CHURCH'S   チャーチ

『再考、BURWOOD』
Church's Burwood Sandalwood/Polished Binder

LAST:81、Made in England




2005年にミラノで購入したBURWOOD。
あれから10年、全く同じBURWOODを今回は本場英国のロンドンで再度、購入することになる。
その理由は語るとキリがないのであるが、
今回は2足目となる、『BURWOODの真実』、に迫りたい。迫れるか・・・?
(2015/02/01 574,600)





(英国でBURWOODを履く喜びを噛みしめる ~)


個人的にCHURCH'Sで一番好きなのがBURWOODである。
ConsulやらDiplomat等の名品ひしめくブランドにおいて、頭一つ抜き出た存在こそがBURWOOD。
その魅力は語って尽きることが無い。特にこのSandalwoodと呼ばれるライトブラウンが秀逸。
Polished Binderと呼ばれるカーフは、日本でいうところの『ガラス』に近い。カーフにを丁寧に磨き上げ、最終工程で特殊な樹脂を塗ったものである。水にも強いが、皺が深く入るとひび割れの原因にもなる。しかし、普段の手入れを怠らなければ軽く10年単位で持つだろう。

そんなSandalwoodの明るいブラウンは、ドレスシューズというよりはカントリーに近い雰囲気である。ロンドン市内では、特に金融関係のビジネスマンは靴は黒色と相場が決まっている。会社によっては黒靴を白Yシャツ同様に社内のドレスコードに据えているところもあるほどだ。毎日の地下鉄の中でも、ビジネスマンの足元は圧倒的に黒靴主流。今までSandalwoodのBURWOODを履いた御仁は見たことが無い。逆に、こちらが履いていると少々浮いた感じがしてしまうのだ。ロンドンのビジネスマンは、皆、黒靴で勝負している。

BURWOODの真実その1: BURWOODはビジネス用というよりはカントリーシューズに近い週末靴である。黒靴であれば夜のパーティーやディナー会合にも問題無いが、ライトブラウンは夜会には不向きだ。こうした点からも、BURWOODを履く日にはそんな予定が無いことを確認している。

***


(Church's 五天王をご存じか ~)

ロンドン市内には少なくとも5~6軒のCHURCH'S路面店がある。
中でも好みの店と言えば、Jermyn StreetとRegent Street、New Bond Streetにある店舗である。各店の売り場面積は十分広いので、ゆったりと眺めることが出来る。特にJermyn店では、アパレルもあれば、女性用コーナーも独立したスペースを持つ。逆に狭いのがバーリントン・アーケード店だ。ここは場所柄、どの店舗も売り場面積には限度がある。店員の質もJermyn店が良い。Regentは観光客が多いのだが、店員も英国人ではない人や若手も散見される。時に靴の知識が皆無ではないかと思われる接客態度に閉口することもある。人手不足とは言え、CHURCH'Sにしてはお粗末過ぎる。

その点、Jermyn店はまだマシ。サービス精神は普通だが、落ち着いた雰囲気の中で品定めが出来るだろう。
➡右写真は全てBURWOODだ。ワイズもF、Gが揃い、ソールもレザーやダイナイトもある。革製ダブルソールが主流ではあるが、ダイナイトソールも絶妙のコンビネーションである。CHURCH'SのHomepageを見ると、BURWOODは”Triple Sole”との記載があるが、これはどう見てもダブルソールである。ウェルトまで数えればトリプルだが、どうして公式HPでは”Triple Sole”と呼ぶのか、今度、古参店員か、稀に店内でデモンストレーションを行う靴職人に聞いてみたいと思う。

さて、CHURCH'Sでの売れ筋ランキング上位5傑は何であろう。
以前、CHURCH'Sの関係者の談話では、Consul、Diplomat、Chetwynd、Grafton、そしてBURWOODがベスト5。Consul以外は全てWing-Tip。更には奇しくもBURWOODのLAST81以外は全てLAST173。1950年代に作られたLAST81は既に半世紀以上に亘って受け継がれている。木型としては類い稀なるロングセラーと言える。

BURWOODの真実その2: BURWOODの魅力はその比類なきラウンドトゥを生み出すLAST81の継承にある。このLAST無くしてBURWOODは名作には成り得ない。同様に、FAIRFIELDもLAST81があってこその名靴である。良く言われるポッテリ顔のフロントトゥこそBURWOODの命でもある。




(LAST81同様に、BURWOODの顔を彩るのが独特のメダリオンである ~)

BURWOODのメダリオンは大中小の3種類の大きさが使われているが、それぞれのバランスとパンチングが絶妙である。
現行の英国老舗カントリー系ではTricker's、J.Cheaney、そしてCHURCH'Sが抜群の出来栄えを誇る。中でも、CHURCH'Sのメダリオンには安定感がある。

その安定感とは何か。要因は大きく3つある。
① 上述の通り、3つのメダリオンの大きさが絶妙である。Cheaneyでは大のメダリオンが更に大きい。AVONを見れば明らかだ。それはそれでアクセントとなっているのだが、CHURCH'Sのメダリオンには無理が無い。その大きさが自然である。故にドレスシューズとしてもしっくり来る所以だろう。そして穴のあけ方、即ちパンチングそのものがクッキリを仕上がっている。有名な国産靴でも、メダリオン穴の一つ一つがぼやけていることが少なくない。

② 2点目が、メダリオン形状である。つま先部分のメダリオンデザインがCHURCH'Sの場合、京都五山の送り火『大』の字のような定番デザインが多いのだが、これが非常に纏まりあるのだ。Tricker'sのようにつま先のメダリオンがウェルトの中に潜り込んで消えてしまう『大胆さ』は真っ平御免だ。それも個体差が激しい。メダリオンにも敬意を。Tricker'sにはこの点の改善と気配りを望みたいが、CHURCH'Sには無論、そのようなことが無い。

③ 3点目は、フルブローグに迷いが無い、ということだ。ブランドによっては足入れ部分周辺のメダリオンを省略しているモデルもあるが、BURWOODでは模範的・教科書的にメダリオンを全周に配置している。そして、そのメダリオンラインには直線が一切無く、流れるような曲線を描いて靴全体に『流れ込ん』でいる。まるでFranck Mullerのトノーケースを見るような惚れ惚れするラインだ。見事なデザインである。

BURWOODの真実その3: BURWOODのメダリオンは、その3種類の大きさとデザインが流れるようなラインに乗ったハーモニーが絶妙なる融合を見せる。フロントウィングのギザギザライン(ピンキング)といい、正確無比なる手作業によるスティッチラインといい、何ら破綻が無い点が見事。


***

下写真: 徹底的に履き込むことでコルクが体重で押し潰されて自分の足型にフィットする。そこまで行けばコチラのものだ。
新品のBURWOODは矢張り良い。これからこのBURWOODと、ロンドンのどの街並を歩こうか、郊外のどこまで足を延ばそうかと想像するだけでも心躍る。
平日ならシティ界隈を闊歩する楽しみに溺れる。段差が激しい石畳でもクッション性能で戦車のように乗り超える。週末であればJermyn Streetの靴屋巡りや博物館巡りのお供として足元をスキ無くキッチリと固める。そして海外出張や旅行用としても重宝することは間違いない・・・。もう彼是、5年間もBURWOODから遠ざかっているのだ。この借りは『2足目』に、利息を付けて返さざるを得まい・・・。






















(改造への妄想が膨らむ ~)

今回どうしてBURWOODを2足目に走ったか・・・。
それは1足目が日本の倉庫で眠ったままとなっているからである。
数あるダンボール箱から一足の靴を探し出すことは至難。であれば、2足目に逝かざるを得まい。そんなどうでも良い事情があるのだが、やはりBURWOODは良い。履いていてこの上ない安心感がある。心なしか足取りも軽くなるというものだ。しかし、雨の多いロンドンでは、決して雨の日には履かない。天気予報を念入りに調べ上げた上でBURWOODを履く日は厳選される。それでも一日で四季がある、全ての天気があると言われるロンドンでは雨に遭遇する確率が高いのだが、細心の注意を払っている。

***

次なる一手はソールの改造である。
理想を言えば、ダイナイトをハーフソールに切断して革底の上から装着することだ。まさに正真正銘の重戦車Triple Soleとなるのだが、ロンドンのリペア事情は悲惨である。技術的にも、金額的にも悲惨、であるのは既に身を持って体験済。世界広しと言えども、リペア技術の最高峰は我が国、日本に他ならない。ダイナイトをハーフソールで使用する場合、接着だけでも可能ではあるが、剥離する懸念が残る。やはり、本来は縫合するのが一番安全でもある。しかし、その為にはオールソール同様に2週間の修理期間が必要となる。寸暇を惜しむ『靴オヤジ』には日本に本帰国するまでは無理な話。

ここは希望を妥協して、他のアイデアを練るしかあるまい・・・。





(今回改造したのは、日本国内でも屈指の技術を誇る店舗にて ~)

ダイナイトが時間的に無理であれば、残る選択肢は限られる。本当はPhilipps製のハーフラバーを選択したかったのであるが、生憎と在庫なく断念。代わりに選んだのがスタンダードなVibramの#2340、通称『EXハーフラバー』、とか『クロコパターン』と呼ばれるブラウンを選択。EXの語源はExplosion Rubberからきている。コイツは2.0mm厚で十分な耐久性とクッション性を誇る。今回お願いしたのは全国チェーン店でもあるRESH銀座店。三越内に入っているリペアshopであるが、RESHには絶大なる信頼を置いている。特にH県のKさんには過去、色々とお世話頂いた。この場を借りて御礼申し上げます。店員さんは皆さん若いが、確りとした技術をお持ちである。恐らく昨今、この業界では比較的ヤングパワーの情熱と技術が、文字通り『底上げ』に大きな役割を買っているのだろう。その実力・内容共に世界一のリペア技術を満喫して頂きたい。

➡右写真:サンプルラバーを選ぶ愉しみもこれまた格別。ハーフラバーとトゥ・スティールのコンビネーションが好みである。今回も同様の組み合わせで、次回ダイナイトのハーフソール装着まで心行くまで愉しむ積りだ。

BURWOODの真実その4: BURWOODの愉しみはこうしたソール改造や交換にも存在する。
将来的にはラガムライトなどの軽量ソールを装着したり、人工クレープでダブルソールにしたりと妄想は尽きない。BURWOODはそうしたソール交換が実に良くハマル靴でもある。その血筋には脈絡とカ
ントリーシューズとしてのDNAが存在しているのである。まるでPANERAIのベルト交換の遊びにも通じる面白さがソール交換にはあるのだ。





(定番のハーフラバー+トライアンフで靴底を完成させる ~)

トゥ・スチールの装着は好みが分かれるところである。Pros/Cons双方の主張がある。
Pros最大の主張は、摩耗対策と見た目の精悍さ。Consの主張は、滑り易さと履き心地の悪さ。カチカチ鳴る金属音は我慢出来ないという御仁も少なくなかろう。どちらを取るかは個人の選択次第。
実用面から言えば、スチール無しでも問題ない。履き心地優先を考慮すればハーフラバーだけでも全く問題ない。むしろその方が正しい。それでもスチールに拘るのは、やはり見た目であろう。舗装路ではカチカチと音がするし、どうしてもつま先の滑りが気になる。これを避けたい人は装着を止めた方が無難。
『靴オヤジ』はあくまで見た目優先。特にトライアンフ150の造形美が好みだ。3本ビスの円錐形の穴も心地良いデザインである。多少の錆びも生じるが、錆びたらまた履き込めば自然に取れる。最悪、スチールが衝撃で取れてしまっても、再装着が可能であり、又はラバーで埋めても、元に戻したければ革を再接着する手段も残されている。しかし、どれも日本国内でのみ成せる業。ロンドンではそこまでの技術が存在しないので、修理の際の選択肢は極端に狭まれる。それでも、今回はスチール装着に拘るのであった。
ハーフラバーを黒や茶色でなく、色で遊ぶことも出来るのだが、今回は色では遊ばない。王道の濃茶Vibramを装着することで、全ての愉しみは主役のBURWOOD表の顔に捧げることにした。2足目のBURWOOD、我がロンドン生活をこれからどこまで『底上げ』してくれのか、心置きなく『酷使』する積りである。
(2015/02/02  574,600)




















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(CHURCH'S関連のページ)
① イタリアで英国靴を買う。BURWOODの考察はコチラ
② Church's "FAIRFIELD"についての考察はコチラ





(追記1)
2015年2月後半、女性用のBURWOODスタッズ付きが発売される。
何とカラーがロイヤルブルー。これはお洒落だ。勿論、男性用には無いモデル。
BURWOODはトラディショナルな旗艦商品でありながら、同時にこのようにファッションライン最前線としての実力も兼ね備えた摩訶不思議なモデルであるのだ。
Regent Street店で色々と話を聞いてみると、プラス100ポンドで男性用にも別注を受け付けるという。
これは何とも美味しい話ではあるまいか。納期は3~4カ月。
真剣に検討を開始しそうな『BURWOODオヤジ』でアリマス。。。
(2014/2/23 576600)










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