『2008年(昨年)バーゼル観戦記』において注目時計を何本か述べた。 しかし、今年2009年発表モデルにはよりインパクトが大きい逸品が揃う。 そんな2009年の秀作揃いの中から選んだのがこの3本。 これら全てが既に日本市場でもデリバリー開始されている。 今回は今年の締めくくりとして、 新作に実際に触れた『時計オヤジ』の独断&偏見インプレッションを述べる。(2009/12/26) |
(デザイン・センス抜群!今年のNo.1、”ヒストリ−ク・アメリカン1921”〜) 何度も延べてきたように『時計オヤジ』の評価基準は『見た目のデザイン・バランス第一、中身のムーヴメント二の次主義』である。この縦横評価軸は普遍だ。 今年、そんな自分の評価軸に一番響いたのがこのモデル。 この復刻ドライビング・ウォッチ、目にした瞬間に良い時計と直感する。 40mm径のクッション・ケースは愛機、ラジオミール(PAM00062)と同じ。 このケース型には『角型の適度な不安定感』と『丸型の安心感』がミックスされている。但し、基本は丸型なので不安定感は極限に封じ込められているのが特徴。 右上に配置された竜頭はオリジナルの1920年代モデルを忠実に再現するのだが、現代では非常に新鮮。他に例を見ない竜頭配置はそれだけで独創性に溢れる。 手巻き新型キャリバーCal.4400の特徴は何と言ってもシングルバレルながら65時間のパワーリザーブを持つこと。 この2日間以上のロングリザーブは実用上、非常に重宝する。従来のCal.1400の直径は約20mm。これでは女性用モデルにも搭載出来る利点はあるが、見た目も余りに小さい。今回は28mm径までサイズアップされた新設計だ。3分割された受け板が余りに大きいため、丸でスプリングドライブ手巻きキャリバーのように輪列が隠れて見えない不満はあるが、それをもって批判の的とするまでもなかろう。時計雑誌”日本版クロノス”において、登場直後に”酷評”されたCal.4400であるが、そこまで邪険にすることもあるまい。ジュネーヴ・シール取得キャリバーであり、2番車をアクセントにしているデザイン手法は確かに冴えないし、見所が少ない。フリースプラング式でもない、あっさりとしたスムーステンプ使用は不満だ。しかし、この28mm径の新開発大型キャリバーには、そうした欠点を差し引いても”手巻き60時間”という魅力は褪せない。 (←左写真: ケース側面の面取りとデザインに注目〜) 2009年8月某日。 実際のモデルを店頭で手にして一番感じたことは2つ: @40mmのケース径は大変に大きい。愛機ラジオと同径なのにどうしてだろう? Aその理由がケース横の面取りにある。ラジオではクッションケースの側面を絞り込んでおり、”面”を湾曲させて”面”に仕上げてはいない。ところがVCではご覧の通り、側面に”面”を持たせて、相応のケース厚を配置している。結果、この”厚み”が40mm径の大きさを助長し、完全なるデカ厚時計に仕立てている。 その素性からして、このモデルはドレスタイプの時計だ。 であればデカ厚は似合わない。もう少々、小径(38mm程度)と薄型のデザインに心掛けるべきであった。しかし、そんな点を差し引いても魅力的なモデルに違いない。 ストップセコンドが無いこの時計に約300万円の値付けである。 ”Value For Money”のバランスこそが最大の問題、であるのが、”ヒストリーク・アメリカン1921”である。 |
(ド迫力ダイバー、オメガ・シーマスターPLOPROF 1200m〜) このオメガも復刻版である。 PLOPROFとは仏語Plongeurs Professionnels(=プロフェッショナル ダイバー)から生まれた造語である。オリジナルは600m防水モデルで1970年代に発売された。 今が旬であるメッシュ式ブレス、ケース右側に配置されたボンベのようなベゼル・ストッパー、そしてSS製の削りだした塊のような大型ケースと台形に盛り上がった極太ベゼル。そのどれもが現代において新鮮だ。 この時計は実用にはまず適さない。大きすぎるし、重すぎる。 しかし、このような無骨で、機能に特化したようなパッケージにこそ、デザイン美が宿る。そのインパクトは絶大だが、単純に見た目が美しい。上述、ヒストリー・アメリカン1921とは別次元にあるが、こちらもデザイン・バランスで抜群の存在感と美しさを両立している。見事な一本だ。 (←左写真: このケース厚はデカ厚を超越している〜) 48mm径に17.5mmの厚みがある。そのケースに負けないメッシュブレスと巨大なバックルは、まるで”手錠”の域にあるとも言えよう。 しかし中身の機械は高品質で定評が固まりつつある自動巻きCal.8500だ。COSCコースク取得の新型Co-Axialは60時間のロング・パワリザを誇る。 44mm径のパネライ・ルミノールに全く違和感を感じない人、 ROLEX新型DEEP-SEAがぴったりと手首に馴染む人、 ジムで鍛えあげた肉体と手首の強さを持つ人。 そんな人には是非ともオススメであるのが、PLOPROFである。 |
(グラスヒュッテ・オリジナル製、SENATOR・CHRONOMETER 〜) 雑誌”クロノス”のドイツ本国誌上TESTでは極上部類に入る92ptを獲得。 90点台の評価はROLEXやLANGEと同類となる。 で、実物はどうか。 一言で言えばサイズが最大の魅力であり、その大きさが最大の欠点でもあると感じる。 魅力とはCAL.58-01が35mm径もあること。 グラスバックから覗くこの機械の迫力には凄まじいものがある。 GOのムーヴメントではCAL.66の35.5mm径に次ぐ大きさ。 しかしシングルバレルでパワ−リザーブは約45時間に留まる。 拡張性は持たないセネタ専用のムーヴメントだ。 この大きな機械を収めた帰結が42mm径のケースとなるが、ケース厚も12.3mmと真性デカ厚時計に入る。重量は160g以上。 これでドレス・ウォッチというのは現実問題として少々辛い。 貴金属製の44mm径PANERAIルミノール同様に実際の装着にはある種の覚悟が必要だろう。 (⇒特大サイズのCAL.58-01は繊細な表情を兼ね備える〜) ジャーマンシルバー仕上げの文字盤にフライス加工されたINDEXなど、見所は満載。但し、ビックデイトの大きさは他のモデル同様であり、巨大42mm径上ではバランスを欠くと感じるのは筆者だけではあるまい。マリーン・クロノメーターを彷彿とさせる全体バランスの纏まりが良いだけに、このビックデイトの小ささが残念。 こうした点に疑念を感じなければ十分、所有するに値するのがセネタだろう。 更に欲を言えば、価格設定が300万円オーバーというのも抵抗がある。 現在の世界不況にある経済状況下、もうちょっと柔軟な価格戦略が欲しかった。 * * * * * * さてさて、好き勝手に放言を綴ってきたが、実は2009年新作時計から一本を購入した。 その紹介は次回に詳細記述するが、毎年、個人的には中々買いたくなるモデルが少なくなっているのは寂しくもあり、『無用で危険な悩みから開放された安堵』も感じるのが救いである、と逆説的に言っておこう。 来年は2010年。このHPをスタートして早、7年目に突入する。 よくぞここまで飽きもせず、ダラダラと『時計日記を』綴ってきたものだと我ながら感心する。 来年年明け早々、『時計オヤジ』の生活にもまた海外における『新たなる変化と展開』が待っているのだ。(2009/12/26) (『時計オヤジ』の昨年2008年のバーゼル参戦記シリーズはこちら〜) @2008年BASEL観戦記〜バーゼル会場までの到着編はこちら。 A2008年BASEL観戦記〜バーゼル会場編はこちら。 B2008年BASEL観戦記〜気になる時計編はこちら。 C2008年BASEL観戦記〜市内&宿泊番外編はこちら。 D2008年BASEL観戦記〜気になる時計2 & 総括編はこちら。 ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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