(ひと目惚れ、とはこのこと。プラズミール・ミルグラフ〜) 良くないね、ひと目惚れするのは。 2005年7月、某誌広告でたまたま見かけたプラズミール・ミルグラフの写真。 特に2カウンタークロノグラフに釘付けとなる。とにかくデザインが良い。ネーミングも秀逸。 あのTIMEZONEでも紹介(=MAY/25/2005)されているのは少々意外。 モチーフとなっている時計は明らか。しかし、R.X.Wは色々苦労している。そしてその商品展開はチャレンジング、刺激的である。 『簡単には諦めない、根性がある時計』、かどうかは別にしても、『時計オヤジ』の心を鷲掴みにする魅力がある。 こういうハラハラ・ワクワクさせてくれる時計、正直のところ好み、である。 翌月の8月某日、運良く銀座の店を訪問する機会に恵まれた。 『今からのデリバリーは年末になるかも知れないが明確な時期は不明』との説明を受ける。 少々殺伐とした店内の雰囲気であるが、それも如何にもR.X.Wらしいではないか(とまで言っては言い過ぎか・・・)。この『切れ味』ある店内のムードこそ真骨頂。年末であろうと年明けであろうと良い物は欲しい。 店内にあるサンプルモデルを手にした質感も想像以上。 既に第一期?デリバリー分の新品ミルグラフがズラリとトレイに並んでいる光景は壮観だ。こちらとしてはひたすら待つ決心は最初からついているのだ。問題は何も無い。 待つこと約3ヶ月。予想より早い11月初、遂に日本国内デリバリーとなる。 そしてそれから2ヵ月後にようやく年末一時帰国した『時計オヤジ』は現物を手にするに至る。 ひと目惚れはやはり、良くない。 経験上、失敗するケースの方が圧倒的に多い。思えばドーンブリュートも同様であったなぁ・・・。 しかし、惚れてしまったら火傷するまで引き下がれまい。 結論から言って、今回のプラズミールは諸点をクリア。 中々の出来映えと風格さえ漂う容姿に満足である。少なくも現在はそう感じている。 |
(ずんぐりむっくりしたフルメタル『デカ厚時計』の典型、しかしその実態は?〜) ケース径39.9mm、ケース厚15.5mmはいかにもデカイ。 加えて総重量は174グラムもある。筆者所有の時計ではダントツに重い。 典型的なデカ厚時計である。しかし、それでもかろうじてケース径40mm以内に納まっているのが救いだ。手首の上でゴロゴロしないと言えば嘘になる。それでもゴロゴロ具合がしっくりくる。デカ厚にはブレスレットの方がバランスが取れる場合もある。『柔よく剛を制す』の反対、『目には目を』がこの場合には正解だ。 因みに、JLCのグランドデイトも先日、ジュネーヴのJLCブティックにてメタルブレスに変更したがやはりこちらも正解であった。革ベルトではどうしても手首上で落ち着かぬ不安定さも重厚なブレスが解決してくれる場合もあるのだ。お分かりかな。 このプラズミールの標準仕様は革ベルト+SS製の密閉式裏蓋であるが、ごく当然の選択として3連ブレスレット+裏スケルトン(グラスバック)を選んだ。2カウンターの手巻モデルにのみオプションで裏スケ仕様があるのは嬉しい限り。手巻には裏スケ、これも毎度ながら『時計オヤジ』の公式である。 カタログによれば防水性能は100m。クロノグラフのプッシュボタンも、竜頭も共にネジ込み式である。しかし、グラスバックの裏スケに変更していることもあり水につける気には到底なれない。耐磁性能も、100m防水性能もあくまで参考程度に考えた方が無難である。夏場や湿度の高い季節・地域での使用には大きな安心となることは間違いない。DATEJUST も同様であるが、敢えて水にジャバジャバ浸す必要もないはず。ごくごく普通に、かつ丁寧に扱えば良いのだ。 (二重文字盤『N夜光』と3Hガスライト、そんなに光ってどーするの?〜) ケース剛性、ブレスの質感も値段以上に感じる。 独特の文字盤デザイン、面白い数字書体と相まってそのハードスペックは相殺されがち。 文字盤上のINDEXはくり抜き方式。いわゆる2重ダイアルの下側ベースダイアルには『N夜光』が全面に塗布されている。『N夜光』とは登録商標である。ホチキスや”キッコマン”(=米国では醤油の代名詞)と同じ類の商品名ということ。英文呼称はよく耳にする『ルミノーバ』。日本の某化学品メーカーによる世界特許品であり、時計文字盤における夜光シェアでは断トツの世界No.1である。 蓄光性のN夜光は従来品対比、初輝度で10倍、残光輝度で10倍の明るさを持つ。 ふむふむ、流石は日本メーカー。1994年に開発された『N夜光』は最早、世界で、いや『闇の世界』で敵なし、である。因みにこの『N夜光』は、アメリカ100ドル紙幣やユーロ紙幣にも使われている。世界が認める夜光の王様。New、Natural、そしてメーカー名の頭文字から『N夜光』と命名されたらしい。 加えて表面ダイアルには3Hトリチウムガスライトカプセルが使用されている。ルミノックスLuminoxやボールウォッチBALL WATCHでも使用されているカプセルに似ている。広告の表現を借りれば『太陽が消滅しても20年以上自然発光し続ける』というもの凄いガスライトカプセルである。まさにこれぞR.X.Wウオッチ、というべき謳い文句ではなかろうか。まことに度肝を抜かれる表現である。まず、『太陽が消滅する』という仮定が凄い。その後、20年も発光するという性能にも、この際素直に驚いてしまおうか。この開き直り具合、世間を挑発しているかのごとくのコピーフレーズにはよくぞそこまで言ってくれた、と拍手モノでさえある。 さぞ楽しいであろうなぁ、こういう遊び心ある広告を作る方も。 しかし、個人的にはこの3Hカプセル装着は『蛇足』である。 文字盤内側壁面にあるタキメーターと相俟って少々バタバタしたデザインとなり、『やり過ぎ』のしつこい仕上がりになっている。 『くり抜き型2重文字盤』+『N夜光』であるのだから、3Hカプセルまでは不要であろう。せめて時分針のみへの使用に留めて欲しかった。 逆に、それ程までして他機種との差別化を徹底して図ることで個性を更に主張し、『自己防衛』しているR.X.Wなのであろうか、とまでも勘ぐってしまうのだが・・・。筆者の表現の自由もここまでが限度。お分かりかな。 |
(肝心のムーヴメント、その言及はどうやらタブーらしい???〜) 不思議なムーヴメントである。 広告によれば『スイスで設計されたクロノグラフの名機2機種をモディファイしたオリジナルムーヴ』だそう。結局、どの国で生産されたものか不明。試しに店員さんに聞いてみたが、不機嫌で尖った表情となり明確な回答は得られない、と言うかしない御様子。そんなこと聞いてどーすんの、とでも言いたげな応対が印象的。恐らく、あの辺りの国かなと推測するが、この際宜しかろう・・・。お分かりだな。 テンプ受け、クロノグラフ車受けにはジュネーヴコート仕上げが、そしてブルースクリューやら各種歯車の黄銅色など、色彩的にも十分楽しめる。コラムホイールもしっかりある。これでチラネジも付いていれば完璧、だが、現実は厳しい。しかし成る程、スイスで設計されたデザイン、『あの名機』に確かに似ている。そうしたクロノグラフ機構をグラスバックから眺める事が出来るメリットは大きい。手巻機械式の醍醐味を享受できるのは単純に喜ばしい限り。20石、6振動/秒の手巻2カウンタークロノというのは昨今、なかなか少ないものだ。 ストップ、リセットボタンも感触は宜しい。適度なクリック感もあり、軽やかな指先感覚を楽しめる。 まあ、その価格からも、そのオ気楽さからもハイスペック&高感度を求めるのはお門違いだろうが不満な点は無い。 収納箱はゼブラウッド使用の豪華なもの。対照的に取説はA4のカラーコピーが1枚。これはフランクミュラーも同様である。 文字盤のサンドウィッチ構造は非常に良く出来ている。12、3、6、9、の4つの数字が欠けずに見えるのも2カウンタークロノの特徴。因みに、3つ目モデルでは6時表示が欠けてしまう。秒針小ダイアルとクロノグラフの分積算ダイアルも視認性はよろしい。 ローターの無い裏スケからはクロノグラフの動きをごくごく自然に楽しめる、『両面で美味しい時計』がこのPLASMIR MILGRAPHの魅力である。 |
(デカ厚の存在感と可愛い文字盤デザインが同居した憎めない時計〜) 文字盤上に印刷されたロゴ、”PLASMIR MILGRAPH”と”ANTIMAGNETIC”もその書体と相まって硬派な雰囲気を醸し出している。よくぞ命名したこのネーミング。♪プラズミール・ミルグラフ♪という響きが実にいい。”PLASMIR”は商標登録済みらしい。こうした名前にさえ妙に感じ入ってしまうのが『時計オヤジ』の悪い癖でもある。更に言えばその書体にまでこだわる。Exclusive、Executive、Custom、Super、Limited、Special、Authentic、Traditional、Original、Professional、等など、こうした単語に滅法幻惑されてしまう。 この時計、休日のみならずたまにはON-DUTYで使ってみたくなる誘惑にとらわれる。 但し、16mm近い厚みの為、Yシャツ手首のボタンを5mmほどずらす必要が生じる。 せめてそのくらいの準備をしてからON-DUTYで着用しようではないか。 『時計オヤジ』が入手した直後、クロノグラフがあっけなくも操作不能となった。 ドーンでも同様であったが、不吉だ・・・、いやいやこれ以上の言及はするまい、、、 幸い、ショップの対応は迅速・万全。数日後には新品交換も完了した。 クレーム、故障は時計につきものだが、それにしても早すぎる。 これは固体の問題と割り切るが、『切れ味鋭い』この店はそのアフターケアにおいても万全の体制で臨んでいる。 こうした対応も含めて今回のPLASMIR MILGRAPHは今のところ『時計オヤジ』の欲求を満たしてくれる。 美辞麗句と御託を並べたが、一方でこの時計の真価が問われるのはまだまだこれからであることも十分承知しているつもりだ・・・。 いずれにせよ174グラムの重量と40ミリ径には、それなりの覚悟が必要である。 しかし装着感は快適の一語に尽きる。目立度も存在感も十二分。 メジャーブランド時計に真っ向勝負の、このプラズミール・ミルグラフ。 実に骨のある時計で気に入っている。(2006/3/01) (追記1) 重量174グラムと述べたが、確かに重い。しかし、左程重くない。訳が分からぬ表現であるが、これは片足500グラム超の『重い靴』が振り子の原理で重く感じないのと同様で、腕に(いや正しくは手首であるが)装着すると『適度』な重量感に変わる。TITAN製で薄型の時計には最先端の技術と素材に魅力を感じるものの、それではいざ、身に付けるかと言えばNO、となる。やはり、腕時計にも適度な重量が必要である。人それぞれ感じ方は異なるが、筆者の場合100グラムが一つのボーダーライン、快適さの分かれ目である。 さて、このPLASMIR MILGRAPH(2カウンター)であるが、使い込む程に中々良い。重いのだが苦にはならない。そしてモチーフであるPANERAIよりも、連想させられるのはむしろ『OMEGAスピードマスターProfessional手巻スケルトンモデル』だ。40mm径ケース中身に凝縮したムーヴメントも何故か、あの『スイス伝統的なキカイ』よりも、OMEGAの方が近い気分である。意外?な連想、展開になったが、やはりOMEGA。大御所のProfessionalはクロノグラフの永遠の名機であると、このPLASMIRを通じて感じてしまうのだ。(2006/8/16) (写真全面変更 2007/8/19) ⇒腕時計に戻る |
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