![]() 『時計オヤジ』は『萬年筆オヤジ』でもある。 と言っても腕時計ほど深入りはしていない。いやいや、敢えてしないことにしている。 そんな『萬年筆オヤジ』が目下、イチオシで注目しているのが今更ながら ペリカンのボールペン、『ルイジ・コラーニのNo.1シリーズ』だ。 但し、すでに商品は完売、生産中止。 そこでペン・ショウでブツを探すことにしたのだが予想外の展開に・・・ |
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![]() ロンドンでペン・ショウ(=筆記具展)があると知ったのは僅か一週間前。 折りしも、捜し求めているペリカンのボールペンを入手しようとドイツのPenショップ経由で得た情報である。10月7日の日曜日、午前11時開場を目指し、そそくさと地下鉄で目的地へと向かう。ベイカーストリートBaker Street駅で乗り換えようとしたが、生憎サークル・ラインは終日運休。そう、ロンドンの地下鉄は週末、必ずどこかの区間が運休している。老朽化著しいこの地下鉄は、こうした補修用の運休が頻繁である。 右写真⇒: ベイカーストリート駅は世界で初めて地下鉄が開通された駅でもある。当時の写真(=絵画)がこれだ。1863年のことというから凄まじい。日本はまだ幕末、チョンマゲの時代である。欧州の産業革命の威力をまざまざと思い知らさらされる。 ![]() 右写真⇒: これが現在のベイカーストリート駅である。 シャーロックホームズの”自宅”であるB221番地がそばにある有名な駅だ。 こうして見ると、1863年当時と略同じ光景に驚く。 既に150年近くも経過しているロンドンの地下鉄である、あちこちガタが来ても決して不思議ではない。朝、地下鉄駅に来ると平日でも突然の運休や遅延は日常茶飯事。便利な地下鉄ではあるが、不便さと常に同居しているのも事実。 ロンドンの地下鉄駅・車内ではストロボを利用した写真撮影は厳禁である。 プライバシーの観点からも写真撮影には注意を要する。 因みにこの写真はLUMIXのFX01、高感度モードで撮影。(F2.8, 1/25, ISO1000) 手ブレもここまで抑えられる。楽チン極まりない現代のコンデジには脱帽・・・ ![]() (閑話休題、早速ペン・ショウへ潜入開始だ〜) 毎年開催されるロンドンのペン・ショウ。正しくは"London Writing Equipment Show"というらしい。公式スポンサーはパーカーだ。出店数は英国中心にヨーロッパのペンショップもチラホラ。全部でざっと60〜80社くらいであろうか、萬年筆中心であるが、年代モノのポスターやインク、カリグラフィーの実演やらリペア・調整の出店など広範囲に亘る。入場料5ポンド(@約240円/£換算)を支払い、いよいよ『潜入開始』だ。いつぞやの『ドイツ時計蚤の市』 を思い出す。 ←左写真: 『萬年筆オヤジ』としては、いきなりボルテージUPだ。 午前11時過ぎというのに、既に会場は人手&熱気でムンムン。 こうした会場では早い者勝ち、時間との勝負が結構重要である。 ![]() ←左写真: 今回のペン・ショウを教えてくれたドイツの某ショップも出店。 お世話になっているReginaさん(手前)は、打ち合わせ通りにペリカンのボールペンを持って来てくれた。今回のお目当てはまず、ルイジ・コラーニ・デザインのNo.1シリーズを入手することだ。 No.1シリーズは1981年の発売後、20年以上に亘るロングセラーを続けている。その独特のデザインは流石にコラーニ、ペリカンのモチフーフと三角形をしたペン先の軸が握りの良さを具現化している。 日本ではプラスティックタイプの白軸、黒軸のボールペンは未だ買える様だが、筆者の好みは通称コンビと呼ばれるタイプ。ようやく探し出したコンビである。折りしもドイツのこの店がロンドンにやって来るというので、今回持参頂く事にしたのだ。郵送料が浮いたのは、ちょっぴり嬉しい誤算。 ![]() ←左写真: これがそのペリカン・NO.1シリーズ。 上から、白いプラスティック製のシャープペンシル。0.5mmタイプ。 真ん中は銀色のクリップと黒色の中軸に銀リングを持つ通称”コンビ”。 下側が色違い、金色と黒色の”コンビ”ボールペンである。 詳細は別途、”ペリカン・コラーニ・モデル”としてレポートするが、このボテ〜っとした軸のデザイン、そしてペリカンの嘴(くちばし)をモチーフとしたクリップのデザインが大変ユニーク。 全て生産中止の品々。最近では中々お目にかかれないモデル達だ。 コラーニ・マニア、ではないのだが、こうした機会はまさに一期一会。 躊躇無く『即買』を実行する。 ![]() (萬年筆に紛れて腕時計も発見する〜) 上述の通り、出展は萬年筆だけではない。 こうした腕時計や様々な『筆記具』とその付随品が即売にかけられている。 『時計オヤジ』としては見逃せない腕時計であるはずだが、今日は時計とはオサラバだ。というか、一見して興味をそそるモデルが見当たらない。どれもオマケというか、ついで、で展示されているのが分かってしまうのだ。 こうした展示品にお付き合いしている時間はないのである。 申し訳ないが、『時計オヤジ』とはいえどこうした時計は全てパスさせてもらい、次なるターゲットに移るのだ。 こうした狭く混雑した会場では瞬時の判断が重要である。 ![]() (萬年筆でデザインNo.1といえばやはりモンブランだろう〜) デザイン面での好みと言えば、平凡かも知れないがやはりモンブランMontblancである。ずんぐりむっくりした149や146はデザイン的には素晴らしい。そしてその他のモデルの多さ、新作へのチャレンジ度合い、シグネチャーシリーズの限定モデルなど、物欲をそそられる逸品の開発度では業界随一。萬年筆業界のベンツ、ROLEXとでも言えようか。世界の大御所ブランドである。 ←左写真中央: 蛇のクリップはアガサクリスティー・モデルではない。 実はこれ、モンブランのアンティークペンである。1930〜40年代のデザインというから驚き。じゃあ、あのアガサの限定モデルはなんだったのか、復刻版?に近かったのかと疑問が湧く。それにしても中々どうして、この『元祖』ヘビ・クリップはヘビの太さといい、頭部の大きさといい迫力十分だ。ペン先はボエム同様に回転繰り出し式。 ![]() ⇒右写真: こちらもモンブランの限定シリーズ各種。 中央のオレンジ色の軸を持つペンはご存知、ヘミングウェイ。 シグネチャー<作家>シリーズの初回限定モデル。1992年発売。萬年筆2万本、ボールペン3万本限定。マニア垂涎の逸品である。 ここでの売値は何と£3,750!(@¥240/£換算)。 その他、スコッツ・フィッツェジェラルドやらアガサ・モデルやら、『萬年筆オヤジ』には目の毒の勢揃いである。衝動で散財しないうちに退去することにする。 それにしてもこうした歴代モデルの迫力たるや、津波のように凄い存在感でこちらに迫ってくる。古山浩一著、『4本のヘミンウェイ』を思い出す。 因みに筆者はヘミングウェイと同じオレンジ色の根来塗(ねごろぬり)のボディに、長原宣義名人による長刀(なぎなた)エンペラー搭載の萬年筆を愛用する。 ![]() (とあるショップを覗き込むと、そこには・・・) 狭く、混雑した通りをすり抜けるように観覧する。 こうした即売展示会では開会後1〜2時間が勝負である。 11時開場、12時前ではあるが混雑度合いは既にピークを迎えている。 人気ある店の周りではチラ見するのが精一杯。 と、ある店先を眺めるとそこにはパーカー萬年筆がズラリと並ぶ。 中でも黒軸のパーカーDUOFOLDに思わず目がとまった。 英国の地方都市の店である。 店番の男性と会話するが、商品について余り情報を持っていない。 多分、店のオーナーではあるまい。とにかく実物を手にさせてもらうことにした。 ![]() ![]() 圧巻であるこの光景!!! ヴィンテージ・パーカー萬年筆の勢揃い。 全て黒軸のデュオフォールドDUOFOLDである。 まるでカブトムシの幼虫のようなズングリムックリした軸がモンブランシリーズをも連想させる。何よりも天冠とアローデザインのクリップが素晴らしい。 黒軸とヤレタ金色の対比に『萬年筆オヤジ』はイチコロである。。。 ![]() ⇒右写真: こちらがややアップの写真。分かりづらいが、3種類の長さが存在する。 現在のDUOFOLDはどちらかと言えば両端が四角い軸を持つが、この時代のデザインは極めてモンブランに似ている。どちらかと言えば現在のソネットに近いデザインであろうか。全て1940〜50年代の萬年筆だ。 黒光りした軸といい、やや飴色がかった金色のクリップなど、存在感は抜群。一目見た瞬間、購入を決意。恐る恐る値段を確認するが、何とか手の届く範囲にある。 即買、に走る『萬年筆オヤジ』である。 こうした衝動買いは何とも危険であることは百も承知だが、このアンティーク・パーカーには見事?にやられてしまった。。。 (購入したDUOFOLDをじっくりとアップで観て見よう〜) 手にした感触で一番短いモデルを選択する。 1953年モデル。黒軸中央部分には”PARKER DUOFOLD”、”MADE IN ENGLAND”と刻印がある。 当時のパーカー工場はアメリカとイギリスが中心であったようだが、軸の腹に堂々とこうした刻印があるのがイイ感じ。 そしてお決まりのアロー型クリップは存在感たっぷり。根元の太さと、羽の刻印の深さが気に入った。 これ見よがしのクリップ・デザインが、この萬年筆では大成功ではあるまいか。 黒オニキスのはめ込みのような、輝く天冠にはしっかりとエッジが入ったカッティングである。 こうした天冠のゴージャスな処理も現代では稀有な存在であろう。 ![]() ![]() ![]() ペン先には”PARKER DUOFOLD 14K PEN N”の刻印入り。 過度なデコレーションもなく、すっきりまとめられた羽根型ペン先も好み。 ペン先の太さはFかFM程度で書き心地も悪くは無い。 程度は中の中、というところか。半世紀以上も前の萬年筆にしては上出来であろう。もしかしたら手入れ次第では、腕時計よりも萬年筆の方が長持ちするかも知れない。 インクは大型スポイド吸入式。容量に不満は無い。 ペリカンのコラーニ・モデル入手のつもりが、余分と言うべきか思わぬ逸品に巡り会ってしまったロンドン・ペン・ショウである。こうした展示会において、まさに欧州ならではの懐の深さを思い知るのだ。(2007/10/12)
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