「スイスのSEIKO」と筆者が勝手に位置付けているTISSOTである。 (高級時計と良い時計、の違いとは〜) TISSOTが高級ブランドか堂かは、何をもって「高級」と定義するかで異なる。もし「価格」を基準とすればその序列は簡単に決着するが、実際にはそう上手く行かないことは今まで折に触れ述べてきた。「高級時計」と「良い時計」とは別物であると筆者は理解している。そして自分が追求すべきはあくまで「良い時計」である。ではその「良い時計」の基準とは何か、、、?筆者なりの考えは既報のOMEGA CONSTELLATION CAL.564を参照願いたい。 (TISSOTのAUTOQUARTZ〜) 前置きが長くなったが、今回のモデルはT-TRENDシリーズのT-WIN、2002年バーゼルモデルだ。バーゼルでは文字盤上に”AUTOMATIC”(自動巻き)の表示があったが、実際の市販モデルはこのように”AUTOQUARTZ”、自動巻き発電クォーツである。SEIKOは類似のシステムをKINETICと称するが、発売当初はAGS(=AUTOMATIC GENERATING SYSTEM)と命名していた。TISSOTも100日間パワーリザーブである、かくも立派な"AUTOQUARTZ"を従来から開発しているのである。充電不足になると4秒運針となる所も分かり易い。機械式のOVH(分解掃除)を考えると、この種モデルには電池不要のAUTOQUARTZというのは正解だ。時に簡易性、気安さというのもユーザーフレンドリーで良い。 さて、どうやらこのモデルは日本国内発売は見送られたようである。海外、特に欧州、中東では現在でもまだ店頭に並べられているが、あまり人気は無いのであろうか?筆者は雑誌の速報を見た瞬間からこのモデルにぞっこんとなった。ちょっと古いが松田聖子風に、ビビビ、ときたのである。 では何がそうさせるのか? (ちょい悪シックな文字盤とSSケースの妙〜) まずは時計の命である「顔」が良いのだ。非常にクールな艶消し黒色文字盤に、シルバー植字式のBAR-INDEXと、12−2−6−8−10の数字INDEXの組み合わせが視覚的にも優れている。そして太めの力強いドーフィンdauphineハンズには夜光も盛られ、秒針にはTISSOTのT文字がモチーフとされた凝った造りも見られる。4時位置にあるDATE表示も毎度ながらお気に入りの理由である。 ケース全体のボリュームもたっぷりある。文字盤側はシルバー艶消し、裏スケルトン側はポリッシュシルバーでサンドウィッチ構造となっている。真横から見ると左右。上下対象の造形美を誇る。そう、まさに誇っていると筆者は読み取る。 ベルトがまた良い。筆者所有の中で唯一のメッシュ式エキスパンション(伸縮自在)ベルトは中々装着感も良いのだ。SWATCHでもSS製の伸縮ベルトはあるが、こちらのメッシュは流石に重厚な出来ばえである。ちょっとしたコツと工具は要るが、自分でもコマ詰めは可能である。オリジナルベルトはL、LM、M、S、の4種類あるが、いずれにせよJUST-FITには微調整が必要かも知れない。 (なかなか面白い、ルーレット型裏スケルトン〜) 最大の特徴である裏スケルトンには何と、ルーレット意匠が施されている。まず間違いなくフランク・ミュラーの驚愕デザイン”VEGAS”がヒントとなったと推測する。あのインパクトあるデザイン”VEGAS”の後ではどんな時計でも「二番煎じ」の感は拭えない。コルムの2003年モデル”バブル・カジノロワイヤル”にしてもしかり、このTISSOTもしかりである。しかし、それでもこの古典的なルーレットデザインには魅かれるのだ。それもVEGASやコルムとは異なり、裏面に隠れた密かなデザインとして、また比較的手に入れやすいお手頃な価格帯も大きな魅力である。 実際には誰もこのルーレットを使う人はいないだろうが、あくまでもデザイン先行、ウィットが効いて面白い。また、この時計はリバーシブルであり、ルーレット側を表面にして装着することも簡単に出来る。人前での目立度100%であることは間違いないが、やはり本来は独りでこっそり楽しむ方がルールであろう。因みに筆者は机上で眺めるだけで、まずは観賞中心に楽しんでいるのだが、就職祝いに贈った甥っ子はかなりお気に入りで、背伸びしつつもこの時計で『ちょい悪シック』しているようである。。。 正確には八角形のケース型であるが、ほぼスクエア、若干レクタンギュラーである。縦34.4mm、横32.0mm、厚みは10.65mm、重さ約80gと標準サイズ。全体のデザインは非常にオーソドックス・シャープな印象で、クラシカルな中にも現代的な雰囲気を感じる。防水機能は3気圧ではあるが、日常使いの実用時計としては中々良く出来ている。TISSOTにはこの他にも比較的安価ゾーンにまだまだ秀作が多いのが嬉しい。 ところで、このWEB-SITEを「高級時計中心の時計WEB」と理解されている方もいるようであるが、冒頭でも述べたように決してそうではない。時計に関する広い話題、様々なモデルについて徒然に、そして奔放に持論を述べることを主眼としている。よって、高級モデル、廉価モデル、そして時にはこのような面白時計まで、あくまで『時計オヤジのメガネにかなった時計』についてのみ言及する趣味のページであることを付記したい。(2004/6/12) ⇒ (腕時計MENUに戻る) |
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