個人的にはSEIKOダイバーズの原点と言えば、『3RD』を指す。 1965年のデビューから今日に至るまで数あるSEIKO傑作ダイバーズの中で、 この『3RD』こそが筆者にとっての『頂点』、である。 その頂点『3RD』の雰囲気、SEIKOダイバーズのDNAをたっぷりと受け付いているのがこのモデル。 国内用には存在しない、輸出専用モデルというのが極めて不思議である・・・。 (2013/08/14 497000) |
(『時計オヤジ』にとって頂点の『3RD』とは・・・) ⇒右写真がその『3RD』である(写真協力:HY氏個人所蔵)。 その完成度の高さとCラインケースの存在感に圧倒される。 3RDの初登場は1976年。SEIKOが初めてダイバーズモデルを投入したのが1965年であり、その3代目としていくつかの改良点を重ねた粋のデザインでもある。 1965年と言えば、東京五輪の翌年。そして、この年に奇しくもROLEX Submarinerデイト付きが登場している。Submarinerに真っ向から対決するようにSEIKOも本腰を入れてダイバーズを発表したのだが、完成されたCラインケースはこの3RDにおいて初めて適用されている。 この3RDには幾つかの特徴的な『記号』が宿っている。 その代表的要素が: @ Cラインケース A 黒ベゼル B アロー型分針(長針)とペンシル調時針(短針) C 先端がドットの秒針 D 4時位置竜頭 E 独特のIndex形状、である。 そんな『3RD』のDNAを色濃く継承するのが、輸出専用モデルのScuba Diver's 200mである(⇒右写真)。 3RDの上記6要素に対比させると、 @ Cラインの代わりに通常のラグ付きケース(×) A 黒ベゼルの書体&デザインは略同じ(○) B ハンズ形状は同じ。但し、3RDの方が微妙に太い(○) C 秒針は逆側にドット(×) D 4時位置竜頭(○) E Index形状は略、同じと言えよう(○) つまり、6要素中、4要素を完全に引き継いでいることになる。 これはSEIKO現行国内ダイバーズモデルでさえ(〜外胴ケースのマリンプロフェッショナルを除き〜)存在しない完成度を誇る意匠の継承である。こんな魅力的なモデルが輸出用の7S搭載機にしか存在しないという事実に愕然とするのであるが、是非とも『3RD』の復刻を希望したい。 *** 実は遥か昔に筆者が愛用していたのが3RDである。しかし、学生であった当時、経済的困窮度合いを深めた結果、友人に売却してしまった。以来、今日まで本格的なSEIKOダイバーズとは疎遠になってしまった。今回は、謂わば学生時代にタイムスリップした気分で購入したまさにタイムマシンのような存在。少々センチメンタルなノスタルジーも込めた想い出深い存在というのが、このSEIKO 200mダイバーズ、である。 |
(カラバリは3種類から 〜) この輸出用モデルには3種類が存在する。 以下写真の通りだが、黒ベゼルモデルは通称『ブラックボーイ』と呼ばれるらしい。が、こうしたニックネームに興味はない。 ベゼルが青赤モデル(ペプシカラーと呼ばれることも)はROELX GMTのベゼルを連想させるが、この意匠も既に時計業界で定着したSEIKOデザインとも言えるだろう。黒ベゼルに比べて、よりカジュアルな雰囲気を持つが、青赤ベゼルも中々魅力的である。 そして、オレンジ文字盤。このモデルでは文字盤上のindexが他モデルより小さく見える。特に○型ドットが小さく見えるが、この辺は好みが別れる点だろう。オレンジ色は水中において、深度・光源次第でその色を変える。単に見た目のファッション性からではなく、視認性を重視した上でのオレンジ色であるが、どうしてもカジュアル感を強めるイメージがある。 (SKX007のルーツは何か 〜) SEIKOに照会結果、この7S搭載の輸出用モデルは1996年以来のロングセラーであるとのこと。 しかし、それ以前にも同様なデザインで7S搭載の輸出用モデルは存在している。果たして今回のモデルのルーツは何か。その答えは、3RDの後継クオーツモデルであり、1979年に生産開始された7548-7000であるのだ。即ち、今回のSKX007とはまさしく7548-7000の復刻モデルに他ならない。それも単純にクオーツ製キャリバー搭載とはせずに、マジックレバー式自動巻きの機械式でやってのけたところが凄いではないか。SEIKOダイバーズの系譜を辿ると意外というべきか、3RD→7548-7000→SKX007、という流れが読み取れる。これがまさにSEIKOダイバーズの『保守本流』デザイン、である。 ↓下写真は、その7548-7000との比較写真である。ケース形状、文字盤デザイン、そして針の形状全てが全く同一であることが分る。 (Scuba Diver's 200mのデザイン細部論評 〜) このモデルの特徴的な記号について以下寸評を。 黒ベゼル: この数字書体と全周上にあるドットは最早、SEIKOデザインとして『記号化』、している。SEIKOの『お株』とも言えるこのベゼルデザイン、秒針ドットが少々うるさく感じる部分でもあるが、これはこれで良しとしよう。 矢印ハンズ: 分針がアローで、時針がクサビ型。その中に盛られたルミブライト。付け根部分にいくに従って極端な幅広となるのもSEIKOのお株。この形状を維持している現行品はプロシリーズ以外では壊滅に近いのも悲しい。3RDとの対比では若干細くなっている。アロー型ハンズはオメガなどでも採用しているが、SEIKOのアローには独自の継続性あるデザインが確立しており、その完成度は高い。 但し、ハンズの縁は切削と仕上げが粗いことが目視でも明らか。こうした些細な点ではあるが、仕上げの質を上げる為にも、上級モデル、即ち『3RD』復刻が待ち望まれる所以。 秒針デザイン: 3RDは先端がドットだが、この様式は最早存在しない。 現在ではドットは逆側にもってきて、秒表示は細く白く塗られた針だが、この白さはペイントであり夜光処理は無い。バランス的には、特に白黒のペイント塗り分けと、夜光DOT表示のバランスが秀逸。 ルミブライトの発色の良さは下写真↓でも分かる通りお墨付き、である。 暗闇における秒針は白地ペイントの反対側の円形ドット表示で行う、というのが昼夜で逆になるのが面白い。 4時位置竜頭: 3時位置では手首に食い込み易いとは言え、実用上、4時位置としても大きな差は無い。4時位置でも食い込みが皆無という訳には行かないのだが、4時位置ポジションはこれもSEIKO DNAとしてのお株である。 特にCラインケースではデザイン的にも視覚的にもコレが効いてくるのだが、そのDNAを詰め込んだ輸出用はツボを押さえているというか、昔ながらのデザイン維持で、ローコストで生産継続していると言うべきか。 ベゼルリングの2階建て刻み: 写真からも分かる通り、ベゼルリングサイド部には『2階建て』のキザミが入っている。この2階建てもDNAであり、このベゼルデザインに組み合わせて初めて味が出るのである。 夜光ドット表示: ○△だ円を合わせたINDEXも必須のお株。 しかし、コノモデルでは良く見るとルミブライトが真円からズレている(⇒右写真参照)。価格相応と言えば仕方ないが、品質管理の緩さは要改善である。 オレンジ色の”DIVER'S 200m”表示は、王冠『赤サブ』の雰囲気も無くはない。『和製・赤サブ』。そんな妄想を愉しむのも一興か・・・。 そして番外編コダワリが”MADE IN JAPAN”表示。 輸出用でもアル・ナシ両方存在するが、その効能は別にして、やっぱりJapan表示が欲しい。更に欲を言えば、7S36の23石搭載して欲しかった。100m防水の5Sportsには23石(7S36)が存在するのであるから、ダイバーズが21石(7S26)というのは解せない。因みに日本で買える逆輸入モデルの多くには、Japan表示が無いようである。 カレンダー表示: 日付と曜日表示もSEIKOのお株。 出来れば黒地に白表記として欲しいが、視認性は白地が断トツである。 蛇腹ウレタンベルト: 既に見慣れてしまっている定番デザインだが、このデザインは今見ても斬新で素晴らしい。 海中での伸縮対応で生み出された究極のデザインであるが、この立体的造形は唯一無二の蛇腹である。昔はストレートラインの2つ山であったが、現行ではV字型の曲線っぽく改良されて、その蛇腹のウネリは深く、より立体的に改良されている。この素晴らしい蛇腹ウレタンベルトが2千円前後で買えるのが、Japan Productsの底力であろう。 ところでこのウレタンベルト、新品時は黒色マットであるが、使い込んで来ると光沢を持ってくる。その時点が最高の状態となるのだが、5年以上経過するとウレタンの経年劣化により弾力性が落ちてくる。最悪、使用中にベルトの切断、というトラブルも発生し兼ねないので、5年毎にベルト交換を行う方が無難だろう。 (ダイバーズモデルにこの上なく似合うNATOベルトを早速、装着する 〜) 下写真でも分かるように、このモデルに純正装着されているバネ棒は極めて太く(⇒パイプ径2.4mm)、強固である。よくある廉価バネ棒のそれと比較するまでも無く、この頑強さは一目瞭然。考えてみれば、ダイバーズ・ウォッチとは耐衝撃性能、耐磁性に於いても優れた特性を持つ。即ち、真のアウトドア用ラギッド・ウォッチとして、ダイバーズ・ウィッチはその条件を備えているのである。 この時計に、早速市販されているNATOタイプ・ストラップを装着してみた。色は黒&グレーのコンビ。この配色がシックであり、艶やかでもあるお気に入りのパターンだ。ラグ幅22mm用のジャストサイズを選択したが、予想通りコイツがすこぶる格好が良く、特に夏場においては耐水性・耐汗性でも抜群のパーフォーマンスを誇る。何より、そのカラリングがお洒落ではあるまいか。無骨で造形美溢れる純正ウレタンベルトも良いが、自然の中でなく都会派の『陸ダイバー』であれば、こうした普段着用のベルトとしてNATOストラップはお薦めである。Heavy Dutyな純正ウレタンベルトも良いが、バネ棒をいちいちはずすことなく簡単に装着できるNATOストラップであれば着せ替え感覚で楽しめる利点もある。NATOの色違いで気分次第で交換が容易というのが日常使いにおいては大変に便利でもある。 |
(更なる改良を期待するのは7Sに代わるキャリバー搭載、そして『3RD』復刻、である 〜) この輸出用モデルには上述のSEIKO DNAが宿っている。意匠的には完成の域にある成熟モデルだろう。 しかし、輸出用の廉価モデルとしての位置付けからか、中身の機械は7S26搭載である。当然ながらハック機能も手巻き機能もない。両方向巻きによるマジックレバー式自動巻きは良いのだが、やはり手巻きとハックは機能上、不可欠である。最近のSEIKO5には、この両機能を搭載した4R36搭載機も登場しているのだから、是非ともこのダイバーズモデルにも、せめて4R搭載でモデルチェンジを図って欲しいところ。 一方、廉価キャリバー7S搭載とは言え、SEIKOではOVHも受け付けている。この辺がSEIKOのアフター体制の充実度でもあるが、故障しても修理可能とは言え、ユーザーとしてはもっと頑強なキャリバー搭載を切に願うところである。 *** そして、更なる究極の希望は『3RD』ダイバーズの復刻である。一昨年のGS1ST復刻、そして今年の44GS復刻ときて、是非ともダイバーズの傑作品であるCラインケースの『3RD』の復刻をファンとしては待ち焦がれている。Cラインの優美なケース造形美は比類なき存在である。SEIKOダイバーズとしての構成要素が完成されたモデルでもあり、復刻の意義は十二分に存在すると信じている。 今回のScuba Diver's 200mは、そんな『3RD』のDNAを受け継ぐ筆頭格のモデルであるが、その紹介を通じて『3RD』復刻への熱きメッセージを込めたSEIKOへのエール、というのが実は本編における最大のメッセージでもあるのだ・・・。 (2013/08/14 497000) Special thanks to Mr.HY, Respectred watch connoisseur. (加筆修正)2013/9/21、2013/10/21 ⇒ 時計のページに戻る |
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