紀行シリーズ P

『2012年9月、ヨルダン側・死海再訪の巻』




前回の『死海』訪問は2004年11月
当時から死海の水位減少は深刻になりつつあったが、それから8年後、
一体、死海はどの様に変貌を遂げているのだろうか。
2012年9月、週末連休を利用して『死海』を訪問ししてみた。。。(2012/10/05 452600)
***
上写真:死海まであと18km、海抜ゼロメートルの石標がある。
ここから死海まであと400mほど、更に『水面下の世界』へと下ることになるのだ・・・。



(8年ぶりに死海を再訪するチャンスを作る 〜)

チャンスとは自分から仕掛けるものである。ジッとしていては未知の世界は開けない。
今回は週末を利用して、エイヤ、でヨルダンまで飛ぶことにした。前回の2004年訪問当時同様、フライト時間は約2時間程度。まさにひとっ飛びでヨルダン首都郊外のQueen Alia International Airportに到着である。

(↓下写真)
滑走路上に管制塔らしき建物が見える。この土っぽい色はまさしく中東の『土漠色』である。
上空から見ても、この辺はまだまだ緑も少ない土漠が一面に広がっているのだ。
右側写真はその空港ビル。現在、新空港ターミナルビルが建設中で、恐らく来年には新装オープンになる予定。中東の空港はどこも近代化が進み、こうしたリニューアルが目覚しいが、これで残る古い空港ビルは、オマーン、クエート、ジェッダ、あたりとなる。これから数年後には新しいターミナルに移行するかも知れない。























     * * * * *



(←左写真)
アンマンの空港に到着後、タクシー運転手を『チャーター』する為に人柄の良さそうな人間と交渉結果する。話して瞬時に人柄を読み取る。交渉成立、即決、Done !!!
今日のところは空港から死海までの移動のみで、費用はヨルダン・ディナール(JD)55。1ドル約80円換算でザックリと、JD1=113円だからJD55=約6千円の費用だ。死海までの距離は約70キロ程度だから、まぁまぁ、こんなものだろう。こういう運転手チャーターをしているといつも思い出すのが70年代映画、サム・ペキンパー監督の『ゲッタウェイ』。S.マクイーンとA.マックグロウのカップルは本当に魅惑的。スローモーションによる銃撃シーンは今でも鮮明に覚えている・・・。

この運転手Mさんは61歳で明るい、気さくな御仁。
20年もののメルセデスは走行距離23万キロ程度。20年でこの距離とはちょっと少ない気もするが、エアコンが利かない(!)などの不具合はあるものの、このクラシックな雰囲気とMさんの人柄で選択だ。
こうした運転手との会話を通じて、貴重なる地場の最新情報を色々と収集するのである。








(⇒右写真)
空港を出発して走ること約1時間、マダバ市内を経由して死海まであと18km。
ここで冒頭の石標である海抜ゼロメートル地点の表示がある。普通の車はここを素通りしてしまうのだろうが、流石にこのM運転手はツボを押さえていらっしゃる。こちらから聞く前にキッチリと車を止めてくれた。こういう配慮には非常に評価する。あとで渡すTIPもはずもうというもの。運転手の選択に間違いがなかったことを再認識しつつ、海抜ゼロ地点で写真撮影だ。。。












(そして死海に到着。今回の宿はKempinski Dead Seaを選択する 〜)


前回はMovenpick Hotelに滞在したが、この界隈であれば他にはMarriott Hotel、そしてこのKempinskiがリゾートホテルとしてはオススメである。今は、世界のどのホテルでもBooking.comでお手軽に予約も出来る訳で、世界は本当に便利に狭くなったものである。このKempinskiは兎に角、敷地面積が広大。ロケーション的には海に向かった崖を上手く段差に利用した間取りとなっており、メインロビー兼ホテルビル、そしてビーチに向かって降りて行くにしたがって、コテージっぽい間取りの独立した宿泊棟が立ち並んでいる。今回はビーチ(死海)にも近い2304号室に滞在である。


結論から言って、このホテルはオススメである。
良い点は、設備が新しいこと、施設も充実しており、ラグジュアリー感も満点であること、そして何より死海に面したプライベート空間がシッカリと確保されていることである。レストランは3つ、タイ、イタリアン、インターコンチネンタルであるが、味も概して及第点。悪い点は、ハードの良さにソフトである従業員の接客サービスが付いて来ないこと。特に男性スタッフは笑顔も少なく、サービス精神発揮に致命的に欠けている。5☆のKempinski Hotelであるからには、中東だから、では済まされない点だろう。要は従業員教育と個々人の素養に集約されるのだが。
その他にも室内での電気系統、水周り系統での不具合は最後まで改善されない点もあったのだが、こういうリゾートではあまり細かい点には拘らず、こちら側も中東的な意識を持って、のんびり、ゆったりと過ごすことが正解であろう。



























(朝からBRUTのシャンパンで目覚めも爽快 〜)

さて初日は午後6時にチェックイン完了。
対岸のイスラエル側に落ちてゆく夕日を眺めつつ、一晩開けて朝食である。現在、11月の米大統領選を前にしてイラン攻撃問題も深刻な話題として世界中が注目するイスラエル情勢ではあるが、こうして死海から見る光景は『平和』そのもの。この光景は未来永劫に平和のベールで包み込みたいものだと切実に感じる。

このKempinskiでは室内ミニバーは全部無料。ビールもソフトドリンクも飲んだらまた補充してもらえる。更に嬉しいことに、朝からシャンパンが飲み放題。BRUTのCAVALIERを思わず3杯も飲んでしまう『死海オヤジ』であるのだ。そして、今回持参した時計はKINETIC DIVERとExplorer1の2本。クオーツと機械式時計の組み合わせは毎回、MUSTである。クオーツは正確時刻合わせにも重宝する自身の基準時計でもある。
さてさて、今回の旅の御題は、『死海に腕時計をして入るか否か・・・』。この重〜くて、塩辛〜い命題で、BRUTを呑りながら頭が一杯の『時計オヤジ』であるのだ。



























(死海の海とプールを一望してみる 〜)

このKempinski には大小3つのプールの他にも、個別ヴィラ専用のプールもある。
大人から家族・子供までが楽しめる設計であるが、一番素敵な時間は対岸のイスラエル側に沈み行く夕日をプールの中から眺めることかも知れない。テラスやバーでワインを味わいながらでも良し、はたまたシーシャを楽しみながらでも良し。
黄金色に染まる夕焼けの時間帯はまさに絶景である。
























 
 対岸のイスラエルに沈む夕日をプールから見る。               夕日を浴びたプールも美しい。
























(いよいよ、今回のメイン・イベントである『死海』浮遊体験に挑戦 〜)

ホテルの通路から階段で死海湖畔へと向かう。死海は海とは名が付くが、実際には大きな湖の雰囲気だ。勿論、高濃度、それも30%前後の塩水であるので海と命名されているが、ここに注ぎ込む唯一の水源はヨルダン川。そのヨルダン川の水量が上〜中流域における工業・農業用水で大量に消費されることから、激減している。一説には年間1m以上も死海の水位が下がっているといわれるが、確かに下写真(↓)で見る階段部分は7〜8年前には死海の中にあったと思われる。ホテルの砂浜から死海へ続くコンクリート製の階段も途中でなくなっている。減少する水位に階段が追いつかない、若しくは階段作りを諦めた様子が良く分かる。

























(←左写真)
死海の沿岸部は小石も多いので、このようなビーチサンダル、水中用のフットウェアは必需品。クロッグ系でも良いが、簡単に脱げない『履物』が欠かせない。
この水中用サンダルもかれこれ10年以上愛用している。
ちょっと見た目はイマイチではあるが、見栄えよりも実用第一で重宝することこの上ない。












(↓)下写真:これはピンボケ写真ではない。この死海の高濃度塩分は見るからに、ユラユラと塩分がドロドロの状態が目視できる。これを見てしまうと腕時計をし死海に敢えて挑戦するのは無意味なことだと判断。愛機KINETICは岩場に置いてお休み願うことにする・・・。
























(↓) とにかく、面白いように浮くのが死海の楽しさ。こんな経験は世界広しと言えどもここだけである。近年、幼児が死海で流されたが沖合いで漂流(浮遊)しているところを救われた、というニュースもあるほど。ゴーグルをして潜りたくなる誘惑に駆られるが、眼に一滴でも入れば地獄である。因みに、当然ながら魚等の生物(魚類)はいないので、仮に潜っても何もないのだけれど・・・。






















(↓)死海の岩岩にはこのように厚さ1cmはあろうかという塩がビッシリと張り付いている。圧巻!!!


























Kempinskiのビーチには無料で死海の泥が用意されている。
勿論、美容用の成分を含んだ泥(だと思うが)、である。
右写真の若者のように、全身に塗って15分ほど乾かす。その後、死海に『入浴』して泥を落として完了である。老若男女、こっぞって鏡の前で泥を塗りたくっている姿は、真剣そのものだけに滑稽だ。
筆者も試してみたが、泥を塗る快感、というものは丸で童心に戻ったようでもあり、この仕草自体が楽しいプロセスであった。死海で泥を落とした後は少々、ひりひり感、ホテリ感?のようなものを感じたが、果たしてその効果があるのか無いのか、全く定かではない・・・。











(死海で楽しんだ後は、真水のプールで伸び伸びと泳ぎを満喫する 〜)

Kempinsikiの大小さまざまなプールには大人の社交場的な雰囲気も漂っており、くつろぎには最適。
死海も良いが、この施設を楽しむだけでも十分滞在意義が感じられるホテルである。今回持参した防水グッズであるKINETICとOLYMPUS TOUGH μには本当にお世話になっている。特にKINETIC/ARCTURA DIVERは信頼性では群を抜く。クオーツ製という正確さとお気楽さを兼ね備えた傑作品は、購入後、早12年経過した。この間、日本のSEIKOにおけるOVHが1回。その時に中身の機械(キャパシタ)の一部も交換してもらい、充電期間は当初よりも飛躍的に伸びた。デジカメのVersion UPならぬ、時計の性能をVersion Up出来るというのが予想外の展開だけに凄いと感嘆する。
一方のOlympus Tough μは故障だらけ。今まで2〜3回はサービスセンター送りとなっている。防水性、耐衝撃性を謳い文句にしている割には結構、防水パッキンがモロイ。固体のハズレであったかも知れない。そろそろ買い替えの時期ではあるが、今回は最後のひと踏ん張りをこの『死海』でお願いすることに。取り敢えずは、無事にその役目を果たしてくれたと言って良いだろう・・・。



























(雑感)

死海で見る夕陽、そして夜間の対岸イスラエルの明かりを見ながらくつろぐ一時は至福の時間である。特に崖・山?の稜線から注ぎ込むイスラエル側の明かりの量は7年前に比べて大きく増えている。これが何を意味しているのかは明らかだ・・・。
しかし、2012年10月現在でも中東・北アフリカのアラブ諸国各地で紛争、政変、テロ・衝突が散発しているのだが、この地域に真の平和(サラーム)がやってくるのは何時の日になるのだろうか・・・。

死海での平和に見える貴重な時間を満喫出来た一方で、この死海でさえ急激な水位減少と環境問題に苦しみ、厳しい現実に直面している。真の平和とは、この世の中には有り得ないかも知れないが、アラブの挨拶言葉である、『貴方の頭上に平和を』(アッサラーム・アライクィム)、というフレーズを聞く度に、皮肉にも似た響きを感じてしまう筆者は可也、現実の世界に毒されているのかも知れない・・・、とか思ってしまうのである。

中東に完全平和が訪れる日は果たして何時のことだろうか。
いや、本当に平和の日々はこの中東の地に訪れるのであろうか・・・。(2012/10/03記 452600)


※この後、更に『秘境ペトラ』編へと続く・・・

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(2004年のヨルダン・レバノン訪問記はこちら)
1) ヨルダン編)マダバ・死海編はこちら
2) ヨルダン編)ペトラ訪問〜アンマン市内編はこちら
3) ヨルダン編)ジェラシュ〜アズラック編はこちら
4) レバノン編)ベイルート・バールバック編はこちら



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