考察シリーズ G 

Pelikan No.1 Design L.Colani Ballpoint-Pen Germany (Combination Model)

〜 ペリカン No.1 ルイジ・コラーニ コンビモデル(ボールペン) 〜



(『萬年筆オヤジ』が狙ったペリカンのコラーニ No.1 モデル〜)

筆記具、というのも腕時計同様に嗜好品に属する。
もし機能のみを追及するのであれば国産の100円ボールペン(以下、BP)でも品質面では世界のブランド品に伍して十分に戦える。
例えばモンブランのBP。文字通り名だたる世界の筆記具の頂点に位置するブランドであるが、このBPの書き味は正直、悪い。可也悪い。
あくまで個人的評価であるが、新品でもインクがかすれる、すぐ出ない、サラサラ書けない、という三重苦に長年閉口している。製品の固体差かと思い、何度となくリフィルを交換しても、そのいずれにも失望させられる。萬年筆ではない、ペン先調整不要の大量生産品のBPでこうであるから致命的だ。それでもモンブランを離さないのは『見栄と思い入れ』以外には理由が無い。あの万年雪マークからはどうしても離れられない。呪縛というかお気に入りなのでこればかりは仕方がないのだ。

スラスラ書けないモンブランは実用の観点からは最近では控えに回ることが多い。逆にモンブラン以外のBPであれば、まず一般的には間違いないから更に悔しいではないか。
パーカーであれ、ペリカンであれ書き味に何ら遜色は無い。ということはモンブランのリフィル、ボールペンのインクとペン先(ボールポイント)はOEMではなく、自社開発品、としか思い様が無いのであるが、そうであればどうして改善できないのか不思議極まりない。他のユーザー諸兄はかかる不具合に窮してしないのであろうか、と未だに合点が行かない。

筆圧が強い筆者の好みはFまたはMでも、インク(黒)がしっかりと途切れずに出ること、書き出しからインクがかすれないこと、そしてボテがないこと(最近では少ないが)。普段の愛用BPは様々。モンブラン、アウロラ、クロス、カランダッシュ、ヴィスコンティや国産品各種、そして宿泊先のホテル製の無名BP(多くはドイツ製だが)にも結構素晴らしいものがある。そんな中でふと目に留まったのが、このペリカン製(ドイツ)の『コラーニ・モデルNo.1コンビ』、である。



(超ロングセラーのNO.1モデルもいよいよ廃盤となる〜)

筆者にとってペリカンはモンブランと並んでお気に入りのブランドだ。
差し詰めオメガとロレックスのような存在である。
萬年筆では旧型400シリーズを1970年代に5〜6本買い込んだほど。特に小型サイズでピストン吸入式の旧型400シリーズは硬めのペン先と相まって、掌への納まり、というか、使い勝手が抜群である。

今回のルイジ・コラーニ・モデルはそんな伝統的なペリカンが多分にお遊び的?に開発したBPであり、価格面でも1000〜2000円の範囲にある、お手軽な製品だ。ペリカン製で、それもL.コラーニ・デザインでこの価格というのは破格であろう。1980年頃からロングセラーを続けているが、今やこのコンビは廃盤。現在では白と黒のオール・プラスティック製が入手可能のようだが、これとて既に生産中止になった様子である。

実は、白色と黒色の単色のNo.1モデル(↑上冒頭の写真参照)は既に持っているのだが、長らくコンビの2種類を探していたところ、運良くドイツのペンショップで発見。先の、ロンドン・ペン・ショウでの引渡しと相成った。

No.1コンビにも金色と銀色の2種類がある。
写真の通りペリカンの嘴(くちばし)モチーフのペンクリップ部分と本体中央に金色、銀色の金属製パーツが採用されている。単色BP(=白軸、乃至は黒軸)と比較してこのコンビの出来映えは格段にゴージャス。本体の軸もマットブラックの処理が施されて、ややザラついた表面処理も手に馴染みやすい。見栄え、という観点からは”金色コンビ”が断トツによろしい。
因みにこのコンビ・ボールペン以外にもNo.1モデルには万年筆やシャープペンシル、そしてボールペンではカラー・バリエーションも幅広く、エンジ、グレー、黄色など限定モデル含めて可也の種類がある。約30年近い超ロングセラー商品だ、種類が増えても当然だろう。



(この独特のクリップ・デザインが最大の特徴〜)

筆者の印象は、まさに古生代カンブリア紀の海洋生物”アノマロカリス”。
グロテスクと可愛さが紙一重であるクリップ・デザインにコラーニの非凡さを感じる。
本体レジン製の胴軸部分と金属のジョイント部分の強度は見た目からも貧弱。
縦方向、横方向いずれの強度も可也低そうだ。実はこのクリップ部分、プラスティックのクリップの上から薄いメタルプレートを被せたもの。よってヒンジ部分の中身と言えば胴軸本体と一体成型となっているのだ。
とは言えこのクリップを実用として使うことは正直、躊躇する。この手のBPはクリップが折れる事故が多発するのが常。あくまでデザイン優先として、ペン留めとして割り切るのが宜しかろう。時計で例えれば、3針式の秒針小ダイアルに相当する、というところか。

特筆すべきはクリップ幅が、並みのペンとは桁違いに広いことだ。
これがデザイン面でも最大の安定感を醸し出す。
そしてクリップ上にはペリカンマークの刻印が黒色で配置されている。
本軸横にあるスライド式のノックボタンも余り例を見ないデザインだ。
使い勝手はまあまあ。ここしかない配置、これしかないサイドスライド式であろう。ギリギリの空間を上手く活用したデザインに改めて感心する。重量は僅か12グラム。超軽量であるのは楽と言えば楽だが、重厚感は皆無。値段が値段であるので仕方あるまい。それでも、白・黒単色のオールプラスティック製と比べれば格段に上質な出来映えだ。



(⇒右写真: 本体胴軸にはモデル名とL.Colaniの刻印が誇らしげ〜)


クリップデザインともう一つの特徴は本体胴軸のデザインだ。
中央の金属製ヒンジ部分から先のペン先部分は丸みを帯びた適度な太さの三角柱でありオマスOMASのペンを連想させる。筆記時のグリップ感はいい線を行っている。(※余談だが軸先が三角柱の場合、ペンを握った時に逆三角形に握った方が書き易い場合もある。筆者は後者派である。但し、OMASの万年筆ではそうは行かないのが問題だ。)
そして、胴軸中央部分が盛り上がるように太くなっている全体の様は、まるでシシャモかサンマ。ズングリムックリした胴体はお世辞にもシャープなラインとは言えないが独特の味、がある。そこがチャーミングとも、可愛いとも言える点かも知れない。
威圧感とは対極にある、万人に親近感あるデザインがロングセラーの秘密だろうか。


そしてこのモデルで嬉しいのはリフィルがペリカン純正(=#337)以外の汎用品でも可能であること。例えばパーカー製リフィルは書き味も文句無いが、このペリカンにも装着できるのは嬉しい限り。
デザイン優先であるコラーニNo.1モデルは、実は書き味も使用感も及第点以上、モンブラン以上の出来映え(〜書き味において〜)というのが筆者の評価だ。モンブラン・ファンとしては斯くも安価なペリカンのボールペンにも負けてしまうマイスターシュテックが情けない。
それにしても筆記することは楽しい、自分だけの空間・時間である。近々、ペリカンの本家本元、スーベレーン600の緑縞製BPやらクラシック系某ブランドのRB等も狙っている『萬年筆オヤジ』である。そうした愛機(愛ペン)についてはこの先、順番に触れて行くつもりだ。(2007/10/28)


(加筆修正、写真変更等: 2007/11/11、2007/11/25、2008/1/03)


2007年10月の『ロンドン・ペン・ショウ潜入記』はこちら

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