J.M.Weston   J.M. ウェストン

#598 Split Toe Classic Derby Double-Sole Black Boxcalf
"Demi-Chasse Double-Semelle"
Ref. M-101-598, 11-22-101-598-30, Size: 8D, Last:22




”#598 Split-Toe Classic Derby Double Sole”
2004年、レバノン首都ベイルートで買った茶色と同一モデル。
今回は、当時から狙っていた黒Boxcalfを遂に、ドバイモールで購入する。
2足目の#598は、今回はハーフサイズアップを図ることになる。
片足重量は584gもあるが、履き心地は既に折り紙つき。
そのJMWの古典モデルを新たなる目線で論評する。
(2012/3/10 420577)



(ミイラ取りがミイラになった?〜 )

#607に引き続き、立て続けにJ.M.Weston(以下、JMW)を購入した。
場所は今回も同様にドバイモール内、JMWブティック。
2004年11月のベイルートJMW直営店に続く、同一モデルの色違い購入である。

実は今回のターゲットはGOLFであった。
黒のGOLFは昔からの憧れ。しかし、今日明日を争う是が非でも欲しい靴、ではなかった。
既に焦げ茶U-TIPで、その持ち味を『疑似体験』しているだけに、GOLFの酸いも甘いも理解している積り。それでも、やはり『ホンモノ』のJMWゴルフへの憧れは長年、消えることは無かったのだから、その想いは本物であると確信した。


前回の#607でも述べたが、JMWの真骨頂はその絶品とも言える自家製カーフの質の高さに尽きる。
国産3〜4万円の高級部類に入る革靴でも、JMWのカーフには全くの後塵を拝している。これが更に2万円台の靴との比較になれば、その差は歴然。故に、価格高めのJMWではあるが、真の購入靴、即ち、しなやかさと適度な光沢を長年に亘って失わない革質を伴うトラッド靴として、結局は価格相応の靴であると納得するのである。

* * * 


GOLF、ゴルフ、Golf、・・・と、今回は念じて直営店に向かう。
サイズは前回の試し履きで『8D』(JMWサイズ表記、以下同様)と決めている。よって、迷うことなく即決で購入、と思いきや、念の為、再度、8Dをトライする。店員曰く、『店の外を一周してきて下さい。好きなだけ試して履いて結構です・・・』、という何とも太っ腹なアドバイス。すると、前回あそこまで吟味したにも拘らず、つま先手前部分が中敷との間で浮いた感触を抱く。まずい、8Dでは大きすぎるのか。結局、フリダシに戻ってサイズ確認した結果、7.5Eがベスト、との結論に至る。7.5というサイズは個人的には気に食わない。散々、サイズで失敗して来たのが『小さ目サイズ選択』であるからだ。しかし、今回は、幅広のEを選択することで、それでも可也ゆったり目の履き心地となる。最終的に、7.5Eに決定。
レジへと進むのであるが・・・。


しかし、ここでゼンマイオヤジに瞬間的、且つ潜在的な迷いが脳裏を過ぎった。

『なんとなく、野暮ったい。無骨だ・・・。』





(←左写真: 黒の#641 GOLF Derby。ジャストサイズは7.5E〜)

GOLFは本当に良い靴である。
略、オールマイティに殆どの状況で使える。
ON/OFF両用、晴天/雨天両用の万能靴である。

しかし、こうして見るとどうだろう。
やっぱり、特に甲からトゥにかけてがボテっとしている。
この重苦しいデザイン、そして靴底にはリッジウェイのようなゴルフ・ソールと呼ばれるヘビアイ的ゴム製ソールが付く。どうしてもこのルックスはON/OFF両用とは言えども、ON10%、OFF90%の靴であろう。となると、昨今流行のカントリーシューズの部類にあると言った方が正確か。











(⇒右写真: そして直前で翻意して試したのがU-TIP)


このダブルソールのタフさ加減は既に茶色モデルで体験済。
そもそも、茶色の#598でさえ、当初は黒色が欲しかったものの、在庫なしで購入したのである。それ程、こちらの黒色U-TIPも昔から欲しかったのだ。いわば、GOLFと双璧の黒い靴の代表選手がこのモデル。
しかし、GOLFに比べると、見た目はよりドレッシー。
こちらはON70%、OFF30%が適正。
靴底は革製だがダブルソールで、つま先には金属金具が付いているのは、最早、このモデルのトレードマークか。
9回裏、代打逆転満塁ホームラン、という感じで今回、土壇場でGOLFを諦める結果となる。
今回の選択には、『もう、GOLFは買わない・・・』、という秘めた覚悟を持っての#598選択なのである。












(⇒右写真: 真ん中のモデルが4アイレットのゴルフソール底搭載モデル)

今回の購入対象は『黒靴』と決めてはいたものの、#598であれば黒や茶色以外にも、赤茶系やバーガンディ等、ちょっとした遊び心ある色選択が欲しいところ。以前あった、『メゾンキツネ』(仏Boutique)とのコラボモデルでも華やかな色彩を使用したモデルがあったが(確か、GOLFとローファー)、そうした赤茶色系のモデルがあれば、更に3足目、4足目へと進んでも決して不思議ではない。













( 『ブーツのGOLF、軍靴のSplit-Toe』〜 )

GOLFのボテっとしたデザインはワークブーツから来ている、というのが持論。
5アイレットのGOLFだが、こんまま6インチブーツ化すれば、ウルヴァリン、RED-WING等と同列のワークブーツに成り得るデザインだと思っている。方や、Split-ToeのU-TIPはヘビアイ(Heavy-duty Ivy)なドレス靴。更に言えば、軍用靴をも連想させる無骨で、耐久性第一に考えられた種類の靴ではないだろうか。

丸で、カブトムシの幼虫を思い出すような、ズングリ・ムックリした造形美は唯一無二の独創性を誇る。
はっとするような感動は無いが、この丸まったデザインは田舎のオフクロの味にも似た安心感が漂う。
土踏まず部分はベベルド・ウェイスト(bevelled waist)の対極ある。絞込みなんぞは微塵も無い。
歩行時の安定性第一、と言わんばかりの幅広なる靴底には、ダブルソールの返りの悪さと相まって、そのタフさ加減はまさしく『軍用靴』に思えて仕方が無い。

#641GOLF Derbyと#598 Split-Toe Classic Derby。
共にJMWを代表する古典であり、頑強靴の代表選手である。
デザインの好みはあくまでも個人の嗜好による。良し悪しではない。念の為。


























(Steel-Toeの意味〜)

JMWはつま先に金属補強金具を多用するメーカーである。
オリジナルの段階でこうしたSteel-Toeを施す現行メゾンは少ない。特に、ドレスシューズであれば尚更。
筆者はSteel-Toe仕様が好みであるので、諸手を挙げて賛同するのであるが、カチカチする音、滑る、見栄えが銀歯みたいで嫌、という御仁も少なくない。

確かに、音はするし、滑る。
しかし、それも慣れと意識の問題である。
滑ることへの恐怖認識、を常に持つこと。それは、自身への気配り醸成にもつながる。つまり、自分のリミットを知ること、それをいつも意識することは、絶えず自分を客観的に把握しようとする冷静なる心理を生み出すはずだ(大袈裟だが)。
Steel-Toeを装着すれば、Coolになれる。
そう感じているので、近い将来、手持ちのドレス靴にもVintage Steelを信頼できるリペア店で片っ端から装着したい、というのが夢である。


そして、更に偽らざる感想を言えば、Steel-Toeは見た目が格好良い。
ゴム製補強材よりも遥かに格好良い。それが何よりも好きな理由かも知れない。






(ダービーの良さ、ダービーの恥ずかしさ〜)

JMWに限らず、一般的には外羽根式をDerby、内羽根式をOxfordと呼ぶようである。ブラッチャー(Blucher/外羽根式)、バルモラル(Balmoral/内羽根式)とも呼ばれるが、最近ではDerby/Oxfordが主流になりつつあるようだ。

この外羽根式であるU-TIP〜そもそも英語にU-TIPという表現はなく、あくまで和製英語である〜は、脱ぎ履きし易く、幅の締め付け度合いが調節し易い。しかし、靴のサイズが合わぬ場合、特に自分のサイズよりも大き目の靴に有り勝ちであるが、左右の羽根が中央でKissingするのはみっともない。1cmでも5mmでも良いので、左右の外羽根が中央でピッタリとくっつかない事。これが極めて重要。そうでないと、Derbyとして、外羽根Blucherの靴としては、ちょっと情け無い姿なのである。

* * *





今回は、JMW製のソックスをオマケで頂いた。
予備の編み込み式靴紐もスペアとして購入。
こちらは御代約1200円を支払う。

黒色の#598は可也、渋い。
黒靴には茶系色のように、見た目の色合いで主張する器量が無い。
逆に、無骨なデザインに黒色をぶつけると、本当に埋没しそうなリスクもあるが、そこは流石にJMW。
基本デザイン性能の高さが並み居るブランドとは全く違う。
そして、トラッド調の味付け、存在感そのものにこそ、このモデルの実力が光り輝く。
それら全てを支えているのが、上質なるBoxcalfであることは論を持たないのだ。
(2012/3/10 420577)









(J.M.Weston関連ページ)

⇒『J.M.Weston購入記@ベイルート』はこちら
⇒『2005年11月。我が心の故郷、ジュネーヴ再訪』はこちら
⇒『2012年2月、ドバイモールで#607 Oxfordを買う』はこちら
⇒『2012年3月、2足目・#598黒のSplit-Toe Classic Derbyを買う』はこちら


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