JEAGER LeCOULTRE   イェーガー・ルコルトン(ジャガー・ルクルト)

REVERSO GRANDE DATE Hand-Winding 8-Days
CAL.875 Ref.3008420 




ジャガー・ルクルトと言うよりも、『イェーガー・ルコルトン』が気分である。
外国では『イェガー』でなければ通じない国も多い。
2003年のJEAGER LeCOULTRE(以下、JLC)の新作モデルは全て新開発キャリバー搭載となる。
『作るか、死ぬか』という経営理念のもと、
マニュファクチュールの意地をこれでもか、とぶつけてくるJLCのパワーは
ここ数年で加速度的に凄みを増している。(2004/03/28)


(美しい、技術の塊り、手巻き8日巻きダブル・バレル〜)

このGRANDE-DATEも2003年SIHH新作モデルである。
2004年3月に早くも実物の入手に漕ぎ付ける幸運に恵まれる。

まずは何と言っても、ダブルバレルによる手巻き8日間という超ロングパワーリザーブは驚愕の魅力。一週間に一度の手巻きで良いと言うのは、実際使ってみるとこの上なく便利である。それも高速8ビートを刻みながら、トルクも落とさず精度を保つのであるから凄まじい技術力と言う他ない。松山猛氏が「プチコンプリの傑作品」に数えるのもなるほど、頷ける。最近では、CHOPARDのLUCクワトロ(&トゥールビヨン)、PATEK PHILIPPEも手巻き10日間トゥールビヨンを発表するなど、妙にロングパワーリザーブモデルが上市されるケースが散見される。JLCの場合、1931年に既に8日巻きCAL.124を発表している訳だが、今回の8日巻きCAL.875は、4年間の開発期間をかけて新規に設計し直したセプタンティエムのCAL.879の弟分に相当する。


REF.300.84.20、28,800vph(8振動/秒)、1000時間自社製耐久テスト済、25石、手巻き8日間、パワーリザーブ、ビックデイト表示、3ATM、ムーヴ部品総数218。一般量産品のSS製としては恐らくレベルソ初(注)であろうスケルトン・バック。なんと錚錚たる機能のてんこ盛りムーヴであろうか。。。 (注)レベルソ限定SSモデルを除く。


(その独特の受板brigde形状に、独創性を感じる角型ギッシリ・ムーヴ〜)


ちょいデカ文字盤、シックな茶色クロコ革ベルト等、小僧には似合わぬ洗練された高精度の反転ケースと相まって、「ちょい悪オヤジ時計」の貫禄十分である。スケルトン・バックから覗く青焼きネジも綺麗だ。スイス製でも最近はねじ山を青くペイントしただけの「もどき」も多いが、JLCは流石にそんなことは有り得ない。ムーヴそのもののデザインも独創的で美しい。特に中央に位置する2番車の受け板周辺処理にORIGINALITYを感じる。今までのイェーガーには無かった全くの新デザインムーヴであるので極めて新鮮。そしてお約束の縦縞コートドジュネーヴ模様も仕上がりは見事。

ケースの奥行きと、ムーヴの厚み、特にムーヴ下段側に空間(=間)が感じられ、ガラス面との間にスペースがある為、ギッシリムーヴメントではないのが多少気にはなる。これは将来的にCAL.875をベースキャリバーとしてコンプリモデルに発展させる為に出来た必要スペースであろうが、願わくばもう少しケース厚を薄くして欲しかった。そしてチラネジ大ファンの筆者としては、天符も6振動で良いからCLASSICで、セプタンティエムのようなSWAN-NECK付のチラネジ付きにして欲しかったのだが、まぁ、そこまで希望する方はCAL.879を買いなさい、ということだろう。






(セプタンティエム CAL.879との比較〜)

CAL.875はDAY&NIGHT表示がないこと、SWAN-NECKがないこと、そして何よりの違いは「重量」である。18KRG、プラチナ各500本限定のセプタンティエムは中身のムーヴまでもが18K製である為、とにかく重い。装着してみて驚いた。ケースの大きさもさることながら、18KRGでは一層膨張して見えるので、存在感はSSの比ではない。因みにSSの重量はベルト、バックル込みで84グラムである。写真右が18KRGのセプタンティエムであるが、圧倒的な迫力、である。それでも、セプタンティエムの数分の一の価格でSS製ではあるが傑作ムーヴメントを手にすることが出来るのはうれしい限りである。また8ビートの音もどちらかと言えば大きく、甲高い方で、脱進機が回ってるぞ!という訴えのようでこれもよろしい。








(手巻きの感触は適度なクリック感がある〜)


手巻きの感触もなかなか良い。
雑誌などでは50回巻けば8日分云々、と書かれているが、実際には100回くらい巻かないとフルにはならない。また、スリッピング機構のお陰で、巻きすぎによるゼンマイ破損がない、というのも非常にユーザーフレンドリーな機械である。因みに筆者はセプタンティエム、グランドデイトともにシンガポールの"THE HOUR GLASS"にて散々比較検討させて頂いた。最近の日本のショップ事情には疎いが、外国では買う買わないを別にしてとことん吟味できるのが嬉しい。勿論、気兼ねもするが、そこは度胸で超えるしかないのだ。後日、シンガポール時計事情にも触れてみたい。











(1000時間マスターコントロールにも合格〜)


さて、レベルソとしては初と思われる1000時間マスターコントロール合格である点も嬉しい。ケース裏面、右の写真のように刻印も誇らしい。
美しく製本されたJLCのカタログによれば、JLCの1000時間テストとは、
@日常使用条件を再現した自動巻き上げ、衝撃テスト 
A6姿勢差による精度テスト 
Bパワーリザーブテスト 
C異なる気温差(22℃⇒4℃⇒40℃)におけるテスト 
D5気圧防水テスト 
E21日間装着テスト、等である。各テストの合格基準や時間配分等は不明であるが、SEIKOのGS規格のように、独自に厳しいテストを実施している真摯な企業姿勢は大いに評価したい。



セプタンティエムと異なり、"DUO SPRING-BARRELS"刻印の位置も効率よく綺麗に処理されているのは好ましい。垣間見れるツインバレルとガンギ車、にはうっとりさせられる。文字盤12時位置のINDEXはセプタンティエムの”JL文字植字”の方が立体的で高級に見える。パワーリザーブ針は正確だ。ZENITHのパワーリザーブの場合はゼロのはるか手前で針がいつも止まってしまうので、こうした当たり前の点をそつなくこなすのもJLCらしくて良い。BIG-DATEも独特の動き、送りを見せるが、それはオーナーの楽しみとしてとっておこう。



(実際の使用における感触〜ベルト、バックルについて)

実際に装着するとどうであろうか。
このEXTRA-GRANDE-TAILLEというXGTケースは特大サイズである。まるで、角型パネライ、とでも言うべきボリュームである。筆者の手首周りは日本人としては標準的な16〜17pであるが、恐らく多くのユーザーにとって大きすぎるサイズだろう。ケース裏面も伝統的な直線(面)である為、まるで手首の上でシーソーをしているがごとく納まりはお世辞にもしっくりくるとは言えない。反転式のレベルソゆえ、ケース裏側の形状を簡単に工夫できないのは分かるが、手首沿ったカーブ状の採用などの改良が必要な点であろう。角型ケースの横幅約30oは気にはならぬが、やはり縦の長さ46oが問題。しかしそれも慣れと愛着が解決してくれると信じる。ちょっと乱暴な論理ではあるが、『時計の全体的なデザインや雰囲気により、好きか嫌いかについては基本的に決着が付く』、というのが持論である。好きになれば些細な点はアバタモエクボ、となるのだ。



















(革ベルトはシンガポールの職人さんによって短く改造する〜)

シングル式のDEPLOYMENT-BUCKLE(以下、Dバックル)は革ベルトの長さも影響して、金具が手首の真横まで来てしまい、装着時に痛みを伴うことさえある。これは多くのユーザーが時計の種類を問わず共通した悩みとして持っているのではあるまいか。シングル式の場合は、金具がうまく手首の真上(=真下?)に来ない時が多い。そのため、今回は最初から純正クロコ革ベルト美錠側(親)を7.5cmから1.5cm詰めて6cmJUSTに改良した。こうした職人芸がいとも簡単・完璧に出来るとは、シンガポール恐るべし!(改良期間は約2週間要する)こうした面倒を避け、且つ快適さを追求するのであればシングル式ではなく、ダブルフォールディング式と言われる観音開きタイプのDバックルに変更することをお勧めしたい。(筆者も現在、ガルーシャ用としてダブル式DバックルをBANDA.JPに注文しているところである。因みに、ケース側20mm、美錠側18mmがサイズである)






←左写真:

  茶色が純正のクロコダイル・ベルト。黒が今回、予備として注文したベルトである。共に親(美錠)側の長さは7.5cmから6cmジャストに短縮して頂いた。特注である。
その効果は抜群。バックル位置の不具合から生じる手首の痛みもなくなり、違和感は解消した。やはり、自分に合った心地良さを追求するとオーダーメイドになるのだ。費用は若干嵩むが、その対価は十分に得ることが出来よう。それにしても革ベルトの長さを詰めるなんて、考えてもみなかった方策だ。日本では多分無理だろう。恐るべし、シンガポール時計(革?)業界、である。





(ガルーシャ・ベルトを装着〜)

さて、昨今マスコミでも盛んに取り上げられるGALUCHAT(仏)=STINGRAY(英)=エイ革ベルト、を筆者在住地のSHOPで発見した。SEMI-POLISHED、ハーフ鏡面仕上げというタイプで、黒とグレーが混ざった何とも不思議な色艶である。まさしくJEWELのような仕上がりと滑らかな感触は感動モノだ。このREVERSOとの相性も抜群。文字盤の白銀ギョーシェ彫りとも相まって、色彩バランスも絶妙。
当初、「水っぽい雰囲気」になるかと思われた心配も払拭され、まるでOE(標準装備)ベルトのように馴染んだ雰囲気をかもし出す。予想以上に柔らかい仕上げは、なめし技術のなせる技であろう。因みに、ベルト裏面は感触の良い牛革製、HANDMADE IN FRANCE "ZRC"と刻印があるが、正式なメーカー名は不明である。(2004/03/28)


加筆・修正(2006/3/19、2006/9/15、2007/4/21、2007/09/08、2009/01/01写真変更、2009/06/01)


(追記1)

2006年1月、ジュネーヴのJLC直営ブティックにてSS製ブレスレットを購入する。この特大XGTケースには、革ベルトではどうしても手首上の座りが悪い。思い切ってブレスを購入したが、いい値段である。覚悟はしていたものの、中古のROLEXが1本買える値段にはちょっと驚く。

結論から言ってかなり良い出来映えのブレスと、その装着感に満足である。特大XGTケースにはボリューム十分のブレスで立ち向かう。目には目を、がこの場合は正解である。右写真はオメガ・スピードマスターと並べたものだが、中々どうして、スポーツ系時計にも負けぬこの押出し感は迫力十分である。

因みにSSブレスモデルはリファレンスがRef.3008120へと変わる。(2006/9/15)






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