SCOTCH GRAIN    スコッチグレイン

SCOTCH GRAIN IMPERIAL PRESTIGE
”DOUBLE-STRAIGHT” Ref.956BL(26cm/3E)




スコッチグレインの極めつけはこのモデル。
通称”ダブル・ストレート”と呼ばれる世界に例を見ない日本発のオリジナル・デザインである。
このアクの強い顔は世界屈指の存在感をも誇る。
加えて仏アノネイ社製の極上カーフも革靴での使用も世界初と言う。
ここまで来ると丸でスコッチグレインの宣伝WEBにもなりかねないが、
その実力たるや『靴オヤジ』も完全に脱帽(脱靴?)であるのだ。(2009/08/08)




(ギリーに負けない異端のデザイン”Prestigeダブル・ストレート”〜)

日本のトラッド靴量産メーカーとして双璧にあるのがREGALとスコッチ・グレインだろう。
時計メゾンに例えればREGALは差し詰めSEIKO。その生産規模と商品展開は群を抜いて幅広い。”REGAL TOKYO”まで含めれば、総合靴メーカーとしての規模と種類は日本随一。一方、スコッチ・グレインは『ミュンヘンの中小工房・クロノスイス』とでも言えようか。基本はメンズ専用のドレスシューズであり、カジュアル靴でもドレスタイプが基本。量より質重視。極めて正統派なデザインで正攻法から商品展開に挑む姿勢が『通好み』。海外ブランドに一歩も引けをとらない品質と自信が商品から感じられる。
そのスコッチ・グレインの最上位モデルがPrestigeである。

どうだろう、このツラ構えは。フロント周りがともするとバタバタする印象が強い。
恐らく、好き嫌いが真っ二つに分かれる賛否両論のデザインではなかろうか。
Imperial-2と基本デザインは同一。Imperial-2とのデザインの違いは、キャップ・トゥから上の通称『ダブル・ストレート』にある。こんなに見た目のインパクトが強い靴、押し出しの強い靴は国内外でも類を見ない。


(⇒右写真: こちらがダブル・ストレートの全体感〜)

全体のデザインはフルブローグを施したWing-Tipゆえに、冒険は一切無い。唯一無二のチャレンジがキャップ・トゥから上の甲にかけてもう一枚革が追加されている点。この革パーツを一つに数えて『ダブル』と呼んでいる、というのが銀座直営店による説明である。

通常ストレートチップのシンプル加減が『引き算の美学』であるとすれば、こちらはその正反対。ストレート・チップに敢えて一枚革のパーツを加えることでデザイン上のインパクトを狙った結果であるが、それをゴチャゴチャとした見苦しいデザインと捉えるか、独創性と捉えるかはその人の審美眼による。

筆者の判断は『ギリギリセーフの独創性表現』ということで認めている。さもなくば、自身のホームページでわざわざ紹介することも無いのだが、履きこなすにつれてこの靴のアクの強さが心地良い自己表現の一つとして柔らかく変貌して行くのだ。靴全体の基本デザインの高さと、最高級カーフ素材の融合により、ダブル・ストレートのデザインもいつしかごく自然に溶け込んで行くのが分かる。それがデザイン的には成功していると考える所以である。


履き心地も適度な3E幅と仏製の上質カーフの組み合わせで、個人的には快適。
自分の足型に合っているデザインが何よりも嬉しい点である。




(『トリプル・ストレート』ではないかという疑問が〜)

さてこの靴の名称である”ダブル・ストレート”であるが、実は未だに解せない。どう考えても”トリプル・ストレート”ではないかと考えるからだ。
ストレート・チップ。日本語では一文字、と称される理由はキャップ・トゥの端の切り口が一直線のラインを描いているからだ。そうであれば、この靴では甲の上に更にメダリオンをあしらったラインが2本追加されていることになり合計して3本。即ちトリプル・ストレートと考える所以だが違うだろうか。

革パーツ一枚を追加しているのでダブル・ストレートと呼ぶとすれば、一文字の呼称と矛盾する。些細な点かも知れないが、直営店でも納得行く回答が得られなかったことで、このネーミングだけが唯一気になる。

キャップ部分のメダリオンには3種類の穴(パンチング)が使われている。
『靴オヤジ』はメダリオンのデザインにもコダワル。Wing-Tipでも全体のデザインは良かったのだがメダリオンが気に入らず購入を断念した靴も実は多い。基本はフラワー調の丸型デザインでパンチングもそれなりの数があるものを好む。ダイヤモンド型やらメダリオンが間延びしたデザインであれば、どんなに靴本体が良かろうとも購入することは出来ないのだ。





(←左写真: フロント・ヘビーなトゥ周りのデザインが真骨頂〜)

2004年11月発売以来、丸5年を迎えようとする定番ライン。
むやみに流行を追わず、グッドイヤー製法と高品質の革素材でロングラン商品を展開する戦略は、哲学の無い並みのメーカーには決して出来ないもの。ワン・シーズン毎に商品入れ替えが常識的な靴業界において、こうした息の長い商品を揃える姿勢は稀有の存在である。決して量産には頼らない、しかし品質とデザインにはこだわり続けるメーカー魂を感じると言えば大袈裟か。

足首周りのブローグや革パーツのカッティングは欧州でも良く見るデザインだが、この曲線ラインも見事に処理されている。ブローグ穴の大きさも適度。『Wing-Tip大好きオヤジ』としてはImperial-2と同様に、このPrestigeラインからも眼が離せないのだ。

靴紐は毎度ながら、オイルを染み込ませた編み上げ式のもの。オイルの為にやや硬さがあるこの靴紐も筆者の大のお気に入りである。靴紐にまで凝る。この姿勢一つで信頼できる商品であり、靴メーカーでもあることが読み取れる。







(一目瞭然。”小型”トゥ・キャップ部分のデザイン〜)

このモデルではトゥ・キャップ部分が通常のモデルに比べて一回り小さい(⇒右写真参照)。しかしこのコンパクトなキャップ・トウの形状もメダリオン(穴飾り)も、存在感では決してレギュラーモデルに引けを取らないところが唸らせる。
コバの張り出しもやや広い。イタリア靴のような繊細さ、という点では目指すベクトルが英国靴ラインであるので比較にはならないが、純和風トラッド靴として、特にこの”ダブル・ストレート”モデルの存在感は際立つ。

最後に、このPrestigeモデルは既報のImperial-2と同様に、実際に履いてみると、そのクッション性の良さにも関心する。丸でダブルソールかと思わせるソフトな感触を持つ。勿論、シングルソールではあるが、例えば同様のギリーシューズと比較すると明らかにワンランク上の感触を感じる。恐らく、インナーソールの素材やクッション素材の違いによるものであろうが、最上級ラインの仕上がりとは外見のみならず、どうやら内部の素材にまでキッチリと手(足?)が入れられていることが分かる。まさに、Value For Money。

ボリューム感たっぷりのメダリオンで武装された”ダブル・ストレート”は、意外にもジーンズやチノーズとの愛称もこれまた抜群であるのが嬉しい限りだ。靴と時計だけは常に手抜きしたくないものである。(2009/08/08)



(スコッチ・グレイン関連Web)
スコッチ・グレインのImperial-2はこちら
スコッチ・グレインのInfinity(ギリー、黒カーフ)はこちら
スコッチ・グレインのInfinity(ギリー、濃茶カーフ)はこちら
スコッチ・グレインの『15年モノ黒スエード製Wing-Tip』はこちら
スコッチ・グレインのPrestige(ダブル・ストレート、黒カーフ)は
こちら

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