(2004年、バーゼル発表モデル登場〜) 『我輩はGUCCIである。名前はまだ無い。』 先に随筆L「2004年バーゼル&S.I.H.H.ジュネーヴ特集雑誌を斬る!?」で筆者が2004年度の注目モデルBEST5に数えたグッチだ。 グッチのカタログを見てもそっけない説明文のみだ。どうやらGUCCIというブランド・ネームを前面に押し出すことで、それ以外に名前をつける必要は無い、というポリシーのようだ。グッチはグッチ。「グッチの時計」で十分、であるのだろう。 (デザイナーズ・ブランドと老舗時計ブランドの戦い〜) 筆者の好みから言えば、ファッション・ブランドの時計は勘弁願いたい。長年、そう感じているのだが、最近ではその境界線上の微妙なPOSITIONに、カルティ(=宝飾ブランドの雄として頭一つも二つも、抜きん出ているが)やらダンヒル、ブルガリ、エルメスといった実力派が伯仲している。それでも老舗時計ブランドと比較すると目指すベクトルの相違もあり、「時計オヤジ」には今ひとつしっくりとこない。 しかし、モデル毎で見れば、ハッとする時計も稀にある。今回のGUCCI G-ROUNDがまさにそうだ。 (魅力は「顔」が全て。不思議な魅力を放つ、グッチの秀作〜) イニシャルのGをモチーフにしたベゼルのデザインは6〜7年前からリリースされている。 写真右は、2針式のシンプルなレクタンギュラーのクォーツ時計(女性用)であるが、そのマッシブさが20〜30代の働く女性のイメージとも重なり、当時ヒットしたシャープな名品である。角型ケースというのはデザイン上、丸型より個性を出しやすいにせよ、従来のGUCCI丸型は凡庸なデザインが多いと感じていた。 G-ROUNDは、ここでいよいよ登場したGUCCIのラウンド版の「真打」と感じている。大体、色々理由や御託を並べても「初対面の印象」「好きか嫌いかの瞬間の印象」で動機の半分は決定する。 デザイン的魅力では今年のバーゼル・ジュネーヴ発表モデル中、ラジオミールRADIOMIR(8-DAYS、BLACKSEAL)に勝るとも劣らない。コストパフォーマンスを考えれば、思い切って「NO.1」と言ってしまおう。 (お気に入りの特徴についての考察〜) 1)まず、その大きさが良い。むやみやたらに直径40mm超のデカ厚に走らないケース径約39〜40o。Gマークのベゼルがステップ形状となっているので、その大きさも和らぐ絶妙のデザイン。簡単のようで、この造形は並みのデザイナーでは出来ない。これがGUCCI流のエスプリだろうか。 因みにサイズは3種類。この日付・曜日付きモデルが最大である。 2)マット仕上げのベゼルのGモチーフも嫌味がなく、デザインに溶け込んでいる。 3)12時位置のGUCCIロゴ、3時位置のGモチーフを上手く使ったBAR-INDEX、6時位置の曜日表示、9時位置の日付表示は不思議とゴテゴテしていない。4方向で上手くバランスしているデザイン配置が秀逸。文字盤全体のデザインもリング状のギョーシェ模様と相まって、黒文字盤が見事に『ちょい悪シック』している。モノトーンでまとめられたさっぱり系の顔には、この際好きな秒針が無くとも許してしまう。もっとも、この上、秒針まで駆動させるとボタン型電池パワーでは限界かも知れない。 4)カーフ製パンチング・レザーの妙。『ちょい悪』文字盤と絶妙にマッチングしている。アリゲーター製も別種のパンチング無しカーフやブレスタイプもあるが、時計オヤジのチョイスはこれしかない。Roger Dubuisの'Golden Square'にも通じるパンチングは、ドライビング・ウォッチとしての雰囲気も十二分。これなら、ショパールChopardミッレミリアMille Migliaにも対抗できるかも知れない。ベルト通し(=遊革)も一つはメタル製、というのがグッチしてます。 5)クォーツ製というのも、メンテナンス・プチフリーのオ気楽さ、カジュアルさを楽しめる。腕時計はムーヴメントが全てではない。良心ムーヴとは機械式ばかりではない。肩肘はらぬ所が誠に結構、結構。 |
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(”スタイル”と”場”を選ぶGUCCI〜) この時計は決して万能な実用時計ではない。 ONでもOFFでも、その人のスタイルと場、というものを選ぶ時計だ。スーツ姿であれば、流行のタイトなシルエットが似合う。靴も黒。スーツも紺黒系が一番。ピンストライプでジャーミン・ストリートでも丸の内でも銀座でも闊歩するのがピッタリする。 OFFであっても、ジーンズにはジャケット着用。足元はサイドゴアブーツかダブルモンクの黒が良い。 別にGUCCI一辺倒でコーディネイトする必要は毛頭無いが、どこかにシャープな切れ味を醸し出す演出は意識的に必要だろう。時計に負けない自己主張、自分のスタイルを持たないと、この時計だけが浮きかねない。 老舗時計ブランドとの最大の相違点は、押し出しの強さ。GUCCIを如何に自分のライフスタイルと融合させられるか、この点が際立っているのがデザイナーズ・ブランドの特徴だ。Brand Identityを最大限に自己主張してくるので、こちらも自分の流儀を持たないと負けちゃう時計。 GUCCIは切れ味鋭い刃物のような時計である。 (参考文献) エスクァイア日本版 MAY.2005VOL.19 (追記)2005/4/02 この度、G-Round Japan Limited Editionとしてグレーとシルバーのツートンモデルが発売された。メタルブレスもツートーンカラーであり、肝心のフェイスのデザインといい、これは益々もってG-ROUNDの人気を押し上げること間違いない。『時計オヤジ』の嗜好と主張を支えてくれるような新モデルである。GUCCIはなかなか元気があるようで心強い。 ⇒腕時計Menuに戻る |
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