SEIKO セイコー

SEIKO DIVER'S”3RD” AUTOMATIC 150M RESIST
Cal.6306-7001、6309-7040
『3RD再考』 ~ その④Strap編 ~





3RD考察の最終回はStrapについて。
純正ウレタンベルトからZulu StrapやNATO Strap、そしてメタルブレスまで、
そのバリエーションは広く、選択する楽しみも大きい。
少ない投資で3RDの魅力を色々と引き出せることも3RDを所有する上での大きな愉しみである。
(2014/01/04   516700)



(3RDをStrapで遊ぶ愉しみ ~)

別に3RDに限らないが、腕時計をStrapで着せ替えて遊ぶ愉しみは無限大に広がる。
ドレス・ウォッチでは着せ替えと言っても、せいぜい黒系、茶系、グレイ系で遊ぶ、革素材を変えて遊ぶ、ということになるのだが、3RDの場合にも基本的には同様である。しかし、パネライを除いてスポーツ・ウォッチにおいて革素材というのは選択肢からはずれる。例えばROLEXサブマリーナにクロコ革Strapを装着すれば、それなりにドレッシーで見栄えはするが、サブマリーナ本来の立ち位置からはズレてしまう。ダイバーズにおける選択では、革素材の代わりにウレタンベルトという最大の武器がある。加えて、NATOやZULUに代表されるバリスティックナイロン系素材、そしてメタルブレスが極め付けであろう。この3種類が『御三家』であり、今回のテーマでもある。


⇒右写真:念願のメッシュブレスを装着した3RD。実践編として、真水ではなく海水のサンゴ礁をデビュー戦に選んだ。ご老体の3RDとは言え、ゴムシーリングのメンテを万全にすることで、実際の海中での使用もまだまだ可能である。










(NATOとZulu Strapで遊ぶ ~)

上述の通り、ダイバーズにおけるStrap御三家とは:
①ウレタンベルト
②NATO&Zulu Strap
③メタルブレスレット、である。

まず、②のNATOとZulu Strapについて。Zulu Strapの語源については定かではない。また巷ではこの2種類の区別が曖昧である。いや、むしろ区別せずに一括してNATO Strapと総称することが多い。実際、両者の(特にZulu Strapについてだが)定義も確固たるものがないのであるが、筆者のコダワリは尾錠と遊革・定革に相当する部分の『リング形状』にある。⇒右写真のように、リングが楕円形状であればZulu Strap、それ以外をNATO Strapと分類している。リング数が3つ方式であれ、5つ方式であれ、それは関係ない。
更に細かく言えば、NATO Strapのナイロン素材の方が網目が細かく、Zulu Strap用はザックリとした、やや粗く肉厚な織り方となっている。この指摘は概ね、当たっているのではなかろうか。

NATOとZulu Strap、どちらを選択しようとも、それは本人の好みである。しかし、筆者の選択はZulu Strapである。レトロな3RDには、レトロなZulu Strapが大変よく似合う。Zulu Strapの何がレトロかと言えば、この楕円形上のリングに他ならない。NATO Strapのそれと比較しても、よりシンプルで頑強に見える形状、そして何よりも前後に可動式である点が魅力的である。

場所を選ばないベーシックな黒、そして大人しいベージュ系に加え、こちらも定番の黒&グレイのボンドストライプ。この3本のZulu Strapがあれば、冠婚葬祭以外の殆どのTPOをこなせる。これにブレスが加われば、もはや鬼に金棒的なラインアップとなるのだ。




(メッシュブレスは3RDと最強の組み合わせとなる 


往年のオメガ・プロプロフやフライトマスター用としても有名なメッシュブレス。別名シャークメッシュ。まさにサメによる被害を防ぐためのメッシュ式スーツ素材を彷彿とさせる肉厚なメッシュブレスに長年憧れていた。今回、3RDの入手にタイミングを合わせるかのように出物を発見。メッシュブレスで最大の関心事が、コマの詰め方。そもそもコマが存在しないメッシュブレスにおいては、各社色々と工夫を重ねている。バックル部分で長さを調整するもの、強引にコマ部分を作り、そこで調整するもの、メッシュの鎖そのものを取り去ることで調整する方式等等、様々。今回入手したブレスはコマ部分を作成してある方式だが、幸いにコマは一つのみ残すことで調整が出来た。メッシュブレスでコマがあるのは見栄えも悪い。理想はジャストサイズでメッシュのみによるものだが、今回は略満足ゆく形状に収めることが出来た。

メッシュブレスの最大の魅力は、やはりそのメッシュ形状にある。
この独特なメッシュが肉厚であればあるほど、更に陰影も深まり、立体感も増す。重量が気になるところであるが、今回は3RDに装着した全重量が138gなので、極めて『軽量』と言えよう。ダイバーズと言えども、総重量が180gを超えてくると重すぎる。SS製で200gオーバーでは、もはや小型ダンベルの世界だ。この種の重量系スポーツウォッチこそ似合う素材はチタンであるが、今回の138gという重さは44㎜径というデカ厚であることを考慮すれば、チタンにも匹敵するレベルだろう。現に、GSのブライトチタン製SDダイバーズ(SBGA031)の重量は137gなので、全く同レベルと言えるのだ。

このメッシュブレスは非常に軽い。素材はSSであるのだが、実はニッケルやアルミを利用した合金ではないかと想像している。それほど軽くて、小気味よいシャラシャラ感を感じる。もう一つ、見栄えの良い理由に、独自のメッシュ構造により、ブレス自体に陰影が生じ、それが時計のケースと一体とはならず、まるで革ベルトをしているがごとく、時計ケース本体を浮き上がらせる視覚的な利点が大きい。下写真は3連オイスターブレス(非純正)を装着した3RDとの比較である。3連オイスターは、こちらも定番中の定番であり、時代を超えた普遍なデザインであり、3RDとの相性も抜群。専用の弓カンを使うことで、時計本体ケースとのマッチングもピタリであるが、その分、時計との『一体感』も増す。その結果、3RDの特徴であるCラインがやや薄まった味付けとなってしまう。その点。メッシュブレスはメッシュそのものも主張するが、Cラインケースをも引き立てて見せてくれる。まさに、女房役として理想的な組み合わせとなるのだ。








←左写真:
肉厚メッシュブレス構造が圧巻。
バックルはプッシュ式のシングルバックル。
ここを手首裏側の中央に位置するように調整することで、装着感も極めて良好。
不用意な脱着を防ぐ、古典的なロック金具が付くのも好ましい限り・・・。













(純正ウレタン製ストラップ考察 ~)


最後にウレタンストラップについて。
SEIKOのウレタンストラップには現在、2種類のモデルが存在する(⇒右写真)。
この蛇腹式ウレタンストラップはSEIKOの特許製品であり、こうして見てもその造形美には惚れ惚れする。非純正含めれば数多くの蛇腹式ウレタンストラップが市場に出回っているが、やはり純正品の黒色ウレタンストラップが一番しっくりくる。

右写真上側が、蛇腹がストレートラインのモデル、下側がV字シェイプとなったモデル。3RDには古臭いストレートラインのタイプが似合う。古典にはウレタンストラップも古典式で組み合わせるのが王道である。
こうしたウレタンストラップが2千円程度で手に入るのだから、コストパフォーマンスを考えれば十分に安い買い物である。このウレタンストラップのみを装着して毎日酷使したとしても、3~5年は使えるだろう。ウレタンストラップの宿命として、経年劣化は不可避、筆者も過去何度も経験しているが、ウレタンの特性として長年に亘るCO2との影響による加水分解、または光・熱等による劣化も生じる。そして、ウレタンストラップの劣化はある日、突然にやってくる。最悪は断裂による時計落下、などの事故も有り得るわけで、ここは消耗品と割り切り、3~5年ごとに定期的に買い替えるのが正しい。3~5年と言うのはあくまで目安だが、購入後ではなく、製造後の年数であることにも留意すべきだろう。ウレタン素材でr限り、製造後から劣化が始まるのである。


***



(←左写真)
更に余談を続ければ、SEIKO純正ストラップに似せた粗悪なる偽物品も市場には横行している。
これは筆者が偶然入手した偽物品である。
シルバーウェイブの刻印が左右逆に刻印されているというお粗末なもの。
小穴のデザイン・仕上げも異なる。表面のザラツキ加減も純正品に比べてノッペリとしている。
何よりも価格が安いので、注意すればすぐに分かるが、時計に無頓着なユーザーには容易に判断が付き難い。
これら殆どが隣国の大陸製と推定されるが、悩ましいのは実際に装着しても、品質面では余り大きな違いが分からないということである。そうであれば、消耗品なので安い物を、、、という消費者心理が働くかどうかは不明だが、堂々と偽物が横行している市場も世界には存在していることは「注意喚起」として述べておきたい。

ところで、このシルバーウェイブのマークであるが、葛飾北斎の木版画の名作『神奈川沖浪裏』(→右写真)にソックリではないかと思うのだが如何だろうか・・・。












(⇒右写真)
3RDに似合う王道ストラップは、この蛇腹式ストレートタイプのウレタンストラップだろう。
しかしZuluやNATO Strapであれば、着せ替えのための脱着も容易であり、ブレスであればONでの使用も決して無理ではない。44㎜径と言うケース径ではあるが、落ち着いた風貌の古典的ダイバーズなので、違和感も少ない(筆者の使用はあくまでOFFシーンに限るが・・・)。

こうした一粒で何度も愉しめるStrap交換は、3RDの味を引き出す大きなスパイスであるのだ。
3RDを所有するであれば、これらStrap御三家を揃えることは、決して贅沢なコレクションではあるまい。













(更に番外編、3RD用プロテクター ~)

海外ではこうしたゴム製プロテクターも発売されている。これを見て懐かしいと感じる方は、御齢40以上であろう。
Strapにつけるカレンダーやら、コンパスなども70~80年代に散々流行った『小道具』である。このプロテクターのパッケージ裏面には実在する日本企業名が印刷してあるのだが、その真偽、関連性は不明。しかし、こうしたプロテクターを移動時、保管時で使うのはアリだろう。あくまで70年代的な雰囲気を愉しむために思わず入手したプロテクターではあるが、懐かしさとこ洒落た?アイテムとして、他の時計にも流用しようかとも考えている。

























***

シリーズで綴って来た『3RD考察』。
SEIKOの持つ機械式自動巻きキャリバーを搭載した復刻モデルの登場を心底、願っている。
現行のSpring Drive搭載チタンモデル(SBGA031)も中々魅力的ではあるが、やはりこのCラインとSEIKO伝統のDNAが凝縮された3RD復活を期待して、これからも手持ち3RDオリジナル達と時間を共にして行きたい。(2014/01/03 516,700)

God Bless 3RD、”I LOVE 3RD”.

(完)



(SEIKOダイバーズ関連HP)

1) SEIKO KINETIC ARCTURA DIVER'Sはこちら
2) SEIKO 200m DIVER'S (SKX007J)はこちら
3) 『論評・3RD再考』その①はこちら
4) 『論評・3RD再考』その②はこちら
5) 『論評・3RD再考』その③はこちら
6) 『論評・3RD再考』その④はこちら


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