綺麗な蝶のディスプレイと思いきや、よく見ると全てが時計のパーツである。 このような蝶や虫のミニチュアがいくつも並んでいるのが楽しい限り。 こういう粋な展示を行うのはエルメス。 さすが、エスプリの効いた一味違う面白さの演出は老舗時計メゾンでは考えもつかない手法だろう。 さて、今回はバーゼル会場から少々離れて番外編について。。。 |
(『キルシュガルテン博物館』ミニ訪問記〜) 折角のバーゼル訪問である。 市内にも足を伸ばしたいと考えるのは自然な欲求だ。バーゼルを訪れたら必ず訪問したかったのがキルシュガルテンKIRSCHGARTEN博物館(←左写真)。 博物館前をバーゼル中央駅行きのトラムが走る。 WEB検索してもこの博物館の詳細は紹介されていない。唯一の予備知識と言えば雑誌『TIME SCENE』2006年Vol.7で紹介された記事だけだ。仏時計師F.P.ジュルヌが雑誌編集者に勧めたのがこのキルシュガルテン博物館である。それでは自分も訪問しよう、と安易に考えたのが動機と言えば動機である。 この博物館ではかつてのバーゼルの富豪が収集した数々の時計や調度品、美術品が展示されている。1900年代末に建造された建物であるそうだ。バーゼルでは時計産業が殆ど興っていない。古くからライン河を通しての商業が盛んであったため、時計産業が根付く必要性も無かったのであろう。 展示される置き時計、柱時計、懐中時計の数は圧巻の一言。 真性アンティーク時計ファンには垂涎モノの逸品が所狭しと展示されている。 因みに時代柄、腕時計の類は一切見られないのは当然と言えば当然。 コーチ・ウーレン(馬車時計)やら骸骨懐中など、時代的定番商品がこれでもか、と迫ってくる。 歩くたびにミシミシと音がする木製の床の上で感じたのは、やはり本場欧州の懐の深さ。16世紀から脈絡と続く時計作りは、その裾野が恐ろしいほど広大だ。こうした有名無名の数々の展示品を見ていると、かつては教会に支配されていた時間というものが、ごく一部の富裕層においてではあろうが、民衆の中に標準時間として溶け込んでゆく様子がこちらにも伝わってくるかのようだ。 (⇒右写真) キルシュガルテン博物館で一番”高価”なコレクションがこちら。 ルイ14世の肖像画がはめ込まれた置き時計。 写真の正面と裏面側に永久カレンダーが組み込まれている。 左右の両側面には文字盤はない。 スイスの保険会社が2000万スイスフラン(=邦貨換算約18億円!)と評価したそうだ。 そもそも、このクラスの作品になるとその価値は美術品と同様である。 2000万フランが果たして高いのか安いのか、『時計オヤジ』には何とも判断の仕様がないなぁ。 (← 受付ではこうして展示品に関する書物・絵葉書も販売されている〜) 拝見する限り、この博物館の展示品は体系だって整理整頓されている印象を受けない。勿論、時計やらマイセン等の陶磁器やら、はたまた絵画や当時の部屋の再現に至るまで、場所場所ではそれなりに区分けしてはあるのだが、詳細に亘って研究・分析した結果の展示方法ではない。あくまでも大雑把に、展示コーナーを括っているのでかなり雑然とした感じである。 建物前の通りにはトラムも通っており、外見からは博物館であることに気付く人も少なかろう。それでも、館内にはチラホラと見学者が絶えることは無い。 バーゼルの喧騒からチョッと離れて気分転換するには丁度良い場所である。 (バーゼルは毎日午後6時で終了する。さて、今夜の宿は〜) バーゼルの夕方は慌しい。 午後6時、会場から吐き出されるように大量の人々が出てくる。皆、一斉にそれぞれの帰宅の途につくのだ。 しかし、会場で展示者側にいる多くの人々はホテル滞在のはず。バーゼル会期中の周辺ホテルはどこも満杯で、日本からの取材者は鉄道や車で一時間も揺られて毎日バーゼルへと”通勤”する状況を、以前雑誌の記事で読んだ記憶がある。確かに、バーゼル市内のホテル料金はこの時期、数倍に釣り上がり、予約を取ることさえも至難。実際に自分でホテル予約を試みるとその難しさが良く体験できる。 筆者の場合、”バーゼル一人参戦”であったので比較的、部屋が取り易い状況であったかも知れない。それでも事前にweb上で色々アクセスしたが、3〜4ヶ月前の段階で1〜2の部屋しか空いていなかった。それもホテルへの直接予約ではなく、現地agent経由である。少々不安ではあるが、事前に電話でagentと確認するなど、それなりの段取りを踏むことに抜かりは無い。 (←左写真: ドイツへの国境ゲートを通過する〜) バーゼルメッセ本館裏手の指定場所で待つこと約30分。 やっとそれらしき車がやって来た。早速、そそくさと乗り込み今夜の宿を目指す。 メッセから10分程でドイツ国境ゲートを通過する。 バーゼル市内のホテルは大手メゾン等によって略満室状態。多分、毎年一年前から予約で一杯なのだろう。 『時計オヤジ』が目指すはバーゼルから車で40分程度のドイツ片田舎のカンデーンKandemという町である。どのような場所か全く想像も付かない。 車には香港から来たというバイヤー一名と同乗する事に。 暫し、彼と最近のバーゼル事情、香港宝飾業界についての情報を得ることになる。 こうした人の広がり、が楽しいバーゼルでもある。 (←カンデーンへ向かう道は交通量もまばらな田舎道〜) 片側一車線のワインディングロードはただただノンビリとした田舎道である。 両脇にはワイン用と思われるブドウ畑の斜面が続く。 ここはドイツであるのだが、スイス、フランスも隣町の三角地帯にある。 ロンドンを早朝に出発して、丸一日、中々充実した時間であったが、ジンワリと疲れを感じ始める。 初日の緊張?からも開放されて、無性にビールが飲みたくなる。。。 |
(←左写真: カンデーンのホテルは外見からでは”駅前旅館”の面持ち〜) こじんまりしたホテル、というよりは簡易宿泊施設という風情の今晩の宿泊場所に到着。 この建物の真向かいにホテル経営のバー兼レストランがあるのだが、それはそれは小さな施設である。 真夏には近郊にある国立公園へのレジャー客でそれなりに賑わうそうだ。 冬場の今は閑散としている。 (←室内はこんな感じ。ベッドとテーブル以外、何も無いが質素で十分〜) 冷蔵庫も無い、こざっぱりとした広々とした室内。 4月上旬でまだまだ夜は冷える。 室内ヒーターを最大限に活用する。 9時過ぎると周囲には町の明かりでさえ極めて少ない、閑静な田舎町である。 夕食後、軽く散歩をしたが何もない場所であるので早々に宿へと引き揚げた。 同じ宿にはドイツ人らしき若者の観光客も自室で”簡易パーティー”を行っている。 |
(← ドイツビールでやっと、ホッと一息つく〜) 隣接のホテルレストランでは少々味気ないので、小さな町中を散策する。 散策といっても、100mも歩けば町並みは途絶えてしまう小さな場所だ。 町の中央部に広場があり、そこを囲むように建物が並ぶ。 幸い、別のレストランが開いていたので早速、飛び込むことにした。 一人で写真撮影をしていたら、隣のテーブルの客が声をかけてくれる。 心地よい疲労と酔いで上機嫌の『時計オヤジ』を一枚撮影頂く。 初体験のバーゼル(ドイツ?)ナイトに一人、楽しむドイツビールはこの上ない美味であった。ドイツ料理は単調で味気ないと嘆く御仁も多いが、『時計オヤジ』は一週間位であれば毎日ソーセージとザワークラウトで満喫できる。一口にソーセージと言っても、その地域地域で見かけも味も異なるのだ。 (⇒右写真:オードブルは生ハム&メロン〜) このボリュームが嬉しいかぎり。 ブラックシールをはずし、丁寧にクロスで汚れを拭き取る。 今日一日の収穫と反省を酒の肴に、明日のテーマを自分なりに再確認する。 さて、明日のバーゼル2日目はどのような発見が待っているのであろうか。 初日だけでさえ膨大に膨れ上がったプレス資料やカタログ類に目を通しつつ、2日目のバーゼルに期待が膨らむ・・・。 次回は、再度、”気になる時計編PART-2へ・・・。 To be continued 〜 参考文献: 『TIME SCENE』徳間書店刊(2006年VOL.7) (『時計オヤジ』のバーゼル参戦記シリーズはこちら〜) @2008年BASEL観戦記〜バーゼル会場までの到着編はこちら。 A2008年BASEL観戦記〜バーゼル会場編はこちら。 B2008年BASEL観戦記〜気になる時計編はこちら。 C2008年BASEL観戦記〜市内&宿泊番外編はこちら。 D2008年BASEL観戦記〜気になる時計2 & 総括編はこちら。 ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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