WALKOVER     ウォークオーバー
SCOTCH GRAIN  スコッチグレイン

『スウェード・シューズの妙』

Walk-Over Saddle Oxford Dirty Bucks Ref.34055K
Scotch Grain Black Suede Wing-Tip Ref.2345




秋冬のスウェード・シューズは温もりと温かみを感じさせる。
この2足は購入後、15年と19年目に入るが未だに現役で活躍中。
仕立ての良い靴は長持ちするという典型だ。
この季節、利用頻度は息を吹き返したように増して行く。
スウェードの素材を楽しむ余裕こそがユーザーに求められる一番のポイントである。(2009/01/03)




(スエード系トラッドシューズはON/OFF問わぬ永遠の定番〜)

元来、流行が嫌いである。
流行嫌いが故に、身に付けるものは全て定番系が多い。
時計も靴も同じ嗜好にあるの『靴オヤジ』の流儀でもある。
時計同様、ファッションには拘るがむやみに流行を追わない。無論、流行を追う歳でもないのだが、コダワリだけは失くしたら終わりである。そんな自分なりのコダワリをタップリ込めた2足は、購入以来、早15年以上を経過した。

この間、残念にもアメリカ製のWALKOVERは他社に買収されたとも聞く。
”ダーティーバックス”というプレーントゥモデルのスエード靴で有名であったが、筆者の選択はサドルシューズ。そして、もう一足は国産の雄、スコッチグレインの内羽式黒ウイングチップである。

流石にサドルシューズはONで使用する訳には行かないが、黒のウイングチップであればギリギリセーフで仕事用にも履きこなせるのが嬉しい限り。勿論、その時々のTPOと自分のトータルコーディネートには細心の注意を払わねばならないが。基本は休日用であるが、タイドアップしてもジーンズにも似合うところが定番靴デザインとしての強みだろう。ジャケットにジーンズスタイルが一番良く似合うかも知れない。






(内羽式ウイングチップに肉厚のゴルフソールが最大の味〜)

15年前の靴とは思えぬ程、しっかりとしている。
リーガルと双璧のスコッチグレインの成せる業であろうか。
茶色も良いが、黒色の方がよりシックな雰囲気を醸し出す。靴紐にも凝る。単純な丸紐や平紐ではない編み込み式の紐を選択している。市販では中々お目にかかれないのだが、こうした靴紐にまで凝るとチョット病気かも知れないが、コダワリとはそういうものである。

スウェード素材は天候に注意を要する。
泥はね、水分系による汚れやシミが最大の敵となるが、冬場は雨も少ないので安心して使用できる。定期的に撥水スプレーで手入れを怠らなければ、簡単な汚れからも防ぐことが出来る。基本は毎回の使用後にマメにブラッシングをすることだが、そうした気遣い無しでは10〜20年に亘り履き続けることは不可能だろう。
スウェード素材とは革の裏面を毛羽立てかこうしたもの。一方、ヌバックとはスムースレザーの表皮を毛羽立たせて人工的に作ったもの。荒業としてはその逆も可能。つまり、磨り減ってしまったヌバック表皮を再度”研磨”することでスムースレザーに戻すことも出来るのだが、そこまでする猛者は少なかろう。

通称ゴルフソールはJ.M.Weston製や英国製のご本家リッジウエイ・ソール、そしてダイナイトソールが有名だが、国産でも十分に対抗できる。この靴もヒロカワ製靴オリジナル(とは言え、原型はリッジウェイソールであることは明らか・・・)の『アクト・ソール』を履いているが、中々どうして良い出来映えである。現行品ではアクトソールとSGソールがあるが、15年前からこうしたデザインのトレッドには流行の移り変わりは無い。

靴全体のデザインも極めてオーソドックス。丸過ぎず、細過ぎず、やや細身の絶妙なラインを描いているのが定番たる風格である。逆に時代を超えた普遍的なデザインでないと10年、20年と履きこなす事は到底不可能だ。





(←左写真: こちらはウイズDの細身なサドルシューズ〜)

1990年当時に吉祥寺で購入したWALKOVER。
レンガ色の発砲エレタン製ブリックソールは特に有名。
共に5穴の内羽式だが、こちらはグッとカジュアルになる。
それでも国産系のボテっとしたデザインとは一線を画するのが流石、アメリカの老舗ブランド。しかし、そのWALKOVERも今や消滅
(※注)してしまったのが惜しまれる限り。時代の変遷を感じさせる、想い出が詰まった靴でもある。サドル部分のスムースレザーの発色も絶妙だ。これが黒と濃茶のコンビネーションであればドレス用としても十分通じるが、そこまで洒落た靴を履いている御仁には今までお目にかかったことがない。黒&濃茶のサドルは既製靴ではまず存在しないだけに(正確にはFLORSHEIM等の1〜2の老舗が生産している)、もし遭遇することがあれば即買を薦めるものだ。


現代ではゴルフにおけるサドルシューズが一番有名だろう。
ゴルフ靴の老舗、アメリカのFoot-Joyであれば最高級ラインには必ず白&黒のサドルシューズが存在する。
一時期、筆者も白黒コンビの練習用ノンスパイクのサドルシューズをゴルフ以外の通常でも使用していたが、特にリゾート地においてはこれほどお洒落で、”場”にハマル靴もあるまい。

個人的に靴デザインのベスト5を挙げるとすれば、以下となる:
ウイングチップ、ダブルモンク、ストレートチップ、Uチップ、そしてこのサドルシューズだ。
これら5タイプを揃えれば、一生涯、あらゆる場面で対応出来るだろう。自分が長年実践してきた結論でもある。

スウェード靴を履く楽しみはOFFへの切替を自分なりに意識出来る事にある。
ONでも使用可能と書いたが、基本的にはスエード素材はカントリー調のイメージが強い。故に休日の開放感を満喫するために履きこなすのが自己流だ。この靴を履く時は緊張から開放された時間を取り戻す時でもある。休日にウイングチップを履く気分が乗らない時にはサドルシューズはもってこいである。

これら年代モノの2足のスウェード靴は自分のONとOFFの岸辺を行き来する渡り鳥のような貴重な存在でもある。(2009/01/03)

(※注)Walk-Overは2010年にイタリア資本のASAP社が商標を買収し、ブランドが復活することになった。

(加筆修正)2013/2/3(470000)

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