J.M.WESTON   ジェイ・エム・ウェストン

『#607、ソール剥離修理の顛末記』
Sole repair of #607 Oxford Wing-Tip




見るも無残な写真である・・・。
2012年にドバイで購入した#607。
その後、僅か丸3年で、まさかまさかのアクシデントである。
今回は修理事情が極めて脆弱な倫敦においての修理となる。
さて、その顛末や如何に・・・
(2015/02/23 576600)




(まさかのソール剥離に唖然とする ~)


購入後丸3年が経過したが、今回はその使用感も交えての更新とする。
ライトウェイト級、準スニーカー級のWing-Tipとしては秀逸な#607。
デザインについては文句なラバーソールは可也硬い。しかも厚みが余り無い(薄い)ということで、路面にタッチする衝撃をもろに受けてしまい、一日の終わりにもなると足裏が結構疲れる。他のユーザーはどのように感じているか分からないが、少なくも個人的には『快適な靴』とは言い難い。JMWというブランドを履くことへの満足感は十分ではあるが、その快適性はNIKEスニーカーの類とは程遠いのが現実である。
しかし、『ソール改造』によって上記の弱点を克服出来るかも知れない。アイデアはあるのだが、残念ながらこの倫敦では日本のようなスーパーリペアショップが無いので無理。機が熟するのをジッと待つしかないのである。

***

そんな日常で使用する#607であるが、今回、思わぬ『事故』に遭遇する。
場所は、とある改装工事中のビル現場。洒落ではないが、まさに、『工事(好事)魔多し』、である。フロアのカーペットを剥がして、剥き出しのコンクリに粘着剤が残っていた。そこを偶然、踏んでしまった瞬間に、悪夢が勃発した・・・。
何と、つま先を残して、踵からアウトソールがベリベリと音を立てて剥がれてしまったのだ。このショック、というよりは瞬時の驚きに言葉を失った。#607のソールはメーカー修理が出来ないことは承知していた。つまり、オールソールが基本的に出来ない『履き潰す靴』なのである。JMWのくせに、メーカー修理が出来ないとは何たる怠慢、とか思いつつ、そんな日が来るのは10年後とタカを括っていたのだが、丸3年後にこうなった事実に言葉を失ったのである。セメント接着方式であれば、いつかはこの日が来ることは勿論、覚悟していた。しかし、購入後3年で加水分解?接着不良?が起きるとは理解に苦しむ。

当然乍ら、懇意にしているJermyn StreetのJMW直営店に持ち込むこととなる。



(地元倫敦のCobblerのお世話になることに ~)

JMW店員さんは、予想通りの回答であった。即ち、この靴はメーカー修理は受け付けられない。ではどうすか?流石に先方も、新品同様の#607を見て恐縮する。実はJMWに持ち込む前に、『事故現場』の近くにある靴修理店に持ち込んだのだ。専用の接着剤もこのソールには全く効かず、応急修理として靴の内側からヒールに釘を打ち込むことで脱落を防ぐというもの。これは修理ではなく、あくまで応急措置であった。

***

JMWの対応はこうだ。メーカー修理が出来ない以上、個別に修理するしかない。幸い、彼らの知り合いでロンドン市内に優秀なるCobblerがいるので、そこに修理に出す、ということだ。こちらとしてはその提案を拒否する理由は最早ない。もし、ここが日本であれば迷わずにミッドソールを追加して、新たにガムライト等の軽量かつクッション性能に優れたVibramを装着しただろう。しかし、ここは倫敦、そのような技も材料も簡単には見つからない。
結局、JMWのJermyn Street店舗を信じて、また彼らの知り合いのCobblerを信じて、全ての対応を『お任せ』することにした。

そして、待つこと2週間。完成の報を受けてJMW店舗訪問となったのだが、ここでまた驚いた。
修理内容は、オリジナルソールをそのまま利用して、マッケイ縫いしてあるのである。
➡右がその完成写真。ヒール上から周囲をグルリと縫ってあるのが分かるだろうか・・・。







(強引なるマッケイ縫いに何とも言えぬ溜息が出た ~)

➡右写真: オリジナルのラバーソールにチャネルを刻み込んで、そこに確りと縫い目を入れてあるのが分かる。脆いつま先部分にまでもチャネルが彫られている。確かに見事ではあるが、まさかまさかの縫合手術である。推測すると、恐らくこのCobblerも接着剤を使ったリペアも試みたのだろうが、この特殊なソールは接着剤を受付ない程劣化しているか、もしくは特殊な素材であるのだろう。最後の手段は古典的だが一番確実な手段を選択せざるを得なかったと読む。

***

それにしても、このCobblerがどこの店舗かは分からないが、真摯に対応してくれたことには頭が下がる。これで、当面は剥離、という問題から解放されることになる。次なる問題が起こるとすれば、ソール劣化による加水分解のような崩壊、であろう。その時は、日本のリペアショップで自分好みの改造をすることになるが、それが今から楽しとなる変なオマケまで付いて来た。





(JMWのJermyn Street店舗の皆様のサービスには敬服至極 ~)

今回のハムピングを通じて分かったことは以下:

① #607のソール素材は特殊なラバー製であり、剥離した場合の接着は難しい
② セメント製法の靴の場合、斯かるトラブルは覚悟の上。しかし、購入後3年で、
  というのは余りにも不自然。長期在庫の賜物か?、と言う疑惑が残る。
③ 万が一、ソールが剥離した場合でも、修理が可能であるので近くの
  リペアショップと良く相談することだ。決して諦めてはいけない。
  日本国内であれば、必ずや最善の方策が見つかるだろう。

***

Jermyn Street店舗からは右写真のように丁寧に袋入りされた状態で返却を受けた。更には修理代も無料。口うるさい顧客になった積りは毛頭ないのだが、こうした接客と真摯なサービスにはJMWで購入して良かった、と思わせる満足感に値する。
やはり、JMWはそのサービスにおいても一流、なのであるのだ。

(2015/2/23 576600)




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