LONGINES   ロンジン

Longines Hydro-Conquest 300m Diver's Watch
Ref.L3.640.3.96.7 Cal.L263(Quartz)




2007年に発表となったLonginesのHydro−Conquestダイバーズ・シリーズ。
12・6・9のアラビア数字INDEXが強烈なアイコンとなって、今やデザイン的にも定着した感がある。
既に”Star Navigation”でも紹介しているが、
今回は定番中の定番、3針のデイト表示付き、そしてクォーツ製。
普通の時計、普通のダイバーズ・ウォッチとして既に愛用を重ねているのだ。
(2013/05/26 486400)



(『紺金時計』は夏場の手首に良く映える 〜)


正直に言えば、アクの強すぎるINDEXとベゼルデザイン、そして『イカ針』に代表される大味なデザインであるがゆえに、未だにやや抵抗感もあることは事実。しかし、それを補って余りあるのが『紺金』デザインである。

今まで何度と無く主張してきたように、『黒金時計』は筆者の好みとする色彩バランスである。加えて、通常の黒金ではない、ややヒネリを効かせたこの紺(青)金文字盤は何とも美しい。
そう感じて2年前に入手して以来、結果としては意外と万能で重宝している時計でもある。

特に太陽の下で輝く青いサンレイ文字盤は美しい。
紺金ベゼルとコンビブレスも日常で柔らかい印象を与えてくれる。そう、この時計は夏場に使ってこそ、本領を発揮する、云わば『完全夏時計』であるのだ。

YGっぽい金色も嫌味がない。いや、正しくは嫌味を感じない年齢に到達してきている我が心境、という方が的確であろう。今や黒金時計、そしてこうした紺金時計は見ても使っても安心感と安堵感を感じてしまうのだから人の好みは斯くもいい加減であるのだ。こうした理屈抜きで感覚的に受け入れられる時計、というのが昨今の自分の中では選択時において重要な要素・要因となっている。云わば、第一印象の直感で惹かれる時計こそ自分に似合う時計とも言える。ブランドやらスペックやらは二の次、三の次で良い。






(この手の時計の代表選手と言えば 〜)

黒金ダイバーズの原点といえば、やはりROLEXサブマリーナであり、同時に黒金の完成形でもある。そして、近年では各社から追随時計が数多あるが、OMEGAアクアテラも似たような雰囲気を醸し出している。3連式ブレスの中駒が金色。これが方程式である。ブレス全部が金色となるのは重過ぎる。印象的にも、『品格が薄れる時計』としてのイメージが個人的には避け難いので駄目だ。

やはり、SSとYG(YGGP)の組み合わせが、身近な夏らしさとなるのである。桃金(RG)でも駄目。コンビ時計はYGカラーに止めを刺すと相場が決まっているのである。

とは言いつつも、この時計の金色は時折、RGカラーっぽい色彩をも感じさせる微妙なものだがYG系である。アルミニウム製という珍しい素材を用いたベゼルの紺色との相性は文句無い。互いの色が互いを引き立てあう。そう感じられれば、この時計に対する抵抗感は完全に払拭されたと言えるかも知れない。








←左写真: 既に海・プールにおいての『実戦使用』で酷使を続けている。

4〜5mまでの水中であれば視認性には全く問題がない。ダイバーズ・ウォッチの真価とはもっと過酷な大深度における条件下であろうが、一般人の水遊びにおいてはどんな防水時計であれ、そうそう簡単に問題などは有り得ない。よって、このロンジンもごくごく普通の性能と満足感を与えてくれる。強いて言えば、金色の針やindexは太陽光に反射してくれるので、中々視認性が良いということくらいだ。

逆に難点はブレス。Hydro-Conquestに共通したことだが、ブレス幅が広すぎるのである。広いと言っても19mmしかないのだが、特に手首裏側のクラスプ付近のブレスの太さが気になる。これはひとえにブレスの厚みと駒の仕上げに起因していると考える。やはり、手首側に従って2〜3mm絞り込むデザインの方が装着性には遥かに寄与する。この点を除けば、装着時の欠点は略無い、と言っても良かろう。例えば、手本となるダイバーズ時計の業界の標準器、『サブマリーナ』においては、ブレスの装着感は最高であり、Hydro-Conquestのような違和感は微塵も無いのである。










(中身のムーヴメントはごく普通のクォーツではあるが 〜)

⇒右写真はネジ込み式の裏蓋を開けた状態。


ベースとなっているムーヴメントはETA955.412であり、その刻印は地板上にも確認できる。ETAの3針デイト用クォーツとして、かれこれ80年代から使用されているロングライフキャリバーでもある。電池は371若しくは395が共用できるというのは便利な選択肢である。7石、2.50mm厚のこの機械、右写真のように23.30mm径という大きさで、クォーツ製にしては大き目である。コイルも確りと見えており、その作りは良くある安物製クォーツなどの小指の先ほどしかない大きさで、スペーサー周囲の空間を埋め尽くされた凡百の安物製とは一線を画している感じ・・・。あくまで、感じ、であるのだが。
とはいえ、こちらは巨大なるスペーサー兼ムーヴメントガードのようなプラスチックがビスで固定されている。この辺の作りは、Longinesとしての見識であり、最低限の仕事が成されていると感じる所以でもある。

そして、ETA系クォーツによくある青い地板と、丸で爆薬の導火線のような配線。この青金色のコントラストもお気に入りの点。アバタモ笑窪、の世界ではあるが・・・。

それにしても昨今の防水時計はいとも簡単に100m以上の耐水性を完成させている。このモデルの300m防水を支えているのは太目のO-Ringと、ネジ込み式の竜頭周りだけ、ということが良く分かる・・・。





(『有翼の砂時計』が誇らしげに刻印される裏蓋 〜)

ロンジンの歴史を多少なりとも紐解く。
創業は1832年だが、実質的に本格起動するのは創業者オーギュスト・アガシと彼の甥のアーネスト・フランシロン(Ernest・Francillon)が1867年に自社工場を設立してからだろう。その場所がブランドの語源ともなったサンティミエの通称『Es Longines(細長い野原)』と呼ばれる地であったそうだ。

そして1880年には
スイス・ベルンの連邦政府から“Longines”の名前を商標として保護される権利を獲得。更に1889年には、両翼を有する砂時計(“Winged hourglass”)のトレードマークを登録した。過ぎゆく時間を表わす砂時計、未来へはばたく時間を表現する翼をもつ『有翼の砂時計』の誕生である。時計メーカーがトレードマークを持ち、知的財産として保護されることがなかった当時において、ロンジンのこうした先進性を持つ一連の『登録事業』は、極めて革新的な取り組みであったのだ。

Star Navigationの裏蓋に七宝焼きのメダルが埋め込まれているが、流石にこの価格クラスではそこまで求めるのは酷。代わりとしてエンボス処理されたトレードマークがせめてもの救い、というところだ。
そして、こうしたエンボスの効用として、夏場の特に汗ばむ手首上で適度な滑り止めとなり、肌との全面接触を防ぐ役割がある。のっぺらな平面よりは遥かに優れた恩恵を与えてくれるエンボスでもある。













(色物3態・・・。
 中々、味があるダイバーズ・ウォッチではなかろうか 〜)


本格的なダイバーズ・ウォッチといえば、黒文字盤の黒系統が主流。
そこに『色』で愉しむ要素を加えたのが、2003年に登場した『グリーンサブ』。その後、カラーベゼルの爆発的な流行を迎え、同時にカジュアル時計の浸透が後押ししたカラーダイアル化がダイバーズ時計の世界でも普及することになる。そうした流れの中で2007年に誕生したHydro-Conquestであるが、今やロンジンのダイバーズ時計の顔として定着した感がある。

筆者が所有するダイバーズも、結果的には奇しくもそうした波に乗った形となり、こうした色物ダイバーズの集合となってしまった。こうしたカラリングで愉しむのも『陸ダイバー』に与えられた恩恵の一つ、かも知れない・・・。












番外編: 同じ『イカ針』ダイバーズとして注目時計が”TUDOR”である 〜)

昨年(2012年)に登場したTUDORの
Black-Bay(↓左写真) と PELAGOS(↓右写真) は注目である。
前者は1954年製の復刻モデルであり、200m防水のSS製ETA製自動巻き搭載。後者はヘリウムエスケイプ・ヴァルブを有する500m防水の本格ダイバーズ。チタン製というのも魅力的。世間では濃紅色のカラーベゼルを持つBlack-Bayに耳目が集まるが、『時計オヤジ』の好みはむしろ平凡なPELAGOS。王道を行くデザインはこちらもTUDOR歴代ダイバーズの復刻モノ。ベゼルがセラミック製というオマケも付くのが魅力。更にはPELAGOSのクラスプ部分には2本のスプリングが隠されている。まるで大リーグ養成ギブスのようなドギツイ見た目のクラスプは、サイズアジャスタブル用であり、こうした工夫にも惹かれる。

因みに、『イカ針』と呼ばれるこのデザインは海外では『雪片』こと”Snow Flake”と呼ばれる。
お国が違えば文化も言語も異なる訳だが、ここまで表現が異なるとは愉快。他の国ではどのように呼ばれているのか、そうした『時計マニア用語辞典』でも編纂したくなる気持ちに駆られる・・・。

***

この2本、価格も比較的手頃な中級クラスであり、コストパフォーマンスからもファッションセンスからも、現在のダイバーズ時計の中では群を抜くデザインと存在感を誇るモデルと個人的には絶賛している。
中身の機械はお決まりのETA自動巻き。王冠ブラザーズとしての信頼感も十二分。Black-Bayの革ベルトもアンティーク調仕上げで大変に格好良い。2本買いしても決して後悔せずに、荒海に航海することが出来よう・・・。
メジャーブランドに負けない2本である。
(2013/5/27 486400)

























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