HAMILTON ハミルトン

"SECKRON" Doctor's Watch Ref.6214 



(老舗アメリカの時計ブランド、ハミルトンHamilton〜)


ハミルトンは1892年にアメリカ、ペンシルバニア州ランカスターLancasterで創業されたアメリカの老舗時計会社である。当時はスイス製とアメリカ製の懐中時計、鉄道時計が世界の市場を席巻していた。アメリカの老舗としては、『四天王』たるウォルサムWaltham、エルジンElgin、イリノイIllinois、ハンプデンHampdenが挙げられる。

ハミルトンは最後発ブランドにあたるが、その後、中小ブランドを吸収して発展を遂げる。そして、1930年代から50年代にかけて独特のデザインで最盛期を迎えることになる。特に、1930年代はアールデコart-decoデザインがヒットを飛ばし、ブランドの絶頂期を迎える。1928年ヤンキース優勝記念のパイピング・ロックPiping-Rock『ヤンキーYankee』などは、特に有名。この時期のハミルトンを称して『アメリカのパテック』とまでの評価を受けたそうだが、よくよく考えてみるととんでもなく過分な評価だ。


(栄枯盛衰は時計業界も同様〜)

しかし、良い時代は長くは続かないのが世の常。
ハンプデンは1920年代に腕時計生産を打ち切り、イリノイはハミルトンに買収される。ウォルサムは1955年に、エルジンも1961年に一旦は消滅する運命をたどる。ハミルトンだけが今日に至るまで、ブランド名を絶やさず生産を継続してきたが、1957年に発売した電池式エレクトリカル時計のヴェンチュラVenturaや70年代に発売されたパルサーPulsar LEDあたりから、商品展開やデザインも大きく変化することになる。最近では数々の復刻品を投入し、『古き良きアメリカ』のイメージで効果的なマーケティングを展開しているが、最早その実態はSwatch-Groupの一員であり、大資本をバックとして立派に『スイス時計ファミリー』の戦略ブランドの一翼を担っている。




(ドクター・ウォッチ、セクロンSeckron〜)

今回のモデルはそんなハミルトンが1930年代に生み出した傑作品の一つ、ドクターウオッチ・Seckronの復刻モデルである。クォーツ製である点、竜頭位置が異なる点を除けば、ほぼオリジナルに近い雰囲気を出している。因みにクォーツムーヴメントは7石の無名品が2個設置されており、お世辞にも『アメリカのパテック』とは程遠い。しかし、この時計は雰囲気が全てであるので許してしまうのだ。むしろオ気楽にデザインを楽しめる点ではクォーツ式は時に利点ともなる。

ドクター・ウォッチとは秒針を独立ダイアルとし、医者や看護婦が脈拍計測時などで見易いようにと工夫された文字盤を持つモデルの総称。現在では実用上、殆ど不要のデザインであるが、ノスタルジーとその独特のデザインが魅力の原点である。有名な大御所としては、ROLEX PRINCEやグリュエンGruenが今でも根強い人気を誇る。2005年バーゼルでROLEXが新作・裏スケ手巻PRINCE”Cellini”を発表したのはご存知の通り。



(オリジナルとの相違は〜)

1930年代当時に発売されたオリジナルは勿論手巻き。17石のCAL.980や982が搭載され、ケースサイズは23x39mm程度。このレプリカは23x40mmと、ほぼ同サイズ。文字盤のみのサイズは16x29mmであり、縦型のレクタンギュラーではあるが、小振りの為に装着感もしっくり、こじんまりとして違和感は皆無。同じレクタンギュラーでも『巨大・縦型PANERAI』のようなイエーガー・ルコルトンJLCグランデイトGrande-Dateとは大きく異なる。



(↑上写真:左側=復刻版の白文字盤。、右側の黒文字盤=オリジナル。当時、黒文字盤は非常に珍しい。
   竜頭位置が異なる以外は、流石に「酷似」している。かなり忠実な復刻リメイクと言えよう。)



(最近、こういうシンプルでクラシカルな角型時計がなかなか少ない〜)

ベルト巾はケース側、美錠側ともに16mm同サイズで絞り込みが無いタイプだ。ケースを含めて帯状のベルト形式のデザインも、現代では中々新鮮である。
純正である濃茶のリザード本革ベルトは、非常に味わい深い個性と味を出しており、時計本体の金色ともマッチして具合が良い。美錠は通常タイプからシングル式Dバックルへ変更した結果、革ベルトの耐久性も格段に良くなり、装着感も文句無い。オリジナル同様にケースサイドはデコラティヴな階段式ラグstepped-lugにて、これもアールデコart-decoの影響を反映しており、オリジナルに忠実である。

1990年代初頭にリリースされたこのSECKRON復刻版は、古き良き時代のドクター・ウォッチの代表選手と言えよう。優に15年以上も愛用しているこういう質素で凡庸な時計にも、時計オヤジは『ワビサビ』を感じ入るのだ。(2007/9/02)


(参考文献)
「モノ・マガジン」 1991年 NO.200 (ワールドフォトプレス刊)

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