RAYMOND WEIL  レイモンド・ウィル

RAYMOND WEIL Tradition Méchanique Tonneau Ref.RW2020


(日本では最近、あまりお目にかかれないブランド〜)

RAYMOND WEILは1976年創業の比較的若いメゾンである。

最近では25周年目にデザイン一新で発表された”オセロ”や、超大型のクロノグラフ”ドン・ジョバンニ”等の刺激的な意匠が話題を呼んだ。今回紹介するモデルはオセロとは正反対の古典的、トラディショナルで正攻法デザインのトノー自動巻きである。1997年発売のモデルであるが、こうした機械式モデルが最近のRAYMOND WEIL(以下、RW)には少なくなっているのは残念である。

ETA2000搭載の自動巻きである。
ETA2000は、直径19ミリ強、8 3/4リーニュligneだ。そのコンパクトな大きさが汎用性を高めており、女性用腕時計のムーヴメントとしても数多く使われている。 Cartierタンクや、 クロノスイス女性用にも搭載され、信頼性も高い。勿論、それはETA2000に限ったことではなく、ETA社ムーヴ全体に言える事だが。ETA2000で一番感じるのは、ローター回転のスムースさである。少ない力を効率よく回転に変換する。ちょっとした手首の動きに反応し、小さいローターはブンブン回転するのが伝わってくる。これは中々快感である。パネライGMTなどにも共通するETAムーヴの特徴かも知れない。全く悪くは無い、『効率的なムーヴメント』、である。

その外観デザインは非常に古典的な表情である。右上の2本は共に同シリーズのデザイン違いであるが、18KGPの仕上げも美しい。GP厚は10ミクロン。10/1000ミリ、である。一説によれば1年で2ミクロンは消耗、剥がれるという。ということは10ミクロンでは5年が耐久期間。う〜ん、少々少なすぎる気がする。所詮、GPといえどもメッキである。メッキは必ず剥がれる。手荒に扱わぬよう気をつけることだ。




←まずは、18KWG/GPモデルである。
この文字盤の雰囲気は如何であろうか。PATEKの50年代の名作「ゴンドーロ・トノー」やジラール・ペルゴを彷彿とさせるケースデザイン。そして何とも嬉しいブレゲ針、立体的なアラビア式ブレゲ数字、レイルウェイ式秒表示目盛等、レトロの雰囲気100%である。写真では分かりにくいが、普通のSS製とは異なり18KGPの鈍くも、やや白みがかった(ように感じる)輝きはホワイトゴールドの貫禄十分。
文字盤の色は乳白色、シルバーホワイトとでも言うべき落ち着いた色で、銀色のINDEXと良く馴染んでいる。日付表示は筆者の好みである。手巻き機能を備えた平凡な小型ETAであるが、ローターの巻上げも大変スムースであり、実用面からの不満は無い。





←左写真は18KYG/GPのローマン数字ダイアルである。
秒分表示目盛は無い。リーフ型ハンズが白色のプレーンな文字盤と合わせて非常にドレッシー、フォーマルな雰囲気を上手く表現している。同じケースデザインでもここまで表現、雰囲気を変えられるという好例であろう。文字盤上のロゴもこちらは”RW”の金色レリーフが12時位置に見える。タキシードに一番似合いそうな時計、と言ったら大袈裟であろうか。
丸型でも角型でも良いが、最近ではこういうシンプルで懐古調デザインの時計にはとんとお目にかかれなくなった気がする。寂しい限りである。







⇒右写真: 
ケースバックは共にネジによる4点留め。適度なふくよかさは手首にも馴染む。ケース幅32mm、長さ41mm、厚み7mm。現代においては非常に小振りな部類に入るが、極めて心地よい装着感をもたらす。一口にトノー型と言ってもこのRWのようにラグが独立しているタイプや、前述POLJOTトノーTISSOTポルトD&Sアエロディーンのようにラグがケースと一体化しているタイプなど様々である事が分かる。







⇒右写真:
美錠もそれぞれデザインが異なるのが特徴的だ。
モデル毎にこうして変更するとは中々手が込んだ趣向である。
大規模メゾンではここまで小回りが効かぬのではあるまいか。
一方、統一性が無い、実験的だとも言えるが、逆にこうした多様性を商品化する姿勢が面白い。
美錠にはそれぞれ”RAYMOND WEIL”、”RW”と異なる刻印がある。









←左写真:
カーフ製クロコ型押し革ベルトも、美錠付近の仕上げ処理が2本では異なる。
OEメーカーが異なるのであろうか、不思議である。
ベルトそのものの出来ばえは中庸。欠点は特に無い。
クロコらしい質感は十二分にある。






筆者はこのモデル2本をサウジアラビアはジェッダ市内の時計店で手に入れた。
特にブレゲ針のモデルは、実は長らく捜し求めていたものだ。
比較的手頃な価格帯であるのも好感が持てる。既に生産完了品であり、恐らく日本国内には未入荷モデルであろう。
値段的には雲上時計とは比較にもならない手軽さが、上述した丁寧な造り、古典的で復古調のデザインは貫禄さえ漂い、現代においては非常に新鮮でさえある。特にブレゲ針、ブレゲ数字のモデルは出色の出来映えだ。ドレス・ウォッチの逸品、と言っても過言ではあるまい。派手で人目を引くのが新しい時計の条件のような現代において、こうした時計は逆に存在感を増す。こうした至極正統派のデザインが最近では超ブランドモデルにしか見られないのは何とも寂しい限りである。(2004/05/05初稿掲載)


2007/09/09写真&文章を一部加筆・変更。

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