随筆シリーズ(89)

『2010年9月、最新・シンガポール時計事情D』

〜Part-5: 『混沌のムスタファ・センター訪問記』〜





少々、『ブランド』から離れて地元の世界に足を更に踏み込む。
中華系中心のシンガポールであるが、ブギス近辺から一挙にインド系住民が多くなる。
中でもムスタファ・センターMustafa Centerを中心とするこの一帯では、
街の雰囲気もガラリと変わるエキサイティングな印度の香りが漂うのである。


(↑写真上: ヒンズー教徒の寺院、スリ・ヴィラマ・カリアマン寺院Sri Veerama-Kaliamman Temple)
1881年建立。改装後、現在の姿になったのは1987年12月のこと。
見学時間の制限はあるが(夕方は4pm開門)、無料。
入り口で靴を脱ぎ、寺院内を散策してみる。
傍らでは敬虔なインド系の信者がお祈りを捧げる。
シンガポールにいることを忘れさせるような『リトル・インディア』は深遠なる別世界であるのだ。。。




ブギスBugisは年中、地元庶民で賑わうアメ横的で雑多な街〜)


M.R.Tのブギス駅で降りると、そこはいかにもブギスらしい雑踏と商店が軒を連ねるモールが広がる。この地域はマレー民族のブギス族が住んでいたことからその名が付けられ、戦前には『リトル・ジャパン』とも呼ばれた猥雑な場所でもあった。

兎に角、何時来ても活気ある場所だ。今回はラッフルズ・ホテル訪問後、途中でお茶を楽しみつつ、徒歩でここまでやって来た。
前回の訪問時にはブギス駅上に西友があったが、今では撤退したようだ。代わりに、各種出店や路面店が軒を並べる新しいショッピング・アーケードに姿を変えていた。

⇒右写真: 後方のビルはInter-Continental Hotel。
        若者向けの出店が立ち並ぶ、少々原宿的ムードも感じる。



立ち並ぶ『屋台』のような移動式店舗の中に、ご他聞に盛れず『時計屋』も発見。
冷やかしで覗いてみたのだが、結構面白そうな時計が並んでいる。『ミイラ取りがミイラ』になりそうな瞬間の始まりだぁ〜

『壊したら買い取りだよ(=”Once Broken Considred Sold”)』の張り紙が面白い。
触ってみると直ぐにでも壊れそうな時計でもあるのだが、デザイン的には時代を感じる鏡のようでもあり、これが中々イケル。
特に興味を惹いたのが下の写真にある円盤型文字盤の中に4タイムゾーン表示の時計、そしてブラック塗装された47mm径くらいの大型文字盤にオレンジ表示で2重式ダイアルを持つモデル。共にどこかで見たようなデザイン
(⇒イタリアン・ブランドのWELDERのK29シリーズとそのまんま同じだ!)ではあるが、中々斬新で良く纏まっている。こんな場所で油を売ってるヒマは無いのであるが、こうした『アメ横』ブギスもB級グルメのようで、中々楽しめる空間と時間であるのだ。











































セランゴーン・プラザSerangoon Plazaは目的地の隣りにある〜)

さて、いよいよリトル・インディアことインド人街を訪問する。
前回なかったMRTの新駅Farra Parkで下車3分、まず目に入ってきたショッピング・モールがこちら。

もうこの一帯は待ち行く人々がサリーを来たインド系住民ばかり目立つ。
独特の巻き舌系の言語や、独特の体臭・香りが街中に漂う。
ドバイや中東のインド人社会に慣れている筆者にとっては特段の違和感は感じないが、突然現れたインド系社会に少々、面食らったのは確か。

セランゴーン・プラザは、ダイソーとドンキホーテが合体したようなスーパーだ。いきなりモンブランのPEN類がショーケースを埋め尽くす(↓下写真)。これは期待できるかと思いきや、萬年筆やボールペンは全て現行品、時計は全て安物ばかり。シチズン系のQ&Qや、インドTITAN品など、兎に角1個千円クラスの時計で埋めつくされている。特に注目する時計がある訳でもなく、グルリと見学後、次なる目的地へと向かうことにする。



























(今回のお目当てある『ムスタファ・センター』到着〜)


(⇒右写真: ムスタファ・センターMustafa Center(以下、MC)の全景〜)

MCとは食料品・日用雑貨・衣類・時計等を扱う24時間営業のインド系安売りスーパーである。言わば安売王のB級スーパー。B級と言っても商品によっては1級品のパーブランドもある。イメージ的にはどことなく御徒町のディスカウント・ストア多慶屋を連想させる。顧客の対象は地元庶民、特にインド系の住民であるが、顧客をよ〜く観察してみると旅行者が可也の数いることに気付く。欧州・アジア・インド、はたまた日本人の旅行客まで訪れているとは可也の有名SPOTであることに違いない。

ここの正面入口を入ったフロアがいきなり時計売り場となっている。
一番高級ブランドはロンジン、RADO、レイモンド・ウィル、続いてSEIKO、CITIZENの海外モデルがずらり。それ以外にも2〜3流ブランド製品が所狭しと並ぶ。こうしたモデルを一同に見れる場所はシンガポールでもそう多くは無い。高級スイス機械式時計とは全くの別世界を垣間見るのも『時計オヤジ』の大好物。一見の価値有り、である。






(⇒右写真: MCの正面入り口前の光景〜)

入り口横では万引き防止の為にお客が持ってきたバッグ類を預かる棚が設けてある。デイパックの類であればジッパーが開かないように簡易ストッパーで封印されてしまう。

慣れない日本人は面食らうかもしれないが、一部のアジアや中東ではごくごく普通の光景である。こういう場でも貴重品だけは決して預けないことだ。無くなって困るモノは預けぬこと。最後の最後は自らの責任で荷物札を受け取り、いよいよMC入りすることになる。










(店内の時計コーナーは意外とゆったりした広いスペースを誇る〜)

この店で一番ハイクラスといえば、ロンジン、RADO、Raymond Weil、そしてSEIKOとCITIZENであろう。それ以外はスイス製も一部あるが、極めてローエンドのモデルばかりがボリューム・ゾーンとして並ぶ。SEIKOやCITIZENでも売り場は大別して二つに分かれる。KINETICやEco-Driveなどの中級品とSEIKO5や自動巻きの海外モデル等の廉価品とでショウケースも分けてある。種類・物量が多いだけに冷やかし半分、ジックリと見て回るだけで軽く30分は必要だろう。高級ブランド時計しか興味無い向きには薦めない。ジャンク系統に興味ある御仁にとっては見応え十分な『夢の売り場』かも知れない・・・。











































(↓下写真: CITIZEN vs SEIKOの図〜)
左写真: 金ピカ時計が壮観。全てCITIZEN製の輸出専用モデル。全て価格はS$75均一というのが嬉しい。
       CITIZEN製のこうしたモデルがこれだけ揃っている店は少ない。大変貴重な『集積地』でもあり、見るだけでも満腹感で一杯になる。

右写真: こちらは天下のSEIKO5。これだけあれば好みの1本が必ず見つかること間違いなし。




















(↓下写真2枚: 全てSEIKO5が並ぶ〜)
左写真: こちらはシルバー基調で揃えてある。
       全部、SEIKOファイブ。白文字盤、黒文字盤など、遊び・仕事用にも使える万能選手だ。

右写真: こちらもSEIKO5だが、全部ダイバーズ系。それも比較的デザインは大人しい。こういう時計、味がある!



















(↓下写真2枚: こちらは全部Eco-Drive〜)
左写真: 角型2針はドレス・ウォッチだ、文字盤デザイン違いの3モデル。
      針の細さとINDEXの弱さが残念だが、ごくごく普通の時計である。最近、こうした普通の時計が実は少ないのだ。

右写真: エコ・ドライブ軍団の勢ぞろい。
       やはり海外モデルは面白い。日本国内では電波+太陽光発電(エコ・ドライブ)が主流なので、電波がないと
       販売政策上問題あるかも知れないが、デザインがよければそんなことはない。
       どうしていつまでたっても輸出モデルの方が斬新でグッド・デザインが多いのか解せない・・・。























(↓下写真: ROLEX調の時計各種はスイス製の’SANDOZ’ブランド〜)

『ROLEXもどき』は何時の時代にも安定した人気がある。
こちらは紅一点とも言うべきスイス製。聞きなれないSANDOZというブランドであるが、デイト・ジャスト、デイ・デイト、サブマリーナもどきの時計がずらり。

正直、こういうオキラクな時計は好み。コピー商品は流石にないが、こうしたギリギリ、スレスレの商品は実に味わい深い。
例えばアフリカ旅行をする時、例えばヤバそうな場所に足を踏み入れるとき、例えばビーチサイドやプールサイドで、例えば旅行の移動時や大型荷物の持ち運びをする時などなど、日常生活でこうした時計の出番は結構あるものだ。

























(こちらは少々、得体の知れないインガソルIngersollである〜)


どうやらドイツ系のブランドであるが、中身の機械は中国製・ロシア製ではないかと推測する。少なくともETAは搭載していないモデルが圧倒的に多い。インガソルというブランド名は聞いたことはあるが、2流品のイメージが強い。モデルをみても、どこかのあのメゾンに似た商品が多いことからも何となく胡散臭い素性が漂う。
一応、ドイツ語だがHPもあるので興味ある御仁は参考にされたし(↓)

http://www.ingersoll-watches.com/


さて、下写真2枚を見ても分かる様にテンプ部分をくり貫いた文字盤が特徴だ。こうしたデザインはエンポリオ・アルマーニとかでも多く見かけるが、そう言えばエンポリオも中身の機械は中国製が中心と記憶する。どうやら、ドイツと中国、思わぬラインで結びつきがありそうだ。






















(インガソルIngersollで一番注目したのがこのモデル〜)

このモデルは中々の刺激的、魅力的なモデル。見た目はそのまんま『リミテッド2000』である。しかし、テンプの動きが見れるのが大きな個性&アクセントで効いている。残念なのはビッグ・デイトの書体が極めてチープであること、そして12時のINDEXが欠けてしまっていることである。しかしそれを補う点としてはビビッドな真紅の文字盤と同色ベルトのコンビネーションが見事。そして秒針の黄色も裏をかいた配色であり、INDEXの白色と相まって臨場感タップリである。
今回のシンガポール旅行で購入した(自分への)土産はモンブランの旧型インクボトルLAMYサファリの旧型黄色ペンくらいであるが、もう一つ加えるべきであったのがこの時計であった。非常に悔やまれるが、時既に遅し・・・。
やはり旅先での出会いは一期一会。迷ったら買う、これが原則であることを再度思い知ったが、全ては『あとの祭り=アフター・フェスティバル』で本当にザンネン〜。

























⇒右写真:
  一応、、立派な裏スケルトン。
  小さ目のローターがスムースに回転する光景は悪くは無い。
  トノー+裏スケルトン+ビッグ・デイト表示で洒落た赤い時計。
  これを買わずして『時計オヤジ』は何を買うのか???


















(旅の終わりに、MCで旅行バッグを買うことにした〜)

今回、特に土産は買っていないのであるが、何故か荷物が増えてしまった。丁度良い、MCの2階のバッグコーナーでエキスパンダブル・バッグを購入することにする。使い捨てでは勿体無い。多少なりとも回数に耐えられるバッグを求めていたところ。S$23.-を支払いムスタファ・センターを後にする。

この後、冒頭で紹介した
スリ・ヴィラマ・カリアマン寺院Sri Veerama-Kaliamman Temple(↓下写真2枚も)を見学してホテルに戻ることにした。
楽しい買い物の殿堂『ムスタファ・センター』は時計ファンならずとも、必見の観光スポットでもあるのだ。

























Part-6、『総括・シンガポール番外編』へと続く。。。(2010/11/01)
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『時計オヤジ』のシンガポール関連WEB:
@ 2010年9月の『最新、シンガポール時計事情』Part-1・チャンギ国際空港到着編』はこちら
A 『最新、シンガポール時計事情』Part-2、激戦区オーチャードRd.周辺事情』はこちら
B 『最新、シンガポール時計事情』Part-3、マリーナ地区について』はこちら
C 『最新、シンガポール時計事情』Part-4、モンブラン直営店訪問記』はこちら
D 『最新、シンガポール時計事情』Part-5、ムスタファ・センター訪問記』はこちら

E 『最新、シンガポール時計事情』Part-6、総括・シンガポール番外編』はこちら

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