばった老舗ホテルよりも、数段上のホテルライフを楽しめる。オススメ。


※今回はパリ・オルリーに到着後から熱っぽさを感じた、ヤバイ、と思いつつホテルチェックイン直後から38度超の発熱となる。マラケシュでの滞在が影響したのか、はたまたパリの天候が『時計オヤジ』を拒絶しているのか分からぬが。このあと一晩、高熱でうなされることに・・・。それでも、翌日には奇跡の復活を遂げたのは、不幸中の幸いとしか言いようが無い。

























(さっそく、パリ市内、オペラ座界隈を散歩する〜)

『時計オヤジ』の最近の関心事は、時計・カメラ・靴、である。これが3種の神器ならぬ、3大趣味になりつつある。
特に靴に対する興味は失せることがない。特段、コレクターでもDeepなオタクでもないのであるが、大好きなモデルを履きこなし、磨きこむ楽しみとは腕時計のそれに匹敵する楽しさである。そして、何よりも腕時計への投資よりも格段に経済的である実利も影響している。


↓下写真: 
オペラ座近くに、フランス老舗靴店の雄J.M.Westonがあるので早速訪問することに。
店の直ぐそばにこのような銅像があるので記念撮影。この御仁、一体誰様が存ぜぬが馴れ馴れしく片組みさせて頂く。
こうしたトップハットも魅力的であるが、『時計オヤジ』の今回の帽子は冬場を意識したヘリンボーン柄のチロリアン風。そして、足元は黒のワラビーである。
そして、その隣りにはJ.M.Weston店舗が待ち構える。

























(ド迫力のトリプルソール#590は740Euro也 〜)



GOLF Shoesを諦めている『靴オヤジ』にとって、JMWで興味がある靴と言えば#607の黒Wing-Tipである。シガーブラウン購入記でも述べたが、607の快適性と仕事から遊びまで広くカバー出来る汎用性の高さとその完成されたデザインから、シックな黒モデルも興味津々。次回、ドバイモール訪問時における最大の標的として虎視眈々と準備中。

今回、マジマジとみたのがこの#590トリプルソール。
英国カントリーシューズに興味多大であるがゆえに、このフランスを代表するカントリーシューズの590にも注目していたが、こいつは紛れも無く横綱靴である。Tricker'sの4アイレット頑強靴にも一歩も引けをとらないが、見た目は物凄くスマートというのがフランスらしさ、JMWの真骨頂である。しかし、トリプルソールのこの重量戦車では自分には絶対に持て余すであろう。この靴は20〜30年履いて味が出てくる靴であって、その意味からは悲しいかな『靴オヤジ』には既に手遅れ、足遅れ、なのである。






↓下写真: シングルストラップの新作。            
      ↓下写真: こちら定番の#598
  さりげないデザインであるが、独創性に溢れている。          
ダブルソールU-TIPの傑作品。
  普通の中にも骨のある主張を感じ取るデザインは流石。         
この牽牛さこそJMWの真骨頂である。




























(パリでの唯一の土産となったSpats 〜)


JMWの傍には数店の靴店がある。その中でもふと、目を引いたのがMansfield靴店の中で展示されていたこのSpats。ブランドは”BOWEN”という。どこか中世の騎士団的な足元を連想させる洒落たデザインがユニーク。基本は週末カジュアルでの使用が正解であるが、チラリズムを意識してのON使用でも十分活用できるのではないかと思案している。

この手のSpatsで最高傑作と考えているのが銀座三陽山長が以前作成したツートーンカラーのSpats。惜しくも既に完売生産完了品ではあるが、いつか同様なSpatsを手に入れたいと考えている。日本ではビジネスシーンでは絶滅品種の本格Spatsを近い将来、『冬場の我が定番』として定着させたいのだ。









(パリでの楽しみは『買い物と食い物』 〜)


パリの食事は本当に美味い。
ロンドンと比較するのはそれこそ『場違い』ではあるのだが、まず何を食べても間違いはない。勿論、過不足はどの都市にでもある。例えば、大手スーパーでも寿司はおいていない。オペラ座界隈の日系スーパーは別として、ロンドンでも売っている冷温寿司のようなものでさえパリには無いのである。寿司が食べたければ鮨屋へ行くべし、という論理が明確なメッセージとして伝わってくるようだが、そうであればそれは御尤も。
まぁ、今回は特段、寿司に飢えている訳でもないが、久々にラーメン屋に入りたくなった。
パリのラーメン屋と言えば『ひぐま』である。
長年、この店には入ったことが無かったので今回、試してみることに・・・。(↓下写真)
ところが、一歩店内に入って、懐かしい記憶が一挙に蘇った。実はこの店、大昔に来たことがあったのだ。人間の記憶とは斯くも曖昧であやふなやものだと思い知る。

ラーメンは何故か、パリで完全に定着している。日系、アジア系の顧客は勿論、地元パリっ子も結構多い。パリとラーメンという組み合わせはミスマッチのようではあるが、この界隈にはこうした店店が数多く存在する、ちょっとした日系食堂街のようである。今回はみそラーメンと餃子を注文。ハイネケンのビールに良く合う。ひぐまの極太麺は独特で長年に亘り、維持されている。興味ある向きは是非、お試しアレ。


























(←左写真)
そして、パリに来たら必ず立ち寄るのがこの店。
場所はオペラ座交差点にあるクレマン・レストラン。

季節柄、オイスターが最高に美味である。
左の海の幸盛り合わせをビールで楽しむ。
これが『時計オヤジ』流、パリのランチである。
因みにメニューの内容は:
ブルターニュ産窪み牡蠣(No.2)3個、同(No.4)6個、
半分のイチョウガニ、手長エビ(2)、マダガスカル産エビ(有機)(3)、エビジャコ、ツブ貝、ビゴルノー貝、、、

食べ応え十二分、シーフード好きにはたまらない一皿であるのだ。39Euro也。









(バレエファン垂涎のオペラ座内部を見学する 〜)

パリ市内は何度か訪問しているが、オペラ座内部には入ったことが無い。
今回、丁度裏手に見学者用の入り口があったので、ぶらりと訪問する。
バレエの殿堂として有名なオペラ座である。せめて、そのステージだけでも一目見たかったのであるが、何故か観客席は真っ暗闇でステージ含めて殆ど何も見えない状態。ドレスデンのゼンパーオーパー(=ゼンペル歌劇場)とは大違いである。その代わりにとでも言うべきか、下写真のように正面側の廊下は、まるでヴェルサイユ宮殿のような絢爛豪華な装飾で輝いている。この黄金の廊下、とでもいうべき贅沢な廊下だけでも必見である。



























(←左写真)
こちらはいきなりシテ島のノートルダム寺院。
ご覧のように入場するためには寒い中、長蛇の列に並ぶことになる。こちらとしては当然、パス。
フランス・カトリック総本山には敬意を表しつつ、次なる目的地へと足早に移動することにする・・・。

それにしても長蛇の列の皆さんは、一体どれ程待つことであろうか・・・。













(⇒右写真)

そして、再びオペラ座界隈への戻ってくる。
毎回、パリ訪問時に楽しみにしているのが、フレンチ・トラッドの総本山、OLD ENGLANDである。しかし、その建物を前に唖然とする。なんと、老舗の愛すべきOLD ENGLANDは既に閉店しており、後釜にはスイス老舗時計店BUCHERERが入るらしい。
これも時代の趨勢か、と一言では済まされない一抹の寂しさが・・・。方や道路の反対側には英国トラッド店HACKETTが進出しており、この対比が何とも言えない。
OLD ENGLANDの看板が見れただけでも嬉しかったのだが、パリの名店がまた一つ消え行くのは辛い。








(場所をヴァンドーム広場に移動する 〜)

世界の頂点に君臨する宝飾店が店を構えるヴァンドーム広場は、個人的にもお気に入りの空間である。
四方を重要文化財級の建物に囲まれて、この雰囲気はパリ市内屈指の重厚さを誇る。
時計店は軒並み、最高級コンプリ系や宝飾系のディスプレイで競い合っている。中にはSwatchのような店もあるのだが、そのSwatchでさえ、ここで見ると不思議と超高級ブランドの仲間入りを果たしたかのごとく見えてしまう。下の写真のように、ヴァンクリやブランパンのガラス装飾は群を抜いて美しかった・・・。ヴァンクリのロマンチックシリーズの窓、ブランパンのムーンフェイズ窓なんて本当にお洒落。このセンスは、絶対に他ブランドでは真似できないハイレベルな分化成熟度を感じてしまう。


























(いよいよランゲもヴァンドーム近くに直営店を建設中 〜)


オペラ座からヴァンドーム広場へと続くラ・ペ通りも、ヴァンドーム広場に出展できない多くの宝飾・時計店で溢れかえっている。Cartier、IWC、PANERAI、ROLEX、そして安心堂等も店を構えている。底に、ついにあのランゲの直営店舗を建設中である。
従来のランゲ直営店は極東+日本とドレスデンだけであったが、実はランゲのHPを見ると23の世界戦略拠点(新規Boutique開店予定地)が発表されている。これを見る限りでは、今後は販路拡大強化路線、知名度向上戦略が鮮明に炙り出されるのであるが、一方で年間1万本にも満たない生産体制との兼ね合いがどうなるのか興味津々である・・・。

そして、その近くにはヴァシュロン・コンスタンタンのBoutiqueらしき店舗も建築中であった。
スイス時計業界は、今や絶好調の様相を呈している。

























(←)Tissotの2008年の製品。
Herritageシリーズから平凡な3針をシャルル・ド・ゴール空港DFSで発見。思わず、新製品かと錯覚したが、中々どうしての見事なデザインに心奪われた。どうやらこの18金ケースはまだまだ市場に残っている様子。この時計、カタログ写真よりは実写または現物が遥かに雰囲気がある。文字盤は植字部分は十字indexのみで、あとはペイントではあるが、このツートーンカラーが極めてシック。

ETA2895-2搭載がゆえに、機械的な安心感は可也のもの。
秒針小ダイヤルの位置がやや中央よりであるとか、細かいところは左程気にならない。そうした点も全てこの古典的なフェイスは帳消しにしてくれる。こういうデザインはありそうで中々ない。
今や、絶滅危惧種に属する貴重で美しいシンプル時計である。
しかし、価格はシッカリと3000ユーロ台であるから、値段もサスガ・・・








(パリの締め括りはParis Disneylandを訪問する 〜)


特に理由は無いのであるが、Disneylandを訪問する。
パリ市内から電車で40分ほど。この時期のパリ郊外は非常に寒い。恐らく気温5度前後ではないかと思えるほど、息も白く、身体中が凍えそうであった。雰囲気としては初めて訪問したLAのDisneylandの雰囲気を彷彿。特に下写真のメインストリートなんて、LAにそっくりだ。しかし、こうしてDisneylandなんかに来るのは何年ぶりだろうか。記憶を辿ってみても、はっきりとした想い出が蘇らないほどにご無沙汰していたことに気が付いた。TDLは絶好調であるのに、『時計オヤジ』は20年以上もDisneylandから遠ざかっていたことになるのだろう・・・。

しかし、ここでも密かに期待してきたのは『ミッキー時計』が買えるのではないか、という淡い期待があるからだ。
ミッキーの身体に、両腕が針となった古典的な時計、更には手巻き何ぞであれば文句は無いのだが、かつて昭和天皇が腕に巻いていたアノ時計が長年の脳裏から離れない。そして、結論から言うと・・・、残念ながら腕時計の1本たりとも土産物店にはなかったのである。

嗚呼、もはやミッキーの腕時計は、このIT時代では子供達からも見向きもされないのであろう。
失意のうちにParis Disneylandを後にする『時計オヤジ』であったのだ・・・。(2012/12/4 461111)
























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